花火野郎の観覧日記2006
其の10 8/15
第58回 諏訪湖湖上祭花火大会
長野県・諏訪市
花火からは遙かに遠くなってしまうものの、一度でいいから立石公園からの諏訪湖湖上祭を見てみたかった。そう考えているうちに打上台はストレート台に変わってしまい、それから後は立石からどころか8月15日の諏訪湖湖上祭自体を観に行かなくなった。
立石を敬遠したのは、花火から遠すぎること。そういう場所がある事を知ったその時点で既に場所取りが厳しいとされていたからだった。諏訪湖を知った当時はまだ鉄道による花火観覧が主体だったので、前の晩から場所を取るようなことは考えもしなかった。諏訪湖湖上祭自体に行かなくなったのは、第一にバブル期を過ぎてパワーが落ちてしまったこと、それと一般自由席をはじめとする場所取りが苛烈になり、気軽に出かけられるような気分ではなくなってしまったからだ。それで1994年以降は9月初めの全国新作花火競技会の方に多く足を運んでいる。近年はこちらも観客が増えて気楽ではなくなっているが、幾分かはお盆の湖上祭よりは空いていると思っているからだ。だから15日の諏訪湖は本当に久しぶり(楽に10年ぶりくらい)の観覧になる。
立石公園を知ったのは花火行脚の初期の頃。諏訪湖の花火の写真と言えばここからのものというくらい花火と夜景の定番撮影ポイントとして定着していた。私は既に1991年の花火に関係ない時期である5月に一度どういうところなのか車で下見に来ている。この下見の時点でどれくらいのレンズが必要か、撮影に関するデータは取得済みであった。15年も前と現在とでは公園の佇まいは激変しているし、そこから見える諏訪湖とその周辺の町並み、また公園からの視界の拓け方もまったく違っている。現在の方が諏訪湖周辺のより広範な夜景を見渡すことが出来るようだ。
1990年に湖上祭を知り、また花火写真教室の講師などで全国新作花火競技会にも関わり、諏訪湖はそれなりに長く観覧している大会となった。ここらでひとつの「遊び心」として高台から夜景と花火を眺めるのも許されるだろうと。それはひと夜限り、一度限りの贅沢な遊びのつもりだった。
そういうわけで、今年は(三尺玉水上スターマインが発表される前から)15日の諏訪湖を観よう、立石から撮ろうと年初から計画してシミュレーションしていた。カメラを使う台数や、それぞれにどの焦点距離のレンズを使うか、縦か横かどういう段取りで撮るか?を。
立石公園についての今年度詳細は観覧・撮影ガイド-諏訪湖湖上祭花火大会に付記しておいたので、撮影を検討される方は参考にしてほしい。
茂木を後にしてずいぶん時間が経ち、最期のPAで仮眠して、目が覚めるともう外は明るくなっていた。すわっ寝過ごしたと車を飛ばし、ようやく立石公園に着いたのは5時40分くらいだった。茂木を私と同時刻に出発した若衆は午前2時に現着と聞き体力の差を感じる。車を飛ばしとはいうものの、23時に東北道鹿沼インターに入ってからは、仮眠(熟睡含む)を3回。這うようにたどり着いた諏訪であった。茂木で大分消耗し、途中何度もここで帰ろうかと考えたくらい疲れ、眠かった。
