花火野郎の観覧日記2007

観覧日記その13 8/14
ツインリンクもてぎ花火の祭典〜夏〜
10周年スペシャル

   
栃木県・芳賀郡茂木町

 花火の祭典開始から10年目、10周年にして初めて訪れた最高の花火観覧コンディションだった。
 夏の高気圧が勢力を維持し、普通に夏の風が吹けばツインリンクもてぎは南の第3ターンからの順風となり、常に好コンディションで花火の祭典が開催できるはずである。しかし位置関係か地形によるのかそうならないのが茂木だった。降雨、雷雨、濃霧、逆風、無風。あらゆるToo Badな気象条件を経てきたのだ。ゲートオープンから終日夏日に焦がされ、花火も快晴順風、という開催日がただの一度もなかった。
 昨2006年度がまず好コンディションだったが、どちらかといえばスタンドから観れば横風。しかも来場者は日中3時間近くも豪雨に見舞われたのだった。
 今年になって7月は不安定な夏だったが、8月に入り安定して(そのかわりに激暑な)夏日が続いている。そしてついにツインリンクにも素晴らしい一日が訪れた。この日は終日安定した南風。陽射しも気温も午前中から強烈だった。自宅を出発時、午前9時過ぎにして既に34度という猛暑。
 仲間をピックアップして中央エントランスに到着したのは13時過ぎ。既に午前中からの多数の来場者で場内は満員御礼状態。
 さっそく場所確保に三脚を携えるが、途中知り合いの愛好家に行き交う度に「提灯が」「提灯が」と言われて第3ターンの自由席に立ってみると、「なるほど提灯か」。
 昨年まで無かった納涼提灯がずらりと仮設スタンド上部に渡っていて花火開花方向の視界を遮っているのだった。そしてその提灯が途切れている僅かの斜面に三脚が針山のように集中していた。なぜに余分な費用をかけてわざわざ視界の妨げになる装飾をするのだろう。この分は花火代金に回して欲しいと願う。納涼提灯より花火の物量が増える方を望む。
 これは選択の余地がない、と私共もさっそく針山に参加。それから脱出しやすいように車を駐車し直し機材を持って観覧場所へ、といういつもの段取りだが、南ゲート近くの駐車場所からは完全に炎天下。たちまち身体に熱がこもる。途中の日陰に避難しながら第3ターン近くの日陰になんとかたどり着いたが、ヤバい。相当この暑さはヤバい。普段お腹を心配して食べることのないアイスを食べて中から冷やさないとっ。ペットボトルで用意したお茶やスポーツドリンクも3本、4本とどんどん消費してしまう。
 あとは同じ建物の日陰で永い午後を過ごす。それにしても目の前を行き交う来場者の数が普通じゃない。これは今回は相当人が入っているのではないか?車での来場は決まった前売り駐車券の数だけなのでこれは既にSOLD OUT。しかし人は無限に入場券を当日売りしているわけで、場外に駐車した人はいくらでも入場出来る。
 夕刻からは各飲食ブースには長蛇の列が出来て、飲み物ひとつ買うのも大変な状態。第3ターン自由席の仮設スタンドも上から下まで満席という状態で、ここまで埋まってるのは初めて見た気がする。
 開始前の場内アナウンスにてスペシャル発表があった。なんと花火の祭典にクリスマススペシャル「クリスマス【Lovers' Xmas HANABI】」が登場!
 各地でクリスマスにちなんだ花火イベントは数多く開催され、すでに定評のある場所もいくつかある。そこへついにツインリンクが参戦なのだ。アナウンス並びに公式HPの記載によれば、期日は12月23日。あえて花火の祭典時に発表ということからも、花火については相応の内容が期待される。これで12月は23日茂木、24日名古屋港という黄金ロードになるのだろうか?後はどれだけ立派な電飾ツリーが用意されるか?というビジュアル面に期待だ。オーバルコース内にそそり立っている電光掲示塔?を支柱にしてツリーに仕立てるのも悪くない気がする。
    

4号銀芯染分3種(3枚合成)
星の色が綺麗です。

錦冠と彩色千輪
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花雷千輪ワイド一斉

10周年10号・三重芯水色牡丹

10周年10号・三重芯ピンク牡丹

10周年10号・四重芯引先青銀乱
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10周年10号・五重芯引先光露

