花火野郎の観覧日記2012

観覧日記その18 10/7
東京ミュージック花火 2012

  
東京都・港区


Scene.1 Prologue

Scene.1 Prologue

     

     
   
 東京お台場に新しい花火が生まれる。というふれ込みで、かつてここで何度か開催されたお台場レインボー花火とは別に新しく花火大会として企画された。担当煙火業者はレインボー花火と同じだが、開催時間も長くして打ち上げ数を増やし、観覧場所に音響施設を配して花火と音楽による体感型ミュージックアトラクションという位置づけをしている。
 完全音楽シンクロ花火イリュージョン。音楽に合わせて花火が打ち上がる、音と花火のスペクタクルショー。最新のコンピュータシステムを導入し、30分の1秒の単位で音楽に合わせて花火を打ちあげる、海外では頻繁に催されているエンタテインメント花火ショー。と公式ホームページには解説されているが、各地の花火大会を観ている愛好家にとっては「音楽に合わせて花火を打ち上げる」のはさほど目新しくないかもしれない。しかしこの台場という場所でのこうした企画は初めてのことだと思う。
 都内で寄り道して15時頃現地に着いたのだが、予定していた観覧場所に行って驚いた。ロープが縦横に張られ、「花火のため17時より立ち入り禁止」の表記が。しかもそこだけでなくお台場一帯の打ち上げ方向が見えるあらゆる観覧ポイントがそのように規制されていた。もちろんこれは保安距離だからの規制ではない。それならこの場所で過去に開催された「お台場レインボー花火」も同様だったはずだ。お台場レインボー花火は協賛金を集めて無料で見せるという花火大会にはよくある運営だ。昨年のように東京モーターショーの宣伝からみ、という広告・広報的な開催もありがちだ。
 しかしながら今回の「東京ミュージック花火」はいわば神宮外苑やツインリンクもてぎのような有料興行。主たる観覧場所のお台場海浜公園の砂浜一帯を有料観覧席(席があるわけではなく、そのエリアに入れる権利)に仕立てて花火を見せる。ミュージック花火のタイトルどおりに音楽とのコラボレーションなので有料席エリアにのみ最良の音場を提供するというもの。
 その有料席は一人3000円と映画と比べてもお安くはない。それでも公式には完売表記となっていたから驚いた。終了後にゆりかもめに乗って来た有料席の客層をみると圧倒的にカップルと女性同士のペアやグループが多かった。私は公式ホームページに「写真、ビデオの撮影はできるが三脚の使用は禁止」と書かれていたので、料金の問題よりもそっちの理由であっけなく早々に有料席を買うことを諦めた。別に観客の真っ直中に三脚を立てるわけでもないのにこういう仕様は残念だなぁ。
 有料興行だからかどうか、規制はここまでやるか、というほどだった。過去のレインボー花火で観覧可能だった場所のほとんどが、立ち入り禁止、通行禁止、入場禁止。あろうことかブリッジを挟んだ対岸の芝浦埠頭の一部まで立ち入り禁止にしたのだから「絶対に近くでただ見はさせない」とでもいうのだろうか。
 それでいながら入り江を埋め尽くす屋形船は最も近い特等席から見物なのだが、屋形船の客から見物料を取っているのだろうか。というのもレインボー花火の時は屋形船は花火を見せるでもなく引き上げて行くが、今回は花火見物が目的の停泊が明白だったからだ。普通ならお台場の入り江は屋形船の遊覧コースの折り返し地点で、ここに2〜30分停泊し、レインボーブリッジや台場の夜景を背景に記念写真を撮らせて引き上げる。しかし今宵は花火終了後に一斉に船が出たからだ。
 うむむこの地はあちこちロケハン済みだがこれでは自由に観られる場所でレインボーブリッジがからむ位置は限られてしまう。はたして海縁に降りてみるとそのような位置に既に写真愛好家が鈴なりになっていた。