そこは聞きしに勝るというか、キャパの無い駐車場はとっくに満車だったし、ビーナスラインへ続くつづら折りの坂道はすでに車が縦列駐車となっていた。運良くすぐ近くというわけではないが、最初のカーブにあるお蕎麦屋さんまで行かないところにPできた。
うあああ、午前6時前か………長く暑い一日になりそうだ。打上開始まで13時間……。とりあえず三脚だけを運んで立てる。
私は一人だし何かをしに車を出せば置き場がなくなってしまうから、結局ずーーーーーっと。公園内で過ごすしかなかった。改修されて綺麗なトイレも水場も在るし、飲み物の自販機もある。なにより森の中に散策路やベンチがあって、終日涼しい木陰のベンチで寝そべって過ごすことが可能であった。下に歩いて降りる気もないが、幸いに程近い場所に手打ち蕎麦のお店があり賞味。贅沢なお昼を味わってしまったなぁ。
それにしても今日の諏訪湖は昨日の茂木のように、極めて視界が良好だ。終日、遙か対岸の様子や山肌、遠くアルプスに通じる山並みのディテールまでとにかくはっきりくっきりと見えていたのだ。空気が澄み切っているという感じで8月にしては珍しい透明感だ。こんな素敵な諏訪湖を遠望しての待ち時間は快適だった。
そして午前中は湖から吹き上げるような風だったが、次第に東寄りとなり、立石公園のそのまた標高が上の場所から吹き下ろしてくるような涼しい風が続いた。さすがに陽射しはばっちりで、とてもエンジンをかけなければ車の中で寝ていられるほどじゃないが、木陰のベンチに寝ていると寒いくらいだった。
下からどんどんどんどん車が上がってきて、片側だけの縦列がいつのまにか両脇になってしまった。こうなると観光バスくらいの車両だともう間を通れないくらいになる(事実、花火終了後下から上がってきた観光バスが立ち往生)。
永い永い一日を立石で過ごす。16時過ぎに機材を運んだが、真向かいに日が落ちるので沈むまで焦がされた。狭いスペースに三脚3本並べてカメラ3台での撮りとなった。シミュレーションではいろいろ考えていたが、立石の様子が昔と違っていて、ふんだんに三脚を広々と立てられるほどのスペースが確保できなかった。
立石は遠いので、下で最大限ワイド物を打っても50ミリレンズ(標準)ぐらいでは寄せが足らない。もっとも足らない分、周りの夜景を取り込めるのでそうした「開催場所要素」にスペースを割いた画面づくりがこの場所からの絵づくりの基本であるし、目的ということになる。ここまで上がって大望遠で花火だけを撮るくらいなら湖岸でやればいいのである。
撮影スポットと書いたが観覧場所としても人気が高く、一般観覧客も満員御礼状態だ。私の周りも開始が近づき写真愛好家達も鈴なりの状態で勢揃いしていた。
夕日と夜景のスポットとしても有名な立石公園。雲が出て夕日は綺麗にならなかったけれど、ようやく暮れなずみ開始の頃となった。しかし19時ではまだ空は青みを残しており、開幕スターマインから10号競技となっても名花が浮き立つ夜空ではなく開始が20分でも遅ければと残念。
最初は殆どが10号とスターマインの競技プログラムである。しかしここでは風が止まった様相になり、見通しが悪かった。

