花火野郎の観覧日記2008

観覧日記その18 9/6(正規開催日8/30)
常総きぬ川花火大会2008

    
茨城県・常総市

「これは良すぎて怖いねー」。と開始1時間前、撮影の準備をしながら脇にいる仲間と顔を見合わせていた。晴天の空に見事なまでの心地よい順風。地上近くも上空もまったくブレのない完璧な風上ぶり。こういう恵まれすぎたコンディションは、そのままで無事に終了するその瞬間までは容易には信じられない。惑わされないくらいには我々は場数を踏んできているのだ。いい風なんだが………。
 18時30分から始まるプロローグ花火は、素晴らしく綺麗に咲き、その煙も裏手に淀みなく流されていく。小躍りしたくなる好条件だが、しない。怪しい。こんなに風が涼しく抜けているのになぜか湿気ているし。後ろを振り返り、後ろ180度位の夜空を何度も見回す。警戒していた。ゲリラ雷雨をもたらすような不穏な雲はない。でも何か変だ。不安になり「いまのうちに早く始まって欲しい」「ほんの1時間何も無く過ぎて欲しい」と願ったのだが気象条件は無情だった。開始10分、15分前といったところで後方左右に小さく雲が流れ始めていた。低層の雲と直感してそれがこれ以上、ましてや上空に来なければ、と思ったがそれはほんの先走りの予告に過ぎないのだった。あとで近場で私の様子を見ていた別の仲間から、後ろばっかり見ていると指摘されたぐらい開催中は雲の様子が気になった。中盤過ぎまでは順風だったからつまり後ろの空の具合がやがて花火開花領域に達するからだ。ちぎれて流れていた雲は増えて繋がり、まんべんなく空を覆い始めた。それが後半の大会上空の視界を奪っていった。
   

オープニング花火

新作花火コレクション
7号・レモンの輝き
山内煙火

野村陽一花火GALLERY

メッセージ花火
昇銀分火付八重心銀冠菊
篠原茂男 作

メッセージ花火
昇朴付点滅芯変色八方菊
野村陽一 作

メッセージ花火
昇変色分火付うす紅芯銀冠菊
篠原茂男 作

ミュージックスターマイン2
ネオン輝く憧れのブロードウェイ

至高の世界・美の巨人たち
昇閃光雷付八重芯菊先黄光露
篠原茂男 作

至高の世界・美の巨人たち
昇銀分火付三重芯銀冠菊銀彩の華
篠原茂男 作
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至高の世界・美の巨人たち
紅朴付きらめきの花冠
小幡清英 作
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至高の世界・美の巨人たち
昇り電光花付八重芯菊先ピンク銀乱
小幡清英 作

至高の世界・美の巨人たち
木葉付三重芯菊先紫銀光露
小幡清英 作
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至高の世界・美の巨人たち
昇り錦朴付八重心錦冠先キラキラ
青木昭夫 作

至高の世界・美の巨人たち
昇り彩色小花三重芯菊先之光露
青木昭夫 作
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至高の世界・美の巨人たち
昇り分火付三重芯引先紅光露
野村陽一 作

ミュージックスターマイン3
終わりゆく夏

内閣総理大臣杯コレクション
華麗なる夜空の舞踏会

内閣総理大臣杯コレクション
華麗なる夜空の舞踏会
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スーバースターマイン競演
幻想 花乱舞
菊屋小幡花火店
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スーバースターマイン競演
春・夏・秋・冬 JAPAN
篠原煙火店
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スーバースターマイン競演
春・夏・秋・冬 JAPAN
篠原煙火店

