花火野郎の観覧日記2011
観覧日記その19 12/31
ツインリンクもてぎ 花火の祭典〜冬〜
栃木県・芳賀郡茂木町
昼は宇都宮餃子 |
グッズでハレ切り対策 |
ハレ切り対策の方向がズレると |
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好きな配色の四重芯 |
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締めくくりは銀一斉 |
愛好家仲間にピックアップしてもらう予定は13時。1時間くらい早めに宇都宮駅に着いて、昼飯として餃子を食す。餃子好きなので倍ましの焼き餃子にご飯だけというシンプルなラインナップ。
現着は14時過ぎ。遠くまで見通せる本日は冬らしく大気が澄み渡った好天に恵まれている。風向き予報から迷わず、北西側の第2ターンを目差す。既に要所に三脚がいくつも立っていていずれも絶妙な配置だ。なんとか遅ればせの時間ながら撮影場所を確保できた。それから花火の設置場所を確認する。作業が前後しているが、それも観覧を積んだ茂木ならでは。というか、大晦日開催は初めてなので、いったい何を目玉にどういう打上をするかまったくわからないのだ。3部構成のプログラム内容は公式ホームページなどに事前に公開されていたが、それもテーマだけで実際の花火内容が記載されているわけではないのでぶっつけ本番になりそうだ。たとえば新春公演でやっていた干支玉とか100カ所一斉とかそういう目玉プログラムがどうやら無さそうで、どういう展開でやるのか全くわからない。
北側のハス位置に陣取ったのは、それでだいたい例年の打上幅が縦位置で網羅できる場所だからだ。仲間が双眼鏡で配置を確認、私も第3ターン側に徒歩でロケハンし、遠い位置になる南側になる右端の設置具合を確認しに行った。7号以上の筒や、ワイド設置も多く見られこれからの打上に期待が膨らんだ。例年だと三脚が並ぶA指定の最上段の部分が指定区域として拡張され、チケットが無ければ入れないようになっていた。従って第3ターン側の三脚はかなり少ないようだった。
大晦日の花火興業など、震災復興からみの今年だけの一度きりだと思っていたが、直前にツインリンクから発表された翌2012年の花火興業の予定と詳細を読んで驚いた。「花火の祭典〜四季〜」。春から冬まで年4回の花火の祭典を行うというものだった。花火の祭典が15周年を迎えるにあたっての新機軸らしい。新春を無くし5月の春公演を新設。夏はそのままにこれまでバルーンイリュージョンとしてやっていたイベントの開催日を秋公演とした。そして今年限りと思っていた大晦日の冬公演を再び4回目としてやるというのだ。
テーマパークでよくあるように、この4回の花火の祭典を見るためだけに、金額的に得になる年間パスを売り出すという戦略も用意されている。しかし花火愛好家にとっては残念な日取りになってしまっている。一般客は近在でもなければ年に同じ場所に何回も花火を見に行くのだろうか?そんなことをするのは花火好きだけだが、11月23日に秋公演を設定したのでは、花火好きゆえにたいていの者は長野に行くと思う。一回でも不参したのでは年間パスが無駄になるから最初から買わない。そもそも天候などにリスクのあるツインリンクだから、4回分を前納で貢ぐ形の年間パスはギャンブルに近い投資だ。私も車を持っていたとしても躊躇するだろう。今回大晦日公演を見た後の感想を先に言えば、冬公演も12月23日くらいにやってくれまいかと思う。運営側の都合なのだろうが秋と冬の日程を変えるだけで年間パスの売り上げはかなり違っただろうに惜しいことをしたなぁ。
クリスマスと新春の公演を止めてまで大晦日という忙しい年越しの一日に変更したわけだが、どれほどお客が来るのか興味津々だった。指定A席は私が到着した頃には売り切れだったらしいがスタンドはがらがらだった。総量がどれほど少ない指定席なのだろうか。自由席スタンドもほとんど観客が座っていない。冷たい椅子に腰掛けるくらいなら、暖のとれるブースエリアで何か食べながらの立ち見の客が多かったのではないかと思う。写真や動画を得る愛好家氏も、クリスマス〜新春の頃に比べれば少な目かと感じた。
