花火野郎の観覧日記2014

観覧日記その24 10/25
第10回 釜山花火祭り(The 10th Busan Fireworks Festival)

  
韓国・釜山広域市


カウントダウン直後

  

次の組の15号4発目が先に低空開発

以降右端のブロックが沈黙
V字打ちも歯抜けになっている
開始からわずか45秒

  

  

  

  

  

タワー花火(中央円形)が入ります。
橋からの10号は右端が出ず。

 

タワー花火

三尺玉?

カラーイグアスの滝
   
 この日は早朝から見事な快晴。太陽が山の向こうに隠れるまで焦がされ続けて暑かったが、夕方になると背後から吹き下ろしてくる風で寒くなった。上着の内側にセーターを着こみ、ズボンの下にはヒートテックのアンダー。使い捨てカイロも発動して保温に努める。それより朝からずっと堅い場所に腰を下ろしていたせいでおしりが痛い。衣類をクッション代わりにしていたけど椅子とかないとだめだなぁ。 
 カメラは1台きりだ。レンズは120ミリまでのズームで、この範囲で問題なく収まる。コンデジで予測したとおり、だいたい70ミリ前後の画角だった。橋の打ち上げ設置部分を画面一杯にして100ミリくらいか。待ち時間の暇つぶし撮影用に80〜400ミリのズームも担ぎ上げてきた。これのおかげで橋の上のクレーンの様子を撮ることができたけけど、まだ寄せ足りないくらい。
 19時くらいまではゆったりして良かったが、いよいよ20分前、10分前となると、耳の後ろに鼻息がかかるほどの近く、観客に後ろに立たれて閉口した。気が散るなぁ。しかもカップルが何組も。もっとも広場の最前列がずらりと三脚だから一般客はその合間から覗き見るしかないので仕方ない。それでも昨年の怒号が飛び交う満員電車内の撮影を考えれば、今回は十分ゆったりして快適な方なのでありがたい。
 開始のカウントダウンは、橋に施されたLEDによって数字が大きく表示されるので山の上からも一目瞭然だった。いよいよ始まった花火は序盤から躓いた。広安大橋からワイドで大玉を4箇所で打ったときに、向かって右端の玉が低空開発した。ほぼ橋の路面上で開発した感じだ。これが原因か電気点火線の分岐モジュールのいくつかが影響を受けたらしく、以降橋の右端の花火群が一切沈黙してしまった。カウントダウンしてから1分も経たないうちの出来事だ。これ以降、橋の上の5箇所の打ち上げの全てが右端が欠けるというアンバランス状態になったのは少々めげた。12時間以上も堪え忍んでこの見た目か・・・。設置には問題はないのだろうが、ひとつのアクシデントでこうなってしまう。画面のバランスが悪いのでフレーミングとしては左方向に振って整えるような感じ。つまり橋の5箇所目はもう無い物として撮らざるを得なかった。
 南西から北東にかけての橋に沿った横風だったが弱い。山の中腹では背後から風が吹き抜けているのに、会場の風はそうとうゆっくりと煙を運ぶ。だから手前3台の台船で猛爆すると煙の塊が相当時間そこに動かずに漂うという感じだったのも残念。
 手前台船、中の台船、橋の上と3箇所で順に打つという展開だ。とくに真ん中の台船は多くの玉を積んで、多彩な曲打ちを含めた物量の多いワイドな打ち上げが多かった。手前は浜に違いこともあって小型の花火が主体。橋の上は最大15号の単発打ちや、トラ、コメットなど。
 今回、「タワー花火」と称して新たな演出が盛り込まれた。大橋の上に大型クレーンを設置。そのアームを高く上に延ばして、そこから花火を何カ所にも取り付けたワイヤーを吊り下げたもの。クレーンのアームの先端に円形に放射上に並んだ花火筒が取り付けてあり、ここからくるりと輪を描くように星を飛ばす。その数は30方向だから30本の筒が円形に並んでいることになる。これを何度かやるので、円形に並んだ筒は自転車の後輪の変速ギアのように手前から奥にいくつか重なって設置されていた。またその下にワイヤーに等間隔に7カ所に設置された花火筒から、横方向に星を打ち出したりと多彩な演出を見せてくれた。日本ではまず見られない新しい出し方だ。展望台には立派な備え付けの双眼鏡が何台かあったので、それで台船や橋の花火設置はよく見て取ることができた。なにしろ私の直ぐ隣が双眼鏡。しかもお金を入れる例のやつじゃなくて、いつでも覗けるのだ。推定5〜600ミリレンズ相当か。残念ながら高倍率の双眼鏡で見てもどういうものが吊られているのか見えないほどの距離。しかもこの仕掛けが準備完了したのはもう17時くらいの遅い時間だったので暗くなりかけていた。(図版:タワー花火のクレーン最上部と途中の仕掛けの筒の推定図)
 昨年お目見えしたカラー・イグアスの滝もパワーアップ。各色の滝が一斉に落ちる様は圧巻で、その足並みが揃っているのにも驚く。これは張り物のナイアガラとは全く別の仕掛けで、写真を拡大して推定すると。おそらく5方向くらいの扇形に配置した筒から星を水平に打ち出しているようだ。これとは別に普通のナイアガラ仕掛けも昨年同様に行われた。花火玉は総じてほとんど中国製と思われる。だから個々のクォリティ云々よりショー全体の演出や群舞を楽しむといった傾向。
