花火野郎の観覧日記2010

観覧日記その4 7/17
ひたちサンドアートフェスティバル in 河原子
  
茨城県・日立市

 往路は常磐線特急料金を節約して、小山から水戸線を利用してのんびり向かう、水戸駅から常磐線で常陸多賀駅まで。これで2時間30分ほどで同日開催の玉村まで電車とタクシーで行くのと所要時間は同じくらい。
 駅に着いたのがちょうど16時。バスロータリーでイベント手配のシャトルバスを待つが来ない……。待てない性格だからタクシーを駆る。
 そも、このイベントと花火打ち上げをどうして知ったのか?当日お会いした野村花火のスタッフからも、「よくココがわかったね」と言われたくらいである。
 幸か不幸か、毎年花火大会日程表を制作し検証をしていく中では、新しい花火大会が生まれる喜びも、長らく続けられてきた大会の中止や消滅の哀しみも目の当たりにしてきた。その中で日程表制作者にしかわからない利点として、自治体や観光協会のホームページやブログを開けていく中で「これはひょっとしたら良さそう」という花火イベントをいくつも見つけだしたことがあげられる。それはほんのワンカットの花火風景だったりしたけれど、想いを馳せるには十分だった。もちろんその多くは実視実証をしていないわけだが、こんな花火がこんなロケーションがと魅力を感じたモノがいくつもあった。今後はそうした花火大会やイベントを巡るのが楽しみだ。そして宝石を見つけだしたり、やれやれとがっかりしてみたいのだ。
 今年も同じように作業していく中で茨城県の今期筆頭の開催日になるこのイベントを知ることになる。
 目についたのはサンドアート。へぇ関東でね。サンドアートのイベントは全国各地にある。今年初というわけではないらしいが、目に付くのと関心とのバランスがうまく働いたというわけか。そしてイベントHPの一角にある「野村花火工業による劇場型花火」という文字列がキラ星の如く目に飛び込んできた。もてぎ十八番の劇場型を言うか、言っちゃいますか。でも劇場型って何をやるんだろう?まさか中華小箱の見本市?まさかね……。
 関東近郊の花火愛好家内での世間一般は当然のように玉村観覧であり、私も方向としては考えていた。しかし同日のこのイベントはずっと気になっていた。
 玉村の天気が微妙になったことと、もとより玉村はずっと長いこと観覧してきたのでそろそろ新規開拓もいいじゃないか、という思いもあった。昨年も同じ気持ちだったのだが、NHKの取材に協力するために玉村観覧を決めた経緯がある。
 しかしこの河原子にするにしても今期マイカーを失った私は、電車で行ってちゃんと帰れるか?ばかりが心配だった。
 花火はイベントの最後で20時から、とHPやポスターにはあるけれど終了時間がわからない。当日、問い合わせ先である主催の青年会議所に何度も電話するが留守。イベントに出払っているのだろう。
 埒があかないので、ぶっつけでエイヤと出かける。花火は20時からだが恐らく20分もやらないだろう。それでいて上野までの最終のスーパーひたち君は21時6分発。駅から会場の河原子漁港までざっと2.5キロ。徒歩だと15〜20分はかかる。それでシャトルバスが出ているくらいだから。ひゃー綱渡りだな(しかもその後予想外の事態に……)。
 会場はビーチではなく、防波堤に囲まれた小規模な漁港だった。そこに売り物のサンドアート(砂像・大小)コーナー。イベントステージ。飲食ブース群などがコンパクトにひしめいていた。
 それらに目もくれず、真っ先に本部テントに向かって尋ねたのは「花火の終了時間」。ここでの答えは20時からの15分間ということだった。ああ、それなら楽勝で上野まで帰れる最終に間に合うな。と観覧決定。案内誌を協賛して購う。
 ついで目玉のサンドアート見物。しかし、肝心の大型の砂像の出来映えは見事で精緻であるものの、「どうしてこんな場所に!」と思うほどの位置に鎮座。海から一番離れた道路沿いの狭い一角だった。その道路は道幅狭く歩道もない。私のイメージでは砂浜の波が届かない位置にズラリと並んでいる様子だったのだが。
「ライトアップされた砂像の上空に炸裂する花火群」そんな幻想の構図がさらさらと砂が落ちるように静かに崩壊していく……。ぜーーったい無理。しかも砂像の正面は海側を向いているので、砂像を前景に置いて道路からのアングルをとると、全部後ろ向き、なのだ。はぁぁぁ……。しかも電線やら照明器具やら……。いや撮って撮れないことはないけど思っていたのと違う……。ということでいつまでもなんとか砂像と絡まないか?などとやるより切換が肝心。
  
