花火野郎の観覧日記2013

観覧日記その15 8/31
常総きぬ川花火大会 2013

  
茨城県・常総市

 一昨年ぶりでその時と同じく、秋葉原経由のつくばエキスプレスで会場に向かう。観覧場所の堤防道路により近い北水海道駅下車。前回より遅く午頃の着だが…………暑い。撮影・録画組は事前に有料の指定場所が決まっているおかげで来場が遅めなのか撮影区画にはまだ三脚が皆無。とりあえず自分の区画に三脚を仮置き。
 それにしても8月末、翌日は9月だというのに昨日から猛烈に暑さがぶり返している。挨拶に訪れた本部テントの下の温度計は日陰なのに36度近くに達していて、めらめらとした蜃気楼の中に居るよう。待ち時間は消耗戦だった。一般席、有料席とも出足が遅い。そりゃこの暑さと陽射しでは。
 飲み物の買い出しがてら、途中にある高校のキャンバス内の日陰に座って涼みながらウトウトと昼寝を挟む。いったん涼しくなってからの猛暑復活は身に堪える。台風に大きくまわって吹き込む外周の風か、ほぼ安定した南風で日中から定時雷の煙をあっという間に吹き流すほどの風力だった。これはけっこう風に盆が流される晩になりそうだ。冠系は全滅といったところか……。
 この日は他にめぼしい大会がないせいか、およそ顔や名前を存じている愛好家氏は勢揃いといった出席率の高さ。花火内容や、担当煙火師の充実ぶりもさることながら実行委員の人望といったところも大きいと思う。
 夕刻まで本部テント近辺に機材を預けて堤防に立ったのは十分落日してからだ。後方にはなにかと騒がしい露店商が軒を連ねているが、風向きの関係で調理の煙はさほど気にならない。しかし斜め後方には話題の発発が絶賛稼働中。
 今年は下流に架かる豊水橋が工事か何かか全体がシートで覆われて向こう側が見えないようになっていた。橋の向こう側では、毎年豊水橋を前景にした写真を撮る愛好家が多く陣取る。写真コンテストの応募作もそこからのものが多い。しかし仲間から聞いたところさすがに誰も三脚を建てていないということだった。この最も常総きぬ川らしい撮影ポイントが使えないことで今年はどういう応募作がよせられるか楽しみだ。
 堤防道路では斜面の有料席のための当日販売テントが新設されていた。堤防端の撮影有料区画直下の斜面は昨年から一部有料になり、一人当たり1500円。段ボール製で組立式の斜面専用椅子が貰える。使っている人をみるとけっこうな傾斜なのに快適そうだった。この椅子だけ買うこともできて300円なので、他でも使えそうだからこれは欲しいと思ったのだけど、畳んでも嵩張るのでちよっと挫けた。持って帰った人も居るようだけど、有料席で使用したたいていの客は座ったその場にそのまま放置していた。のちに資源ゴミとして回収される。紙段ボール製だから雨後などで地面が濡れていると吸湿してやがてへたってしまうそうだが、引っ越し屋が使う樹脂段ボールの素材で作れば何度か使える良い商品になりそう。
 プロローグ花火で画角をみたり試しに撮ったりするが、まぁ見事にぶん流れていくこと……。綺麗な盆を保つのも難しいかこりゃ。この時点で近隣の愛好家と「号数以上にでかく見える」と話していた。4〜5号がけっこう大きい。左奥から右手前とやや射し込む風で、流れも速いことから盆が流されて型くずれるだけでなく、ぐわっとこちらに拡がってくるように開花している。涼しくていいけれどこれは単発を画面内に納めるのに苦労しそうな風だなぁ。
 電車だけどがんばって三脚2本のカメラ2台体勢。赤川、大曲同様にサブは単発割物担当という振り分け。メインは広角ズームを装着してミュージックスターマインを横位置で撮るのも含めてそれ1本で事足りるだろう。サブは28ミリ相当までしかレンズが無いので出番が限られる。それでお留守番が多かったが、価格分はきっちり働いてもらわないと。とはいえ間合いと、今夜の風コンディションではワイドスターマイン系をサブで横に撮るのは無理なので縦位置固定。
  

オープニング花火

日本の花火BESTセレクション
8号昇曲導付千輪美四季
片貝煙火工業

ミュージックスターマイン
「千姫の花曼陀羅」
山崎煙火製造所

ミュージックスターマイン
「千姫の花曼陀羅」
山崎煙火製造所

ミュージックスターマイン
「千姫の花曼陀羅」
山崎煙火製造所

ミュージックスターマイン
「情熱 花火」
紅屋青木煙火店

ミュージックスターマイン
「情熱 花火」
紅屋青木煙火店

ミュージックスターマイン
「情熱 花火」
紅屋青木煙火店

ミュージックスターマイン
「情熱 花火」
紅屋青木煙火店

ミュージックスターマイン
「情熱 花火」
紅屋青木煙火店

ファイヤーアートコンテスト
昇小花虹色のブーケ
(山梨県)斎木慶彦

ファイヤーアートコンテスト
昇小花八重芯ステンド牡丹
(静岡県)田畑朝裕

花火の巨匠
スーパースターマインの競演
花のロックスター
有限会社菊屋小幡花火店
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花火の巨匠
スーパースターマインの競演
花のロックスター
有限会社菊屋小幡花火店

花火の巨匠
スーパースターマインの競演
銀彩の華
有限会社篠原煙火店
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花火の巨匠
スーパースターマインの競演
銀彩の華
有限会社篠原煙火店

