花火野郎の観覧日記2011
観覧日記その14 11/23
第106回 長野えびす講煙火大会
長野県・長野市
当初は前日入りしようかと思ったけど、新幹線の時刻を調べると自宅最寄り駅から始発に乗るほどがんばらなくても長野駅に午前8時頃に着いてしまうことがわかったので、当日発、日帰りの強行スケジュール。週中の休日ということで前後を仕事日に挟まれているのでこれが最善か。
それにしても長野より近くの土浦に行く方が始発に乗らなければならないことを考えると、新幹線はやはり速いんだなぁ。長野駅に到着すると早朝ということもあってやはり寒く、防寒対策をしてから会場に向かう。そして堤防道路に辿り着き辺りをざっとチェックすると、観覧場所候補に考えていた辺りは、全て「場所取り済み」になっていた。これでも今回は主催者によって、「22日以前の場所取りは撤去」が徹底していて、開催前日までは場所取りしては撤去、再度場所取りもまた撤去の攻防戦が何度と無く繰り広げられたらしい。しかし夜になって灯りが何もない頃にまで、懐中電灯を頼りに撤去などしないわけで、結局前夜に場所取りした者が勝利した格好。ゆえに場所によっては当日いくら早くに到着しても無駄であった。しかしそれは日赤あたりの中央部、有料プレミアムシートや商店会の有料シートが並ぶ辺りの堤防斜面に限ったことで、その外側エリアは三脚どころか一般客のシートすら無い状況だった。やむなく結構巨大な「22日以前の場所取りは撤去」という看板の後ろに借り置きしていたら、その近くが既着の愛好家仲間の場所取りエリアだったらしく一部を都合していただいた。
しかしこの日の最大の関心事は、ありえない南含みの西寄りの風向き予報だった。南風予報には以前泣かされているので、それが心と行動の枷になった一日だった。
2005年。第100回記念大会の時にやはり終日南風予報だった。当日は車で最初から対岸の堤防道路に乗り付け迷うことなく三脚を置きシートを敷いた。それが正午頃でその時点でははまさに犀川を横切る綺麗な南風。日赤に向けて順風だった。それが花火開催時間は例年良くある北東の風に変わって轟沈。風下ではないものの花火の前に煙が浮いてしまうtoo badなコンディション。絵柄としては良いしメイン側より若干間合いが稼げるので魅力はあるのだが、このえびす講で結局南風の順風というのは私が見始めた1992年以降一度も無かったことになる。
それでも予報は気になる。変えた方がいいのか?最初に決めた場所を変えない方がいいのか?は永遠の迷い事の様な気がする。この迷いに関しては、過去に苦い経験があるので「最初に決めた場所は変えない方がいい」というマイセオリーになっている。もちろん事前の天気予報で対岸の検討も済んでいた。しかし対岸を踏み切れなかったのはやはり駅からの距離だろう。電車組となって日帰りとなれば最終の新幹線に辿りつかなければならない。対岸からの距離は駅までざっと4キロメートルだから1時間足らずで歩ける範囲と言えばそうなのだが……。
結果を言えば今回の終了時間は昨年より押して20時12分と2時間以上もかけた大会になってしまったから、メイン側に居て指定の新幹線に乗るだけでやっとという具合で、対岸から歩けば間に合わなかったかもしれない。
風向きは開催時西〜西南西でほぼ予報通りだがこの風向きはほとんど経験がない。しかも風上に立つ位置は丹波島橋の上からの観覧ならともかく、綺麗に風上になる観覧場所が近場にはなく丹波島橋越しのかなり遠い間合いになる。日赤に相対する対岸も風上位置には一面の茂みがあって、上に上がる花火は見えるだろうけれど下の方は視界がない。というわけで私は当初の位置をセオリー通り変えなかったわけだ。愛好家諸氏は上流側つまり青木煙火側に多く陣取ったようで、少しでも西の風上寄りに回るということで賢明だったといえる。私もそれは考えたがただでさえ高度を稼ぐ青木煙火側にはフィルムのレンズ構成ではやはり近すぎて踏み切れなかった。午後遅くなって堤防道路上は若干の風下感もあり車や泊まりの一部の愛好家は対岸に移ったようだ。
