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発行   サークル花火万華鏡
編集同人 川上信定 武藤輝彦      
     矢野誠一 奥村 純   
     小野里公成
発行所  〒201-0003 東京都狛江市
     和泉本町2-34-4 武藤輝彦内
定価   年4回発行
     1500円(送料共)
郵便振替 00130-9-663056

花火万華鏡第20号(2001/1/10発行)より
一部の記事をご覧になれます。

バックナンバーを読む
●FRONT PAGE
 冬花火 -矢野誠一
●連載
 花火いのち(20)永遠の課題 -川上信定
 割物について(1) -清水武夫
 花火大会よもやま話(20)シドニーオリンピック閉会式の花火 -奥村 純
●特別募集企画 20世紀の後半花火ベスト5
 読者の推薦による傑作花火ベスト5 掲載第1回
●NEWS TOPICS
 
広東省煙火生産大圧縮
 土浦大会にも総理大臣賞
 小口・小松両氏に表彰

 全国競技会成績
 玩具の後退ここにも
 「日本の花火の歩み」産経に書評
●寄稿

 大正15年長岡の正三尺玉と中川繁治 -長岡市 長谷川健一
 懐古 -愛知県小坂井 原田 保
●研究

 夕涼の化物之弁
 禁止花火物語 -武藤輝彦
●COLUMN
 
 質問箱
 若い花火師の夢 -豊田長稔
 万華鏡
●追悼・訃報 江口春太郎氏
 
花火仕掛け人 江口春太郎氏への道 -小口昭三(日本煙火芸術協会会長) 
●サークル紹介

 爪割煙火保存会 -長野市西長野 山口立雄
●編集後記

FPONT PAGE

冬花火 -矢野誠一

 もう30年近くも昔の話になるが、NHKテレビの仕事で数日がかりで秩父の夜祭りを取材したことがある。祭りの取材と言っても、祭りそのものより祭りに色をそえる、あの世界でタカモノと呼ばれる見世物興行のしくみをさぐることが主たる目的だったから、いろいろと面白い仕事だった。
 興行地における仮設小屋の材料、建設、期間中の調度一切から興行時間の取り仕切りなどのすべてが、歩方と称する興行社の手をわずらわすことなしにははこばない。私たちが取材をした時分、秩父の夜祭りに出る見世物を仕切っていたのは、高崎のほうの興行社だった。なにかとうるさい世界であるし、うるさくなくてもこの種の取材では事前に挨拶に行くのが礼儀というものである。そんなわけで、秩父の仮設事務所で炬燵にあたりながら蜜柑の皮などむいていた、つい親分と口がすべりそうになる興行社の社長のところまで挨拶にうかがった。
 この世界では、小屋掛の小屋そのものから出演する芸人までふくむ一切を荷物と称しているのは知っていたが、この荷物が期間中安心して商売のできるように、いかに我々が努力を払っているか、細かいことだがと、酒屋や八百屋、それに風呂屋の手記まで、いちいち実例をあげながら、この社長さん滔滔と述べてくれた。荷物と多方の信頼関係は、昔ながらの義理人情が支えているので、これはわが日本の誇るべき家族制度がもたらすものだと説くあたりでは、が然ボルテージがあがって、なんだか選挙演説をきかされてるみたいな気分になったのだが、なんとも言えない愛嬌にあふれてもいて、いささか好感をいだいたくらいだ。そのかわり、荷物が約束をすっぽかしたら、以後秩父の土地は一歩たりとも踏ませないなんて、ちょっぴり怖い咬呵も切ってくれた。
 肝腎の夜祭りで、秩父囃子につれて練行していた何台もの山車が、秩父神社の参道に通じる坂道をかけあがるクライマックスの迫力には、さすが圧倒されるものがあった。それよりなにより私が魅了されたのは、吹きっさらしの寒風下、文字どおりがたがたふるえながら見あげた夜空に咲いた花火の美しさだった。秩父の花火は「戦国時代を思わせる流星が発達していった」という宮尾しげをの記述に、たったいま弘文堂の『日本風俗吏事典』でふれたのだが、夜祭りで打ち上げられた花火は、乾燥しきって冷えこんだ空気を染める色調が、夏のそれよりも一段と深味を増しているような気がする。
 俳句の上で、花火は夏の季語である。
 多くが川開きなど夏の行事にあわせて行なわれるからで、たしかに花火見物などは浴衣がけに団扇を手にしたかたちがさまになるので、寒さにふるえながら出かけるものではあるまい。つまり人事旬の季題という性格上、花火そのものより、それを観賞する側に主体がかかっているわけだ。山本健吉編の『最新俳句歳時記』(文藝春秋)には「雄壮な爆音のあとの五彩の火は、夏の夜空に美しい」とあるが、秩父の夜祭りいらい、美しさだけでとらえたら、夏よりはむしろ冬という思いが私にはある。ほんらい別の季の季題の頭に、冬なら冬をつけて冬の季題にしてしまう。たとえば「冬の蠣」とか「冬薔薇」などになぞらえて、「冬花火」なんて悪くないと思っているのだが、手もとにある何冊かの歳時記のどれにも載っていなかった。(作家・小紙同人)
連載・SERIES

