花火野郎の観覧日記2010

観覧日記その14 8/16
網代温泉海上花火大会
  
静岡県・熱海市区

    
 依頼で指定されたのは初めて観る大会だった。今期は車がないので、花火が終わってから家まで電車で帰れるのかを時刻表で確認してからお引き受けした。翌日が仕事でなければ温泉にでも浸かってのんびり泊まって帰りたいところ。網代は伊東線で熱海から3つ目。車で何度も通過しているが、降り立つのは初めてだ。初めての場所なので地理や地形はグーグルマップなどで調査済み。
 メイン観覧会場の大縄公園は、駅から徒歩5分ほどで海辺をはしる国道135号線沿い。背後にある病院の建物のおかげで広大な日陰になっていて木陰のベンチもあり、ここを拠点に長い午後を過ごすことにした。
 国道を挟んで直ぐに極めてコンパクトな大縄海水欲場がある。海の底が見えるくらいに澄んだ海水だ。道路沿いの遊泳監視所から直近の防波堤を見ると、そこにズラリと花火筒が並べられ準備中だった。「近っ!」。駅前の観光案内所で、大縄公園から良く見えますよ、と言われたがそりゃこの近さだもの。
 まつり本部も公園に設置されるので、この海水欲場に近い筒場がショーセンターとみられる。
 さてどこから撮るか。いくらメイン会場でもこの至近距離からというわけにはゆくまい。公園に荷物をデポして、空身で飲み物だけ持ってロケハン。国道沿いを少し東に歩くと、別の防波堤にまた別の花火筒群が並んでいるのを発見。おっと……危ない。二箇所、いやセンター中心にシンメトリーにたぶん西側にもあるな。三箇所打ちか……。打ち合わせ無しでぶっつけ本番だけど、特にここから撮って、という指定が無い限り、現場の設置状況からあれこれ花火空間を類推し、最大限良い撮影場所を考えるのがまた楽しいわけで。なにもかも下知識を得てしまうとそれが枷になって臨機応変にいかないのだ。と言ったところで設置状況を読みきれなければそれはプロ失格。
 依頼で撮るのだから、どうにもならない気象条件になった場合はともかく、「思わぬところから花火が出ちゃったので意外すぎて撮れませんでした」とテヘペロして済むわけもなく、そこは現地の検分をきっちりやらないと。
 網代温泉の花火を観光協会のホームページなどで写真を観ると、海に向かって打ち出しているようだった。並べられた筒をよく見ると、傾斜角が付けられるような特殊な筒を使っているのがわかる。つか遠目にも真上に打ち上げる筒はほぼ無しと見受けられた。なるほど近すぎるけれど全部海方向に出すことでそれをカバーしつつ特色としているわけか。
 西側の筒群がある三箇所打ちの想定で撮影場所を割り出す。昨今はグーグルマップや衛星写真があるので、初めての場所でも予め見当を付けやすい。とはいえ実際に現場に立ってみると地図との違いを痛感する。地図上で良かれと思っていたようなポイントの殆どが地形的にダメとか、打上方向に視界がないなどで使えなくなる。眺望が効きそうな高台があったとしても、徒歩でたどり着けないような場所では論外。
 ポイントは斜め打ち出しというところ。斜めに打っているように撮るには横方向からでなければならない。筒を見て、斜めといっても新潟方面でよく見られるたとえば海空中スターマインのように打ち出し角度が低そうではなかった。漁港で停泊、係留中の船も多いし、養殖かなにかの筏みたいのもありそうで、海面で花火が開くような打ち方はNGなのだろうか。
 網代は車でたとえば下田へ行くときには通過地点だ。この道の両脇に干物の製造販売店が建ち並ぶ干物ストリートがあるけれど、かつて車窓から横目に通り過ぎるだけだった所をテクテクとロケハンのために炎天下に歩く日が来ようとは。途中、日陰のある網代魚市場で休みながら、風向きはともかく最適な撮影方向はここ辺りのどこかかな、というエリアを決めて1時間足らずでロケハン完了。あわてて三脚など立てなくても、おそらくメイン会場以外にたいして人は集まらないと見た。