 韓国行の直前には、ネット上で「四尺玉打ち上げ」などという眉唾ものの噂がまことしやかに流れた。噂の出所の人は現地で四尺の玉と筒を肉眼で確認したうえでツイートしたのかしら。まぁ、当日まで我々愛好家仲間を期待と共に楽しませてくれる「面白ネタ」であったことは間違いない。確かに中盤で単独でひときわ大きい玉が上ったのだけれど、それが二尺か、三尺かの判別ができなかった。内容は、二度咲き千輪で、最初が彩色小花、次が錦小花と見た目は片貝のそれに似ているが、錦はかなり暗い目。全体の星の密度から四尺とは思えない。橋の上から打つ最大15号より、手前にあった大玉専用台船からのそれの方が遙かに高く上がっていたので、二尺以上であることは確かで好意的に見てせいぜい三尺くらいだろうなぁ。なお現地で配られた日本語の祭りを特集したニュースペーパーによると、25インチ玉(63.5センチ)と表記はされている。私の位置からは台船に大きめの筒が「在る」ということくらい。だいたい三尺と四尺では筒の直径で30センチくらいしか違わないのだからこの距離では筒のサイズではわからない。
 後日、ビーチの仲間からそこからの日中の様子と夜の花火のビデオ映像を分けてもらった。さすがに浜からの方が台船の様子が間近に良く映っていた。それを見ると相対的に筒はやはり三尺なのではと確信した。もちろん「正」の付く三尺なのか内径で三尺の玉なのかはわからない。それと、花火中に開発したこの玉を観て「開発音が」三尺相当だと仲間がその瞬間に喋っている声が入っていた。音か、それは山の上で迫力を伴って得られない唯一のものだ。大玉を見慣れている見巧者二人がそう感じるのだからけっこうその通りかもしれない。
 見終わっての印象としては一度見ているからかどうか、昨年比で言えば出ない箇所が在ったせいか若干見劣りした感はある。しかしそもそも橋梁から花火を打つ事自体が日本では未来永劫実現しそうもないから、それだけでも見る価値がある。タワー花火など目新しい仕掛けが見られたのは収穫。全般には花火も多彩、打ち方も多彩と、この花火ショー全体を「輸出商品」と考えている花火会社らしく力の入ったものだった。演出や打ち上げを担っているのは株式会社ハンファの花火部門だ。今後はコンピュータ点火機器やソフト、打ち上げの3Dシミュレーションなどの自国開発に力を入れるらしい。
 花火ショーは20時45分くらいで終了。そして21時から広安大橋のライトアップとレーザー光線によるショーがあるというので、片づけないで待っていた。他の写真マニアや観客は花火終了と共に一斉に退けた。しかしこのレーザー光線のショーはたいした目新しさはなく10分も見ないで片づけた。広安大橋そのものはさながら橋の形のLEDスクリーン。たとえば流行の3Dマッピングみたいな効果を橋に取り付けられた無数のLED照明だけでやりこなす。光に動きをつけるのも、アニメーションのような映像を出すのも自在多彩で素晴らしい。日本の吊り橋梁にこんな電飾を備え付けることなどまず実現しないだろうからこれもまた一見の価値在りだ。
 下山路は見事に上から下まで繋がった状態で渋滞していた。タクシーなんか通るわけもなく、他の観客も大勢歩いて下山していた。下見の時と違ってフル装備の加重がかかっているのでゆっくりと慎重に急坂を下る。
 ホテルで仲間と合流し、遅い夕食に向かう頃には、さすがに精根尽き果てたと感じるほど消耗していた。元山ヤとはいえ、足腰のポンコツぶりにもあきらめに似た感じだが、登り下りの筋肉痛よりも上で動き回った訳じゃないのに、じっと炎天下の一所に座して動けないでいる、というのが堪えた。次回、今度はもっと早くから15時間待ちで、ということになれば交代できる撮影仲間や仮眠できる車でもなければちょっと遠慮したい。今回の旅の仲間にはわがままを言ってしまったが、一期一会かも知れないと高い所から見ることができて良かった。
 ビーチで見ていた仲間は、そこも場所取りが思ったより早く始まり、午前8時頃から交代で待機状態に入ったらしく消耗したとお疲れのようだった。良かったのは昨年に懲りて、場所を橋に向かって150メートルほど右側に移したらしいのだが、たったそれだけの距離差で、昨年比でずいぶん快適に見られたらしい。橋に真向かいの中央部付近だけ死ぬほど集中しているということか。
 今後ビーチでという愛好家は一考の余地がありそう。向かって左端はツアー団体席専用になっているので、右方向から斜めに見る位置に行くに従って大混雑は免れるだろうと思う。また真正面では、手前、真ん中、大玉、橋上と4重に立体的に置かれた台船が重なり合い、つまり花火の開花も重なってしまう。だから少し斜め方向から見た方がかえって立体感が味わえると思う。
 今回の私の撮影場所については、こういう光景で観たい撮りたいと興味のある方には「探す楽しみ」をご提供しよう。広安大橋を正面に見て背後の山には金蓮山やとなりの荒嶺山をはじめとして展望ポイントはいくつもあるようだ。私より高い場所も低い場所もたくさんあるのでリサーチとロケハンを楽しんでいただきたい。
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