花火の巨匠
スーパースターマインの競演
銀彩の華
有限会社篠原煙火店

ミュージックスターマイン
「未来への輝き」
野村花火工業

ミュージックスターマイン
「未来への輝き」
野村花火工業

ミュージックスターマイン
「未来への輝き」
野村花火工業

ミュージックスターマイン
「未来への輝き」
野村花火工業
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ミュージックスターマイン
「未来への輝き」
野村花火工業
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ミュージックスターマイン
「未来への輝き」
野村花火工業
 
 味わい深かったのは最初のミュージックスターマイン「千姫の花曼陀羅」。常総市らしいテーマで千姫だから千輪なのかという突っ込みはさておき紅白の千輪が咲き乱れる様は雅な風情だった。こうして地元の煙火店がきっちり実力をみせてくれるから片時も目が離せない。
 スーパースターマイン競演、最初の菊屋小幡花火。たしかにタイミングもテンポもいいのだけど、それは最近の打ち上げじゃ特筆のレベルではない。それは良いが、主に使用している花火玉が「どうしてこれがタイトルの“花のロックスター”と関係があるのか?」と終始疑問だった。玉そのものでも、玉の並びや組合せでもそれがタイトルの内容を表現しているとは思えなかったのだ。タイトルどおりなのはシンクロさせているロックンロールな楽曲のみ。ようするに何を表現したいのかわからない。
 ひるがえって、篠原煙火のそれはスタートからただちに「銀彩の華」であり、白一色を中心に構成した展開は明解でストレートだ。主題を明確にしながらの要所に色星を使ったワイドコンピュータ打ちは上手に決まっていたと思う。
 ファイヤーアートコンテストは昇り小花まで虹色変色星という斎木煙火が圧倒でしょう。この玉には花火の新世紀や新時代が匂い立つ。
 この晩の注目プログラムは何と言っても青木煙火、野村花火による2つの大型ミュージックスターマインに尽きる。事前に打ち上げ場を確認させて頂いたが、両煙火店とも打ち上げ場所を最大幅で使っている。まさに端から端まできっちりに設置されていた。両端には大きな扇打ちの専用筒も置かれていたので、開花空間としてはもっと幅が広い事になる。これは常総きぬ川では最大規模で、従来のエンディング「花火リュージョン」でもここまで幅を取ったワイドではなくこの2/3か3/5くらいの幅だった。
 観覧位置からそれで画角に収まるのか確認した。左右は24ミリで楽勝みたいだったが、このミュージックワイドには向かって右奥からの7〜8号打ちが入るのだった。保安距離などの関係から大玉は一カ所からのみになるが、撮影区画のある堤防道路に対して、ワイド打ち上げ列は地形的に向かって右側が奥に離れていくような位置関係。つまり最初から全体を左斜めから見ている恰好になる。だから8号は一番遠いので横位置の天地でも絵は歪むけれど広角系でなんとか収まるだろう。「花火リュージョン」では28ミリの横くらいで収まりが良かったが、斜めに打ち飛ばす仕掛けを含めて今日の最大幅の設置ではそれでは入りきらないだろう。
 まずは近年のミュージックスターマインと呼ばれるワイドの先駆、青木煙火。すでに赤川では最先端の打ち上げを見せている。コンパクトなこの場所でどう立ち向かうのか。オレンジ、紅、ピンク系に絞った情熱カラーでまとめ、銀と紅点滅のラストは青木煙火らしい止めだった。
 エンディングの野村花火は緑、青、紅が目立って印象的な配色。ド派手な分度器型星飛ばしは野村花火も負けていない。扇型に展開する専用筒と違って、会場幅全体で扇形に飛ばすには、何ヶ所もの筒を1本ずつ微妙に角度を変えて(中央から左右に開くように)設置するので手間もかかるが、地下の消失点から会場全体にでっかい扇型に星が飛ぶのは豪快だ。いつもの彩色八方ではなく新作の変色八方咲をふんだんにきっちり見せてくれて心ときめく中盤の瞬間だった。最後は会場を紅に染めて打ち終わった。願わくばいっそうの終了感が欲しいところだが贅沢というものだろうか。いや全く贅沢だ。青木煙火と野村花火、今をときめく2大煙火店によるミュージックワイドがひとつの花火大会で続けざまに観られ、見比べられるなんてなんという贅沢だ。どちらも観られないのが普通で、このどちらか1方でさえそれを観るために遠征しければならないのに、一晩に2つの至福。この2社がミュージックワイドで共存することはそうそうあることではない。思えばとんでもなく贅沢な企画なのだった。もちろん打上場所や使用玉の制限も予算の制約もある中で最大限のパフォーマンス。ありがたく満足な時間だった。
 青木煙火より少し時間が長い分、野村花火のワイドは密度が感じられた。両煙火店とも花火リュージョンに比すると上打ち玉が少な目だが、その分下層部の派手なアクションは絶え間なく飽きさせない。何より花火の打ち方の色々をこれでもかと見せて、斬新で新しい花火パフォーマンスを感じさせるところが素晴らしく、初めて観る人は花火の印象や認識が変わってしまうだろうと思う。
 せっかくだからサブ機も参戦させるがレンズの守備範囲からして縦位置のままが精一杯。幅は稼げないので7号打ちがそこそこ入るようにフレーミングして同時撃ち。過去の経験から右手でレリーズする分は微妙に遅れたり、メインに気をとられていて露光しているのを忘れたりするのでメインの押さえといったところ。
 終了後の歓談などをして水海道駅を発ったのは21時40分。つくばエキスプレス途中駅の南流山から、武蔵野線ルートの方が最短距離だけど、夜の武蔵野線は思い切り本数が少ないので結局秋葉原経由。0時を少しまわるくらいの帰宅だった。翌日は地元の祭りに出かけようと思ったが、土曜以上の暑さと夕刻からの豪雨、雷、突風の3連発にめげる。
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