花火いのち(20)永遠の課題 川上信定
 
私は車の運転ができない。できなくとも一向に不便は感じないが、花火大会の場所によっては車で移動すると圧倒的に便利というケースもある。特に帰り、終電や接続を気にせずにすむし、渋滞にさえ巻き込まれなければ威力は倍加する。
 コツはただ1つ。会場から何駅か離れた駅近くの駐車場に入れておくことだ。「アゴアシはオレが持つから君のクルマで花火に行かないか」
 こういって、今まで数えきれないほどの若い友人を引っぱり込み、千葉や茨城、埼玉や神奈川の大会へ出かけた。仁義上、会場で酒は飲まない。もっとも、車でなくとも原則として会場では飲まず、混雑しない地点まで引き上げてきてから腰を据えてというのが私のスタイル。
 その作戦が珍しく大失敗に終ったのが1999年9月15日の奥多摩花火。例年、さほどの人出はないので会場脇まで乗り人れたのがアダとなり、わずか5kmの奥多摩駅まで3時間。家に帰り着いたのは暁方だった。
 学習しない人間といわれる私だが、あの苦痛を2度と味わいたくなかったので2000年は奥多摩町に宿をとった。山歩きの好きな皇太子さんが何回か休息に利用したという老舗なのに1万2千円と安い。予約がとれたとき(民宿はどこも満員だった)、やったぜと思った。
 いつも乍ら、シチュエーション抜群という要素も加わり、こぢんまりしたいい花火だった。秩父の根岸さんの玉だろう、最後の2尺玉も実にみごとだった。海の3尺より遥かに迫力がある。
 私はそれを湖畔ではなく、少し山を下ったバス停で見た。終るとアッという間に渋滞となるからイの一番にバスで引き上げようと考えていたのだ。余韻が消え去らないうちに、臨時ではなく路線のバスが来た。ガラガラである。乗ったのは見物客20人ばかり。おかしいなあと思った。そういえば会場も前年とは違って何だかひっそりしていた。あろうことか、バスはスイスイと走り、わずか15分で駅近くの旅館前に着いた。投宿してしばらく眺めていたが、車は間隔をおいて2台3台、5台とフルスピードで走り抜けていく。変だなあ……ずっとこのままなら宿代はハラの立つ無駄な出費となる。気分としては大渋滞になってほしいのだ。
 私はテレビを殆ど見ない。たまにニュースと特別競輪の中継を見るくらい。とはいえ旅に出ればスイッチをひねる。その日もビールを飲みながら何となくつけた。
 写ったのはオリンピックの入場式。疑問は1発で氷解した。大方の人は花火よりオリンピックというわけだ。作戦は裏目と出たが、車を3駅離れた佐原に置いた水郷小見川の大会では大成功だった。大曲では地元の友人が裏道と農道を縦横に走り、これまた大成功、1時間弱で宿泊地の横手に着いた。帰りが怖い花火大会永遠の課題だ。
 