いよいよ開幕。場内の灯りが一斉に消え……………ない………? えっ????………
なんと近くにある見上げる程背の高い照明灯が打上方向は消えたのに、背後の2つが点灯したまま残った。過去何度も同じ場所で撮影しているがそんな記憶がない。しかし後方を照らしている一方はこちらを向いていたのだ。まぶしくて花火に集中できないだけでなく、広角を使わなければ入らない打上空間なのに、灯りが差し込む方向とレンズを向けている方向が近接していてその広角の端から照明灯の明かりが射し込み、ファインダー内が白く見えるくらい実害となって影響していた。壮大なハレーションやゴーストは免れない。
開幕第一部のテーマは「力」。和太鼓の実際の演奏に合わせて打ち上げ、となっているので過去の経験から、和太鼓に合わせるとその花火は「和火」や「花雷」になりやすい。と予測していたら案の定。フラッシュは無いものの和火はどビンゴ。太鼓の読経のようなリズムにこれまた単一カラーの和火打ちがあいまってリズムも色彩も高揚感はない。和火和火和火。今年は震災復興だの絆の花火だので、どれほど各地で和火が打ち上げられただろう。ここでもか。和太鼓に合わせてのゆったりした打上は静かで、厳かな雰囲気ではあるが同時に単調で退屈。力強さの欠片もない。和火の片引き柳を数分間も打つ。鬱である。もう出だしから陰鬱になる。和火に転じるにしてもチカラを見せるならオープニングくらいドバッ、ダバッ、ドドドッと行って、気分を盛り上げて欲しい。わさわざ暮れの晦日の忙しい日に有料観覧しに来てこんな気が滅入る打上では………。チカラとは我慢して堪え忍ぶ力だろうか?
消えなかった照明に周りの愛好家氏もざわめきたつ。いやいやこれは思いもよらない弊害だ。打上は進むが幸いに出だしからハシハシ撮るような展開でなく、手持ちぶさたにどうしたものかという状態だったので、ゆっくりハレ切り対策をすることにした。今日は最低限の軽装備でなく、通常仕様のカメラバックを持ってきているのでこうした場合のために常備している対策アイテムがあって助かった。カメラ2台分にハレ切り対策をして続行だが、ファインダー視野率が100パーセントではないので、実画面上ではハレ切りのためのボードが写り込んでいるかもしれない懸念はあった。しかし何もしなければ猛烈に光が射し込んでくるのは経験上間違いなかった。長時間露光の花火撮りでずっと片手の手のひらで遮っているわけにはいかない。レンズフードが在れば遮れたかもしれないがあいにく持ち合わせていない。
機材リストでも紹介しているが、ひとつはハレ切り用の黒いボードが最初から装着されているもの。もうひとつは両サイドがクリップになっているグッズで、片方をカメラか三脚のどこかに、片方に何かを挟めるようになっている。今回はカメラバッグ内に常備している段ボール紙を使用している(写真参照)。誰もが明るい内にベストと思って立っている観覧場所を打上が始まってからそうそう簡単に変えるわけにはいかないが、この消えない照明には閉口した。付近では撮影場所自体をバタバタと急いで移す愛好家も居た。従来なら本当に完全に真っ暗にしたのにどうしたわけか。今後このエリアでの撮りでは照明灯の位置も考慮しなくては。
第1部は終盤に各所から一斉に放って空を花火が埋めたが、色彩感の無いひと幕だった。第2部「絆」に入ってもほとんど全編でスローテンポの楽曲に合わせて、ポツーーーーン、ポツーーーーンと打つのはどうなんだろう。よくある納涼大会の時間稼ぎと使用玉の節約と同じだ。さすがにいくらそれぞれの玉が良く出来ていても打上のテンポの緩慢さが退屈。名古屋港に引き続き、コンパクトデジカメの動画機能で記録を録った。帰宅してすぐに液晶テレビで再生して眺めていたら危うく眠りに落ちるところだった。それほど単調。しかし仮設スタンドの囲いの鉄パイプにクランプで固定して録画したわけだが、10号クラスだと、開花してすぐに画面が揺れてボケているのがわかった。仮設スタンド全体が瀑圧でビビっているのだ。
