花火野郎の観覧日記2002

其の7 7/27
第25回 隅田川花火大会
東京都・墨田区/台東区

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第一会場打ち上げ台船
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護岸の防護柵の内側に場所取り。写真下も
bogosaku2.jpg 猛暑の隅田川である。今年一番の暑さ、というが、このところ毎日同じように言っている。現着は14時頃とそれこそ一番暑い盛り。予報通り南から吹き抜ける風が、気持ちよく川面を渡っていく。
 この日に先だって7月中旬、花火当日の取材の申し込みに墨田区役所を訪れたが、その時点で既に川の両岸ならびに、隅田川を渡るいくつかの橋の歩道部分には、鉄パイプ、ネット、土嚢、三角コーンなどを駆使した防護柵が厳重に建設済みであった。花火大会当日に、初めて隅田川花火大会に訪れる観覧客はその異様に驚くだろう。それが東京近郊からの客ならもちろん、都内在住の方でさえもびっくりするはずだ。まず、川で行われる普通の花火大会とはまったく様相が違っている。隅田川自体が、この開催地辺りでは護岸をコンクリートで固められたいわば「水路」であるから、土手も河川敷も無く、川としての風情もだいぶ違う。今回は、他地域在住の読者のためにその様子をまずお伝えしよう。
 橋の上は、車道と歩道を分ける欄干を基礎に、鉄パイプ、土嚢、鋼材などで防護壁を設けてある(写真下、言問-こととい-橋の歩道)。大会当日、打ち上げ時間帯は、車を閉め出し、車道を歩行者用として使う。歩道部分は緊急通路として、一般客は立ち入り並びに観覧禁止となる。
 隅田川護岸は、鉄パイプとネットによって大人の背丈を超える高さで防護壁を設けてある。総延長は驚くほど長く万里の長城状態か。他にも随所に立ち入りを禁止するバリケードが設営してあり、観覧客はかなり動きを規制されている。隅田川花火大会が再開された時から、護岸の防護柵はずっと変わらずに来ている。再開された頃、この柵によじ登って撮影したことが懐かしい。そのころは鉄パイプの末端も保護のためのキャップが無かった。それで三脚の脚の一本を柱となる垂直の鉄パイプに上から差込み撮影した。我ながら実にいいアイデアだと感心したし、「おニイさん、頭いいねぇ」などと周囲のカメラマニアから言われて気分が良かったが、出来た写真はブレブレになっていて泣いた。鉄壁、と見えた防護柵も、皆でしがみついて見ているのだからけっこう振動していたというわけだ。
 こうした安全措置に多額の費用があてがわれ、運営費用も節減される中、とうとう花火費用が不足する運びとなり、今年度は初めて有料観覧席が第2会場脇の護岸に設けられた。この有料観覧席は好評で早々に完売したようである。価格はともかく第2会場の花火が遮ることなく見られる、とあれば価値はある。価格が高いというが、周辺のビル屋上の臨時有料桟敷だって似たような、いやそれ以上だろう。
 人の出は早く、橋の上もひっきりなしに往来がある。女性客の多くはとりどりの浴衣に身を包み、本当に花火には浴衣で見物、というのが文化になってきた。
 情報誌を片手にして観覧場所を探すカップルも多い。残念ながら、広く、遮るものなく花火が楽しめる場所はきわめて少ない。第一会場近くのリバーサイドスポーツセンター近くの野球場がもっとも広いが場所取りは過酷だ。しかも風下率も高い。もうひとつは墨田区役所近くの隅田公園だが樹木と首都高速に遮られる。
bridge.jpg あとは両護岸であるが、写真のように防護壁とネットごしの観覧を余儀なくされる。情報誌もよくリポートしているビルとビルの間に花火が「垣間見える場所」を掲載するにとどまっているようだ。ビルやマンションの屋上でもなければ遮ることなく花火が見える場所は一般向けには皆無といってもいい。それでも津波のようにやってくる客は思い思いにどこかしら居場所を見つけて、入り込んでいくのがたくましい。雰囲気や情緒を味わうのであれば、この大会も十分に効果があるといえる。
 これからが長い待ち時間。撮影場所は第一会場に近い言問橋としたが、たとえば屋形船などを配した隅田川らしい花火風景写真なら、ずっと下流の蔵前橋あたりが良く、いわばお馴染みの風景が撮れる。報道関係もそちらが多いのだが、橋の歩道部分に入れる場所で、コンクールをやる第一会場に一番近い風上の撮影場所はここ言問橋しかない。暑いときには熱いもの、と区役所の近くにラーメンを食べに行って大汗をかいたら、少し涼しい。首都高の下の日陰に陣取ってただただ待つのである。
 第一会場台船も設置済みで、その上では打上の準備に余念がない。桜橋の向こうにも屋形船がだいぶ集まってきた。

keibi.jpg 日が傾くと、首都高の下も日陰がなくなる。街路灯の影に座り込み日没を待った。
 いわば東京でもっとも人出の多い花火大会であるから、警備も並はずれて大規模である。膨大な数の警察官、警備員が動員されている(写真左)。
 ようやく涼しい風が吹く頃、打ち上げ開始である。といっても都会の空はまだ明るい。
 上空にはテレビ中継用、または警察の交通監視用?のヘリコプターが4機ほど旋回を繰り返している。
 打上は、スターマインと単発を繰り返す。いつもの進行である。第一会場だけは19時40分から、20時過ぎまで、煙火店10社による花火コンクールが行われる。いずれも新作、あるいは独自の工夫を凝らした玉が展開し、小さい玉を駆使しながらも見応えある花火世界を見せていた。
02jul27orange.jpg 花火が開くたび、ちょっと変わった玉が上がるたび、背後の橋の観覧客から歓声やどよめきがあがる。
 終盤で惜しかったのは、それまでほぼきっちりと南から吹いていた風が、やや西寄り、南南西くらいに変わったことだ。これはほぼ隅田川の流れに沿った方向でこれにより風下の第2会場の煙がどっと襲来したことだ。それも筒先から出る方の煙で、一斉打ちなどで大量に発生した塊が橋を渡る観客の頭上をかすめるくらいで一気に渡ってきた。
 風自体はそれなりにあるので、やがて晴れてはいくのだが、それで最後の方のいくつかの打上は煙にまかれてしまった。
 最後の方でふと気が付くと、どこかで防護壁を突破したらしい客が眼下のコンクリートの護岸の上で鈴なりに腰掛けていた。
 四方から「立ち止まらないでください」の集中砲火を浴びるが、橋の上を牛歩で歩みながら観覧した客が一番よく見えた、ということだろうか。花火が途切れれば「ハイ、ただいま花火は何も上がっていません。今の内に一気に渡ってしまいましょう」など促すだけの警察もいろいろ工夫している。
 それにしても客が増えている。終了後は浅草駅近辺、松屋デパート前の道路は人の波でびっしり埋まっていた。かつてを知った身で終了30分後には地下鉄に乗れていたが、とにかく人出だけは東京一と言っていいだろう。

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