サークル同人・新刊「花火大会に行こう」著者
割物について(1)   清水武夫

 日本の代表的な花火は割物である。いわゆる菊花型花火であるが、外国でも日本語で割物と言えばかなり意味は通じる。
 割物はもう限界に来ていると言う人がある。これは誤りである。研究すればするほど奥が深い。花火家はある程度の経験を積むとそれ以上に延びない。たまたま立派な花火ができても、それが二度とできない。これが現代の多くの花火家がかかっている癌であろう。
 割物の花は星の運動から成立っている。これが重要な基礎になっている。まず星の運動を理解しなければならない、経験的な結論からいうと、星の重さと燃える速さが関係する。星が軽いほど(比重が小さいほど)、星が遅く燃えるほど(燃速が小さいほど)、その星は役に立たないのである。手で触って見てズシリと重く感じ、燃える具合を見てかなり速いとすれば、これは立派な割物を作るに最も適した星なのである。その逆であれば、自分の言うことを聞いてくれない花火になってしまう。こういった星を救済するのは大変難しい。
 星が飛んで行くのは割薬の爆発力による。密閉された玉の中で火薬が燃えるから、玉の中の圧力は急上昇する。圧力が上るほど火薬の燃え方も速くなる。ついに玉は破壊され、玉皮は小さな破片になって急に圧力が下がることになる。要するに玉を火薬の力で割るので、割物と呼ばれ、その火薬は割薬と呼ばれている。ここで大切なことは玉が破壊されると同時に、火薬が燃え尽きてしまわなければならないことである。玉が割れてしまってまだ割薬が燃えているのは無効である。名人の玉が上空で開発したのを見ると、花の中心に光が見えないか、ほんの少し「チラリ」と光るだけであって、花火家としての技術のほどが知られるのである。
 割薬の設計では割薬層の厚さと、玉貼の厚さが関係する。割薬層が分厚いと燃焼時間が長くなり、玉が割れても残火が残る。玉貼の厚さが大であると、玉がまだ割れないうちに割薬が燃え尽きてしまって力不足になる。過ぎたるは及ばざるが如しで、丁度良いところを捕らえなくてはならない。こうして割薬の分量や星に対する力のかかり方(墨への加速力)は、打揚が終ったとき玉皮を拾い集めて調べるとよい。大体均等に細くかくなっていれば良、大きさがあまりにバラバラで不揃いなのは良くない。花の形が丸く現れないのは、この玉皮の強度が均一でないことに原因する。
 玉皮は一般に二重構造になっている。第一一層は星を入れ易くして、全体の形を球形にするための一種の型と考えればよい。それで強さは必要ではない。昔の新聞紙の玉皮のようにもろいのが一番よい。アメリカ・オレゴン州在の友人D・アレン氏が新聞紙を水でドロドロに溶かし、それを球形の型にぬりつけて乾燥させ、この外から刃物で傷をつけ二つに割り芯を取り出す方法を発明した、そして熱心にもこの方法を同僚仲間に普及していた。本場の日本も負けてはならないと思われる。最初の玉はこうした弱い玉皮に星と割薬を詰め、両方を合わせでいわゆる玉込め作業が完成する。この合わせられた玉の継目を、まず紙片で貼って離れぬように止める。これを「胴貼」と呼んでいる。したがってこの継目の部分だけが弱くなる道理である。現在市販の玉皮はボール紙製が多く、かなり強度が大である。したがって開花の形がいびつになり易い。この影響を完全に除くことは難しい。しかしこの胴貼の厚さは他の部分の強度と同じ程度に強さを増すことが必要である。この注意は小さな玉ほど必要である。一般に胴貼の強さは実験的に決めるのである。(つづく)
花火愛好家奥村 純の
「花火大会よもやま話」(20)シドニーオリンピック閉会式の花火
 
 ミレニアム、2000年の1月1日を迎え、世界の各都巾で花火を盛大に上げたが、当時のニュースやその後販売されたビデオをチェックした限りにおいて、一番盛大だったのはオーストラリア・シドニーであったと思っていた。それは打ち上げ花火を多数打ち上げてはいたが、ハーバーブリッジを利用しての花火が珍しく、大規模だったからである。
 そして、2000年8月25日、翌日の大曲全国花火競技大会への出発準備をしながら読んだ夕刊に、「シドニーオリンピックの閉会式にて五大陸の花火を打ち上げる。アジア代表として芳賀火工が出場する。シドニー湾を花火で埋めつくす」と出ている。花火ファンの悪癖、出発準備を中断して、カレンダーと航空時刻表を見ると、1日のみ会社を休めばシドニーへ行けることが分る。もう誰にも止められない、即座に行くことを決断した。直ちに旅行会社へ頼むも、往復の航空券は取れたが、どうしてもホテルは取れなかった。何とかなるだろうと考え、30日夜、シドニーへ向かって出発した。
 10月1日、閉会式当日朝8時30分、快晴で風が強いシドニー空港に到着した。タクシーで市内中のホテルを探すも部屋はなく、諦めハーバーブリッジを12時に渡る。さすが巨大な橋である。橋の部材に小型花火がセットされているのが見える。そして両側のシドニー湾の岬などを見ると白くなっている。一瞬何だか分らなかったが、すぐに今夜の閉会式の花火、それもこのハーバーブリッジの花火を見学するために待っている観客だと分った。しかし、何と花火開始まで10時間以上あるのに、いやもっと前からこれだけ多数の人が待っているのだから尋常ではない。日本で一番早くて多数の場所取りをしているのは大曲だろうが、シートを張ってはいるが人間様は不在である。シドニーのように人間様がちゃんとその場で待っているのが正式な場所取りであり、大曲のようなシートによる場所取りは無効にすべきだと筆者は考えながら、白い岬を見るのだった。
 当日の花火について情報がほとんどないままシドニーへ来てしまったので、どこで見学するか思案に暮れるも、ハーバーブリッジの花火が確実に見学できる所として、オペラハウスのシドニー湾に面した所へ行く。ここでも多数の観客が既に座っているが、隙間を見つけ筆者も入れさせてもらう。13時30分で、花火開始まで8時間以上ある。隣の親切なご婦人が花火の打ち上げ場所を書いた新聞を見せてくれ、ここオペラハウス前は花火を見学するのに良い場所であることを確認し、安心したのであった。
 16時20分頃花火をセットした台船が行く。見ると大きなバケツのような容器に砂を入れ、その中に20号筒だろう大きな花火筒が立っている。快晴で風が強いまま夕方を迎え、きれいな夕焼けが当夜の花火の成功を予感させるのであった。21時20分頃オペラハウスに近い所の花火台船がゆっくりと行く。しかし花火開始予定時刻の40分前にやっと台船が来るのは、多数の船が航行しているため仕様がないのだろう。
 花火開始時刻22時になり、見学場所全体がざわつき始め、シドニー湾に面して座っていた筆者の所にも客が押し寄せて来て、ラッシュアワーの電車内と同じ状況になって来た。閉会式の進行が遅れていたが、やっと22時27分頃オリンピックスタジアムで花火が上がり始めたようである。しばらくすると遠くで段雷が上がっているのだろう、空が明るくなり始めた。近付いてきて、ついに花火が見えるようになり、まわりの観客に筆者も歓声を上げ、次の展開に期待するのであった。
 