風向きは、開始前に北方向つまりツインリンクホテルから吹く風。そして次第に予報通り東北東とツインリンクでは最悪の東含みの風になった。2日前〜前日の予報通りだ。東北東だとメインのグランドスタンドに真っ直ぐに煙が向かってしまう。はたして私らの居る北西スタンドでかろうじて横流れの風だが中盤からは火薬の燃える匂いが立ちこめ、グランドスタンドやそこから南方向は猛烈な煙に覆われていた。幸いに前述のようなスローテンポの打上だから一斉打ち以外は見えていたかもしれない。
日本の力とか、絆だというのだからどう考えても震災復興からみのテーマだて。だから被災者に慮って自主規制でアップテンポでビートの利いた楽しい曲や、カラフルな発色の玉を抑えたのだろうか。しかしこれでは少なくとも私は復興や不景気に向けた元気など出やしない。私は色とりどりというのが好きなのだ。この会場にそもそも多大な被害を受けて避難所暮らしのような客がいるのだろうか?いったい誰のためのスローガンなのか判らないが、テーマの花火のチカラも日本のチカラも感じられない。「そこに居る客を楽しませる」のが花火大会なのに、日本だの復興だのを意識するあまり鎮魂、慰霊、まるでお通夜のような虚脱してしまう打上構成だ。花火がエンターテイメントなのだというのと方向が違っているなあ。そういう鎮魂のイベントならいざしらず、金を取って見せている興業じゃないか。それでいてホットになれない内容は残念だ。
第3部は「願い」。ここへ来て大玉が左右がズシンズシンと打ち上ってようやく力強さを感じる。見どころは四重芯の対打ちだろうか。しかし終盤の錦冠ワイドは長すぎた。終幕に錦冠仕立てにするのは小幡花火店としては恒例のというか何度も手を変えてやってきたけれど所用時間としては過去最長じゃないだろうか。同じ調子のそれを延々とやって最後は大玉を積み、一瞬の場面切換で銀冠一斉と転じたがそこまでの錦冠が冗長すぎて感動が薄れた感じだ。途中で「いつまで続くのコレ」と考えてしまうあたりで、もう感動がこぼれ落ちているのだと思う。大晦日にこれだけの物量と内容のものを観られれば贅沢じゃないかと思うがそりゃ「有料」なんだもの当然だ。最後にひと言いえば、冬の公演らしい目玉プログラムが何もない。カウントダウンでもなければ大晦日の特色ってなんだろう?一週間前ならクリスマス色が出せてカップル客なんかも多いと思うのだが。100箇所一斉や干支玉はどこに行ったのだ。地雷スターマインも二尺もない。四季公演するのならそれぞれにどうしても観たいような出し物を設けて欲しいと思う。有料イベントなのだから。5部構成だった今年度新春公演と比較しても内容を落としての3部構成。2回分を1回開催にしたのにその一回分の物量もあるかどうか。料金は変わらないのだからあきらかな劣化。花火の祭典とうたえば、黙っても客が来るようになっていささか手抜きなのではないだろうか。
1998年に始まった「花火の祭典」は新年度で15周年を迎える。私は1999年度の2回目からその殆どを観てきた。そして個人的には大晦日のこれは十分な内容と物量と思えたが、定期公演の有料のショーとしては過去に観た中で最も良くなかった。物量の多少に関わらず毎回必ず、してやられた、とか参りましたとか、そういう楽しみや感動のひと幕があるのに今回はゼロ。筒の多い設置を見て期待したのだけれど新年を迎える大晦日にいいモノを観たなぁ、とそういう幸せ感が薄かった。来年もガンバルぞと、そういう滾る気持ちになれなかった。
夏と違って長居をしようという客も少ないらしくさっさと車を出す客で混雑していた。帰路はやはり愛好家氏に小山駅まで送り届けてもらって助かった。そこから自宅までは30分ほど。
この大会で2011年度の観覧を締めくくりました。
観覧日記に未掲載の分を含めて24箇所の花火大会、花火イベントを無事観覧できたことは、この天災に苛まれた激動の年によくぞ贅沢な時間を過ごさせて戴いたと感謝するばかりです。思えば、普通に花火観覧ができることの歓びと贅沢さを噛みしめる一年でした。
新年度もまた無事故の消費とともに素晴らしい花火に出会えることを期待しつつ、新たな観覧に胸を躍らせる年末年始です。観覧日記2011をお読みいただきありがとうございました。
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