花火野郎の観覧日記2007

観覧日記その19 11/23
第102回 長野えびす講煙火大会
     
長野県・長野市

 この週かなり早めの大雪に見舞われた地域があったようだ。上信越道を通っての長野入りだが、途中で見えるはずの浅間山は雲に没していた。よく山肌を見ると雲の懸かっている辺りは真っ白に雪化粧しているのだった。高速道路の案内表示は早くもチェーン規制の区間を報じている。最後のトンネルをくぐると長野市街が一望できる。あちこちで野焼きの煙が立ち上っているが、全体にもやった見通し。既に雪をまとった彼方のアルプス群も冬山の姿だけどなんとなくもやもやー。
 今年は場所取りでは敗北感の連続だ。目星をつけていた観覧場所は三脚の山。えびす講、えびす講ですよ。この時期に11月下旬なのに、午前中に三脚の壁を見ることになろうとは。花火愛好家ばかりでなく、地元の一般客もくりかえし早めにやってきては場所取りをしていく。冬も間近な晩秋の花火大会とは思えない盛況ぶり。
 それはともかく夜店の数も爆増。上流の有料席群の後ろまでざっと800メートルの大夜店街道。初めて来たとき、河川敷にはよくある販売品つまり、たこ焼き、焼きそば、おこのみ焼き……とかが1店舗ずつ10軒もなかった。駅の近くで何か買ってそれを誰も観覧客の居ない堤防道路に腰掛けて食べていたのだ。
 有料席もかつて仮設テントを連ねていたが、運動場に椅子を大量に並べた仕様になっていた。それだけ席を求めるお客が増えたのかもしれない。会場各所には上等なPAが設置され、ミュージックスターマインを意識したものか音質もなかなか良いものだった。
 とりあえず隙間を見つけて三脚を仮置きする。既着の愛好家の皆さんに挨拶したり、情報交換など。それにしても出足が早いなぁ。設置を確認するために打ち上げ現場を見させていただくが、ミュージックスターマインの配置を見て、また煙火業者さんに話を聞いてこれは三脚の位置がヤバいくらいに近いかも……と察知した。昨年ももうみっちみちのフレーミングだったが、さらにはみ出しそうな悪寒。不安になってざっと主要部だけ確認して現場を後にする。
 堤防道路に戻って撮影場所の再検討だ。保険をかけて上流側に別の三脚も置いていたが、少し離れたそっちにすべきかどうか……?。何度も行ったり来たりして悩む。まだ機材を運んでいないので画角を正確にはみられないのでコンデジだけが頼り。明るい内に双眼鏡で撮影場所から筒を確認して、目印を設定する。つまりワイドの両端(といっても射出地点)がどこか?を。それが余裕で画角に入れば、左右に花火が多少展開しても収まるだろうと(しかし予想をはるかに超えてはみ出した)。夜店がだいたい揃ってからは、おでんからジャガバターまで、とかワイドの範囲をその店の位置で覚える。実際に最初に一斉打ちが出ればだいたいそれで決まりなので、さらに微調整するのだ。結局選んだのは判っていたことだが、のけぞりの至近距離。
    

開幕スターマイン

2.七号10発一斉
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9.大スターマイン

6.十号10発早打ち

6.十号10発早打ち

11.十号10発一斉

昇曲導付五重芯菊花の極
篠原煙火店

昇曲導付冬の夢想花
山内煙火店

昇曲付四重芯点滅花
菊屋小幡花火店

月夜に煌めく曼珠沙華の花
伊那火工堀内煙火店
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22.大スターマイン
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23.七号8発早打ち

28.大スターマイン

27.十号

31.十号

30.十号10発一斉
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ミュージックスターマイン
信州煙火

ミュージックスターマイン
信州煙火

ミュージックスターマイン
信州煙火
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ミュージックスターマイン
信州煙火
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ミュージックスターマイン
信州煙火

35.八号玉3発
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39.大スターマイン

40.十号玉3発

40.十号玉3発
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42.十号玉5発

ミュージックスターマイン
青木煙火

ミュージックスターマイン
青木煙火
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ミュージックスターマイン
青木煙火