午を過ぎたところで地元愛好家と担当煙火店様のはからいで、近年は立ち入りが制限されている打ち上げ当日の現場を今回も見学させていただいた。今年は地元テレビ局・SBC信越放送の生中継が入るらしく、現場に向かう途中には野外仮設スタジオがこじんまりと設けられていた。そこで実況のアナウンスと解説をやるらしい。
例年最先端の打ち上げ現場を視察・見学しようと各地から様々な煙火業者が来訪している。もちろん現場作業を手伝う業者も数多い。今回も特にミュージックスターマインの設置列、星や玉を放射状に飛ばす特殊な設置については、特に関心が高いらしくそうした仕掛けの周りには数十人の同業者がとりかこんで見学していた。私共愛好家風情が見るにも、その多彩さと複雑な設置には眼を見張るし、緻密な設営が必要なそれは過去には見られなかった先端技術の設置方法といえるだろう。これらによって星や開花がどのような花火空間を描くのか?は設計者にしかわからないのだろうが、それらがどう使われ、どのようなパフォーマンスを見せるのか?筒を眺めるだけで期待感に胸が躍る。両煙火店の設置本部に挨拶をして現場を端から端まで往復してから見学を終える。
現場から戻って15時くらいだろうか、しかし夕刻からの一般客の場所取り状況を見て、そのあまりの少なさに今年は観客が少ないのかと思った。打ち上げ空間のほぼセンターの堤防道路脇にプログラム販売所の仮設テントが例年設けられているが、そこより上流打ち上げ場所にむかって左側は写真屋もさることながら、一般客による堤防斜面の場所取りシートすらほとんど無いことに驚いた。それが16時くらいまでそのような状態で一般客に関しては単に出足が遅いだけのようだったが、これまで例年堤防道路の端をまんべんなく埋めていた三脚群はほほ姿を消して日赤前から上流側に集中したよようだ。これは花火の設置具合と今回の風向き予報が要因だと思う。
朝方はさすがに寒かったが、日中は妙に暖かい。午前中は綺麗に晴れて見通しも良く、最近冠雪したという後立山連邦が美しく白銀の峰峰が青空に映えていた。午後になると雲が拡がったものの雨の心配はなさそうだ。
さすがに開始が近づくにつれて一般客も増え始めた。背後の堤防道路上も例年のように観客で埋まっていった。暖かい晩だった。ダウンの前をきっちり合わせていると暑いくらいだったし、使い捨てカイロを使わない珍しく冷え込みを感じないえびす講観覧になった。
開会 個人協賛
特大スターマイン
開会 個人協賛
特大スターマイン
開会 個人協賛
特大スターマイン
開会 個人協賛
特大スターマイン
7号玉10発一斉打
信州煙火
大スターマイン
信州煙火
大スターマイン
青木煙火
大スターマイン
信州煙火
大スターマイン
青木煙火
大スターマイン
青木煙火
全国十号玉新作花火コンテスト
希望の光に虹の花
伊那火工保堀内煙火店
全国十号玉新作花火コンテスト
四季を感じて
菊屋小幡花火店
全国十号玉新作花火コンテスト
聖礼花
斎木煙火本店
全国十号玉新作花火コンテスト
昇り曲導付銀彩遊星犀川慕情
篠原煙火店
全国十号玉新作花火コンテスト
夕暮れの華
野村花火工業
全国十号玉新作花火コンテスト
ウインターイルミネーション
磯谷煙火店
全国十号玉新作花火コンテスト
元気玉
アルプス煙火工業
10号玉4発
青木煙火
10号玉4発
青木煙火
大スターマイン
青木煙火
大スターマイン
青木煙火
大スターマイン
信州煙火
10号10発一斉
青木煙火
7号10発一斉
青木煙火
44.大スターマイン
信州煙火
8号玉100連発
超ワイドスターマイン
打止・特大スターマイン
10号15発一斉
開幕に先駆けては、震災復興祈願の10号玉が担当の信州煙火、青木煙火の順で1発ずつ打ち上げられた。開会のプログラムは個人協賛388名の集大成による特大ワイドスターマイン。日赤前の300メートル幅を超えた本日2番目の最大幅を持つワイド。昨年の経験から出だしは低く行くと推察して、高さより幅をとらようと撮影は横位置スタートにしてみる。大玉を積んでくる中盤から縦位置に変更。両サイドはバッサリという段取り。この時点で風は右からのほぼ横流れで気になるほどではなかった。
