花火野郎の観覧日記2011
観覧日記その16 12/10
お台場レインボー花火2011
東京都・港区
第1回のレインボー花火は2007年末から2008年1月初頭にかけて計10回の打ち上げが行われた。お台場の新しい冬の風物詩という名目だったが、結局この一連の開催が最初で最後になっていた。
今回は公式のホームページにもあるように、12月2日から11日まで東京ビッグサイトで行われていた「東京モーターショー」にからめたタイアップ企画であることは間違いない。会場を従来の千葉の幕張メッセから東京ビッグサイトに移したわけだが、お台場からビッグサイトは指呼の距離。若者で賑わうお台場の近隣で開催することで相乗効果でお客を呼びたいのだろう。花火開催日は全4回と少なくなってしまったが、恒例イベントにならず一度きりになってしまっていたので、まさかの復活に情報を得た時から楽しみにしていた。
前開催時は10回中に7回と足繁くこのイベントに通った。交通の便の良さもあるが、なんといっても「フォトジェニック」。写真屋の“撮りたい気分”をいたく刺激してくれる内容とロケーションだったからだ。
現着は17時近く。さすがに何度も足を運び、しかも初回に打ち上げ位置を求めて徒労に終わったロケハンも経験しているせいで、台船が曳航される1時間も前に現着していれば十分だ。モーターショー見物の愛好家も居たに違いないが、残念ながら私は興味がない。というより買えない車を見ても虚しいだけといったところか。
レインボーブリッジに灯りが入り、夜景が綺麗に映え始める頃。海を見渡せるお台場のデッキ部分はあちこちでカメラを構える写真愛好家でいっぱいだ。既に電飾をまとったクリスマスツリーがきらきらと色彩を放っている。
着いて直ぐに海上が見渡せる場所に直行する。と、近くの日航ホテル東京のデッキでは婚礼の真っ最中だった。挙式場入りの新郎新婦をクレーンカメラでビデオ撮りしているのを興味深く見学した。この日だけで10組の婚礼があったらしい。
今回の最初の確認事は台船の位置が前と同じかどうか?だ。台船が来れば見えるだろう場所で17時頃から既着の愛好家氏と歓談しながら待っていると、はたして警備艇に先導されて曳航されてきた。驚いたのは台船の上にあちこちに灯りが点っていて置いてある筒や作業する花火師の姿が照らし出されて双眼鏡でよく見えた。しばらくして係留位置が決まったらしく静止したのが17時30分過ぎ。それはほぼ前回と同じ場所だった(詳細は2007年観覧記参照)。
さて、打ち上げ位置が決まったところでそれからこちらも行動開始だ。それがわからないことには撮影場所が決まらない。前回レインボーブリッジ入りの場所も抜きの場所もさんざんロケハンしたせいで候補地はいくらでもあるのだが、本日は縦位置で両方(花火とブリッジ)が撮れるポイントに決めていた。4回開催のうち初回は秩父夜祭りの日だったし、最終回は名古屋港の花火と重なったりで、見に来られるのは天気が良くて2回だけ。だから観覧場所新規開拓よりも構図がわかっている確実なポイント狙いとした。
問題はそこが使えるか?4年も経っているからたとえば海縁の樹木が延びたりしただけで海上への視界が無くなってしまうからだ。幸いにその場所はまだ使えるようで三脚を建てておく。そこから見ると台船は鳥の島の陰になってしまうので、何度か左右に行き来して射出位置の確認をする。若干前回と位置が違うようだが、ほぼ両橋脚の真ん中辺りから打ち上がるだろう。
縦位置で撮れるポイントで海も見える場所は限られている。海縁に降りればいくらでもあるのだが、レインボー花火では高い視点が欲しい。それというのもお台場前の入り江状態の海面にはこの時期多くの屋形船が参集し素晴らしく絵になるからだ。海面に散って停泊しているそれらは視点を高くすることでより多く画面に立体的に展開して華やかだ。海縁で撮るとそれぞれが重なり合って平面的になってしまう。もちろんこの打ち上げエリアを一望できるホテルのお部屋などから観れば最高だろうなぁ。