ミュージックスターマイン
青木煙火
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打ち止め
  
 えびす講もだいぶ雰囲気が変わった。それは時代に連れ、またかつてより大幅に増えた観覧客に影響されているのかもしれない。淡々と仏都の花火を消費してきた大会と担当煙火店が、県外からの有料を含めた観覧客が詰めかけるようになると、やはりエンターテイメントを考えるようになるのだろうか。いや観客も増えて多様化するなかで、それを意識しない煙火業者は今は居ないだろう。
 プログラム立てだけを見ると従来の(100回記念前の)スタイルに戻ったように感じる。前年の(一部の花火愛好家の間でのみ不評だった)青木煙火の尺玉一括消費は元通りに分散された。
 しかし通して感じるのは、かつてののんびりとした流れではなく、まるでタイムスケジュールがあるかのような、そして決してそれを外さないような機械的で時間に追われた進行だ。全てがきっちりと進み、煙の捌けを待つような余計な時間もなくどんどん進む。まぁ、寒いからスピーディに進め、余計な間もなく終われば大抵の一般客は満足だろう。今回中盤以降の風向きの変化は、多少待ったところで好転しないコンディションだったし。
 結局、予定時間より20分も早く終わってしまった。これなら単発打ち部分はもっと間隔を開けて打つことができるじゃないか。いったいなにを駆け足で焦って進行しているのだろう。せっかく元通り名花は分散して楽しめるプログラムになったのに、それぞれは前の玉の星が残っている内に次を上げるピッチでなんとせわしないことか。進行が遅れて時間に追われているわけではないのだし、もっと大切にじっくり見せてることが出来たのではなかろうか。
 全体の物量感はおそらく予算的に潤沢でない状況の中で充分なものと感じた。各スターマインはとても尻窄みの感じが無く、「大」と付かないスターマインですら充分なボリュームで良かった。単発は7号、8号が多めなものの、この至近距離であるから充分な大きさである。
 信州煙火の単発のほぼ全量が3〜4号の添え花2発付き、という豪華仕様だった。至近距離だとこの号数でも添え花自体がかなり大きく感じ、本体が開く前にそれが開くとそっちに気を取られて本体を見損なうこともあるんじゃないかなーと余計なお世話。その信州煙火は単発はもちろん各スターマインにもバラエティに富んだ質の良い玉を盛り込んで、全体にレベルアップした内容だった。
 有料席前に初めてスターマインが何台か設置されていた。有料席はショーセンターから斜めに外れた位置にある。それはグラウンド内に設置する有料席は、正面では保安距離内で難しいのだと思う。とはいえ、金を払っている自分たちの前で何も打ち上がらないのでは納得しない、という客に配慮したのではないかと。だからトータルした「打ち上がる場所」はとても上下流に幅広くなっているわけだ。
 私の撮影場所からだと有料席前の分は立木などが邪魔で見通しは良くないが、そちらで上がる分は観るだけ、と整理した。
 10号10発一斉が3度と贅沢なプログラムが用意された。しかも単に10号玉だけ出すのではなく前振りや露払いに号数の小さい一斉を加えて、二段構えの豪華仕様で素晴らしかった。青木煙火の千輪に紫クロセットも信州の錦、銀の千輪にしても天空一杯ににまんべんなく拡がるスケールの大きさに圧倒された。星は頭上を飛び越えて行くかのようでいやいやとてもこんな正面位置では画面に収まりきらないと笑ってしまうしかない。
 新作の十号コンクールでは、1発目、昇りが落ちたので玉に位置を見失い、大外れのフレーミング。予想より遙かに高い位置だった。やっぱ近いなぁ。
 愛好家一同驚きの玉は小幡花火の四重芯で素晴らしい決まり具合だった。ここ10年くらいの内でも最高クラスではなかろうか。しかし審査ではカスリもしないところがなんだかなぁ。篠原煙火の五重芯ももうきっちり各芯が見えているので、八代でもよい出来だと思っていたが、来シーズンも楽しみになってきた。あとは曼珠沙華かな、盆が可憐過ぎるけど好きな傾向の玉だ。