1.花火の概要 

1/オリンピックスタジアムからハーバーブリッジまで
 

 オリンピックスタジアム近傍で、ある程度の花火を上げたようであるが、筆者は見学していないため分らない。それ以降、ハーバーブリッジまでの約14kmにわたって、23ヵ所の湾内の島あるいは船から、リレー式に1ケ所当り、約30発ずつの段雷を段打ちで打ち上げた。

2/ハーバーブリッジ花火:1分30秒間
  
 段雷が上がる中、ジェット戦間機が排気口からオレンジ色の炎を噴き出しながら低空で近付いて来て、ハーバーブリッジ上空に来たのと同時に、橋の上弦材にセットされた、昇り銀龍花雷ワイドに一斉、そして橋付近の海面から、昇り銀龍銀小花ワイドが一斉。さらに橋の両端のパイロン屋上と町のビルの屋上8ケ所からも、乱玉やザラ星が上がり始めた。続いて、橋のあらゆる所にセットされた銀虎により、一斉打ち、ウェーブを繰り返す。橋の下端からは緑乱玉が、海面へ向け下方に何発も発射されていた。銀虎のウェーブは垂直ばかりでなく、水平方向にも打ち出していた。昇り銀龍椰子に紅リング一斉で次のプログラムヘ。なお、海面から上がった花火はモーターボートに引かれた、詳しくは分らないが延長300mぐらいの浮遊物から何発も上げていた。

3/五大陸の花火:14分50秒間
 
 ハーバーブリッジを挟んで2ヵ所すっ、計4ケ所から同一花火を同時刻に上げ続けた。令船の間は2km以上離れており、両端は6.6kmも離れていた。これは多数の人々に花火を楽しんでもらおうとの配慮からであろう。各国2分50秒間ずつ上げたが、地元オーストラリアのみ3分30秒間上げた。全てスターマインで、最大は日本式でいう10号で、12インチ玉まで上げていた。
 各国の花火の概略は以下の通りである。
●南アフリカ
 変化菊・銀椰子・冠菊・クロセット千輪・変化菊・芯入り変化菊一斉
●日本(芳貫火工)
 ジェット虎に花雷・ひまわり・各色変化菊・白梅・芯入り黄金スパンコール・錦柳・紅スパンコールと同時に上空で彩色千輪菊・色蜂・錦冠菊雷人り・芯人り錦冠菊
●アメリカ合衆国
 雷・各色菊・冠菊・分包・錦柳・芯人り菊・各種千輪菊・クロセット千輪・冠菊・各色満星・変化菊・錦冠菊・銀冠菊
●スペイン
 漣菊・銀冠菊・リング千輪・スパンコール・白梅・芯入り菊・スパンコール・Z菊・クロセット千輪・花雷一斉、
●オーストラリア
 雷・各色満星・椰子芯満星・クロセット千輪・色蜂・紅緑色雷・冠菊・各色満星・変化菊・芯入り変化菊・錦冠菊