ようこそ諏訪湖祭りへ |

諏訪湖に降り注ぐ大輪の舞 |

湖上に輝く夢想花 |

姫菊の舞 |

諏訪湖ロマン |

スターマイン・彩華綾乱 |

スターマイン・雪月花・日本の風景 |

スターマイン・永遠の輝き |

ダイナミックスターマイン
未来への躍動 |

ジャキジャキスターマイン
フラッシュカーニバル |

ラブリースターマイン
天空のアーチスト |

尺玉スターマイン
Digital World |

ウルトラスターマイン
ミラクルファンタジー |

Kiss of Fire |

Kiss of Fire |

水の精、光の精 |
居並ぶカメラマン同士「あぁぁぁ」とため息が漏れる。10号の競技部分ではほぼ全てが煙に没した中での打上だった。日中の快適な風はどうした?初島上空には厚く煙が留まったままで、やはり悪い時の諏訪湖と同じかぁと落胆した。これでは後のプログラムも期待できない……のかな?
しかしそこに一陣の風が、なんと背中からあの日中吹き抜けていた素敵な風が戻ってきたのである。これは、なんと、信じられない。風はほどなく初島上空の煙全てを諏訪湖対岸に吹き流した。そして後は用意された花火が尽きるまでこの素晴らしい風が吹き続けたのであった。風は我々の背中から身体を前に押し出すように吹き抜け。市街の上空を抜けて諏訪湖を渡り彼方に届く風だった。
プログラムは手にしていたが、なんと湖岸の進行アナウンスが切れ切れに聞こえていたのでありがたかった。
前半の10号とスターマインの競技プログラムだけは煙に悩まされたがあとは絶好のコンディションが続いた。良好な風向きと澄んだ大気。そしてその中で展開する花火はすこぶる素晴らしく、最上級の諏訪湖湖上祭だった。私は、途中何度もこれは素晴らしい場を与えられたと身震いした。それで撮りのミスが全く無いわけではないが、撮るという使命感に持てる力を注いだ。最良の条件を与えられたならば最高の撮りを発揮できなければプロの名折れ。
競技プログラム以降は、スターマインと記載されているプログラムは全て諏訪湖仕様の2箇所以上のスターマインで豪華そのものだった。
kiss of Fireはいつからこうなったのか、両端の玉が開きはじめたら程なく初島からも打上を始めてしまった。両端からの水上スターマインの半球が次第に近づいて、双方の盆が触れあう頃(Kissはつまりそういう意味)初島からスターマインや単発大玉が飛び出す、という趣向が本来なのであるから、なにがしかの点火ミスではと思う。だから思い描いていた撮影プランどおりにならなかった。最終段階で初島から花火を出してくる、という流れではなかった。だから最初から下方両サイドの水上スターマイン上空の太玉と、普通なら終盤でしか観られない豪華競演が、ほとんど最初から最期までという具合で、絵的には豪華な打ち方だったといえる。
さて、kiss of Fireに続く今年のスペシャルプログラムは、二尺玉、三尺玉の水上スターマインである。
三尺玉は1983(昭和58)年以来23年ぶりの復活という。市などの実行委員会によると、諏訪湖でも1982、1983年の2回登場しただけらしい。水上スターマイン形式でやるのは、湖上に設ける仮設の打上台では上空に打ち上げる衝撃に耐えられないためで、三尺玉の開花位置、つまり打上台は湖岸から720メートル離れた場所に設置された。日中に遠望すると2つの大玉用の打上台と点火用の速火ラインがよく見えた。
もともと大玉水上スターマインをどういう風に点火し、どういうタイミングで開花させるかまったくわからなかったから、諏訪に着いた時点で撮影プランは白紙。現場を観ていかようにでも考えられた。
予め点火パターンを聞いていたのだが、湖岸のアナウンスもよく聞き取れず、開花のタイミングがよく分からない。用心して早めにレリーズ。まだか……露光が長すぎる……巻き上げてもう一度、そんなことを繰り返す。
……長い……開花の瞬間が読めない。息を殺す長い待ち時間。そしてようやく開花。おおーーーっ意外と大きい盆だぁ。さすがに二尺玉、三尺玉。
石彫公園あたりの特等席で、これら二尺玉、三尺玉より近い場所で開花する10号水上スターマインを観ている方は、大きさの違いが判らないかもしれない。手前の玉が大きく見える道理。しかも初島からその後ろのそれぞれの打上台が同一線上に並んでいる。
しかし上からは圧倒的な大きさの差がよくわかった。私の位置からは日中双眼鏡で確認すると、通常kiss of Fire点火ラインと、大玉の打上台がそれぞれずれて見える位置だったので、二個一の写真も面白いなと考えた。贅沢だなぁ。下手すると混ざってわけがわからないかと思いながら、ワンカットに両方入れて撮ってしまった。だってほら、大きさの違いがよくわかるかもしれないし。