 しかし花火開始が20時30分とすこぶる遅い。たとえ18時に現地に着いてもまだ2時間半もある。初めての場所なので、ロケハンに時間を費やすとみて、それでもあまり早いと暑さに耐えられない、と15時近くのお着きだが、5時間以上あるじゃないか………。
 公園に戻って西側の打上場所の位置を確認し、これで3箇所打ちは確定した。地図で確認するとそれぞれの筒場同士は約250メートルとけっこう間隔がある。全て情報がインプットされたので、出来上がりの絵を思い描く。風向きが心配だが下(しも)を喰らうことはないだろうと楽観。まぁ横風くらいだな。
 ロケハンも短時間で終わってしまうとする事もなく、話し相手も居ない。久しぶりに各地の大会を周り始めた頃のようにひとりぼっちじゃないか。
 撮影ポイントに機材一式を移動させたのは17時30分。これくらいの時間になってようやく、メインの大縄公園でも椅子を並べたり、飲食テントの準備をしたりとあわただしくなった。撮影ポイントまでゆっくり歩き、その周辺でいったりきたりと絞り込みに時間をかけてもまだ18時。一番近い打上地点まで約350メートルの距離の撮影場所を決めた。
 近くの岸壁や防波堤は地元の太公望で一杯だ。だから釣り竿も持たずにブツブツ言いながらうろうろしているよそ者の当方は訝しげに見られる。三脚を立ててようやく写真屋かとそういう辺りの空気。一帯が暗くなる頃、三々五々地元の観覧客が集まってきたけれどそれも疎ら。周りに人も居ないし、いやなんとも今日はのんびりゆったりとした観覧ではないか。先日の東京湾の密集度を考えたら天国のような快適な観覧状況。ラッシュの山手線からいきなり一車両貸し切りの気分。
 時間の潰しようもないと思っていた19時45分。網代温泉の花火に先駆けて、同日開催の西隣にある多賀湾の灯ろう流しに続く長浜海岸海上花火大会が始まった。ちょうど対岸真正面に見える。いきなり二箇所打ちスターマインで始まって各種打上が30分ほど続いた。上空に煙が滞留してしまったのと、遠いのでデジカメで撮影したものの綺麗に写らず見ているだけにした。フィナーレは怒濤の連続打ちで、私もだが周りで見ている観客からも拍手が起きた。これは機会が在れば目の前で観てみたいと思った。
 20時30分、カウントダウンとともにようやく網代温泉の花火開始。風はこちらも弱ぶくみでクリアとはいかないかも。風向きにしても近くで子供達が玩具花火をやるその発煙を見てもあっちにいったり、こっちにいったりと定まらない。
 開幕は予想通り三箇所全部からの斜め一斉打ちだった。ロケハンし、打上位置から開花位置を予測して見込みの画角で構図を決めてあったのだけれど、そこにぴったり三箇所の開花が入ってきて、我ながらドンピタ具合に驚いた。カメラの向きを大幅修正することもなくそのまま撮り続ける。玉は最大でも4号くらいだと思う。
 打上はセンターからの小型煙火が真上に上がるのを除いては、全て斜め方向打ち出しの単発とスターマイン。3箇所から順番にあるいは2箇所同時、一箇所のみと組み合わせや順番を変えながら20分間ほぼ休み無く打ち続いた。最後は小型の空中ナイアガラ?三箇所から銀牡丹を一斉に打って終わり。
 三箇所もあると風向きの具合で煙の滞留など好条件とは言えないが、まずまず見えた方だろう。
 速攻で片づけて駅に向い、21時過ぎには意外なほど混雑しているホームに上がれた。しかしこの日は暑かった。まだ網代にいる方が涼しかったのだ。東京駅で新幹線を降りると目眩がするほどの暑さ、都会ってやつは………。もう23時近いのにぜんぜん外気温が下がってねー。自宅には0時過ぎの到着。

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