花火野郎の観覧日記2011

観覧日記その6 8/6
2011 神宮外苑花火大会
  
東京都・新宿区


飲食ブースは充実

     

ウッハーのスッ飛び感
     
 どうしたものか。8月6日の花火集中日。大方の愛好家は袋井〜神明コースだろうか。
 私の当初の予定は上田だったのだがしっかり雨予報。袋井は遠征、有料席かつ泊まりになってしまうので節約コースの私としては最初から選択肢にない。
 代換えの6日開催の大会がどうもどこも天候がぱっとしない。近場の足利が雨。川越は曇り。まして酒田に遠征するわけにも行かないし。
 最近の考え方としては昔からそうだが、雨予報で成果が期待できないときはまず出かけることはない。もとより、花火観覧をするなら気象予報士ほどの天気読みが必要なのだ。それは雨を避けるためだ。しかし近年は雨だろうとなんだろうと自分や仲間同士で決めた計画通りに観覧する豪傑マニアが跋扈している。どうやら雨や嵐をついてそれでも花火を観た、ということが愛好家の誇りであり鑑らしい。片腹痛い。逆に雨だから断念したというなれば、それは情けないの愛好家の風上にもおけないの言われることさえある。
 それと予算、天候などにより本当に観たい場所に行けないなら、家で他のことをしていた方が良い。と考えられるようになった。それはなにより昨今の花火観覧がとてつもなく従来より時間を無駄にするからだ。
 花火を実際に打ち上げている1時間のために早朝から帰宅の深夜までまるまる潰すことにそろそろ辟易している。ああ、上田は午後から行けば充分だし、自宅から90分と近いので良かったのになぁ。
 どうやら東京都内は曇りくらいで済みそうなので、有料席があってゆっくり(例えば仕事帰りの時間でも)間に合う神宮にしてみた。前日の5日のうちに雨で上田はダメそうだったので、保険として神宮の有料席をコンビニの端末で買っておいた。ここも前回観覧は2001年だからなんというご無沙汰か。10年ぶり!ですよ。長い年月が過ぎた感が無く、あれからもうそんなに経ったか、という時間感覚に自分でも驚く。
 神宮は縁があって、最初に撮影した時は主催の日刊スポーツからの依頼撮影だった。さすがにどこからでも撮れるのでメイン観覧場所の神宮球場から撮ったが、結局その場所での観覧・撮影はそれきりになっている。
 以来神宮は、たいてい仕事帰りの時間帯で必ず有料の軟式球場から観ている。球場のような椅子席ではなく、グラウンドに入場時にもらったシートを敷くだけ、という地べたに座る仕様だから料金も安い。それでいて打ち上げ場所の第2球場は正面に見えるし例年の風向きもまずまず。花火に付随するコンサートやトークショーの類に興味が無く、花火だけを観られれば良い私にはうってつけなのだ。たとえ開始間際の遅くに着いても、写真屋の私は既に座り込んだ観客の一番後ろで充分だ。
 現着は15時30分頃と「早すぎた」と思ったが、それから2時間もしないうちにたいへんな混雑になったから適時だったかと。しかし……なんという人出。過去にこれほど満員御礼の軟式球場は見たことがない。花火大会激減の東京都に加えて、平日に行われる事が多いこの大会が土曜開催ということもあるのだろう。(写真・まだ緩やかだった15時30分くらいの軟式球場の様子。矢印が打ち上げ位置)。
 いったい当日売りを含めて何枚チケットを出しているんだ。5000人やそこらじゃないぞこれは。結局鉄パイプなどで仕切られた「シートを敷くことが出来る観覧場所」では収まりきらず、通路を含めてそこらじゅうに客は座り込んだ。
 私は指定観覧エリアの最後方、背後はすぐ通路という場所に三脚を立てたが、夕刻を待たずしてその通路に次々に客が座り始めた。最後まで立ったまま撮影しますよ、と声を掛けたが構わないらしい。そのうち四重五重に通路に座り込み、肝心の人が行き来できる通路はわずかな細道になってしまった。そこに飲食物を買い求めるための行列が長く伸び、トイレ待ちの行列が加わりと次第に凄いことになっていた。
 軟式球場内は10年前と大分違っていて、仮設トイレが大量に設置されたことと飲食の店がかなり増えていた。メニューも豊富で楽しそう。花火前はモノを食べない。酒は飲まない、ということにしている花火野郎も誘惑に駆られる。