楽しみだったのが5社増えて20社参加になった全国十号玉新作花火コンテスト。この中には今年行けなかった大会で打ち上げられ、写真や動画などで知り、これを実際に観てみたいという玉がいくつも入っていた。それらは期待通りの開花で感激した。どの玉も工夫が凝らされてこのプログラムだけでも来た甲斐があった。
カメラは2台で、24ミリと28ミリ装着で撮り分けるつもりだったが、青木煙火側のスターマインさえ24ミリ相当と、結局青木煙火側の単発(7〜10号)を撮る以外には28ミリ相当は出番がないというほどだった。その28ミリにしても十号コンテストでは撮っている最中にもこれで収まっているのか?と思うほど盆が大きく感じられ、例年は姫菊ほどのモノが来ないとフレームアウトしないのだが、案の定いくつかの出品作はみちみちの構図になっていた。
コンテストを含め8号10号は完全に真上で、レンズが垂直に立ってしまうくらいの天頂部で開くから、覗きながら追うのもかなり苦しい姿勢。しかも10号域の風は南から南南東と下とは違う向きで、開花が迫ってくるようでようするに高さも拡がりも画角に厳しいのだった。
ちょうど19時近くになり次は信州煙火のミュージックスターマイン、というところで妙に間が空いてしまった。スポンサー読み上げだけじゃなく 無駄に何もしていない間が空いた。今回テレビの生中継入っていたから19時スタートの放送の進行に合わせたのだろうか?実際の打ち上げ進行の流れやリズムが変に絶ち切られて興醒めと感じた。他はスムースに進行しているのにそうしたことが今回は何度かあって残念だった。十号コンテストの時には必要ない玉の感想まで織り込むアナウンス嬢であるなら気の利いた繋ぎのおしゃべりでも入れられそうだが。無言で合間を空けるくらいなら、いっそ首都圏のJRの駅放送よろしく「放映が始まり次第発射します」とオープンにアナウンスしたら面白いんじゃなイカ?
昨年と入れ替わってミュージックスターマインを先行するのは信州煙火。えびす講でスタートしたこのプログラムを繰り返すうちに研究を積んだのだろうか実に完成された打ち上げだった。信州煙火のミュージック列の方が前に出てお客に近いためよりいっそう迫り来る。この時点ではやや風が弱く、地上での扇打ちなどのあしらいが多い分煙が溜まり気味で空間の下半分は隠れてしまったのが残念だった。
信州煙火のそつなく高い技術で構成されたミュージックに対し、青木煙火のそれはプラス「アーティスティック」だろうか。間の取り方、次に入るまでのタメ、左右二分割展開での掛け合いとか手が込んだ設置だった。見た印象としては設計者のセンスに振った仕上がりと見受ける。だからウケるウケないがはっきりするかもしれない。多彩な扇打ちをあしらっているのは例年ちどおりだし、スピーディで複雑で動きも多彩。
相変わらず見ている時はノって撮っているのに、楽曲は何が使われたか覚えていない。曲よりも、この至近距離で見ていると射出音の方が強烈に聞こえて来る。扇打ちやトラ系がリズミカルにダッダッダッダッダ、ダララララララッと放たれるその音が直接耳に届いてそれがまた迫力だしひとつのメロディとさえ感じる。
ラストは昨年より若干玉数が減ったもののほぼ同規模の最大600メートルのワイド掃射と8号100連打。ミュージックスターマインの猛烈なスピード点火とは対照的に、ゆったりとした楽曲に乗ってスローテンポでワイドに打ち上がる8号は雄大に空を覆って見心地よい。しかしこの間合いで8号100連を観ていると、撮りながらこれで本当に最大広角なのか?と何度もファインダーを覗きながら思う。夜店群を切って花火の射出位置ぎりぎりに縦にして花火の根本だけにしても8号の開花が入りきらない。これでフイルムものは手持ちの最大広角で、デジタルならもう少し広角域がえられるのだろうけど、画像を歪めてまで無理矢理に入れるにも抵抗がある。むしろ間合いを取れるなら取って、自然な写りにしたいところだけどここでは引きが取れないんだよなぁ。打ち上げ空間が頭のてっぺんを超える超広角展開なんだものとにかくもう観てるだけにしなさいってことですね。
