花火野郎の観覧日記2006
其の4 7/26
2006ぎおん柏崎まつり 海の大花火大会
新潟県・柏崎市
観覧記の目次に「台風のため撤収」と書いた、昨2005年の事を少し書こう。
昨年は、打ち上げ現場で用事があって前日に柏崎に入った。その時点で台風を含めた現地の天気予報はすこぶる悪く、朝から雨でもおかしくない予報だった。そして当日はどんよりと時折小雨が降る程度で結局夕方まではなんとか天気は持ったのである。というか午後になってからの方が、空も明るく希望が持てた。台風とはいってもその本体が新潟県近辺を通過したわけではなく、それは遙か太平洋側にあった。しかしその外周の雨雲がひっかかってしまったのであろう。
打ち上げ開始1時間も前、18時30分頃から雨は降り出し、そのまま完全な本降りになって止むことがなかった。私は撮影場所に朝一から三脚をスタンバっていたが、この1時間前からの雨に、とうとうその三脚にカメラを載せる機会が無かった。三脚の後ろで立って雨を堪えているだけで精一杯で、その雨の中でカメラバッグを開けて撮影準備をする機会がなかった。これをやるとしたら雨の中では一人では無理なのである。
話だけでまだ見たことがなかった「尺玉100発一斉打ち」だけは観たい、と思ってただ観る事だけに専念していた。しかし条件は最悪。本降りに強い向かい風、そして高湿度。
目の前で打った花火の煙はたちまちのうちに全観覧席に押し寄せてほとんど何も見えない状況だった。しかし風は強かったので煙は直ぐに後方に流れていった。それで「尺玉100発一斉打ち」だけはその全貌を観ることが出来てそれだけは良かった。このプログラムはだいたい中盤にある。私はそこまで見て観覧場所を後にしたのである。
列車での観覧ではこうなると逃げ込む場所もなく雨に打たれているばかりである。もうその場にいる必要はなかった。ヘタレのそしりは免れまいが撤退である。だって見えないんだもの。心が疲れ果てた。本降りの中ずぶ濡れで駅に向かい、ちょうど駅前に着いたあたりで三尺玉が上がって、振り返って見るそれは大量の煙の中で光って見えただけだった。
雪辱。今年の柏崎は私にとってそれしかない。
柏崎へは昨年同様に前日入りした。前日といえば東京では葛飾区の花火大会があるが、それは観ていない。それを観てから車で柏崎に来た若衆も居たが、私にはもうそんな芸当はできない。
さて現地には午前8時前に着いていた。今年になってメイン観覧場所の一部は場所取り禁止となって、当日午前8時を過ぎないとシートは敷けない(敷いても撤去)。とにかく望む位置に場所取りしたかった。
しかし規制区域外ではとっくにシートが敷かれていたし、駐車場にもとっくに車が入っていた。解禁になってシートを敷いて三脚を立ててみると、「こんな前でいいんすか?」と思うほどの好位置。つか立って撮影するには申し訳ないくらい後ろが空いているなぁ。そうなってしまったのは、解禁と同時に敷き混みをおこなった客が少なすぎたためである。砂浜なんかはまだガラガラである。当たり前だ。平日の午前8時なのだ。
そして打ち上げ場所正面の浜ともう一箇所別に三脚を置いて場所取り完了。つかまだ午前9時前。
夏が キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
素晴らしい快晴の空であった。能代以来またまた梅雨空の日々だっただけに、海ということもあり、そこには完全無欠の夏風景。同時に、「これはウロウロしていたら倒れる」と用心させるだけの天気だった。天気が良くてなによりだが、これはコンクリートの防波堤で作業することになる煙火業者さんたちはよほどキツイ一日になるだろうと心配になった。
撮影機材はあらかじめホテルにデポしてあった。柏崎も有名になったためか、今年は現地の宿がまったく取れなかった。長岡までの最終は花火終了後に機材の片づけなどをしていると乗れるかどうかギリギリなのである。それで現地に宿が無いので当初は車の予定だったが運良くキャンセルを掴まえ柏崎泊まりとなった。
待ち時間の多くは日陰で過ごし、時折観覧場所をチェックしに行く程度。ひとまわりして日陰の常駐場所に戻るとスタッフの一人だろうか、同僚に介抱されながら濡れタオルに包まれてもうろうとして座りこんでいた。危険度大の暑さである。
