花火野郎の観覧日記2011

観覧日記その11 10/1
東日本震災復興支援 第80回記念 土浦全国花火競技大会
  
茨城県・土浦市


三脚の壁(左端が私)

団体桟敷席が前方に延伸
あぜ道が舗装道路に改良された

団体桟敷席周辺の田圃のようす
17時ころ

観覧場所よりスターマイン方向
  
 久しぶりの電車による観覧。しかも始発で出かける。とはいっても田舎の駅の始発などすっかり空も明るくなってからの一番列車。土浦駅からは贅沢だけれどタクシーで学園大橋近くまで連れていってもらう。土浦に行き始めた当初は電車と徒歩だったし、現着も16時頃。思えばのんびりしたものだった。
 それが今では、いつもの堤防後方の田圃に達すると、既に前日入りした写真/ビデオ愛好家諸氏により万里の三脚の壁が形成されていた。そしてそれはかつて見たこともない密集状態。堤防道路から離脱してから多くをこの後方の田圃で観覧してきたけれど、だいたいいつも同等の場所だ。そして気が付けば三脚の密集地帯になっていた。いやいやこれはたまげたなぁ。そして辺りをロケハンするに、毎年そこに設けられる団体用の桟敷があるが、それが例年比で約1.5倍ほど拡張されて堤防側に延びていた。私共はよくこの桟敷席の前の田圃に三脚を立てていたのだが、舗装され新しくなった農道にくっつくように桟敷が延伸されていた。農道には露天商が軒を連ねている。つまり三脚を立てる余地が無くなってしまったのだ。それでここにいつも立てていた人の分が後方の農道に集中し、呆れるほどの密集状態になったわけだ。
 関東以遠から前日夜に現地入りした愛好家氏のご厚意で、私は観覧場所を確保できたのだけれど、知らずに当日に出かけたらもっと仰天したことだろう。土浦がそれなりの大会であることは確かだが、前日当日の宿泊を伴う関東以遠からの来訪ならともかく、私にとっては電車に乗っているだけの時間なら2時間もかからない近場の大会。なのに業務で撮影するならともかく場所取りだけのために前の日の朝から仕事を休むのか?まぁ勤め人が有給をどう使おうと勝手だけれど、前夜祭の花火もない大会に前日入りとは恐れ入るばかり。
 この日は車で来ていた時と違って撮影機材を車内にキープできず、一切を持ち歩いているので打上現場にも行くことはできないし、広範囲に歩き回ることもできない。幸いに知り合いも多いので荷物の番をお願いしたりして、暇なので近隣のロケハンを多くした。それは「ここしか無いのか?」という思い。それで他を探すことにした。すると前日から来なくても良さそうな場所が他にもあるし、例の密集地帯だけじゃなく知り合いの写真愛好家はあちこちに見かけられた。次回からはそうした場所を順繰りに使っていきたい。私が田圃で撮っていた頃は多くは参加しなかったのに、どうしてこうなった?(笑)
 撮影機材はカメラ3台。型物用と現地記録用のデジタル一眼。メインはフィルム1台に限定。フィルムは2台あるがメインがトラブった時の予備(実際は大会提供専用に使用)。三脚は迷って2本になったが、一方は軽いカーボン脚。デジを載せるにはそれで十分。そして上着に着替えにと持ち物は多い。 
 自分にとって最適な機材はどれくらいか?を知るには電車で出かけると良くわかる。その時自分が身一つで運べる量が最大最適の機材なのだ。観覧には撮影機材だけではないから、たとえば冬には防寒具が必要なようにカメラと三脚以外の持ち物も多い。それらをひっくるめて、移動でき、駅での乗り降り等を鑑みてどれだけの荷物を運べるか?それで明解になる。若くして体力が在れば多く、歳を重ねれば出来るだけ少なくかつ軽く、と年齢と体力に応じて持てる荷物が限定される。車だと便利でとりあえず、あれもこれもと積みがちだが、身ひとつで移動となれば吟味せざるをえない。
 私は全国行脚した当初はもっぱら電車だった。唯一車で行っていたのは片貝だけ。歳を経て最低最小限の機材になりつつある。なにカメラと三脚がひと組あればどこでても良い写真が撮れるのだから。欲張っても腕は二本。同時に撮っても片方は遅れることが明解になって、ただひとつの撮りに集中したいと思う。それは意外にも原点回帰。若いときに(今も)金がなくてただ一台のカメラしか持てなくてそれだけに集中せざるをえなかった、その時のままなのだ。
 ロケハンで辺りを巡りながらあちこち思い思いの場所で待機する愛好家氏と歓談して長い時間を過ごす。結局この田圃エリアを出ることはなかった。
 何年か前にも実況放送にお付き合いしたが、なぜかまたまたIBS茨城放送(AMラジオ)の女性クルーにつかまってしまった。他にも三脚の近くには大勢愛好家が居るのに何故?仲間が巻き添え(=共演)を避けてスススと離れていく。あ、あ、裏切り者ーっ(笑)。まぁ私だけでは何だからと、近くの愛好家にも出演を振っておいた。出演の景品いや、お礼にと携帯ラジオを貰った(♪)。説明書を観るとAM/FMラジオなのにFMは日本国内では使用出来ません、て中華製中華国内仕様か。いやいやただで貰うものに贅沢言っちゃいけません。茨城放送が受信できるからそれでいいのですね。
 16時を過ぎて秋空が拡がる頃、ようやく辺りの田圃も一般客で満ち始めたが、例年より心なしか少ないような気がする。打ち上げ中もいつもなら立っている膝の後ろに息がかかるくらいの至近まで後ろに座り込まれるのだが、この日は私の居る農道は花火が終わるまでスカスカ通行できるほどだった。
 この夕刻は団体桟敷客が行き来する頃なのだが、笑ってしまったのは、その中の一行があまりの数の三脚の壁とカメラの砲列に驚いて「こんなモノは滅多に見られない」と壁の前で記念写真(自分たちを入れて)を撮っていたこと。