事前情報で時間差で別に点火するだろうと思っていた。だから最初は一発ずつ別カットにしたのと、二個一と両方撮ろうとしていたけれど、2発に同時に点火したのを観て、「もし、2発同時に開花したら」と考えて2発の開花が納まるように構図も直前に変えて二個一だけに絞ったのであった。短い時間にあれこれ思いが巡る。開花タイミングが読めないから二個一も保険というわけだ。実際は時間差があったのだが、毎年やっているレギュラープログラムではないから考えてはいてもあの方法もこの方法もとは出来ない。
この日立石はもちろん、湖岸共々何百人の写真愛好家、カメラマニアが花火を狙いそのうちのどれほどの人が、この贅沢なプログラムを二個一にして撮っただろう?東バル跡地あたりの一般席、間欠泉センターから下諏訪側では、通常のKiss of Fireのように半球の開花が2つ並んで見えたはずだから実行した人も多いかも知れない。
まぁこれでも二個一でうまく納まるように構図とか、露出とかそれなりに考えているわけだ。明るい内にそれぞれの打上台がどこにあるのか湖畔の建物の位置とかでチェックしている(点火台は爆心だから、二尺、三尺それぞれに開花したらこれくらい、という盆のサイズの予想もして構図を決めるのだ)。2発の芯が重なる所は飛ぶかもしれないなぁ、と別カメラで露出を変えてみたりとか。
「光の精、水の精」はナイアガラとの競演だが、ナイアガラの滝が徐々に消滅するとともに終わり、というのもこれはこれで余韻ともの悲しさのあるエンディングだが少々これまでの物量からすれば打ち上げが物足りなかった。私の後ろのお客も最終のプログラムということで、最期の絶叫をしようと待ちかまえていたわけだが、その高まったテンションを弾けさせる対象を失った感じで茫然としていた。肩すかしというわけで、全幅一斉打ち位の終了感が欲しかったところ。
ワイドで終了雷が放たれ、満ち足りた気分で2度に分けて機材を車に運ぶ。公園内では階段上りがあるのでキツイ。車が流れ始めるのをしばらく待ってからスタート。霧ヶ峰へ続くワインディングをひたすら登るが、かなり上まで上がってもまだ路上駐車の車が居て、ここから歩いて花火の見えるところまで下ったのかと驚いた。
霧ヶ峰経由で中央高速に入る急がば回れ帰路プランであるが順調に流れていた。霧ヶ峰あたりは星が素晴らしく綺麗で、駐車場に入れて飲み物を買いがてらしばし満天の星空を楽しんでから車を出した。それからやや下ると今度は霧の中である。途中で給油などをして諏訪インターは23時過ぎに通過。しかしこの2日間で、このガソリンが高騰している時期にハイオクで3回も満タン給油してしまった(手痛い出費)。さらに、14日の朝には異常発生で近くのGSのサービスへ緊急診察に出す。「これはコンプレッサーが寿命かもですね〜」ぐぉぉぉ、またも(以前にも別の車で真夏にエアコン突然死)真夏のこの時期になんつー過酷な宣告!!さらに高価なコンプレッサーか?しかもお盆でディーラーも工場も休み……、以降、一度エンジンを切ったら二度とエアコンが効かないのではないか?という恐怖と闘いながらの2日間であった orz orz。あれほど往きにかかった道のりも3時間ほどで帰宅。しかし談合坂近辺からは自宅までずっと篠つく雨だったのには驚いた。花火パワーのせいか途中20分ほどの仮眠だけで走り切れたが戻ったあとは爆睡であった。
特殊すぎる場所取りのプロセスや労苦を抜きにしても、私にとって「一度そこから観てみたかった」という願いは叶い、立石公園からの観覧・撮影は最初で最後になるだろう。いや当初からそのつもりで望んだ観覧である。ここはやはり写真など映像のためだけの場所であり、花火の「気」が届く範囲ではないことが大きい。加えて立石公園で思いのままな撮影場所を確保するのはやはりよほどの労苦があるのでもういいです。私は今回全力で観て、撮り、悔いはない。
今後昔の様に12箇所もの打ち上げ台を使うというならともかく、諸条件を鑑みてもこの晩以上の花火が観られることは簡単には考えられない。ストレート台の幅一杯に使って全ての花火がよく咲き、最高のパフォーマンスだった。1990年に初めて諏訪湖湖上祭を観たときのあの放心するような感動を再び味わうことができたから満足である。
そして諏訪湖上の風は毎夏気まぐれでリスキーだ。南海上の台風に引き寄せられたのかこのような好条件は天の恵であり、この場所同様一期一会に等しいことなのだろう。味をしめてもう一度、また来年と繰り返し願っても、おそらく容易に果たされない望みであり今宵は運命の一夜であった気がする。茂木から止めずにたどり着けて良かった。今日この日の湖上祭をこの場所で観られて良かった。この日この晩、この時間と諏訪の花火に心より感謝したい。
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