花火野郎の観覧日記2003
其の22 9/9,10
片貝まつり浅原神社秋期大祭奉納花火
新潟県・小千谷市片貝町
2日目 9月10日
さて2日目。午前6時の雷ものの打ち上げで目が覚めた。とくに尺の号砲は寝ている身体が浮くくらいの迫力であった。町内の駐車場などに寝泊まりして観覧のお客も、まず発射音だけで目が覚めるかもしれない。打ち上げ場所が山の中腹、ということもあって片貝では花火の音には豊かな反響音が伴う。発射音だけでもダシーーンと響きわたり、おそらく町中に轟くのだろう。独特のエコーがかかっている。
清々しい、と感じていたのは早朝だけでこの日もたちまち蒸し暑さがやってきた。初日の模様を流すニュースを見る機会があった。映像を見ると煙の流れ具合で新しい報道席からのものとすぐわかった。これは楽しみだと思って見ていると、案の定、初日の四尺玉・二度咲き千輪の開花は左1/3程が境内林に遮られてしまっていた。…ありゃまぁ……やっぱり……。
朝はこんなに晴天なのに今日の予報は夕方から雨である。神社近くに飲み物を買い出しに行くと、今まさに奉納相撲が始まるところだった。そんな10時半頃には予報よりずっと早く雨が降り出した。今日の観覧場所も昨日と同じつもりである。というかそれを見越して三脚の一本は、観覧場所に残していった。というより2本とも運ぶ元気がなかったというか…………。雨になったので三脚の様子を見に行くと、昨晩一緒だった写真家が雨対策の最中だった。いっそ早めに降りきってくれれば助かるのだけれど、と交わす思いは同じ。今年はさんざんやられているだけに、雨中の観覧と撮影は避けたい気持ちだった。
我々写真の撮り手や花火愛好家であれば、混雑する町のエリアから離れて花火だけを撮る、というのもアリだが、片貝まつりに初めて訪れようという方は、急な宴会が入っても打ち上げぎりぎりにタクシーで乗り付けてはいけない。少なくとも午頃から町内に入り、散策しながらあちこちで屋台の通過を見物。祭りを迎えた町の表情を見ながら、しだいしだいに夜の花火へ向けて熱気が高まっていくのを楽しもう。そして花火は桟敷や境内付近で観る。それが最も片貝らしさを感じることのできる見方ではないかと思う。
2日目は昼花火の奉納が目白押し。お世話になっている花火工場の事務所近くでそれらを観ながらしばらく休憩である。打ち上げ場所にも近く、カラースモークが頭上で乱舞する。夕べは蒸し暑さにさすがにバテ気味で、良く眠ったもののまだ疲れが抜けない感じだ。とはいえ2日目も似たようなコンディション。またまた夜も暑そうである。
雨足も強くはないがパラパラと止むこともない。14時の昼の三尺玉もその辺りで傘をさしながら観覧。夕刻再び機材を運ぶ。雨も伴って蒸し暑さがひどいが、暗くなるにつれて幾分か快適になってきた。
万華鏡2態 |
大柳火 |
三重芯!? |
本日のスペシャルゲスト |
椰子芯青千輪 |
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八重芯 |
千輪五段打 |
正三尺玉 |
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昨晩の千輪増量とはうってかわって、片貝ならではの大柳火が増量めのオーソドックスな構成であった。とはいえ他の玉の種類も豊富である。千輪も打たないかといえばそれなりの量が用意されていた。
驚く程出来の素晴らしい彩色千輪や、あっと驚く三重芯も一発登場して我々を一喜一憂させてくれるのだった。ありがたいことに、昨日のお参りの御利益があったのか、夕方から雨という予報ははずれ天気は良好にもってくれた。それどころか北側に煙を流す風向きも良く、雲はあるものの大気は初日よりクリアでコンディションは良かった。
天気が持ちそうなので、今夜も三脚を2本立て、メインと大柳火(だいりゅうか)モードカメラの2台体制で望んだ。
片貝では相変わらず、どの種類の玉が上がるかは開いてみるまでわからない。番附に玉名指定となっているのは問題ないが、ただ「尺」とだけあるのは、それが千輪か芯菊か大柳火かまたまた金冠か?手を抜くと、八重芯や見事な千輪だったりするから、結局ほとんど全部撮ってしまうのだ。
ずっと観ていると、よく打たれる玉の種類については昇り曲導の色で判別できるようになる。とはいえ微妙なので昨日のように多少煙がかかっている時の色を覚えていると、クリアな時には見誤るので「今日はこの色の時が金冠」などと修正が必要。特にいきなり来るとまず撮影不能の大柳火は、曲導で判別できれば、左右どちらのカメラをレリーズすればいいかわかるので失敗は少ない。少ないというだけでゼロにはならないのは、もっとも暗い大柳火と対照的な銀山(銀菊)が同じ曲で昇るので、外したときはリスクが大きい。
それでも今年は大柳火の写真を量産できた。少し残念だったのは、片貝ならではのこの玉が小さめだったこと。いや小さいという言い方は正確ではなく、星の引き足が短い、のである。これは風向きによってよく桟敷にまで星が届くので、安全のために燃焼時間が短い造りに換えたのかも知れない。星の直径も小さく、割も弱めなのではないだろうか。それで、開花時は変わらないのだが、途中でスーッと星が早めに消えてしまう。枝垂れ落ちる大柳火をながらく見てきただけにそれと比すれば、少々寂しい感じだった。
2日目の四尺打上は、なんらかの仔細でやや遅れ、仕切直しが入った(写真右)。
打ち上げ開始でございますっ
ウゥゥゥーーーォォォォォーーーンンンン(サイレン)
…………………
…………………
どうした?まだか?
…………………
「いましばらくお待ちくださいっ」
プハーーーーーーッ(息つぎ)。誰もが固唾をのんで、というか息を止めて見入っている。
5分ほど間が開いたが、無事に開花。良かったーっ。
23時に片貝を出発し15分で小千谷インター通過。花火一発ごとに元気が注入されて、なんとか走りきれそうだ。
面白いことに、小千谷インターから入って最初のPAである越後川口に入ると、車がひしめいていた。みんな、とにかく渋滞しないうちに車を早く出して、とにかく高速に乗って、と考えることは似ている。それでとりあえず最初のPAに突っ込んでそれからゆっくりと荷物を整理し、着替えをして、トイレに行って、ゴミを捨てて、何か食べようか、というわけだ。
仮眠休憩を夾んで帰宅は2時15分であった。それからいろいろあって結局2時間ほどの睡眠で仕事へ。終日仮死状態で過ごす。
片貝まつりが終わっても、数日間はあの「お囃子」の音が頭の中で鳴り響いている。
末筆で恐縮ではございますが、今期もまた、片貝煙火工業、本田正憲社長、ならびに従業員、花火師の皆様、大変お世話になり心より御礼申し上げます。おかげさまで両日とも片貝まつりを満喫させていただきました。
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