 さて今回「日本の花火」の読者の方で、土浦上空を通過する航空機内から撮った空撮写真を掲示板に投稿してくれた方がいました。もっと大きい写真を届けていただけないかという当方のリクエストに応えていただきフルサイズの画像データを入手できました。イシイさんありがとうございました(注:別のイシイさんです-愛好家向け-)。空撮はグーグルで比較的新しいものを見ることができるけれど、桟敷が完成して大会開催が近い日(開催2日前)の現地の空撮は初めて見るので貴重だと思いました。私がこの空撮に手を加えて、打ち上げ場所などの諸情報を加えた空撮マップに加工してみました。衛星からの空撮ではないので距離感は正確にはいきませんが、おおよその配置はわかると思いますので観覧場所との相対関係を知る参考にしていただければ幸いです。花火の配置は、毎年ほぼ同様な競技種目とレギュラープログラムに限定しました(2010年度現地取材時の配置を記載。周年記念特別プログラムなどは除く)。スターマイン部門はいち業者あたりの設置場所は横に細長い区画になっています。それが地図のように2列に配置されています。プログラムでは左右交互に打つような順番になります。土浦花火づくしは左端と右端が図の通りで計4箇所になってますが、実際は間にさらに細かく設置されています。ご覧のように大会提供の設置は一直線ではなく、場所の関係から緩やかに弧を描いています。大会提供を写真やビデオで観るとわかるように中央に向けて開花の高度が下がっているのは中央ほど少し遠いからなのですね。
 それにしても桟敷と総延長の変わらないAEONモールは建屋だけで500メートル近くはあるということかと驚きですね。右の空撮写真をクリックすると説明付きの大きなマップが別ウィンドウで現れます(サイズが大きいので注意)。
     

筑波山麓カエル合唱団
北日本花火興業

感謝のしるし
筑北火工堀米煙火店


アルプス煙火工業


アルプス煙火工業

希望の花
高田花火工業

明日に願いを込めて
太洋花火

明日に願いを込めて
太洋花火

THE ENTERTAINER
新潟煙火工業

I miss you……
山崎煙火製造所

I miss you……
山崎煙火製造所

Smile for Japan
芳賀火工

虹の架かる青空に
希望の白いガーベラ
伊那火工堀内煙火店

明日に咲く奇跡の花
山内煙火店

つながれニッポン!!
虹色の架け橋
和火屋

つながれニッポン!!
虹色の架け橋
和火屋

未来への息吹
糸井火工

未来への息吹
糸井火工

希望という名の光
斎木煙火本店

希望という名の光
斎木煙火本店

夜空のウェディング
野村花火工業

夜空のウェディング
野村花火工業

日本に絶えざる光を
紅屋青木煙火店

望郷
マルゴー

望郷
マルゴー
     
 日が落ちるとたちまち暗くなるので準備を急ぐ。間合いによるが土浦では標準ズームがあれば、割物、スターマイン、創造花火の全部門を1台のカメラでまかなえるから撮りに集中できる。今回は画角の違う大会提供用にサブを使った。あらかじめ大会提供用にレンズを装着し、新しいフイルムが1枚目からスタート出来るように、大会提供開始前にサブのデジタルカメラと載せ替えるという算段。メインのレンズだけを換えないのは、大会提供のあとすぐに10号競技が始まり、レンズ交換、フイルム交換をやる暇がないからだ。後は暇なときにまたデシタルに載せ換えればいいのだ。撮影の上で念頭においていたのは「無駄打ちしない」。フィルム節約もあるけれど、余さず全てを撮ることにもう執着しない。撮ったところでどうしようもないとわかる出品は最初から撮らない、と決めた。結果として例年より100カット以上も減らすことができた。
 スタートは東日本震災追悼のための8号5発が標準審査玉の前に打ち上げられた。標準審査玉で画角などを再点検しさていよいよだ。日中は北東の風が肌寒く感じられ、朝から曇り空でほんの僅かだけと雨もぱらついた。開始頃には南から川に沿うような向き。中盤からはまた北東に変わっていった。東要素が入ると土浦では良い風向きになる。
  
