花火野郎の観覧日記2013

観覧日記その17 11/23
第108回 長野えびす講煙火大会

  
長野県・長野市


午前10時頃の堤防西側

爺ヶ岳、鹿島槍あたり

ミュースタど真ん中。
お値段納得のプレミアム感?

爆増えびすシート群

黄葉聳える花火筒群
   
 朝一番の新幹線で向かうと観覧場所の堤防着は午前8時30分くらいになる。そんな時間に着いてもめぼしい場所はほとんど場所取り済みだった。とはいえそのために仕事が終わってから前日入りする気にももうなれない。
 昨晩は雨だったという。そのせいか雲が広く低く覆っているような空模様だった。近隣の紅葉した山肌も途中まで雲がかかって上半分が見えない。丹波島橋方面の向かって右方向を希望して堤防をウロウロしたものの結局西側の外れになんとか空いていた場所に三脚を建てる。朝のうちはそこから西側の先には1本の三脚も無かった。場所的には青木煙火設置場所の向かって右側の端が正面といったところ。つまり全打ち上げ空間の一番右端だ。
 しかし前日来ていれば場所取りが楽勝だったかというとそうではなかったらしい。というのも今期は「当日以前の場所取り禁止、やったら撤去」というのが緩和されたとのこと。 もちろん四隅に杭を打ってロープを張るとか、道路にはみ出すとか、そういう場所取りは一掃らしいが、それ以外は黙認と。当日以前の場所取り禁止と一掃セールを主催者が放棄したということは、事実上何ヶ月前からでもOKと、そういうことですか。昨年は堤防上に何ヶ所も当日以前の場所取り禁止の看板が立っていたけど、同じ看板に今回は「堤防上の駐停車禁止」とだけある。事実待ち時間中はちょっと駐めて、トランクからレジャーシートを下ろす間にも駐停車禁止を警備員が繰り返し注意していたくらいだ。
 とはいえ何ヶ月前といったってレジャーシートは吹き飛び、ガムテくらいじゃ、一週間たたないうちに人の通行と雨と夜露でボロボロだから取った場所が維持できるかは知らない。維持できそうな頑強な場所取りは撤去されるだろうし。
 それはそうとこちら側、つまり花火に向かって右方向から狙うのは十何年ぶりだろうか。えびす講に来はじめて20年近くになるが、過去に一度しかこちらで撮ったことがない。風向きなどの関係もあるがほとんど左方向から撮ってきた。過去に右手で撮った時はまだ青木煙火の現場が左側、信州煙火が右側と現在の逆に位置していたころだ。青木煙火と信州煙火の現場が逆転してからは一度も右側で撮ったことがない。それは間合いの関係で、右方に位置すると手持ちのレンズでカバーするのが無理で、少しでも両煙火店から距離を稼ぎたかったからだ。丹波島橋側に離れると極端に打ち上げ空間が真横になってしまうから間合いを稼ぐには左方向野長野大橋側に離れざるをえなかった。それでも当初銀塩の手持ちレンズでは最大広角が24ミリ程度であり、超接近戦のえびす講では左方向からの狙いでも日赤に近い中央付近だとそれでも足らなかった。ミュージックワイドをやるようになってからはさらに画角がきつくなった。
 こうして青木煙火の現場の真正面に立つことは従来は無理だったが、デジタルカメラになってフィルム時代には無かった広角レンズを得てこちら側でもなんとか撮れるかなと思った。それと別のアングルから撮りたいという希望もあった。
 かつてはどちらかというとスターマインもさることながら単発の割物が主体で、そこで両煙火店の持ち玉のほとんどの種類が披露された。だから10号割物が形よくみえるくらい現在の倍以上の距離をとって見て(撮って)いた。しかしワイドミュージックスターマインが目玉となってからは、距離をおくと横方向になってしまうため、正面近くに陣取らざるを得ず、ワイドも割物も画角がきびしくなった。
   

