花火野郎の観覧日記2011

観覧日記番外編その1 3/5
水戸偕楽園 第6回 夜梅祭
  
茨城県・水戸市

ume3.gif
      

打上場所

打上場所
   
 午前中は家事の所用があり出発は13時近くになった。快晴で小春日和といえるが、到着時間を考えるとあまり梅見はできなそう。
 偕楽園は梅の名所として全国に知られ、金沢の兼六園、岡山の後楽園とならぶ日本三名園だ。私も大分前から名称は知っているが来るのは初めてのような気がする。もしかすると小学生時代に遠足のついでかなにかで立ち寄っているかもしれない。しかし記憶がない。
 2月20日から3月末まで、水戸の梅まつりとして各種のイベントが行われている。そのひとつで夜桜なるぬ夜梅を楽しもうという夜梅祭は今年で第6回目。それだけなら花の追いかけカメラマンでもないから縁がなかったかもしれない。しかし花火打ち上げが興を添えるというので梅見がてら出かけてみた。煙火担当は地元水戸市の野村花火工業と公式ホームページに記載されている。
 昨年は勝田のひたちなか海浜公園や、そこでの花火イベント、河原子海水浴場の花火など、何度も水戸線や常磐線を利用している。偕楽園は水戸駅直前に通過するので何度も通ったわけだが、梅が咲きそろっていなければ近接している千波湖の景観の方ばかり記憶に残る。
 しかし車窓から見るにもさすがに梅の最盛期とあって駐車場を埋める車が半端ない。最寄りの偕楽園駅は、この梅の時期くらいしか電車が止まらない臨時営業。駅に降りてみると磁器カード定期券をタッチする端末すらない。帰りもここから乗ろうと目論んでいたのだが、15時半過ぎに閉鎖されてしまうとのこと。夜のイベント後は水戸駅までバスやタクシーで行かなければならないようだ。
 梅林の主要部での観梅は後回しにして、先ずは打ち上げ場所の確認に向かう。現着は15時に近い頃なので既に準備されているかと思う。車窓から打ち上げ予定場所が一望できるが確認できなかった。せっかくだからとカメラを出し発表では6分咲きという梅の花々を撮影しながらロケハンする。
 するとHPなどで打ち上げ場所とされていた田鶴鳴梅林の芝生エリアの一角でちょうど花火筒を車から降ろしているところだった。中に車を乗り入れられるのは、この日でいえば梅まつり主催筋か造園業者か花火業者に決まっている。打ち上げ位置と玉の大きさを3号程度と確認して、さらに田鶴鳴梅林で梅撮影。この場所は新しく拡げた地域らしいが、ここだけでも多種の梅が展開していることがわかる。形はよくわからないが、私は色的にはピンクや紅など色味がある方が好きだ。
 打ち上げ場所後方に回って初めて偕楽園全体の佇まいがわかる。現在はGoogleの空撮などで容易に地形や地勢を事前に見ることができるが、現地に降りたって初めて真上からの地図とは違うことを思い知る。この打ち上げ場所から見ると、夜梅祭のイベントをやる偕楽園の主体部分は落差のある崖の上の高台に在るのだ(右図参照)。段差の直下を常磐線が通り、偕楽園本体はつづれ織りの坂を登ったその上にある。なにが問題かというと、崖上の偕楽園から見るとこの落差分だけ花火の高さが損なわれるということだ。夜梅祭の目玉であるキャンドルディスプレイやライトアップされた梅林はこの高台にある偕楽園本体で行われる。これらのイルミネーション類を前景にあしらおうにもこの場所そのものが高いので花火の高さが出ない。うーむそういうことか、と今度は偕楽園に上がって眼下に打ち上げ場所全体を眺めながら考える。どうしたものか。梅林の中もロケハンしてみたが、密生している梅林内では上空視界が開けた場所ももまた梅林全体を見下ろすそれ以上の高台もなかった。梅の花越しに花火を観ることもできなそう。なにより花火は梅の木の上に聳えるほどには高く開かないのだ。5号くらい打ってくれれば楽に出るのだが………。
 何人かの愛好家が集まり中には既にこのイベントの経験者も居たので、色々と教えてもらい対応策を考える。すでに園内の見晴らし広場一体では、夜に備えてスタッフによるキャンドル設置が行われていた。ガラスコップに色とりどりの紙を巻き付けたという形のものだ。それを偕楽園らしく梅の花弁の形や、川の流れのように通路に沿って並べたりしていた。
 夕刻も近づくと、並べられたキャンドル群にスタッフが次々に火を灯していく。その周りには多くの写真愛好家が三脚を連ねて暗くなるのを待っているのだった。中には何人か知り合いの花火写真愛好家が居たけれど、その他の多くのカメラは花火方向を向いていないのだった。聞くところによれば、園内の一角に立つ好文亭という偕楽園の象徴のような建物がライトアップされ、それと前景のキャンドルとの組み合わせを撮ろうということらしい。つまり多くの写真愛好家の狙いは花火ではないわけか。それにしてもこのカメラの数………。
   