スターマイン
 現在の土浦は最先端業者による、最新最高レベルスターマインの頂上対決といえるので、最も観覧に気合いが入る部門だ。土浦のために特別に玉を用意し、演出する業者が殆どだ。目新しい玉を使わないが、組み合わせと演出で凄さを見せる業者もある。どちらもトップレベルの決戦はもの凄く高いレベルで凌ぎを削っていて素晴らしい。音楽とのマッチングも絶妙で寄せては返す打ち上げが感動の波動に呼応して、心が奪われる。これほどのガチンコ勝負が観られるのはなんと嬉しいことか。
 今年のスターマインを一言で言えば「明るすぎるっ」(泣き言)。今年は何故こんな明るすぎる星を使う業者が多いのだ。カメラ一台に専念のおかげで土浦ならではのめまぐるしくスピードのある展開には追随していたのだが、その照度に人の眼もカメラの絞りも付いて行けません、と言う感じだった。各社で出し物の協議をしているはずもないのになぜかこうして似ている部分が出てくるのが面白い。
 最高輝度と最低輝度の混在または繰り返しの多いこと。混在とは和火の中に照明弾を打ち込むような光景と言えばおわかりだろうか。和火で瞳孔が開きっぱなしのところへ最高輝度の星を打たれると眩しくて目がつぶれるかと思うし、最高輝度の星をしばらく見せられた後に、和火系の星ではしばらく何も見えない。同居させれば、暗い方の星は見えずらい。
 写真屋泣かせというより、一般客が肉眼で観るにも効果的?なんだろうか。ワンクッション眼を慣らす明るさを挟むか次第に暗く(明るく)とか工夫はどうだろうか。明るい都外から暗がりに入ると物が見えにくい、逆に暗がりから外に出れば、瞬時には眩しくて物が見えないように、切り替わって直後はせっかく打っている開花がが見えにくいのにこうした演出は残念過ぎる。眩しすぎれば目を瞑ってしまうし、それじゃ逆効果の気がする。
 和火を使うなら全て和火ならいいのだ。今年の出品作は最高輝度を活かすとかじゃなく、相殺していたといえるかもしれない。確かにどちらかの方にインパクトはあるけれどどちらかがよく見えないから意味が見いだせない気がする。
 こうした出品に写真屋の私は絞りの操作に右往左往。自分が今どの絞り値で撮っているのか判らなくなるほど細かく開けたり閉めたりの繰り返し。それをしたところで最大輝度の星が明るすぎて、どうせトンでしまうのだろうけど。これだけめまぐるしい絞り操作だともデジタル一眼では難しいなぁ……。
 しかし意図的とも思えるプログラム立ては毎度のことながら驚いた。最後のスターマイン3連発が 青木煙火、マルゴー、小幡花火……豪華すぎて絶息するじゃないか。最終は小幡花火のスターマインだったけれど、青木煙火、マルゴーまで本気モードできたけれど、これはさらり流したのかなと。申し訳ないが呆気なかった。というか凄いのが来るというこちらの鼻息をかわされたという感じ。
     

東日本震災慰霊花火

昇曲導付三重芯変化菊
山内煙火

昇曲導付五重芯菊花の極
篠原煙火

昇曲導付四重芯引先紅光輝
斎木煙火本店

昇り曲導付八重芯変化菊
一福煙火店

昇曲導付四重芯変化菊
アルプス煙火工業

昇り曲付姫菊
小口煙火

昇曲付四重芯変化菊
菊屋小幡花火店

昇曲付四重芯銀点滅
山崎煙火製造所

昇り曲付四重芯変化菊
紅屋青木煙火店

昇り曲導付四重芯変化菊
野村花火工業

昇り曲導付三重芯変化菊
高城煙火店

昇曲導分砲付
四重芯菊先銀橙点滅
伊那火工堀内煙火店

昇り曲導付四重芯錦紅光露
筑北火工堀米煙火店

創造花火 紫陽花
〜虹色の光に包まれて〜
マルゴー

創造花火 紫陽花
〜虹色の光に包まれて〜
マルゴー
     
10号割物
 風向きの関係で私の位置からは、少し右に流され気味で終始した。決まるモノは決まるけど、出品の多い四重芯クラスでは「あぁーっ」と惜しむ声がたくさん聞かれた。芯も盆も乱れる玉が多かったと思う。各社ともお得意の、というかその煙火店にとってのオーソドックスな配色が多かった。
 