4/ハーバーブリッジ花火:3分15秒間
   
 昇り銀竜銀クロセット・千輪菊ワイドに一斉、橋の各所にセットした紅発炎筒。昇り銀龍銀小花段打ち。これは垂直ばかりでなく、斜め上方にも段打ち。銀虎段打ち、垂直・水平。橋下端より銀滝。橋上弦材にて、五輪旗の色である、青・黄・銀・緑・紅各色のザラ星によるウェーブ・銀虎によるウェーブ垂直・水平。緑乱玉ワイド一斉垂直・斜め上方。
 最後の15秒間はすさまじい動きの右へ左のウェーブ。1/100秒単位である。橋にかけられたネオンの光で浮かんでいた五輪マークから、火の粉が噴き出し始めた。さらに銀虎のウェーブが左右に加速されている。その発射音も圧倒的迫力である。そして橋の各所から、緑ザラ星一斉、同時に五輪マークは爆発したように火に包まれた。次の瞬間には五輪マークは消えていた。同時に五大陸の台船、4ケ所より20号または15号、昇り曲導付錦冠菊小割浮模様あるいは昇り曲導付芯入錦冠菊が開花。これは当然、日本製である。
 なお、これらの花火を打ち上げている間、橋の両端のパイロン屋上と町のビル屋上8ケ所からも、乱玉やザラ星を上げ続け、これもハーバーブリッジと同時に、線ザラ星一斉で終った。

2.ハーバーブリッジの花火
  

 シドニー第1の名所であるハーバーブリッジ全体を、効果的に使用した花火である。
 橋の長さ503m、海面からの最大島さ134m、海面から下端まで54m。これだけ巨人な橋のため、使用されている部材も大きく、保守点検用の通路が橋全体に張り巡らされているため、橋のあらゆる所に花火をセットできたのである。さらに当然コンピューター制御であり、電気コードの配線も大変であろうと察せられる。ここで作業する花火師は高所恐怖症では当然ダメであろうし、作業中も花火などを落とすわけにいかず、非常に慎重な作業を要求され、ご苦労なことである。
 筆者が見学したのは、橋の中央まで640mと橋全体を楽に視界に入れられ、当花火を見学するのにベストの場所であった。
 花火の内容は前記したが、昇り付小型煙火・虎・乱玉・ザラ星・発炎筒・銀滝さらに方向は垂直ばかりでなく斜め上・水平・下と自由自在であった。そして、海面からの昇り付小型煙火・虎。さらに橋の両端のパイロン屋上と町のビルの屋上からの乱玉・ザラ星とあらゆる所から、花火が発射されていたのである。
 打ち上げた花火は小型だったとはいえ、発数が多くその発射昔も連続的で、ウェーブとなると、迫力プラスリズムまで取れてきて、まさに体全体で体感する花火であった。橋のすべてを使用し、それをキャンパスに巨大な花火を成しており、まさに超究極の花火といえよう。シドニーの人々が12時間以上も前から、現地で「じっと」待っていたのが理解できたし、日本から見学に行った筆者も納得の花火であった。日本でもこのような花火ができないかと考えると、残念ながら日本には当橋のような巨大な鋼アーチ橋はなく、さらに明石海峡大橋のような吊り橋では、部材が小さく花火がセットできないし、例えできたとしても花火の熱影響の関係などで部材に対して良くなく、建設省などの許可が出ないから無理である。せいぜい、新潟県長岡市の長生橋でのナイヤガラの滝の時に、高欄から発射される5箇所からのザラ星一斉が、日本の役所から許可される最大であろう。

後略
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特別募集企画 20世紀の後半花火ベスト5

21世紀を迎えるにあたり、20世紀後半、ここ50年間の傑作ベスト5を各氏に選んでいただいた。自分で見た花火を主として作品でも、作者でも結構、というテーマです。今回は第1回目。
 小西安太郎 大曲市(68歳)
1.北日本花火興業(今野親子)創造花火「カルメン」
  