この午前早くの時点で既に各地から車で乗り付けた愛好家が集結していた。中には夜通し運転してさらに海水浴、そして花火観覧、またまた夜を徹して運転などという猛者達も居たがその若さがうらやましい。
幸か不幸かこの快晴の空は午頃までしか続かず、以降曇りとなり、午後2時過ぎからは打ち上げ開始まで断続的に相当な雨に見舞われることになった。終日曇りの予報であっただけに、昨年の悪夢が蘇る思いだった。
午後は陽射しを避けるためでなく「雨宿り」のために同じ場所に居なければならなかった。雨の合間に機材を取りに戻る。
最終的に砂浜の観覧場所を引き払い(そこでは観覧済であったので)、もう一方に移る。
ああ、それにしても凄い観覧キャパシティである。有料席並びの砂浜は混雑しているが、そのまた隣から続く広大な砂浜エリアはいくらでも観客を飲み込める様だ。
「尺玉100発一斉打ち」は600メートル先とはいえ全幅1500メートルもの規模である。一瞬で全てが放たれる出し物であるが、その準備には昼前から配線と共に向かって右から筒を立て始め夕刻まで延々と半日を要するのである。
その規模故、撮影には画面に入りきらない、というリスクがある。もちろんめいっぱいの広角で全部を入れられるが歪みもする。全部が入る程離れれば、その他の全ての花火は遠くなる。しかも設置してある外防波堤と全観戦場所がほぼ平行なため、離れてもなかなか斜めハスに観る位置にならない。
この日のもうひとつの目玉は「正三尺玉2発同時打ち」。600連打に300連打といい、尺玉100発一斉といいこの煙火業者は度肝を抜く仰天プログラムを考えるものだ。さてこの2本の筒がどこに設置されるだろうか。と長いこと外防波堤を双眼鏡で観察していた。三尺玉の方は午後遅くなって、防波堤上での設置が始まって、夕刻になる頃、2本の位置が確定した。遠目にもそれと判る三尺筒はやはりでかい。
暗くなると100本の筒の両端の位置が判らなくなるので、「尺玉100発一斉打ち」と「三尺玉2発同時打ち」の筒の位置だけ、周りの事物との相関関係を何度も確認しておく。それはファインダーを覗いて真っ暗であっても正確に発射位置を合わせられるようにである。どちらも射出してからカメラを向きを修正するような撮りではないからだ。撮影位置からでは28ミリくらいではさすがに100本全部入らず85本くらいだった。とはいえそれはファインダーを覗いての話で、実際は視野率が100パーセントではないからいく分か広めに写る。それで結果としては打ち出しは100本全て収まっていた。

ベスビアス海中空スターマイン |
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超大型ベスビアス海中空V型スターマイン |
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正三尺玉2発同時打ち |

怒濤の尺玉300連発 |

怒濤の尺玉300連発 |

怒濤の尺玉300連発 |
今回はさすがに早めにカメラを出しておく。つまり出せる時に出して置いた方がいいというような天気だったからだ。開始直前、開始後も雨に見舞われた、それはたいした降りではなかったが、風の動きが止まっていた。
待ちに待ったスタートだが、条件は昨年とは別の意味で最悪………。
ひとつプログラムが進むたび、左のスターマイン、右のスターマイン、中央のワイドそして海空中のとその一回分で生じた全ての発煙による白い煙の塊が、打ち上げ空間を埋めて行き、そこに居座ったように動かない。少しずつは流れるほどの風があるようだが、ほとんど煙の塊は居場所を変えずにもはや会場全面の空はほとんどそれが支配していた。続くプログラムは煙の中に打ち込み、煙の向こうにかき消える。
はーーっ。ため息ばかりが。これはもう駄目かも………とプログラムも1/3ほど進まない内に、そうとう投げやりな気分になっていた。一年待って、朝一で場所取りして、一日中待って、それで結果がこれかいな。これなら雨で向かい風でも煙をあっという間に流していた昨年の方がましだったかも………。
「くそ……そよとも風が吹かないか……」。プログラムは進むが、何も好転しない。
と、その時、まったく無風同然で、ねっとりとした湿度の中、耳の後ろに首筋に、微かに風を感じたのだった。何?後ろから風が?