創造花火
 土浦を20年来見ている私だが、今回を終わりまで観て、とうとう「もう創造花火部門は役割を終えたのじゃないか?」と感じた。何をやっているか理解不能な出品が多すぎる。形を成さない型物など観たくもない。観る者に「何に見えるか?」考えさせないで欲しい。今回型物系専用にデジタル一眼を振り分けたが、出番が少なく無駄な手配だった。そうした創造花火の中で傑出した出来だったのは、唯一「紫陽花」(株式会社マルゴー)。これに尽きる。素晴らしすぎて7回絶叫。つまり一発事に感嘆していた。とくに細工の細かい千輪仕様には私を含め周りの愛好家からも驚きと感嘆の黄色い悲鳴が満ちた。ああ、これをもっと大きく、7号で10号で観たい。こうした玉が評価されないのはいただけない。
 私ら愛好家が出来ることはつまりこうした(観覧記)ことだ。たいした影響力もないが、こうした場できちんと評価したい。 
 
大会提供
 いつもながらのたっぷりのワイド感。途中から8号が入り圧倒的だった。従来通りと思ってレンズを選んでいたが、はみ出すくらいの展開に驚いた。同じ調子で打っているだけ、という批判的意見もあるけれどこのままでよいと思う。出品作のスターマインがこれでもかと秒を争う速く濃密な内容だから、こうしたゆったりとした打ち上げは雄大感があるし、一息入れる感じで心地よい。コンピュータを駆使しためまぐるしい展開のワイドの対極として、土浦花火づくしはこのテイストを売りにし続けて欲しい。土浦花火づくしで好ましいと思うのは、総延長約500メートルの有料桟敷席とワイド打ちの設置幅がほぼイコールになっている点だ。桟敷の客はどこに座ってもたっぷりしたワイド打ちを堪能できる。
 審査が話題になったが、私自身はもう気にしない境地だ。しかし今や写真だけでなく、動画でアッという間に土浦の出品作が何本も何本も公開されて全国中継だ。誰が観ても良い物は良い、そうでないものはそれなりにというのが判ってしまう。審査が妥当かどうかも、多くの大衆の目が明らかにする。審査員の面子もその採点と結果も、全国から注視されているわけだから審査する側は大変なことだと思う。審査結果のページを作成していて気が付いたのだけれど、93番まである競技プログラムのうちで、各部門での優勝〜1等の上位3賞にはなんとプログラム1番から56番までの間で1社も入賞していないことだった。つまり上位入賞の全社が後半の37のプログラムに集中。主催者は「たまたま」というだろうが、そもそものプログラム立てに問題があるのでは?と思う。過去の実績による上位候補と地元出品店を後半に集め、審査員には大会提供が済んだら本気で見てくれといっているのではないかとさえ思うような結果ですな。それとも前の方の作品はよく覚えていませんとでも仰るか。これではプログラム前半に振り分けられただけで打つ前から勝負はついているようなもの?。もちろん主催者側でプログラム順には一定のルールなり決まり事があるのだろうけど毎年後半から多く入賞している事を考えれば笑止。いっそ打ち上げ順は公正な抽選にしてはどうかな?上位煙火店を後半に配置する決まり、前の方は良く覚えていない審査員。では、繰り返し同じ業者が入賞してしまうと思うのだが?
 全競技終了時点で例年より5分ほど押して20時35分ほどになっていた。それから記念プログラムの7号80発打ち。それは対打ちにセンターが入るといった具合の三カ所からで、ほぼ例年の大会提供8号の位置だと思う。
 これをやっている時点で撮りながらすでに使用済みのカメラや機材を片づけはじめ、打ち終わって速攻で荷物をまとめる。予定の帰り便まで1時間を切ったところ。しかしすでに農道には帰り客が溢れ始め、観覧場所から、高架下の大通りに出るまでに詰まって手間取ってしまったが、あとは順調に駅に向かう。
 健脚を誇っていた私だが、さすがにカートを引いて私よりずっと若い仲間と一緒では息が上がる。しかも久しぶりに歩いてみると遠いし足が痛い。駅にたどり着くと改札規制どころか階段規制になっていて過去を知る仲間も、いつもより規制ラインがずっと手前ですねーと言う。間に合うのか?
 ようやくホームに達したのは、予定の21時56分発のスーパーひたち君の10分前。しかしこれが遅れて到着したからなんとか間に合った格好。1本前の特急は積み残しを出したらしい。後は全く順調で日付が変わる前に自宅に帰り着いた。始発で出てから18時間。長い一日だった。
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