花火野郎の観覧日記2012

観覧日記その1 2/11
きらり冬花火−未来を担う子供たち

  
茨城県・東茨城郡茨城町


行灯展示

行灯展示

行灯展示とキャンドル群

1_10号・昇曲導付四重芯引先紅光露

6_10号・昇曲導付四重芯引先紅光露

7_10号・紅芯銀冠

11_10号・昇曲導付四重芯引先紅光露

18_10号・昇曲導付錦八方菊

19_10号・?

21_10号・白点滅芯彩色八方咲

23_5号・錦分砲

24_10号・昇曲導付三重芯引先青光露

25_10号・錦千輪

30_10号・緑芯白菊先青紅

31_5号・グラデーション光の花束

38_メロディ付特大スターマイン

38_メロディ付特大スターマイン

38_メロディ付特大スターマイン

38_メロディ付特大スターマイン

38_メロディ付特大スターマイン
玉名は推定
     
 このイベントは茨城町商工会青年部主催による東日本大震災復興事業として今回新規に開催された。商工会青年部が商工会会員から協賛金を集め、避難所に指定されている町内小中学校に対し災害対策用品を寄贈するという主旨である。そして被災地であり、不景気であると落ち込む町民に元気を与えてくれる子供たちに、素敵な思い出を作ってあげたい、この町をもっと好きになってほしいという願いから、子供たちの未来が輝く希望であるようにと花火を打ち上げるのだという。
 花火は2011年土浦全国花火競技会にて総理大臣賞を受賞した同県水戸市の野村花火工業株式会社が担当した。
 車が無いので、雪のある場所の花火イベントには出かけられないし、1月に激しく腰を痛めたばかりの身としては遠出を控えて大人しくしてようと思っていた。そういえば改修された偕楽園の梅まつり花火は今年どうなったか?と情報を検索していたところに、このイベントがひっかかった(ちなみに夜・梅・祭の花火打ち上げは3月3日の宵)。残念ながら第1回目とあってはどういう内容かわからないし、花火は信頼できるとしても観覧場所のキャパやそもそも主催者の意向(宣伝して欲しいかどうか)が不明なので、ウチとしては情報は出しかねた。私一人が実地検証しに行って、良い思いをしようが地雷を踏もうが私一人の自己責任で済むと電車とバスを駆使して出かけることにした。
 事前にグーグルマップで会場付近をチェックするが縮尺を上げていってもあたりに電車路線がない場所だった。インターが近くて車なら便利なのだがなぁ。最寄りの水戸駅から路線バスで向かうものの途中対面通行の工事渋滞が2箇所ほどあり、現地バス停「奥谷(おくのや)」まで50分近くもかかってしまった。帰りのバス時刻を確認してから直近の会場へ。
 このバス路線は偕楽園前のバス停を通過する。昨年の震災で一時閉園に追い込まれるほど被害を受けた様だが、通過しながら見るに被害箇所の崖地には新に登り下りのルートが設けられてパワーアップして改修されていた。次週2月18日から例年通りに梅まつりが開かれるようだが、寒冬と言われている今期はこの時点ではまだチリッとも梅は咲いていなかった。このような最大の観光スポットであるなら震災の爪痕も迅速な修復が可能であろうが、まだまだ修繕中あるいは手つかずの家屋や施設も多いのかも知れない。
 町役場の脇を抜けた打上場所になる一面の田圃を見渡せる地点で真っ先に目に入ったのは10号打ち上げ筒の束(写真上)。束ですょ。眩しいなぁ。「あは、来て良かった」と思った瞬間だ。10号が放てる場所はどこにでもあるわけではない。事前情報が薄く、ましてや煙火業者に電トツするほど強気じゃないので4号前後だけじゃなく、10号も入るとは知っていたが玉数まではわからなかった。時期が時期だし締めの一発にでも野村花火の10号が観られれば満足、と思っていただけに嬉しい誤算だ。その10号筒の手前に何箇所かに分けて4号前後の筒が置かれていた。最低一度はワイド打ちのようだ。