◇情緒的花火をコンピューター点火で見事に演出。21世紀の花火を表現した傑作。1999・大曲
2.青木煙火店(多門・昭夫親子)三重芯変化菊
  ◇1995年の大曲の割物優勝玉は、20世紀最高の超芸術玉だった。今でも鮮明に心に残っている。
3.菊屋小幡花火店(小幡清英)四重芯変化菊
  ◇小幡=「四重芯」の異名を持つほど、「四重心」の花火を世に認めさせ完成させた功労者。1999(土浦)、2000年は見事な出来。
4.ホソヤエンタープライズ昼花火「彩色煙竜」
  ◇ホソヤさんの昼花火は太く・短くそして色が彩やか。昼花火の良さをすべて表現している。
5.磯谷煙火店 万華鏡・雪の結晶・円・キュービック
  ◇型物花火の革新者ともいえる新作を披露。特に型物的割物花火ともいえる「雪の結晶」は素晴らしい手の込んだ花火。
補 青木多門 糸柳
 ◇1990年の長野えびす講で感動した。名人芸とはこういった繊細な技だろうと思った。
    
 原田 保 愛知県小坂井町(81歳)
1.愛知県幡豆郡羽角 加藤長之助 昇り投入小花付八重心丁字変化
 ◇昭和7年8月豊川鉄道主催の長山公園花火大会において、始めて投入れの名称にてこの8号玉を打ち上げた。今だにこの時の投入れの斬新さと華麗な色彩に驚いたことを忘れない。以後は各地で真似て何でもない装束になってしまったが、最初に考察それを発揚したことに、花火師の心意気を感じた。今では何でもないか?
   
 K.F. 愛知県 豊川市(34歳)
●大曲全国花火競技大会 大会提供
 ◇音楽とのシンクロ、演出の素晴らしさを評価。
●諏訪湖祭湖上花火大会 水上スターマイン“Kiss of Fire”
 ◇迫力と半球に開く美しさは、諏訪湖ならでは。
●PL花火芸術 終幕スターマイン
 ◇身の危険を感じるくらいの迫力、PLならではと。
●PL花火芸術 菊花連打(毎回呼び方が異なる)
 ◇これほど賛沢なワイド大玉打ち上げは他にない。
●豊田おいでんまっり花火大会 磯谷煙火店 メロディ花火
 ふくろい遠州の花火 同上メロディスターマイン
 ◇コンピューターによる昔楽との完全シンクロ、演出の素晴らしさを評価。
●長野五輪閉会式花火 春夏秋冬をイメージ
 ◇1度限りの大花火。10号名花も見られた。
●アタミ海上花火大会 大空中ナイアガラ
 ◇シンブルな打ち上げであるが、素晴らしい超ワイドスターマイン
●第90回(1995年)えびす講煙火大会 紅屋青木煙火店20号八重応変化菊
 ◇生まれて初めて見た20号八重芯菊(冠を除く)は、極めて出来が良かった。他にも根岸製・阿部製の20号八重芯変化菊を見たが青木製には遠く及ばず。
●小幡清英 四重芯変化菊(10号玉)
 ◇四重芯菊に関しては、賛否両論があるが他の煙火業者も挑戦するきっかけを作ったことを評価したい。
以上世評や噂は参考にしておりません。実際に見た中からの推薦です。順位はあえて付けないことにさせてください。
    
 河野晴行 ホソヤエンタープライズ(54歳)
1.八重芯菊
 ◇精巧で完璧な調和美を表現した割物の最高傑作。
2.椰子
 ◇割物の世界に新しい型と色を表現した。
3.小割松島
 ◇風景を表現した版割物の傑作。
4.月影の柳
 ◇光を煙の相乗効果を利用した幽玄美。
5.万華鏡
 ◇新しい割物の創作性を開いた傑作。
補 銀冠
 ◇洋火冠菊の傑作。
   
 冴本一馬 写真家 大阪
 歳をとるごとに感受性が鈍くなり、過去の感動はどんどんうすれてしまい、どうしても最近の新しいものばかりが頭に残ってしまいます。
 いつも観客の立場になって花火を見るように心がけているのですが、ここに挙げたものは、もう1度見たいなあと思ったものを書いてあります。1つ1つ何らかの形で心に残っております。特に順番はありません。
●スカイコンサート世界の花火グランプリ
 ◇ご存じのように横浜八景島で毎年行われている花火コンペティションです。いつも、これが花火のショーかと感嘆させられます。やはり都会のセンスですね。
●浦安市納涼花火大会&アタミ海上花火大会
 ◇ここも一部プログラムに音楽にミックスさせたものを打ち上げていますが、スカイコンサートには見劣りしないと思います。
●はいばら夏祭り花火大会(奈良県)
 ◇ここは珍しい花火がたくさん見られます。珍しいといっても今まで見たこともないような新しいものではありません。部品の組み合わせのアイデアです。脇坂さんは研究熱心でアイデアマンです。
●土岐市花火大会(岐阜県)
 ◇ここは小さい頃に親に手を引かれて花火を見に行った思い出を防沸させる、日本古来の納涼花火という気がします。のんびりと1発1発お弁当を広げながらゆっくりとくつろげる花火大会です。
●片貝まつり(新潟県)
 ◇ここ数年通っていますが、あのお祭りの雰囲気と花火のマッチングがいいですね
●八方尾根祭り(長野県)
 ◇しんしんと冷える寒さの中で見る花火です。色はやはり寒いときの方がきれいに出るような気がするのは私だけでしょうか。
  