個人協賛特大スターマイン
青木煙火/信州煙火

10号玉5発
青木煙火

全国10号玉新作花火コンテスト
えびすさんのしだれ桜
有限会社篠原煙火店

全国10号玉新作花火コンテスト
昇り曲付金秋の華
有限会社菅野煙火店

全国10号玉新作花火コンテスト
昇り曲導付銀彩芯錦先七度変化菊
大曲花火化学工業有限会社

全国10号玉新作花火コンテスト
虹色のグラデーション
株式会社齋木煙火本店
   
 11月もほんの2週間前頃には関東圏でもまるで季節が一ヶ月前倒しになったような寒さだった。真冬用の衣類、寝具を出し、石油ファンヒーターに灯油をぶち込み、暖房器具の蔵出しとあわただしく一気に冬支度をした。ホームセンターに行くと、こたつやら毛布やら冬物グッズがズラリ。だから久しぶりに厳寒のえびす講になるのだろうかといきおいこんで防寒してきたものの、この日は意外な「小春日和」予報で、日中は暖かく、陽射しを浴びているとダウンやヒートテック仕様だと汗をかくぐらいだった。朝方曇っていた空も次第に晴れて遠くの北アルプスの山並みまでくっきり見える好天に変わっていった。
 長いことこの打ち上げ現場の川縁に立つ黄葉の樹について銀杏だとばかり思っていたが、ポプラだった。ポプラといえば北海道大学の並木が有名で実際に見たことがあるけれどもっと細長い樹勢の印象だったのでそれとわからなかった。落ち葉を採集して自宅で調べたらポプラの黄葉と決定。えびす講では何度となく打ち上げ現場から眺めているけれど、年によって黄葉の進み具合も色合いも違い、既に散っていたり、まだ緑が残っていたりとまちまちだったが今年は格別に綺麗だった。この2本のポプラにこだわるのは日中に堤防道路を歩いて観覧場所を探すときに構図を決める上で目印になっているからだ。正確にはミュージックの真ん中ではなく左に寄っているが、会場全体のだいたい中央だし、コンテストの10号はこのポプラの右下に設置されているなど花火の発射位置の目安になるのだ。
 他にも信州煙火の7〜10号はほぼポプラの樹の左側に一箇所にまとめて置かれているが、青木煙火はコンテストの10号に続いて川沿いに一列に並んでいるとかの違いがある。ミュージックスターマインは同じ設置場所で前後している。信州煙火が観客側だ。8号108発は、主力の8号はミュージックスターマインの幅を少し超えるくらい。その途中に入る4号ワイド打ちは40メートル間隔で20箇所、760メートルにわたって設置されている。
 ここも有料席化が顕著だが、えびすシートの爆増には驚くばかりだった。もともとは1列のテント(運動会とかの)の下にだけテーブルと椅子を置いたそれだけの数しかなかった有料席が、テント下どころかグラウンドを1/4ほども埋めて前方に膨大なテーブルを並べて展開していた。この位置では保安距離でただでさえ大玉は打てないのに、テーブルを前に出したらいっそうに制限されると思うのだが。
 日中だいたい構図を決めても、暗くなればどこからどこまでがミュージックの幅か?目安のポプラも夜には見えず、一斉打ちの幅さえわからなくなる。私の場合は明るいうちに手前の夜店の位置などで覚えておく(またはメモる)。左端がやきそば、右端がたこ焼きとかだ。機材は軽めにデジタル一眼一発。フルサイズで16ミリからの広角と接近戦仕様の装備。サブにコンデジを持ってきているが会場や現場の取材用だ。
 夕刻が近づいていよいよ撮影録画組の三脚が出揃うと、商店会席の青白テントがある辺りは、大量の三脚また三脚という状態で驚いた。会場全体で200や300じゃきかないくらいの本数に違いない。
 風向きはえびす講にはいちばん多い北東。すっかり暗くなった頃に気が付くとまばらだった堤防斜面も観客で埋まり、後ろの堤防道路も幾重もの立ち見の観客で一杯になっていた。土曜ということもあるのだろうが例年以上に混雑していると感じた。そして定刻になり予定通りに花火が始まる。
  