庭園花火

錦冠10箇所一斉1

錦冠10箇所一斉2
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錦冠10箇所一斉3

ファイナルワイド

ファイナルワイド
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ファイナルワイド

ファイナルワイド

二尺玉・錦冠小割浮模様
   
 「10周年の開幕に何かが起こる!」と今日の花火の祭典では謳われていたわけだけど、さぁこの「何か」って何だ?というのが我々愛好家の最大の関心事。いろいろ推測がなされた。これまでならカウント0ではたいていはワイドスターマインだった。
 そして10周年のカウントダウンで飛び出したのはいきなり「二尺玉」。しかも、なんと八重芯変化菊!。全国でも滅多に観られない八重芯二尺玉を満を持して担当である菊屋小幡花火店の小幡氏がここに投入したこと、その万感の想いを緊張感と共に深く察した。開幕一発目ならそれ以前の花火の煙もなく、普通の気象条件ならまず絶対に視認できるに違いない。この並々ならぬ意気込みには10周年ということの他に訳がある。
 過去のツインリンクをご覧になってない皆さんのために少し説明すると、2003年に一度小幡氏の手による二尺の八重芯が打ち上げられている。
 しかし荒天のため順延して8月22日に開催されたその晩は、10年のツインリンク史上を振り返っても間違いなく最悪のコンディション。濃霧がたれ込めパドックレーンでの庭園花火や地表での地割れスターマイン以外いっさい見えないという悪条件だった。この日用意されたのが二尺の八重芯。まさかこの視界で打たないだろうと思ったが無情にも時間通り打ち上げられてしまった。打ち上げないで済むなら大切に持ち帰ったに違いない。
 それは直下にいた製作者の小幡氏の目にも星の一粒の輝きすら見えないという無惨な打上げだった。その瞬間に、作り手はせめてお客さんにだけでも見えれば、と願い、私たち愛好家はせめて作り手にだけは見えれば、と願ったのだ。しかし精魂込めて造り上げた大玉の行く末は誰の目にも観られることなく、何の評価も喝采もない消滅だった。以降その晩の話も感想を聞くのも一切自粛というくらい製作者は落胆されていた。
 そして10周年の今日、小幡氏はついに2003年来の無念を雪辱した。カウントダウンの後、満場の観客のどよめきととともに曲導はするすると延び、真円の芯を持つ見事な二尺玉八重芯が茂木の漆黒の空に開花したのだった。あの霧の晩に観覧していた私は胸にこみ上げる想いと共にその成功に心から喝采した。
 
 以降5パートに分かれた打ち上げは、存分に小幡ワールド。真ん中でポツポツ単発が出ている思ったらいきなりワイドの一斉出し、とか完全に小幡花火のペース。
 なんと途中では玉村町での錦冠三種ワイド一斉の再現!しかも、第1波は引先緑点滅入り、第2波は引先紅点滅、第3波は錦冠紅先割花雷浮模様と第1波の使用玉が豪華になって3玉目も異なっていた。開場全体に3度、津波のように歓声が沸き上がる。玉村で3カットに撮り分けたからひとつにまとめようかともチラと思ったが、近場の観上げで撮っているので全部同じようなところに重なって訳が分からなくなるのでやっぱり止めた。
 10周年を記念した10号10発は、ことさら出来映えのよい八重芯以上の玉ばかりだった。10号のみならず単発打ちの4号、5号でさえ、素晴らしい玉がいくつもあり、開花して星が拡がり行くその瞬間に花火のその中心部に吸い込まれそうになるくらいに心に染みて見とれた。このサイズの玉で惹き付けられる花火作家はなかなか居ない。
 レギュラープログラムの庭園花火もスペシャル仕立てで、いつものようにピットレーンでの回転物や小型煙火に、その後方で打ち上げるワイドスターマインが組み合わされて奥行きのある見せ方になっていた。
 終始翻弄されまくりだった。葉落を散らした錦冠ワイド打ちに地割れスターマインがからみ、合間になんとこの日2発目の二尺(錦冠小割浮模様)が挟まる。「え、ウソ……」その引先が消えるかどうかで手前でまたワイド銀一斉掃射、とまったく切れ目のないフィナーレ。 二尺を打ちますよという予告なしにフィナーレの一斉打ちの一部になってしまうという贅沢な仕様だった。言ってみれば玉村のフィナーレワイドの緊迫感の途中で二尺がいきなり登場という予想外さ。この展開に着いてこれなければハイ終了、という突っ走りぶり。
 翻弄されたが、開幕の二尺八重芯を観られただけでも充分に満足だった。手早く片づけて駐車場に向かうが、来場者も多そうで簡単には出られないと思っていた。ところが例年よりなぜか早めにゲート通過し、途中も快調に走り、宇都宮駅着が22時20分頃と昨年より早めだった。その後東北自動車道でも帰省渋滞にからまず順調に帰宅出来た。終了後も場内で過ごし、あわてて車を出さない客が増えたのかも知れない。

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