打ち上げに備えて住民が避難!?
 2月22,23日付けの新聞紙上では今回の打ち上げに関わる住民避難などの記事が掲載された。

住民50人が避難、長野五輪閉会式の打ち上げ花火で組織委強制措置
火災の場合全額補償で合意
行き場なく温泉へ”避難”の老人も

 長野五輪の終わりを締めくくった、閉会式の5000発の打ち上げ花火。壮大な演出の一方で、花火打ち上げ地点付近の民家数軒が「危険区域」と指定されたため、住民約50人が避難し”厳戒打ち上げ”となった。
 花火は午後7時20分すぎから約15分間、会場を取り囲む3か所から10号玉(一尺玉)32発を含む4969発が打ち上げられた。打ち上げ場所はいずれも水田や畑の中。しかし、会場南側にあたる打ち上げ地点(長野市篠ノ井東福寺)の半径150メートル以内に、民家8軒が含まれていた。
 長野市消防局によると「火薬類取締法にもとづく県の内規で、10号玉を使用する際には半径150メートル以内は立ち入り禁止」とされている。ふつうは許可されないか、玉(花火の大きさ)を小さくすることで対処するが、五輪組織委員会は、昨年末から住民約50人に対し避難の協力をお願いする一方、万が一火災を起こした場合の補償の手続きをすることで住民と合意を求めた。
 市消防局が最終的に許可を出したのは開会直前の今月初め。危険区域の住民を避難させてまでの花火打ち上げは極めて異例の措置だ。
 補償は家屋だけでなく、農業用ビニールハウスが燃えてしまった場合も全額補償、骨とう品などの貴重品も対象とされたため、打ち上げ中は厳戒体制。篠ノ井消防署の消防車2台など26人が警戒にあたった。住民は大部分が閉会式に招待されたが、行き場所がないため温泉などに「避難」するお年寄りなどもいた。
報知新聞1998年2月23日付より抜粋
    
田圃が緩くなっていたため、古畳を敷いてスターマインの枠をセットしているところ。今回は近辺にビニールハウスが在るなど、特別許可による打ち上げとなった。
(JPEG画像あり)
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 打ち上げ地点に近い”危険区域”内の住民約50人は、長野県の指導に基づいて自宅から非難せざるを得ないことが21日、明らかになった。閉会式では、場内で手持ちの「手筒花火」が点火されるほか、場外の五地点から、日本の式と長野五輪のエンブレムを表現た花火などが打ち上げられる。このうち会場南側の打ち上げ地点では、 人の立ち入りなどが禁じられている半径300メートルの「保安距離」内に10軒の民家がある。このため、長野五輪組織委員会(NAOC)などは昨年11月ごろから、地元住民に避難への協力を 求めたほか、家屋や農業用ビニールハウスに火災などで被害が出た場合は、全額補償するとの念書を交わした。それぞれの家庭にある貴重品や美術品、骨とう品の作者名や評価額などを記載する 調査書も提出させた長野市消防局は今月6日、十分な防災態勢を取ることを条件に打ち上げを許可したが、「住民避難のうえで花火を打ち上げるのは長野市内で例がない」と話す。保安距離や打ち上げの許可基準は 、都道府県が独自の裁量で定めている。保安距離内に民家がある場合、「原則的には不許可」(千葉県)、「花火の玉のサイズを下げるなどの措置を取らない限り、そのまま打ち上げを許可する ことはない」(東京都)などという対応になっている。避難住民の大半は閉会式に招待されるが、一部の年寄りや病人らは温泉地のホテルや親類宅に身を寄せる。地元周辺では「世界的行事なので協力するしかない」との声がある一方で、「避難させてまで花火を打ち上げるのは強引」「貴重品などのはプライバシー侵害」などの批判も出ている。
読売新聞1998年2月22日付より抜粋
 
 結果が良ければ……とばかりはいえないが、最も被害が懸念されていた聖火台裏の打ち上げ場所一帯では、幸いなことに人家や農業用のビニールハウスなどにも思ったほどの被害が出なかった模様である。
 素晴らしい花火も今回のような特別な機会、及び打ち上げ場所では、近隣住民の理解と協力なしにはけっして実施できない。万人が全て五輪を受け入れたわけでもないのは、それに伴う花火も同じ事なのかもしれない。いずれにせよこの打ち上げに伴い、安全のため不本意ながら避難された現場住民の皆さんのご協力に、他府県からのいち観覧者としても感謝申し上げたい。
 花火製作、打ち上げにあたった長野県煙火業者のみなさんには心よりごくろうさまと申し上げ、また素晴らしい花火をありがとうと感謝してやまない。
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