 飲食・宣伝用ブースの中には花火のスポンサーブースもある。中にはK社のビール販売テントもあったが、生ビールを売っているかと思ったら全部缶だった。しかも350mlが400円、500缶が500円という、露天商が売るならともかくビールメーカーの直販なのに驚きの価格だ。きっとそのうち250円くらいは義捐金上乗せなのだろうな。場内放送では、「すると500mlを買う方がおトクじゃないですかー」などとまくしたてていたが、いやそういう問題じゃないだろうっ!おトクと言うなら近くのコンビニで買って持ち込んだ方が遙かに安い。不況で家で発泡酒を飲んでいるヤツがこんな高価なビールを買うのかよっ、と思ったが結構売れているんだこれが。
 神宮球場内で花火前に行われるコンサートが始まった。その様子は軟式球場でもオーロラビジョンを使って中継されるからリアルタイムで様子がわかる。また神宮球場内の高い位置にあるオーロラビジョンもこちらから観ることができた。いつもより早く来ているせいかじっくり聴くのは初めてのような気がする。前座のコンサートは気にしたことがなかったし、これまでの仕事帰りでは中継が終わっていたのだと思う。トップはIMALUで良く知らない。しかし次はなんと平原綾香なのだった。ファンなのですよ私は。それが2曲歌ってELTにバトンタッチ。しんがりは中村雅俊と、私的には充分豪華な顔ぶれなのに驚いた。震災復興と掲げるとそれなりの大物がそれなら、と出演するのだろうか。
 オーロラビジョン越しにカウントダウンが行われ、定刻の19時30分に花火がスタート。以降オーロラビジョンに提供スポンサーを映し出しながら打ち上げが続く。とはいえ大玉を使えないこの場所では、花火は花束花束の連続。小物のまとめ打ちでボリュームを出すといういつもの内容だ。使用玉の種類は多い方だろう。近さと物量感、指定席。これが神宮の醍醐味といえる。
 まとめて一所に開くから、何と闘っているかと聞かれればオーバーとの格闘に他ならない。トバないように絞ると周りが写らないというバランスが悪い状況だ。風はやや差し込み気味で過去の観覧に比べればやや悪い向きだ。風はそこそこあって流してくれるのだけれど一斉出しの連続だから発煙量もバカにならない。その発煙がまたまとめて開く花火の光量を巻き込んでオーバーを誘発するから始末に負えない。
 装備はデジタル一眼レフ一発と気軽だ。まとめ打ちのせいで対応していてもすっ飛ばしのカットが量産され参る。なんか華の無い打ち上げだと感じると、ほとんど曲導が無いのだ。どうも何か響く物が薄い。
 いったん打上は20時20分頃に終了した。これで終わったと思った客が先に席を立ったので、そこから混雑が始まってしまった。
 するとオーロラビジョンが点灯し、司会者が「これで終わりじゃないですよね?」とアンコールを振る。それでまた最後の打上が始まって30分丁度に終了した。前回観たときからずっと同じ煙火業者が担当しているはずだが、なにか以前の方が良かった気がする。アンコールでもっと終了感を出すかと思ったが、前回同様に「これで終わり?」と言うほどの呆気なさ。終了の止雷が上がってああ、やはり終わりかと。
 その時点で先行して客が流れ出していたので、「これは最寄り駅はたいへんなことになる」と恐怖した。それほど例年より客が多いのだ。今度は本当に花火が終了し、多くの客が席を立つ。私もバタバタ片づけをしているとオーロラビジョンでコンサート中継が始まった。
 なんと平原綾香が再登場しての名曲「ジュピター」の生歌だった。これも花火後の大抽選会同様に帰宅客の時間差分散化を狙う趣向だろう。
 しかし「ああっ最寄りの信濃町駅が大混雑になってしまうっ」と「ジュピター」を背に足早に会場を去るのだった。
 ……その程度のファンである。
 すでに駅までの道は塊になって移動する群衆が埋めていた。道幅を埋めるほどの群衆がそぞろ歩いている場合に、素早くすり抜けて行くには特殊なテクニックが必要だが企業秘密なので明かせない。なんとかするすると信濃町駅に素早くたどり着いた。少し出遅れたら入場規制になってしまうだろう。さすがに都会のど真ん中とあって、JRの駅だけでもいくつも利用できるし地下鉄もあるのでひとところに押し寄せることは少ないのだが、一番近い駅はやはり混雑が怖い。
 帰路、途中駅で乗ってきた女子高生たちが、別の花火大会帰りだろうスマートフォンで撮った花火の写真を繰り、次はどこにしようかと、日程情報を検索していた。そういう(情報端末の)時代なのだなぁとあらためて思う。

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