花火野郎の観覧日記2013

観覧日記その15 9/22
ツインリンクもてぎ 花火の祭典〜秋〜

  
栃木県・芳賀郡茂木町

 宇都宮駅から愛好家氏の車にピックアップしていただいた。往きはナビどおりなのか、一部はバス路線と同じ道だった。もちろん停留所を縫うわけではないから快速でツインリンクに達する。途中で通りかかった広大な田圃は5月の花火の祭典に向かっていた時には一斉に田植えをしていた。それが今や一帯が実りの秋。約5ヶ月を経て刈り入れの真っ最中だった。時間をひとっ飛びしたような光景が不思議でもあり、時間経過の速さも感じた。
 入場して驚いたのは意識的に(出やすいように)駐めた過去の来訪以来久しぶりの南ゲートに近いどっ外れの場所に誘導されたこと。つまりそこより先は満車というわけで夏以外の公演でこんなに車が多いのには驚く。歩くにはちと距離があるので場内周回無料バスでエントランスに向かう。しかし普通はメインエントランス正面まで入るバスがなぜかずっと手前で停車して降ろされた。周回道路には通せんぼをするようにゲートが設けてあり、その向こうのエントランス周りはとっちらかるように小さな子供達で一杯だった。子供だけで来場するわけじゃないからこの日はとにかく夏以外の花火の祭典としては驚くほどに親子連れが多かったのだ。メインエントランス前の芝生広場(写真)にはいつもならせいぜい遊具が2〜3在るだけなのだが、この日は椅子とテーブルがびっしりと置かれて、周りの飲食ブースで購入したまたは持ち込みの食べ物を楽しめるようになっていたのだ。ここにこんなに人が溢れているのを初めて観た。
 これほど親子連れが多いのはこの日開催されているイベントによる。ストライダーという小さな子供向けの自転車風乗り物のメーカー主催イベントがツインリンクに場所を借りる形で開催されていたからだ。イベントの主軸はこの乗り物を使った「ストライダー・エンジョイカップ」というレースイベントで、9月21〜23日の期間中、オーバルコースの直線部分の一部を使って子供達によるレースが行われるのだ。これにエントリーする親子連れが多数来場しこのような賑やかな状態になっている。
 ストライダーは子供向け自転車からブレーキとペダルを除いたような構造で、走る止まるは両足で行う。対象年齢は修学前か、とにかく小さい子用。専用のヘッドギアやプロテクターを身につけた子供達が足元をすり抜けるのを見ているとけっこうスピードが出るようで、この日場内には、初心者からレースエントリーする子供まで、練習用コースやら、メンテナンスコーナーやらいわば我々の花火とは無関係なのだけれど、ストライダーからみの施設と親子連れがそこら中を埋めていた。おそらくレースの後には花火が楽しめるというフルコースなのだろう。
 他にはオーバルコース上でのスーパーモトクロスの演技が楽しかった。バイクを使ってジャンプ中に様々な演技を見せるというアクロバティックなパフォーマンスはスリルと迫力があって面白かった。
 上空には5月に初お目見えのメガジップライン「つばさ」が快適滑空中。人気アトラクションらしく、我々が南ゲートを通過した13時30分には、本日分の受付は終了となっていた。風向きが東寄りなので、スタートラインからの最初の滑空は向かい風気味となり速度が落ちるので5月の時と同様に中継点まで達せず、今回もスタッフが迎えに行くという状況になっていた。
   

    

    
  