微かな風は次第に、確かな流れとなり、後ろを車で塞がれている状態なのに、それは少しずつ吹き抜ける風となっていった。
「いいぞ、押せーっ 押せーっ! 煙を外防波堤の向こうまで押しだせーっ」 心に叫んだ。
それは南西方向からのはっきりした風となり、いくつかプログララムが進む間に、まったく見えなくなっていたワイド用の中央防波堤が現れ、左方向のスターマインや上空に打ち出す10号領域もクリアーに見え始めた。
むお……なんと、信じられない。これを神風と言わずしてなんと言う。とそこに居る自分でさえ信じられないほどの奇跡の風。しかもほぼ無風だった風が動き始めただけでなく、陸地から沖への力強い流れ。
こうなると俄然やる気が出てくる。背中にはっきりと風を感じながらその後全ての花火がほぼクリアーな状態で打ち上げられた。素晴らしい色彩。演出もまた全てが煙火業者の狙い通りのパワーで観客に伝わる。
ワイドが、海空中が鮮やかに、クリアに眼前に展開した。なかでもV字に打ち出す超大型ベスビアス海中空V型スターマインは初めて見た。通常の海空中スターマインをもうひと組反対方向にも同時に放つのである。ちょうど私の居場所が打ち出しのセンターであるため、綺麗にV字につまり左右シンメトリーに花火が飛ぶ位置からの観覧となった。
今回はほとんど横位置狙い。全てのプログラムを追うともカメラを立てたり寝かしたりしなければならないが、水平出しをしているうちに次を撮り損ねたり、とにかくミスを誘発するからだ。
「奇跡だねぇ、信じられないねぇ」と隣の仲間と何度も繰り返しながらプログラムを追った。
さて、100発一斉、昨年は目の当たりにしたものの、撮影できなかった。だから今宵は他の全てを撮り逃してもこれだけは、と願っていた。視界もほぼクリアになった今、ようやくそれが叶いそうだった。若干着火の足並みが乱れたようにも見えたが、全量綺麗に飛んで昇っていった。会場全体からこの100本の曲導だけでもの凄いどよめきが上がっていた。
菊が、千輪が、錦冠がと次々に咲いては消え、怒濤の100発一斉同時打ちが夢幻のごとく闇の彼方に消えていった。錦先紫と錦先青の菊が交互に入っているあたり芸が細かいというか100発の並びもよく考えられているようだ。
使用玉、その構成がどのプログラムごとによく考えられており、似たような出し物をやっているようでいて、毎年微妙に色使いや玉の組み合わせを工夫しているのだと思う。飽きさせず、素晴らしかった。昨年、あの雨と煙の中で本当はこんなに素敵な花火が繰り広げられていたのかと思うと、今更に天候というヤツはどうにもならないけれど悔しいもの。とにかく全打ち上げ幅を、まんべんなく駆使したワイドパノラマのプログラム構成は素晴らしい物だった。ああ……もう心得ているなぁ。要所要所、観客の望みに応えながらもそれ以上の演出を用意している心憎さ。
「正三尺玉2発同時打ち」。左右は同じ玉だったが、向かって左がより高く上がって、その高さの分だけレンズの画角を超えていった。もちろんこうした重要な一瞬では複数のカメラで追っているからミスはないけれど足りるだろうと思った一方ははみ出しだった。やはり2玉分の爆圧は凄い。歓声が沸き上がるまで静かな長い時間だった。ため息と共に全ての引き先が海中に没していくのを見守った。
ぼうっとしている間もなく尺玉300連打である。右端がちょうど目の前くらいだろうか。ぐはっ打ち始めから千輪物でアクセル全開、絶叫誘発モードですか……。さすがに最大のワイドを使わないと全ては納まりきらなかった。後半発煙が停滞したが、相変わらず構成玉を揃えて効果的に空間に配しているあたりはよく練られていると感じた。どがんどがんと天空からワイド炸裂で降り注ぐ尺の至福感恍惚感はやはり何度観ても放心ものでしょうか。
好条件にもかかわらず、凡プレーもあったが、久しぶりに花火が楽しかった、撮りを楽しんだ。昨年雨に打たれながら無念の想いで引き上げた駅へ向かう道を、今年は意気揚々と戻る事が出来た。雪辱?そんな殺伐として悲壮感漂う余裕の無さより、柏崎本来の花火の全貌が見られて良かった。そして少しだけ昨年の無念を晴らせて良かった。
私どもの位置から右方向の沖合には多数の漁船やレジャーボートが観覧のため停泊していたが、打ち上げ中に突然そのうちの3隻ほどが、イカ釣りなどに使う集魚灯というのだろうか、それを煌々と点灯していた。いや、初めて見るがあんなに明るいものだとは。それよりあれでは周りの船が迷惑だろう?
そしてやがてそれは消えて元の暗い海に戻ったのだが、どうやらこの時に残念な事故が起きていたらしい。翌日の報道によるとお年寄りが船縁から落水してお亡くなりになっていた。きっとあの時、最大限に明るく照らし出して仲間内で捜索中だったのだろう。花火開催中にこうした不慮の事故は痛ましい。
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