ファイヤーアートコンテスト
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 水海道市花火大会から、市町村合併後は常総市みつかいどう花火大会、そして常総きぬ川花火大会と改名しての第一回目となる。
 8月末の大雨のために一週間延期開催となった。いくら近場とはいえ前の晩から出かけるわけにもいかないが、それなりに早起きしたのはやはり天気が気になるからだ。朝いちでインターネットの天気予報をチェックすると、寝ている間に悪化していてなんと開始時間前には「強雨」の予報がっ。それを信じされてくれるかのように窓の外はどんよりと曇り空。身支度の装備も機材も大曲同様に雨対応に変えて出かける。
 会場に向かう道すがらもどよんとした重い空模様。現着してみれば遠くの見通しが悪く湿度も高いのだった。
 これはいつ降っても不思議じゃない。と思っていたのは午前中だけで、それから今度は晴れ間が顔を出しどんどん気温が上がってかなり蒸し暑くなっていった。いったん涼しくなってからの暑さは堪える。
 正午に一般の場所取りが解禁となると、堤防斜面などに次々にシートが展開していった。有料席にはまだ観客は入っておらず、心地よさそうな芝生が青々と涼しそうに見える。
 長い待ち時間は本日担当の花火作家の方や各地からの多くの花火愛好家、地元の写真愛好家と歓談して過ごした。あちらこちらで話し込んでいるともっと時間が欲しいくらいだった(写真・勝手に関東の宮島と名付けた三脚群…写真コンテストもあるとはいえ凄い!)。
 午後になると暑さにも参って、警備本部にあてられる予定の仮設テントの下で陽射しを避けて仮眠したりして消耗を防いだ。陽が落ちて涼しくなった18時前に撮影場所に機材を運ぶ。日中の暑さとは裏腹に堤防上は上着が必要なくらいの肌寒い風が吹き抜けている。そしてプロローグ花火が始まる頃、冒頭の不安が過ぎるのだった。それでも大会は予定通りにスタートし楽しい花火の時間が始まった。
 序盤でこの大会ならではの出し物は野村陽一GALLERYの5号100発だと言える。同種のオリジナル玉が対で何発かずつ打ち上がる景色は素晴らしく、今年はどんなラインナップかと楽しみだ。見とれているうちにもう100発打ったのか?と思うほどアッという間に過ぎる。
 中盤にかけてのメッセージ花火ではいつものように見知りの愛好家が数多く協賛していた。昨今は各地ですっかりポピュラーになっているプログラムだが、たいていの花火大会ではメッセージさえ伴えば打ち上げる花火そのものは主催者か業者まかせ。つまりどんな玉が上がるかは不明なのだ。しかし常総市のメッセージ花火は「お望みなら好みの玉を添える」という点で半端じゃない。ふつうなら聞き流し、フィルムでも換えているプログラムだがここでは気が抜けない。愛好家達のわがままに優しい主催者であるので、その結果協賛に際しては、号数指定に始まり好きな作家指定、玉名指定、果ては芯ものの配色まで指定という超絶のこだわりぶりが発揮される。なんと注文の多いメッセージ花火!このプログラムの段階で既に山崎煙火、野村花火、篠原煙火、小幡花火と各地の作家の得意玉が勢揃いしてしまうという贅沢さ。現在ではこの中で打たれた篠原煙火のうす紅芯の銀冠などはなかなか観られないだけに稀少な協賛となっている。
 花火内容は相変わらず濃いものでファンにとっては、四大巨匠の割物、芸術協会の8号、各地の作家による7号玉披露などプログラムの全てがこれ以上何を望めばよいのかという充実のラインナップだ。花火に詳しくない一般観客にとっても、これほどの名花が揃っていれば必ずそれは伝わると思う。
 3回行われた山崎煙火によるミュージックスターマインはフィナーレの花火リュージョンの華々しさとはまた趣を変えて、いずれも味わいと情緒感のある打ち上げだった。
 今回一番唸ったのは、野村花火工業の内閣総理杯受賞作品の再現ものスターマイン。これは平成17年度、第74回土浦全国花火競技大会の優勝作。もちろん全てが出品当初とそっくりそのままではないが、省略できるところはしてタイミングや使用玉も微調整してある。しかしこれはなんという非の打ち所のない絶妙か。持ち玉の良さもあるが、なによりシンクロの取れ具合、タイミングの素晴らしさ。スターマインが何分間かの間に始まって完結するひとつのパッケージされた作品だと思わせる。
 篠原煙火のスペシャルスターマインは四季感が明瞭で気持ちよかった。本拠地須阪でも最近はお目にかかれないというので、久しぶりにうす紅の桜花千輪が観られて嬉しい。
 