 あの土砂降り試練の土浦の翌日にもかかわらず昨日お会いしたばかりの愛好家氏がぞくぞくとお目見えである。みなさんタフだなぁ。土浦終了後の大雨はわが住処の辺りでも結局一晩降り続け、この日の昼近くまで本降りだった。だから今日はどうしようかと考えたのだが、天気予報は晴れになっていたので疲れた身体に鞭を入れてやってきた。それでこの観覧規制だから多少は凹む。
 結局海浜公園南西側の海縁に三脚を立てた。両隣からはるか先まで大量の三脚が連なった。規制されたため他に行きようもなくレインボーブリッジとともに写真やビデオの画角に花火が入る場所はこの辺りだけだから仕方ない。有料席の後方が無料観覧場所になったらしくそこで三脚は可能だったようだが、そんなの後から言われても。ビデオだけを録る愛好家氏は近くに音源が無いのでそれが完備している有料席やその後方に陣取った人もいるらしい。
 警備員が繰り返しやってきてロープの向こうに入るな通路際に三脚を立てるなと言っていたが、開始頃にはそのロープの向こう側に観客がみっちり座り込んでいた。
 行きがけのゆりかもめの車内から台船が一望できた。こんなに早くに係留済みとは驚きだ。台船の位置はレインボー花火の時と大差ないが、今回は間隔を置いた3隻の台船を使用した大がかりなワイド設置だった。搭載している花火群の量も多く、4〜50分の打ち上げというのは本当のようだ。
 しかし台船は有料席方向にワイド面を向けてあるものの、位置からすると有料エリア一帯は音響はともかく最大5号という花火からは一番遠い場所で1,000メートルとけっこう遠花火になるのだった。写真屋の私からすれば、三脚が可能なら初回だし有料席でも良かったのだが、方向的に屋形船は前景になるものの肝心のレインボーブリッジが花火と絡まないので魅力にかける。結局私共が観覧可能だった場所が花火には直線距離で一番近いということになった。
 18時30分開始だったが花火は始まらない。前説かなにか延々と喋っているのだろう。10分も経ってから有料席方向から音楽とナレーションが聞こえて始まるらしいとわかった。おいおい無料エリアにまで音楽を聴かせちゃまずいんじゃないのか?
 あとは3隻の台船をフルに使ったワイド打ちに終始して物量も多く満足だった。レインボーブリッジや普段よりかなり多い目の屋形船など実にフォトジェニックな点も素晴らしい。もっと視点を上げたいが、後方のホテルの部屋でも確保すれば手堅くいけるだろう。撮りはデジタルで最大5号までの3箇所打ちは縦で35ミリくらい。低空の打ち出し(星や小型煙火)が延々続くパートでは横もいいかと思ったが、ブリッジと打ち上げ場所が被っているので大人しく縦で決める。有料エリアに正向きだから台船の並びや扇型の打ち出しを見るとやはり全体にややハスであるようだ。
 午後は快晴にもなったのだが打ち上げ時間には雲が拡がった。雨の心配ではなく都心で雲が拡がると夜空が絶対に暗くならないから嫌なのだ。少しでも露光が延びるとたちまち街明かりを反映した曇り空が写りこんでくる。それでいてレインボーブリッジなど夜景にはある程度露光時間が必要だからバランスが難しい。
 風は珍しく左横流れの北東風。まぁ有料席からは順風となって良かったわけだ。寒さの中のレインボー花火に比べると季節的にもいい感じだし、お台場で行われる新しい花火イベントとして定着してくれればと願う。しかし公的な特別な施設というならともかく、ショッピングやレジャーの地である自由なお台場や対岸の埠頭公園さえもここまで立ち入り規制をするのはなんだかなぁと思う。
 終了後はゆりかもめ線が大混雑というのは杞憂だった。観覧場所から一番近い「台場」駅に向かったが10分ほど入場規制で待たされたものの予想外にスムースに乗車できた。次のお台場海浜公園駅が有料観覧席の最寄り駅なのでここでメチャ混みになるかと思われたがそれも身構えたほどではない。花火が終わってもまだ19時30分。お台場は遊ぶところも飲食するところも無数にある。焦って帰ろうなどどいう客は少ないのかもしれない。

INDEXホームページに戻る
日記のトップに戻る