 メインのイベント会場となる、茨城町総合福祉センターゆうゆう館の駐車場に移動すると、既着の愛好家が打ち上げ場所に向かう最前列に三脚を並べていた。情報が少なかったしその出だしも今週に入ってからだったからそれほど愛好家は来場していないだろうと思っていたが、いやいや皆さん情報に賢い。着くや否や知り合いの愛好家に声を掛けられると、あとは知った面々が次々に現れて驚いた。多くは車持ちなのでてっきり雪国の花火に参じているかと思っていた。
 しかし風向きは北寄りの予報と違って南東。このイベント会場に向かって吹いていてモロに風下だった。風力もあり、冷たい風で体感温度も下がる。愛好家氏との立ち話も震える寒さだった。いちおう水戸駅で完全防寒仕様に整えてあったので、顔が冷たいくらいだが長時間はつらい。
 まだ会場の飲食物を提供するテント内も準備中。付近の会場に続く役場内の道路両サイドにはおそろいの行灯が連なっていて壮観だった。どれにも町の子供達による復興を願う手書きの文字やイラストがとりどりに描かれていた。これらに灯が入った夜は素敵なプロムナードになりそう。
 私共愛好家がかたまって歓談しているところに、大会本部に顔を出したのであろう野村花火社長が立ち寄って声をかけて戴いた。そして直接に今夜の打上について話を伺えたのでありがたかった。この時点ではプログラム誌などを入手していなかったが、尺玉が15発とラストのメロディー付特大スターマインを見どころとして合間を4〜5号の単発打ち、スターマインで繋ぐという構成らしい。 制約の中で演出には工夫されているようだった。
 イベント会場を起点にすると4〜5号のワイド配列まで200メートル余り。10号筒まで300メートル余りという間合いだった。最前列がイベント会場なので撮影には場所的に制限があった。また向かって左手の涸沼川の堤防道路も見晴らしが良さそうだが、イベント会場近くから堤防道路上は立ち入り禁止になっていた。
 面と向かっての風が変わる気配もないので16時30分を過ぎてから、愛好家氏何人かで一緒に裏手を検討するためロケハンすることにした。メイン会場から裏手まで歩いても15分くらいだった。時間を書くのは帰りの水戸駅行きの最終バス時刻が19時35分なので、もし花火終了時間が多少押しても徒歩で戻ってそれに間に合う範囲までしか離れられないからだ。打ち上げ場所を挟んで完全に真向かいの位置まで来ると、風向きはともかく4〜5号列が遠いなぁと感じた。少し戻ったやや斜め後方から観るような位置が良さそう。メイン側からの難点は花火以外に写るようなモノがほとんど無いこと。裏手からはメイン会場の少しの灯りを含めていくらか街明かりが入るか。
 ロケハンのつもりだったがいちいち戻るのも面倒だし、私は三脚も含めて荷物は全部持ってきていたので、残り1時間余をそのまま裏手の観覧場所で過ごすことにした。車組の愛好家の何人かは裏手に車を移すことにしたようだ。機材は負担を軽くするためデジタル一眼一発。片手だけで三脚を持ち上げる時など、腰に負荷がかかるバランスには気をつける。イベント会場にはプログラム誌が在ったらしいのだが入手しそこねた。でたとこ勝負というわけだがそれは不得手なわけじゃない。
 裏手に回るとより高く大きい10号が手前に来てしまうのでフレーミングとしてはやっかいなのだが、この風向きではなぁ。開始頃には変わるのかもしれないが、1時間前、17時30分の定時雷では、やはり南東の風だった。
 17時30分を過ぎるとかすかにアナウンスが聞こえて、どうやら太鼓演奏のパフォーマンスがあるらしい。そしていよいよ18時30分となってレリーズを握り待ちかまえるが、始まる気配がない。定刻にスタートしたのは、長い長いスポンサー様の社名の読み上げだった。長いはずで、後日もらい損ねたプログラム誌を仲間から分けてもらったのだが、これが新聞紙大の立派なモノで、そのサイズで表裏3ページに渡ってびっしりと協賛者名が印刷されていた。読み上げが15分ほど続いたので打ち上げ開始のタイミングがこちら側では掴めなくなった。そういえば花火開始は18時30分「頃」と書いてあったかしら……?。