ミュージック・スターマイン
信州煙火
ミュージック・スターマイン
信州煙火
ミュージック・スターマイン
信州煙火
ミュージック・スターマイン
信州煙火
ミュージック・スターマイン
信州煙火
ミュージック・スターマイン
青木煙火
ミュージック・スターマイン
青木煙火
ミュージック・スターマイン
青木煙火
ミュージック・スターマイン
青木煙火
ミュージック・スターマイン
青木煙火
ミュージック・スターマイン
青木煙火
不況なり、震災なり、それなりに運営が苦しい経緯も在ったにちがいないけれど、凄い花火大会になったものだと考える。時代の流れで私が当初見始めた90年代始めあたりと比べてもその構成内容は様変わりしたが、当時のテイストを維持しながら現在のえびす講はまったく素晴らしい内容だ。
2回の異なったミュージックスターマインという名物が主軸になったことは大きくこれだけで客が呼べる。もちろん個々の単発、スターマイン、一斉打ちの全てが高品質で見応えがあり、しかも圧倒的な間近さで見られる舞台。思えば私が初めて見始めてから相当の間は、えびす講はいわば「花火通の必須観覧花火大会」だった。普通に見ても一般客ですらその良さは伝わるだろうけれど、相変わらず玉名を記載しない状況なので、見慣れた愛好家がよりその良さを噛みしめることができる聖地であったことは間違いない。しかしミュージックスターマインという実に誰にでもわかり易くかつ深く感動できる出し物を得て、クォリティはそのままに親しみ易い大会に進化成長したのだと思う。
テレビ中継は19時から1時間だけで、大会の全てを放映したわけではない。この1時間では開会の協賛スターマインはもちろん十号コンテストやラストのスーパーワイドも時間外になる。含まれるのはズバリ二つのミュージックスターマインで、地元マスコミ自ら大会の最大の見せ場であると示したようなものだ。
コンピュータ点火器とアクロバティックな星や玉の射出を可能にする特殊な筒や、設置器具類と相まっていずれのミュージックスターマインは現在の日本のワイド系では最先端といえる。二つの煙火店によるテイストの違うワイド打ちが堪能できて、しかもそれが毎年より進化しているのだから今後も眼が離せないし今後も毎年違った印象のものが繰り広げられるだろう。海外でもこうした打ち上げ、セッティングは優れた物があるし技術や見せ方に芸術性の高いものも多い。しかし使用玉も含めてレベルが高いワイド打ちを実施しているという点では世界的に見ても極めて先端に近く、最高度なプログラムと言えるのではないだろうか。
至近距離でこれほどのワイドと頭上高く聳える10号。えびす講でこれを目の当たりに体感してしまったら、大抵の客は驚くし満足感に溢れるに違いない。えびす講で何度もそして各地で同様の花火大会や打ち上げを何度も見ているはずの我々愛好家ですら、見るたびに圧倒され、ため息をつき、至福に顔を緩ませながら見られたことに感謝するのだから。
昨年は日赤付近の堤防から降りる通路が砂時計状態になってタイムロスしてしまい新幹線に息を切らせて駆け込んだ。今回は急がば回れと迂回して堤防道路を降りようとしたが結局そちらも渋滞していて時間がかかってしまった。一緒にスタートした愛好家仲間ともいったんははぐれてしまう混雑。そもそも花火終了時間が20時を大きくまわっており、この時点で指定を取っている新幹線発車まで1時間をきっていた。結局発車時刻の10分前に乗ることができたし駅前ではぐれた仲間と再会。駆け込むだけで精一杯だった去年との違いは、遅い夕食のための弁当を買うくらいの余裕はあったことか。自由席の愛好家仲間によるとかなり空いているということだった。
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