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花火リュージョン

花火リュージョン
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花火リュージョン

花火リュージョン

花火リュージョン

花火リュージョン

花火リュージョン
    
 中盤より上空の条件がいっそう悪くなり、低空の玉も霞みがちになっていった。湿度も高くて手元のプログラム誌がヘロヘロになっている。4号や5号が引っかかるというと、雲の底はわずか200メートルもないことになる。8号なら開花の中心は280メートル前後、盆の底は210メートル程度。つまり完全に埋没してしまう。8号のファイヤーアートコンテストは珠玉の芸術協会玉が続くが、玉名からその形が判っている私どもにも、どれもまったくフォルムが判別出来ないほどの霞みようだった。何度も経験しているが花火大会は1時間、ほんの1時間の間にでもこれほど気象条件が変わることがあるのだから何が起きるかわからない。
 なんとなく頭の中で雷雨の予報が過ぎり、もしやられたら撤収が困難と3台目としてデジタルカメラを用意できなかったが、開始直前に欲を出して3本目の三脚に載せる。デジタルカメラは横位置固定ですなわちラストの花火リュージョンでのみデータ採りのため同時撃ちで使用した。3台といっても途中から7〜8号単発用の1台が大気状態悪化で撮影不能なため休眠状態になったので、実際はほとんど28ミリを装着したフイルム一台だけ使用という感じになった。雲が光を拡散させるから、霞むだけじゃなく、明るい花火では広範囲に露出オーバーを誘う。
 3部構成の花火リュージョンも締めくくりに相応しく万雷の拍手と歓声を得て無事に終了した。後半は残念なコンディションだったが降られなくて良かった。雨に備えての支度など無駄に終わるに越したことはない。
 終了後は主催者の本部テントにお世話になった御礼がてら挨拶をしに行く。同じように挨拶と愛好家諸氏が集まって来るのでまたまた終了後の検討やら昼間の歓談の続きになってしまう。混雑で直ぐには車も出せないのでそれもちょうど良い。デジカメ持ちは撮れたての成果を確認したり互いに見せ合ったりするのも楽しい。
   
 花火を好きな気持ちは、気恥ずかしい言い方だけれど突き詰めれば「愛だよ、愛」と勝手に思っている。
 花火が本当に好きで花火と花火大会に関わる多くの者は、その気持ちを“より良い、そして感動できる”カタチや行動に換えることができる力や素質を持っていると確信している。逆に言うと第三者が感動できるカタチで現れるためには、花火への愛が欠かせないないというわけだ。
 花火作家の多くはそれを花火玉そのものに反映させる。私は写真を撮り、こうして拙文に換える。他の映像やウェブサイト、ブログなどの情報発信行為もそうだ。花火大会もそうした気持ちが集結した規模が大きいカタチだ。ところがそこそこのカタチにするだけなら愛なんか無くてもできる。だから“愛のない”花火玉や花火大会、花火映像や花火関連書籍も存在する事になる。そんな感動の欠片もないカタチを目にすると、こちらの好きな気持ちははぐらかされ、独り相撲となり、満たされない気持ちだけが残るのだ。
 そして理想的に良い方のカタチになったのがこの常総きぬ川花火大会だと思う。花火スタッフの花火を好きな気持ちや、そこから考える理想の花火大会、理想の花火作家の顔ぶれ。主催者の想いががひとつの良いカタチになっている。だから同じように花火が好きな私どもは、その場に居てこんなに幸せに観ていられるのだ。花火を好きな作家の手による花火玉は、同じように花火を理解する主催者の元で大切に打ち上げられ、花火好きの私どももまたその連携から生み出される相乗の結果を心から楽しむことが出来る。つまり大勢の花火を好きな気持ちが満ちあふれている数少ない場だと思える。聖地とはつまりこうして存在するのだ。

 愛といえば、昨年の「メッセージ花火でプロポーズ」というサプライズ同様に、メッセージ花火群には新たなサプライズが盛り込まれていた。サプライズというのは、プログラムに記載されたメッセージ文と実際にアナウンスされる内容(もちろんこっちが本音)が意図的に違えてあることによる。
 今風に言ってしまえば、「メッセージ花火で告る」だろうか。今はこんな方法があって素晴らしい。「勇気あるヤツだなぁ」というのが第一印象。満願成就にしても文字通り玉砕にしても、満座の前での宣言にもその後の結果を受け止めることにも勇気がいるからだ。ましてや知人の多い地元の大会ではなおおさらのこと。だからその勇気を讃えたい。
 メッセージ主は知っている方なので、開始前に「健闘を祈る!」と言いながら成り行きを見守っていた。メッセージ花火で使われた桜の型物花火が印象的だった。
 終了後、告白相手の彼女さんを伴って挨拶に訪れた。まずはうまく想いが届いたらしい。目出度し目出度し。照れくさそうにしている彼氏だったが、私には眩しく眼に映って、緊張しながら今のカミさんに告ったずいぶん昔の事などをちょっとだけ思い出したりした。ちょっとだけだけれどね。花火っていいなぁ。
 帰路はスタッフに河川敷を抜けるところまで先導してもらい、あとは下道だけでトロトロと帰る。長い一日だった。自宅に近づくにつれて本降りの雨模様になった。予報の雨はこんなところで降っていたか。
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