音楽と花火のコラボレーション
ミュージックスターマイン
信州煙火

音楽と花火のコラボレーション
ミュージックスターマイン
信州煙火

音楽と花火のコラボレーション
ミュージックスターマイン
信州煙火

音楽と花火のコラボレーション
ミュージックスターマイン
青木煙火

音楽と花火のコラボレーション
ミュージックスターマイン
青木煙火

音楽と花火のコラボレーション
ミュージックスターマイン
青木煙火

10号10発一斉打ち
青木煙火

8号玉100連発
特大ワイドスターマイン
信州煙火/青木煙火

10号10発一斉打ち
信州煙火
  
 青木煙火の7〜10号単発はほとんど真正面なので、開花位置はカメラが真上を向いてしまうような天辺だ。こういう時は縦位置で雲台に取り付けた時にあらかじめ上向きにずらしてカメラを固定している。そうでないと固定レバーが脚にあたって雲台そのものが真上に向かない。レバーを向こう側にして逆に取り付けるやり方もあるが、追跡がやりづらいから私は使わない手だ。縦位置で撮り続ける限り、ずれているのは関係ない。ずらして取り付けたぶん横位置にしたときに扱いづらいのだけど横位置アングルがほとんどないからまぁ良いかと。しかしレンズがきちんと向いてもアングルファインダー無しでは覗ききれないので目検討(おいおい…)でカメラを向けていた。広角だからどこかに入るっしょ。コンテスト10号と信州側10号はそこまでキツくない。とくに信州側10号は根本から開花まで楽に画角に入る間合い。
 えびす講の「全国10号玉新作花火コンテスト」の面白いところは、皆で三重芯以上の多重芯というのではなく、良い意味で玉の種類がバラバラだということ。新作の名のもとそれぞれが得意な物や実験的な玉で出品しているから、とりどりに15種類というバラエティの良さ。もちろんまたコレか、なんだかなーという玉もあるのだけれど、それぞれに見るのが楽しみだ。
 今回、変わったところでは篠原煙火の段咲きのうす紅千輪。千輪はともかく段咲き仕様は初めて見る。そして白眉は斎木煙火だろう。虹変化も開花に合わせてゆっくり目で、誰の目にも次々に色が変わるのが判ると思った。この玉が開花して消える時、露光を終えて「よっしゃーっ」という心の声に被さるように斜め後ろから「きれいな花火……」という可愛らしい声が聞こえた。歓声ではなく、言葉にして感じたことを言っているのにはっとして振り返ると小学生低学年の女の子だ。へぇ、コンクールをずっと見いたはず、それでこの作品に反応するとは見る目があるじゃないか。星の変化の様子とか玉の仕組みとか、煙火店の名前とか、知る由もない小さな女の子にもその美しい星の色と形でちゃんと綺麗さは伝わっているんだ、と嬉しくなった。そう綺麗だ。こんなに綺麗さが凝縮した花火があるのかと思うほどに。
 花火会場を埋める全ての人が愛好家なわけじゃない。花火のなんたるかとか蘊蓄とか知らない観客がほとんどだ。それでもそんな理屈抜きに綺麗なものは綺麗で、迫力あるものは迫力があると伝わるのだ。
 信州煙火のミュージックは日中に現場で確認して、花火筒群を円形に置いてあるセッティングがあって面白い趣向だと思った。直径で30メートルくらいか、その円周15箇所に等間隔に筒群を置いている。そのサークルが間隔を置いて3組横に並んでいた。これが打ち出されるとどう風に見えるのか?を期待していた。これらの筒は垂直と斜め打ち仕様になっていたが、一番観客に近い位置だったので、実際には外向きの斜め打ちはあまり大きな星ではなかった。
 一連の打ち上げ中はぐるりと回すかと思ったが一斉出しがほとんどだった。直径の関係かおそらく正面近くからみ見ても根本が円形になっているというのはあまり判らなかったのではないかと思う。打ち上げ全体の印象としては、使用玉もカラフル系ではなく大人しく淡々と言った感じか。
 対する青木煙火のミュージックはひと言で言うと、豪快、派手、超高速だ。斜め飛ばしはド派手に、切れ目やひと呼吸の少ない超ハイスピードで大量の点火の連続と開花の濃さには唖然とするばかりだ。いわゆるキレッキレのパフォーマンス。観客は打ち終わるまでは瞬き禁止、息継ぎも禁止という一瞬も目を離せない状況に陥る。
 108連発は会場全体でワイドに打てないからえびすシートまでいかないくらいまでの5箇所で、順に打ち上げたりするのだけれど言ってしまえば打ち方としては大味。途中で入る4号20箇所掃射は豪奢だけど大玉部分は締まらないと言うか、まったりでもなくテンポよくでもない微妙なリズム。
 土曜だから泊まりで愛好家同士での宴席という話もあって魅力的だったが、えびす講前にカレンダーが着荷していたので翌日曜日をまるまる荷造りにあてるために日帰りとした。昨年は風邪で轟沈してしまったから、2年ぶりのえびす講を心より楽しんだ。
 終了後は例年だと日赤病院近くに居るため、たちまち砂時計状態になって堤防道路から降りられなくなる。しかし今回の場所からは脱出が極めてスムースだった。堤防をすぐに降りて住宅街を通り抜けると混雑もなく駅に続く帰り道に行けた。花火終了が20時少し前といつもより早かったが、堤防道路での渋滞がなかったので30分後には楽に長野駅に着いていた。
 21時過ぎの新幹線だといつも駆け込み乗車になっていたから、1本後の最終にしてゆっくり歩こうと思っていたが、予想外に早く駅に着いてしまった。それで1本早い21時6分発で帰路に着く。自由席でも楽に座れて快適だった。とはいえ早朝家を出てから帰宅まで18時間の日帰り花火行はさすがに疲れた。
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