 随所に散りばめられる形に戻った青木煙火の単発は7〜10号いずれも工夫され見応えがあった。今は新傾向の造りの玉と従来のラインナップと混在していると見たが、相変わらず懐が広くレベルが高めであった。
 中盤を飾るのは良煙火店によるワイドプログラム、「ミュージックスターマイン」。昨年度発お目見えの新機軸になるが、全体の中核を成し、新しい目玉に据えようという意気込みが感じられた。先行した信州煙火は、昨年度より物量を上げ、続く青木煙火と同規模の内容。カラフルでリズミカルなわかりやすいワイドを披露した。物量を擁して各段に小気味良く、整った打ち上げだった。
 今年は温かい傾向だった例年より少しは本来のえびす講らしい冷え込みだろうか。風は北東方向でほぼ順風。翌日に満月齢を迎える月は後方高く昇り、打ち上げ空間に影響は無かった。この中盤まで、近くの仲間と「いい風向きだねぇ」と素敵なコンディションに感嘆していたのだが、それから程なくほとんど逆向きの風に変わっていった。仕方ないとはいえ、さぁこれから青木煙火のミュージックスターマインです、というその頃だ。これはコンディションとしては相当脱力したが、青木煙火のパフォーマンスはそれをものともせず素晴らしかった。主体は見事な扇打ちの仕掛け。放射状に出し、また扇が開くように打ち出すそれはもうそれが十八番といえるほどではないだろうか。しかも今回はいずれも遠くまで星を飛ばし、つまり扇のサイズがでかい。とくに中央部の筒はスペシャルで特に大きく、ワイド設置幅をさらに左右に大きく超えて広大な面の打ち上げ空間を演出していた。
 昨年観た経験から一箇所辺り15方向に出し、それが5回としても80本近くの筒に星をセットするわけで、準備も演出も手間暇がかかっている。和火ものを使ったゆっくりとした出だしから曲のテンポに合わせて次第に打ち上げ量が増えていく展開。信州のそれとは趣を変えてストーリー性と世界観重視という傾向でよりドラマチックな演出。終盤はおいでん〜八代でも観られた銀一斉の壮大なフィナーレ。同規模のミュージックスターマインを続けて2社であるから、それぞれはまったく別の内容にしなければならないのでそれぞれが演出に苦労するところだろう。明解な内容の信州煙火に対し、個性を出した青木煙火といったところか。
 えびす講は晩秋初冬の冬花火としてポピュラーになりつつある。なにしろどこで知ったのか「ここの花火は綺麗なんですか?」などと聞いてくる若いカップル客さえ見に来ていて、「それは見てのお楽しみ」と答える私どもを苦笑させる。
 もちろん花火好きの間ではとっくに周知されている。えびす講は私には特別な場所といえる。それは次元の違う完成度の花火を目の当たりにして衝撃を受けた場所だからだ。それから年月が経ち、業者側の事情も社会の経済事情も全てが変わっていく中で、かつての花火玉を求めるのは愛好家の懐古趣味に過ぎないに違いない。
 煙火店自身は、これまでにないスタイルや新しい花火、新しい演出を寛容な遊び心をもってして模索し、柔軟に取り組んでいるようなのに、見る側がン年前は良かったのにと後ろばかり向いて言ってみてもはじまらない。変える方向を模索しているのか、既にひとつの方向性を出しそれを披露して反応をみているのかわからない。全てが過渡期でありとどまることなく変わっていくのだ。見る側の私も訝しげに戸惑いながら、驚きながら感覚を慣れさせている。過去の経験値があるほど戸惑いも大きい。今現在とこれからと、あるがままに受け入れるつもりなのにどこか昔日のスタイルを求めてしまう自分が居る。今のえびす講はあいかわらず水準が高いけれど、これでよいと思える部分と、手つかずの無垢さが失われつつある郷愁といずれも感じている。 
 翌日が休みなので、久しぶりに長野泊まりとしてゆっくり帰ることにした。この晩は永い長野の夜を楽しんだ。明くる日は駅前でお土産を買ってからスタート。
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