 奥村 純 世田谷区(54歳)
1.青木煙火店 八重心菊・三重心菊
  ◇今回の長野えびす講大会でもそうだが、花火を極めている。
2.青木多聞 椰子
  ◇ゆっくりした動きの、太い花弁花火を確立した。
3.小泉煙火小割松島・田毎の月
  ◇短時間だが、空中を漂う情景は幻想的である。
4.小幡清英 四重芯菊
  ◇菊型花火をさらに豪華に表現しようとしている。
5.池谷博文 水色レモン色仕丹
  ◇明るくはっきりした色で、花火の色の新時代をもたらした。
 
 小野里公成 花火写真家 埼玉県 WEb版特別先行掲載
●八重芯変化菊 三重芯変化菊 青木多門氏、青木昭夫氏
 ◇花火の世界で前人未踏のある「到達点」を極めた。八重芯菊の絶妙なバランスを極めながらも未だに進化し続ける割物の可能性を無限に高めた功績。
四重芯変化菊 小幡清英氏
 ◇四重芯に先鞭を付け、その後多くの花火家たちの研鑽と追求、なにより挑戦の起爆剤となったその凄絶で渾身の技と研鑽に。小幡氏を含めそれ以降の各人の努力と工夫が、究極の瞬間芸術を「誰の目にもそれとわかる芸術」へ昇華させつつある機運そのことへ。
●椰子 青木多門氏
 ◇太く、ゆっくりと拡がる椰子の木と葉を見事に空間に現出させたアイデアと技能に。大きな星を使いながらも貿易風にそよぐ椰子の葉をおおらかに見せて絶品。
●小割松島、小割田毎の月 小泉清吉氏
 ◇夜空にしばし漂う、吊り星の風雅な佇まいを、日本的な風景になぞらえた妙。千輪物に、吊り星と意外性の2段重ねが今なお新しく、飽きさせない。その先駆に。
●万華鏡、雪の結晶 磯谷尚孝氏
 ◇いわゆる万華鏡型の割物を万華鏡という絶対の呼び名で定着させた。
●大会提供ワイドスターマイン 考案の佐藤紘二氏  花火担当の大曲花火業者
 ◇テーマを設定された一連の花火打ち上げが、ストーリーとひとつの世界を創り出すことを具現化したその佐藤氏の理念に。多くの花火と打ち上げ技術を駆使して、その独自の打ち上げ空間の創出に応えた担当の大曲花火業者の技能と理解に。
●メロディスターマイン 磯谷尚孝氏
 ◇大会提供ワイドスターマインを独自に改良発展させ、外国製のコンピュータ点火器がポピュラーとなる以前より、音楽と花火の完全な融合と競演を目指したエンターテイメントを生み出した。楽曲と一体となった欧米型の演出をオリジナルな形で構築したそのセンスと技能に。
パステルカラーの先駆 株式会社イケブン
 ◇世紀末の数年間を圧倒的に風靡した中間色、パステルトーンをいち早く実用化させ、使いこなしている技能に。安定した水色、レモン色の発色は、フォロワーとなる多くの業者に影響した。
以上順不同 賛美と敬意を込めて。
     
(次回は3月10日締切)奮ってご応募を!
NEWS TOPICS

土浦大会にも総理大臣賞
 
 大曲に歩調を合わせて、土浦の全国競技会にも内閣総理大臣賞が付与された。第1回受賞者は、茨城・山崎煙火製造所。速射連発の部優勝に、例年通り通産大臣賞が与えられ、総合優勝として総理大臣賞のダブル受賞となった。業界にとって、総理大臣賞が定時付与されることは大慶事ではあるが、受賞対象をさらに検討しなければ“屋上屋”の感が拭えず、通産大臣賞がかすんでしまう。大曲・土浦両主催者の納得ゆく裁断が望まれよう。