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 さっそく花火設置の確認をして、港湾の花火らしい絵になる場所を探す。防波堤のテトラポットの外側は河原子海水浴場で、子供達が楽しそうに波と戯れている。若者の海離れなんて言われるけれど、ここ常陸の海はとても綺麗なのになぁ。
 左右(南北)から延びる防波堤の上に分かれて2群に花火が並べられていた。位置関係や物量、打ち出し箇所、号数などを目視で確認。短時間にしてはけっこうな筒数と見た。防波堤は中央が船の出入り口で切れているので、二つに分かれた花火列は大会本部側から見ると左右にけっこう離れているようだ。
 しかも左右の防波堤は一直線ではなく、いわば縦と横……ハの字型に外海に開いている。変わった地形だが設置はワイドか!。その後何度も行ったり来たりとロケハンし、船を係留する漁港の岸壁の南側の一角に観覧位置を決定。足下からすぐに海で、左(北側)側防波堤の打ち出しがうまく海面に映り込む好感度大の場所だった。風はずっと南西方向で変わらず。到着時から既に曇り空で焦がされなかったのは助かった。しかし海風を絶えず浴びていると寒いくらいだ。
 カメラはフィルムが一台のみ。この時は左右の設置列が離れているし、右側の列と立ち位置の間にはもう一本防波堤が挟まりつまり打上の根本が見えないので、見通しのいい左側防波堤の打上だけ撮ってもいいか、と考えていた(しかしその後予想外の展開に……)。
 さて花火を待つばかり。当然のように知り合いの愛好家も写真家も居ない。久々に寂しいじゃないか。そこへ準備もほぼ終わり、点検のためだろうか野村社長が通りがかり、長らく話をさせていただくことができたのでありがたかった。「2曲で6分半で打っちゃうから」と実に正確な打上時間を聞かせていただく。
 いよいよ20時、そういうこともあるか、と少しは考えたのだが予想外の事態はやってくる。
 ステージイベントが押して、いつ花火が始まるのか読めない事態に突入したのだ。(TT)
 だーぁぁぁぁぁっ、最終電車まで1時間切ったぁぁぁ。もちろんこれは遠方から来たよそ者の身勝手な焦燥なのだ。しかも花火だけが目当てとは。地元の客は祭りのエンドが1時間延びようが取るに足らないことだろう。迷惑と知りながらも何度も花火開始時間を本部に聴きに行く。見苦しい。実に見苦しいぞオレ。
 そして25分遅れの20時30分近くなってようやくカウントダウン(うわぁ歩いたら ギ リ ギ リ かも)。
 カウントゼロとともに6箇所から一斉に出始める。28の縦位置で構え、左側3箇所だけ狙うセッティングだったが、それは思っていたのとはよほどド派手に良い方向に裏切られた。
「どぅわふっ!!…… 近っ!!!!!!」。しかも思い切り接近戦だった。またまた予想外の展開。
 船の出入り口のための間隔が、中ヌケしてしまうかと思っていたが、そんなことはなく、4本(最大6本)の打上はほぼ等間隔に見えるじゃないか。しかもハの字型の防波堤の位置関係で同じサイズの打上だが左右が近く、真ん中がやや小さくと遠近感もバッチリ。メイン会場向けに野村花火は設置位置を周到に考えたものと思われた。
 つか、近すぎるっし。とくに一番右は近い。左側2箇所の打上だけ狙おうと思っていたが、右側の開花も混ざって美しくないし、せっかく広角ワイドスクリーンで打っているものを全部画面に入れないわけにはいかないな。
「ふ、やれやれ……これだから初めての場所ってヤツは……」
 花火撮影はいつでも臨機応変が鍵だ。段取りを決め、予想される構図を思い描いて日中はイメージトレーニングに励んでいたとしても、実際打たれてみなければわからない。予想の斜め上を行ったとしても、迅速かつ的確に対処出来なければ6分くらいの打上だと茫然として終わってしまう。
 出がけに最初はパッキングしてなかった最大広角のレンズを「入れ場所に余裕があるから」と突っ込んできて助かった。こりゃダメだ、と思うが速く24ミリ横位置にレンズを換え、構図を換え、仕切直す。
 4箇所で6箇所もあるよ、と野村氏が言っていたのはこういう打上空間か。手持ちの最大の広角でミッチミチですかそうですか。次回があるなら、ロケハン時に目星をつけていたもっと下がった場所も検討しなけりゃな。
 目の前最大幅で4箇所打ち。目で追うとセンター8号は軽々と横位置フレーミングの天地を超えて天頂高く開く……。8号は5発くらいだったか、要所要所で合間に入ってくる。(地図、北側防波堤先端の灯台近くに8号。大きな赤丸がメイン4箇所)
 設置場所が判らなければ距離を知りようもないのだが、この日は初めての場所なのに地図もレーザー距離計も持たず、万が一会場から歩いて戻る時の事を考えて軽い装備。で帰宅してからグーグルマップで距離をみると、一番近い花火セットまで150メートル強、一番遠い筒までも250メートル余り……。私は前髪が焦げる程の最前線で観ていたことになるのだった。あぁなんとコンパクトな漁港なのでしょう。
 そのおかげで、打ちっぱなしの6分間、最大迫力で野村花火劇場を浴びることができた。打上空間の下方は星の扇打ちが飾っており、豪奢で立派な打ち出しの度に観客がどよめく。上に咲くのはもちろん野村花火の名品シリーズでしかもワイド。開催時間の長短が満足度に比例するわけではないことをあらためて感じた。この休み無くワイドで打ち放つ6分あまり、十分に堪能させていただいた。
「さすがだな……」終わってぽつりとつぶやく。短いながらもどの一瞬も手抜きのない野村花火。
 浸っている場合じゃなく猛然とダッシュで片づける。ライトアップされた砂像を撮ってから帰ろうなんていう計画もまたの機会になった(故にこういうイベントに来ていながら砂像の写真は一枚も無し……申し訳ない)。帰り客や渋滞でまともに走るのか不安だったが、発車間際のシャトルバスに乗り込む。バスは大回りに駅に向かうもやはり車は速い。なんとか自宅まで帰れる上野行き最終の特急に間に合った。車で来る分には会場内の一角に駐車場完備(徒歩0分?)なので時間も気にしなくて良いし出かけやすいと思う。しかしながら打上時間を鑑み、あくまでも“花火大会ではない”ので、物量で満足できない諸氏にはおすすめしないと言っておこう。

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