キャンドルの様子

キャンドル列と好文亭

1回目打上

1回目打上

2回目打上

2回目打上

2回目打上
   
 私も適当にキャンドル群を前にした一角に陣取り開始を待つ。せっかくだから梅の花を前景にしたいところだがそういう場所がない。前景として足下から前方にキャンドル群が展開しているのは当然ながら、花火群の到達高度が低いことを想定して、花火が開花する方向に高い立木が無く視界が開けている場所でなければならない。キャンドルの向こう側遠くに客が立っていても写らないから問題ない。今日の装備はデジタル一眼レフ一発。梅撮りを考えて望遠系まで揃えてきたが結局は標準ズームのみで足りた。
 しだいに観客が増えて背後は密集してきた。昨年までの経験者に聞くと、並べられたキャンドルの数も増えたが観客もまた遙かに多くなっているらしい。
 2回ある花火打ち上げの最初が近づいたが、予定の17時45分からというのはこの時期としてはさすがに早すぎる。空は暗くなりきらないし、これは一回目は打ち上げ位置と構図の確認か、と諦めた。すると早すぎると察したのか約10分くらい開始が遅らされた。いつ出るかとはらはらしたが、事前に何度も位置を確認したこともあり、予想通りの位置と構図になった。やはり10分程度ではまだ空は明るく、どう短めに切っても写真にならない。この1回目の打ち上げは今年が初めてで、昨年までは20時半の打ち上げだけだったらしい。
 花火はサイズも量もまさにイベントのそれだから評価云々ではない。芸術玉や物量がなければ満足出来ない諸氏は最初から来訪対象外だろう。内容としては、過去に偕楽園をテーマとした花火を何度も上げているのだからその辺りを出しても相応しいのではないかと思うがそれも予算がらみだろう。
 さて打ち上げが時間を置いて2回あるとなれば、同じ場所で2度も、2箇所別の位置から撮るもどちらも選択できる。正攻法なら1回目は空が明るすぎたので構図の確認にとどめ、2回目で本番というのが真っ当だ。この日の風向きは弱い南風だったので打ち上げ地点を起点にするとキャンドルエリアは風下になるが玉数がないのでそれほど煙は気にならない。
 2回目まで2時間半もあるので、キャンドルやライトアップされた梅林を撮って回る。結局同じ場所もなんだがなぁ、ということで打ち上げ場所南側の偕楽園公園にある池の畔をチョイスしてみる。ライトアップされた好文亭が小さく写る他はたいした背景もないが、二回を違う場所で撮れるというのも楽しい。しかし南側に来しまうと水戸駅までのバス停から遠くなるので帰りの電車に間に合うか少し気になる。
 地図で目星を付けていた辺りに陣取るも辺りは真っ暗だし花火の位置も目視出来ないので、何度も花火筒が見える位置まで行ったり来たりして花火の出る位置を確認する。と何度目かに、1回目の打ち上げで隣あわせて一緒に撮影した愛好家が上から降りてきていた。ロケハンかと声を掛けると退散してきたらしい。どうやら客が増えすぎてキャンドルを前景にしての撮りが難しくなったようだ。ここではキャンドルエリアを囲って立ち入り禁止にして遠巻きに見るような規制がない。どのキャンドルの合間にも入っていけるので多くの客が立ち入れば、立ったりしゃがんだりしている人の陰になって並べられている形もわからなくなるし、カメラの前にたちはだかられたり、記念写真のために真っ向からストロボを焚かれたりと、とにかく落ち着かない。どうやらこのキャンドルイベントを楽しむにはカメラ愛好家に知られ過ぎたのと、並べている場所も見る場所も少々狭すぎるようだ。
 日中は梅を撮りながら春の陽射しを感じていたがさすがに夜間は冷える。使い捨てカイロも準備し、出で立ちは真冬と変わらない。
 20時30分からの2回目打ち上げもまたまた10分くらい遅れて始まった。電車組としては気を揉むところだ。日中からだいたい南の弱風だったが、打ち上がってみると上空は停滞か逆風気味。煙か気になる2回目だった。間合いとしては上の偕楽園から撮るのと同等くらいを稼いだわけだが、もっと接近して広角でも玉が小さいので無理はなかったかもしれない。1回目よりスターマインの数など量は多かったが10分程度で終了。
 片づけてバス停に向かうと21時ちょうど。バスは15分後に出発して渋滞もあり、同40分前に水戸駅に到着。もうこの時刻では小山回りで帰る水戸線の電車はとうに終わっており、それで52分の上り最終のフレッシュひたち君に乗れた。上野経由で遠回りだがこれを逃すと家まで帰れないから乗り込んでようやくひと安心した。
    
    
 しかし、なんということだろう。この夜梅祭からほんの僅か6日後、次の土曜になる直前に、東日本太平洋側全域は「東日本大震災」に見舞われたのだった。その後の震災、津波、原発事故による三重苦についてはあらためて書くまでもない。被災されたそしてこれから放射能災害という目に見えぬ恐怖と対峙しなければならない我々そして同胞はどう対処して行けば良いのか途方に暮れている。
 震源地から離れているにもかかわらず、夜梅祭が行われた偕楽園も甚大な被害を受けたようで、好文亭はもちろん園内各所で地盤から被害があったようだ。震災後、偕楽園は無期限の休園と公式ホームページでは告知している。一日も早い復旧を願っている。  
INDEXホームページに戻る
日記のトップに戻る