小口.小松両氏に表彰
 
全火協の秋の表彰を、静岡の小口明三氏が保安功労者として、秋田の小松煙火工業が優良事業所として受賞した。おめでとうございます。
COLUMN 

若い花火師の夢 豊田長稔  埼玉

 この仕事に就いてからすでに18年が過ぎようとしています。若さからは次第に遠のきつつありますが、今までの花火人生を振り返ってみた時、達成できた目標の少なさに情けなくなると共に、今更ながらこの花火というものの奥の深さを感じています。
 同じ物を作っても同じにならないことがままありますし、これで良いと一応の区切りをっけても更に良い物に出会うことがよくあります。技術が未熟だといわれればそれまでですが、花火はここまでという終わりがないわけです。気付かない点や知られていないこと、分らないことなどまだ沢山あります。
 花火は年々変化していますし、進歩もしています。危険性を減らすため、環境への配慮のためにより安全な薬品、配合へ転換しなければならないこともあり、また従来の材料が手に人らないことにより代替品に切り替えなければならない時もあります。取り組まなければならないことは多々あるのです。新しい薬品を用いたり、あるいは従来の薬品を用いた場合でも、新しい配合にたどり着く場合もあります。
 いずれにしても、それを自分のものとして取り組み吸収し実用化するためには、多くの時間と労力をかけての研究が必要となります。だからといってそれが必ず報われるとは限りません。本当に難しいものです。でも、だからこそ花火というものに惹かれ、それが面白く感じられるのだと思います。これからの自分の夢というよりも、目標として「自分にも必ずできる」という強い信念を持って技術の向上を目指し、その先に新しいあるいは独自のものに出会えたら最高です。
「花火師の夢」としてはまとまりのないものとなってしまいましたが、いずれにしても、危険を伴う仕事ですからなによりも安全を最優先にしなければなりません。経済行為も大切ですが、狭い業界なのですからお互いに協力をし合える状況とするべきです。(有)豊田煙火店
万華鏡
  
 煙火の取締が地方に移る。完成検査や保安検査が官から指定機関にゆだねられる。大変な改革にちがいない。毎月通産省保安課の広報として発刊されていた保安月報も431号で廃刊となり、想を改めるという。もっともこの保安月報は、高圧ガス・火薬頚の保安の総合誌とうたいながら、ガスのことが9割、火薬に関することは1割もなかった。ガスに関係する事業所と、火薬に関する事業所の数に比例したものであったのだろう。また長い長い明治以来の火薬行政に比べれば、新しい振興事業であるガスの規正は、日進月歩の歩みを要したのであろう。この証左か通産省の保安課の中では、火薬担当者はわずかに4〜5名、ガスが多数である。今後、経済通産省になってどう移動するのか分らないが、煙火に関する限り、省のお仕事は少なくなるのではなかろうか。
 今までなら通産大臣名ですんだ火薬類取締法施行令の一部改正も、6月23日発令のものは総理大臣名になっている。地方の分業や権限の移譲に伴う手数料や、新たに作る指定機関に関することは、通産大臣では指令できなくなったのだろう。しかも、完成検査手数料もその内訳によって大きく変わっている。完成検査・保安検査も指定機関を作って実施するという。ガスの場合のように関係業者が多数ならば、お役所の仕事でなくすることは望まれるが、煙火の場合は如何なものだろうか。1人の検査員が担当できる件数は150個所までとなっているが、通産局単位にしても、1人ですむことになるのではなかろうか。どんな単位でどんな組織の指定完成検査機関と指定保安積査機関を作るのか、検討することが多々あるように思われる。統一見解で右へならえ、ということで貧弱な煙火の業界に、過重な負担が加わることのないことを祈ってやまない。すでに組織されている各県の保安協会の事業にするなども1つの方法。とにかく新しいことを始めるわけで、いろいろと矛盾することが生じようが、良識で判断したいものである。
(武藤輝彦)
編集後記・FROM EDITORS

★明けましておめでとうございます。今年はこれだけでは済まない。21世紀シュッパツ、シン、ゴーです。正月は花火は例年より多かったようだが、爆発はしませんでした。世の中、何か暗さが漂います。
★新しい世紀は新しい姿勢で!国や取締の機構が新しくなったのに対応し、業界の中核を50歳代に移す必要があるようです。研修会の出席者の顔触れを見ても3世の時代になっています。ITを駆使できない層は引退するしかないようです。煙火協会役員の若返りを期待します。
★「日本の花火のあゆみ」は(株)日本図書館協会の選定を受けました。主なる主催地の街の図書館には必備本だと思っております。花火を盛んにする基礎知識として取締の方、主催者にもお目通しいただきたいものです。
★「20世紀ベスト5」の特集を継続します。読者・花火師の方々ご投稿を大歓迎。自画自賛も意味深いと考えます。
T.M生
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