 人づてに開幕は10号2発連続で上がるらしい。アナウンスが途切れたか、という頃、ドッと曲導が立ち上った。だいたいの予想画角で待ちかまえていたわけだが、その最初の10号が競技玉並みの派手な曲導を伴って上がるや否や「高っっっっ!!」。画角も仰角も超えて昇り詰めた。野村花火の開幕ではよくあるように見事な四重芯でスタートしたものの、上1/4くらいはみ出していた。たはは……。そこは2発目から修正するものの、なかなか見上げる高さだ。もうこの時点で10号に関しては玉だけを撮らざるをえなくなった。レンズがほとんど真上近くに向くらいの高さだったが、同じ10号でも玉によって到達高度が違っていて、固定で撮るわけにはいかず1発ずつきっちり追いかける。それにしても10号玉の絶対の説得力、存在感。デジタル一眼とはいえ今日は軽いカーボン脚じゃないし、足場もしっかりしているのだがブレるんじゃないかと思うくらいの空気の振動を感じる。大晦日以来だなぁこの感じ。
 用意した手持ちの地図ではまさか裏に回るとは思わず居場所が範囲外だったので、帰宅後にグーグルマップで間合いを確認するとなるほど10号がそびえ立つわけで、10号筒まで300メートルほどしかなかった。そりゃ見上げるわけだ。とはいえこれ以上の距離をとると10号の向こう側になる4〜5号はもっと遠ざかってしまうから致し方ない。
 出しものは4号単発〜スターマイン〜10号単発と繰り返し、後半は単発に5号が加わる。10号の背後になる間合いとはいえ5号くらいになればやはり盆の大きさ高さで見栄えがする。途中小型煙火の3箇所ワイドが入り、ラストはワイドミュージック(5号入り4箇所打ち)。打ち上げ順はわからないし、アナウンスも内容が聞き取れる程じゃないので、打ち上がったものに合わせて撮る。5号はズームで寄せて、そろそろ10号かな?という予測でそれに備えるというカンを働かせた撮影体制。その後も高い、やや低いと10号開花位置はその度に変わり、画角からして下から入れるのは無理なので玉だけ撮るに集中した。その中でも冠系は盆が拡がりフレームから豪快にこぼれ出す一コマも。15発の10号のうち、なんと四重芯が3発、三重芯も入っていた。私の好きな白点滅芯の八方咲きも素晴らしく、これだけでも満足だった。次回はメイン側でキャンドルや行灯を入れての絵もあるかなと考えた。結局打上時間帯には予報通りの北よりの風でやや射し込み傾向だったが、物量を焚く訳でもなく問題なかった。
 ラストのワイドスターマインは5号入りで押して、最終は3重の型物ハートが印象的に締めくくった。規模こそ比べる程ではないが、この晩の花火は季節柄もあり今は観ることの出来なくなった大晦日の水戸市那珂川の花火を思い起こさせた。あぁ、あれは、どれほど素晴らしい時間だったのか。と無くなって今更のように痛切に惜しまれる。その何分の一かではあるけれど、この新しいイベントの花火も全編野村劇場であることには変わりなく、この時期に素晴らしい尺玉を含めた打上げが観られたことは素晴らしい感激だった。久しぶりに花火観覧後にほっくりと心が温かいという思いで帰路についた。
 役場の駐車場まで戻ると出庫の車で大混雑になっていた。到着時はまばらだった車がこれほど増えていたことにびっくり。路線バスで帰る予定だったが、仲間のご好意に甘えて水戸駅まで快速の走りで送り届けていただいた。花火開始が遅れたのでバス停に戻る頃には最終ギリギリだったろう。もっとも道が渋滞していたので間に合ったかもしれない。駅に着くと利用する水戸線の発車まで5分くらい。とにかく納豆だけ土産にゲットして飛び乗る。帰宅は22時20分。予定よりずっと早かった。
 こうした新しいイベントを観て、必ず思うのはどうぞこれが続いてほしいということだ。イベントを新規に起こすのは大変な苦労が必要。一度きりでなく続けるのは、毎回発展させるのはもっと難しい。このイベントについても震災復興を果たして名目が消え、野村花火劇場の新たな舞台となって純粋に花火を愛でるイベントとなって続けば良いのだがと願う。

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