 14時過ぎというゆっくり目の到着なのに、花火愛好家氏の姿をほとんど見かけない。東寄りの風という条件から南側第3ターンのコーナーの一般席に最初に向かったが、針山の如くという想像に反して三脚は僅かに1本。やはり今日は皆さん話題の長崎詣でか?この日はハウステンボスの花火が在ったが、さすがに私は有料観覧で泊まりで長崎は遠いし金がかかりすぎると茂木にした。その後A指定脇の自由席上部に愛好家氏を発見して歓談開始。
 風向きによっていろいろ対処しようとA指定なども買っておいた。A指定区画を検分するとそちらにけっこうたくさんの三脚が立ち並んで、知り合いの愛好家の姿も見られた。A指定席には最上段限定のプレミアムA席があり、それを利用する愛好家も居たようだ。私は最終的にA指定区画に近い自由席上部に決定。向かい角度的には真正面とまではいかないが、花火の設置をみると最大広角でやっとかなという接近戦だし、オーバルコースの構造的に第3ターンに向かって斜めに花火列が設置されているので、むしろグランドスタンドより第3ターンに近い方が花火に対しては正向きに相対していることになる。つまり幅も高さも感じる位置。
 その後我々愛好家一同は飲食ブース近くのテーブルに居場所を移し10数人が集まって歓談大会になっていた。そもそもこの秋公演が参集した花火愛好家の耳目を集めたのは、通常なら群馬県の菊屋小幡花火店が担当するところを、茨城県の野村花火工業が初めて茂木で打ち上げるからだ。もしこれが通常通り小幡花火の担当なら、以前より少ないながらもこれほどの愛好家がもはや来るだろうか?小幡花火を茂木でなければ観られないわけじゃないし、茂木でなければ絶対に観られない出し物を毎回やっているわけじゃない。それなら有料の茂木に4回全部に皆勤する必要はないのだ。
 しかし考えてみれば酷な話で、小幡花火が私ども愛好家をときめかせていた頃は四重芯も珍しかったし、何より茂木での「花火の祭典」が年に1度または2度しかなかったのだ。それを春夏秋冬4回公演にして、それぞれに別の内容で愛好家を引きつける、といっても2回分の予算で4分割というような物量ではなかなか難しいと思われる。加えて有料の茂木の観覧条件気象条件が常に風下で、それ以外選べないのだから、いくら安心の花火水準といっても次第に愛好家の足が遠のいてしまうのは必然と言える。もし同日に他の魅力的な花火大会があればあえて茂木でなければ、とチョイスするだけの必然性が薄いのが現状だ。
 小幡花火が外れた理由も定かではないし、このまま野村花火が秋をレギュラーで受け持つのかも不明だ。ただスタンドから花火設置を見たところ、予算なりの普通の物量で、サービスで増えている感じはしなかった。当然ながら小幡花火が何らかの事情でどうしても担当できないことからの今年限りのピンチヒッターとしての野村花火起用であるならサービスする必要もなかろう。
 私どもには今年限りなのか来年以降もどれか一回は野村担当が定着するのかはわからない。しかし花火の祭典開始以来、茂木側としては一貫してワントップの小幡花火推しで他の参入を許さずそれを看板にしてきた興行だから、今更ツートップというのも解せない感じだ。
 こうした話題で持ちきりの私共の居場所に、客席側からチェックしながら観るという野村社長がご婦人を伴って訪れた。それからはさながら野村陽一氏を囲んでのフアン交流会の様相。社長との記念撮影会、握手会にはじまり質疑応答等々。しだいに到着する愛好家氏も増えてその輪は2〜30人にもなっただろうか。一般客が「どこの有名人?」という顔で通り過ぎる。 私共の雑談におつき合いいただいた野村社長に感謝。長らく花火を観てきて、野村氏に限らず、特定の花火作家にこうしてファンが実在して接する、という交流の実際を見るのは何とも素敵な時代になったものだと嬉しく思う。
 開始まで1時間をきったところでフアン交流会もお開きとなり、撮影と観覧の準備にかかる。到着時からの東寄りの風は変わらず、弱まるかと思ったが意外とそのままだった。日中から上着がないと肌寒く感じるあたり風のせいばかりではなくそういう季節になったということか。焦がされ汗だくになるのが恋しいわけじゃないが花火を追いかけるうちに待ち時間が過ごしやすい時節になったのは快適だ。茂木町に小雨予報も出ていたけどその心配はないようだ。ただ東含みの風だと、観覧席の半分は風下なのはどうしようもない。
 照明が落とされて、茂木初の「野村劇場」の始まりだ。第2幕までは単発中心のスローな打ち上げ。片引き柳に点滅や冠と星の落下速度が超ゆっくり目の星をゆったりとした音楽に合わせてゆっくり打つという間を持たせる演出が苦労したところだなと感じた。相変わらず合間のナレーションが長いものの、連続で打ったら30分間は持たないだろう。
 第3幕では土浦など競技大会で実績のある、野村花火オリジナルの2種のスターマイン「夜空のデュエット」、「夜空のウェディング」を茂木バージョンで披露した。二人の出逢いのデュエットからウェディングまでストーリー仕立てのスターマインだ。土浦では40メートル幅での打上を今回は200メートル設置で再現した。
 4幕目は10号打ちの見せ場で、決め玉の四重芯、久しぶりの五重芯を主軸に八方咲系の持ち玉が対打ちを挟んでじっくり披露された。最初の四重芯が素晴らしく決まって、これは良い玉を用意したなと思った。冠系の親星の五重芯は風のある今宵はちょっと流され気味。
 5幕がフィナーレだったが、畳みかけるような追い込み打ちは無く淡々と終了した。幕切れとしては量と華々しさはいまひとつで、この辺は予算なりのところかと納得せざるをえない。その分珠玉の尺玉打ちだったからまぁいいかと満足だった。
 那珂川の年忘れ花火大会を思い出すのに十分だった。全体として那珂川のそれよりも野村花火としては使用玉の種類を抑え目だと見た。単発で同じ玉の繰り返しがけっこうあったし(ちょっと見ない玉なので新作の実験か)、予算等々総合的に考えての演出と思った。今回を見る限り来年度を見据えたサービスという感じはなく、対価なりのきっちりした内容。かつ今回は代役だが、五重芯を惜しみなく打つあたり見せるものは見せるという「野村花火」をアピールした構成だと思う。
 デジタル一眼レフ1台の体勢だが、この間合いと向角で7〜10号を積まれるとたまらない、ということでずっと縦構図だったものの、全体に4幕を除くと5号以下の小玉傾向で高さがないので、前列が5箇所打ちワイドといっても横位置で収まるくらいの空間だった。スタンドからのチェックでは気が付かなかったが、ピットレーンにマインや小型煙火が仕掛けられていて、都合3列の設置だった(そういえば野村社長は3列と言っていた)。
 終了後は遠くの駐車場まで歩きだが、夏なら帰り客に取り囲まれて熱気で汗だくになるところが涼しくて快適だった。出庫もスムースでなんの渋滞もなく南ゲートを通過。今では飲食ブースが遅くまで営業しているので慌てて帰らない客が多いのかも知れない。再び宇都宮駅まで送り届けてもらって早めの帰宅となった。
 気になっていたハウステンボス情報をネットで探すと、花火内容はさておき、今時珍しく道路渋滞で花火終了までにハウステンボスに辿りつけない客やツアーが続出したらしい。それだけ注目を集め客が殺到したということか。

INDEXホームページに戻る
日記のトップに戻る