ところでこの屋形船。2007年にレインボー花火を観たときは当然ながら花火をやるからこの場所に集結しているのだと思っていた。しかしその後実際に屋形船で遊覧ツアーを体験する機会があって、そうではないとわかった。7回も通ううちに花火が始まる直前にさっさと引き上げてしまう船があったりして変だと思っていたのだ。ツアーによるが船着き場を出た屋形船は中で飲み食いをしながら川を下り、このお台場が折り返し地点。ここにしばし停泊してブリッジや台場の夜景を見物し記念写真を撮ったりしたら帰るという段取りなのだ。だから花火に関係なく戻るのだがさすがに今夜は留まって花火も観て帰る船が多かったと思う。忘年会などの多い時期だから次々に船が入ってきて密集状態。それだけ「絵」になるから大歓迎だ。
以前にも書いたけれど、映像的にレインボーブリッジと花火の組み合わせがこれほどバランスよく“絵になる”花火イベントは他にない。超絶なテクニックを駆使しなくても誰にでも容易にこの組み合わせでの良好な映像が得られるという点が素晴らしい。今年は早々に開催中止になってしまったが、中央区で行われる東京湾大華火祭では、同じことが相当に難しい。そもそも普通にレインボーブリッジと花火が同じ画面に入るその場所がほとんど無いし、あっても立ち入り禁止だとかよほど遙か彼方から観ることになるとか、橋がやたら大きいとか、花火が小さすぎるとかまぁ簡単にはいかない。それが拍子抜けするくらいあっさり決まった絵が得られるのだから驚いてしまう。
そもそもこの東京港を取り巻く周辺で、無断で自由に海縁に出られる公共の場所自体がほとんど無いというのは、東京湾大華火祭が始まった頃に既にあちこちロケハン済みだ。埠頭によっては根元から入れなかったり、倉庫会社の土地だったり、花火のある時は立ち入り禁止になったりとそういう場所ばかりだ。埠頭の海縁には柵や囲いがほとんど無い場合が多い。場所によっては積み卸しのために船を横付けするのだから当然だ。夜景を見に灯りの無い埠頭にふらふら入り込み、うっかり落水でもされたのではその土地の所有者管理者としてはたまらないからだろう。
とくにアナウンスなど聞こえないが、予定通り19時スタートした。花火の出の位置も予測通り。いきなり華々しく斜め打ちが下方を飾る。時間はちょうど10分程だが楽しめた。随所に担当煙火店らしい玉が使用されていたし、以前に比べると下部のトラや扇打ちなどの星打ちのあしらいが増量され、それだけじゃなく中ほどと上部もまんべんなく開花が散りばめられて全体バランスも良くなっていた。ラストは前回どおり錦に追い重ねるように銀冠打ちですっ飛ばし誘発の一幕。前回は10号くらい打ってくれないかと願ったが、やはりこのサイズでちょうどいい。7号以上を打てば「写真的にだが」それに合わせてブリッジも夜景も遠のいてしまうからだ。撮りは夜景混じりにはめっぽう強いデジタル一眼だ。全てフィルム撮りだった1回目の開催からこうした点でも月日が経ったことを感じる。
台場駅に向かおうとすると日航ホテル脇の展望デッキの一角で雑誌「天文ガイド」が主催する天体観望イベントが準備中だった。天体望遠鏡を10本あまりも並べて一般客に観測してもらおうという催し。そう今夜は希に見る「皆既月食」の晩だった。しかし皆既時間帯は23時過ぎ。欠け始めるのも21時過ぎ。ここでつき合っているわけにもいくまい。
帰路は珍しく山手線が人身事故でストップと混乱していた。朝にもめったに経験することないラッシュ状態にもまれたが花火の気分の良さで苦にならなかった。次回モーターショー開催は2013年ということだが、その時もまたレインボー花火をやってくれるのだろうか。それとも冬場の恒例イベントとして続けてくれるのだろうか。
でその「皆既月食」は、自宅のベランダに対空双眼鏡を出して観望したのだった。
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