花火野郎の観覧日記2015

観覧日記その10 7/12
2015 東京競馬場花火大会

  
東京都・府中市


オープニング

単発の狭間のスターマイン

単発の狭間のスターマイン

単発の狭間のスターマイン

立体花火劇場


 

   

   
   
 日程表作りなどをしていたから開催は以前から知っていたが観覧は初めて。7月の第二週というとこの大会としてはけっこう早い。例年なら下旬くらいだと思うがレースの日程などとの兼ね合いだろうか。この花火は競馬場近隣住民への感謝デー的な色合いが濃く、府中市民や競馬場利用者以外には花火大会について告知されないことで有名だ。だから過去の私の日程表などでもそこをくんで掲載していない。
 おそらく別の大会の日程とかぶることが多かったのだと思い当たるが、それで観覧していなかったのかもしれない。今年は例年より早めということと、梅雨の晴れ間に当たったことで夏観覧の馴らし運転を兼ねて出かける。しかし馴らしには厳しい暑さだった。最寄り駅のホームに立っているだけで汗が止まらない。住処からはJRで1時間半ほどの行程。
 これが中央競馬ってやつか。なによりその競馬場自体の規模に驚かされる。私がながらく居住していた現在のさいたま市浦和区には、地方競馬の「浦和競馬場」があり、そこを会場に浦和競馬場花火大会が開催されていた(現在は消滅)。それで何度も出かけた。学生だった頃は自宅から眺め、結婚して子供ができると子連れ観覧にも行った。そこそこ広い場所だと思っていたが、この東京競馬場はコースの規模も観戦スタンドの規模も桁違いだった。馬が走る楕円のコースの長辺差し渡しが浦和では600メートルくらいだが、ここではその1.6倍もあるのだ。浦和のコースがすっぽり内側に余裕で入ってしまう。
 私の住処からだとJR武蔵野線の府中本町駅が最寄りになるが、改札を出るとすぐに屋根のある長い連絡通路が競馬場内まで直結している。そこを抜けるともう馬場や巨大なスタンド、巨大なターフビジョンが一望できる西側の一角に出る。ぱっと見て、見晴らしがいいから観覧はこの辺りでもういいじゃないか駅に近いし、という気になった。それでも馬場中央にあるコース内観覧エリアもロケハンしておくかと向かう。馬が走るコースがあるため、大きなオーバルの中央にあるコース内観覧エリアには地下通路を通る。これがまた幅広くそして長い巨大通路だった。途中でこんなに遠くまで歩くのが嫌だ。と思うほど。地上に出るとどうやらコース内側から観戦する場所らしく、そこにも投票所(馬券売り場と払い戻し場所)やいくつもの飲食コーナーが建ち並んでいた。投票所はエアコンの効いたかなり大きな建物で無数の発券機が並んでいる。馬券を買ったことがないわけではないが、競馬をやらない私にとってはその規模に驚く。しかし投票所?馬券を買うのは投票なのか、そうなのか。知らないことばかりだなぁ。そういえば馬券と呼んでいるが正しくは「勝ち馬投票券」とか言うのだっけ?
 それにしても暑い。コース内観覧場に来るともう炎天下。早く観覧場所を決めて屋内に退避しなければ。14時30分。ちょっと早かったかなぁ。つか一番暑い時間に着いてしまったぜ。コース内エリアは広大な芝生が拡がってそこに座る客もまだポツポツ。何階層にも椅子席が分かれたメイン観戦スタンドは下から3階席くらいまでに客が半分ほど埋まっている程度。スタンドは大きな屋根があるから過ごしやすすそうだ。いずれにせよ客が押し寄せるのはこの暑さじゃもっと後だろう。
 慣らし運転なのでカメラも三脚も1台ずつと軽めの装備。芝生エリアのことを考えてカートではなくカメラザックに入れて担いできた。そのまま芝生の多いコース内観覧場をぐるぐるロケハンしてまわる。場内あちこちに、敷物OK、敷物不可、通路、などの張り紙があり案内が丁寧でわかりやすかった。芝生も綺麗に管理されていてこういうのもさすが中央と驚くところか。東側の打ち上げ方向にも近づいたが、障害物があり花火の並べられている様子がよく見えない。観覧地を決めようにも何処に、何処から何処まで花火が在るか判らないことにはなぁ。何人もの警備員や競馬場スタッフに尋ねるが、聴く人ごとに花火の位置方向が違うものだから宛にならぬ。
 そもそもオーバルコースの内側東西に花火を並べて、それに平行した観戦スタンドから眺める、そういうツインリンクのようなセッティングだと思いこんでいたが違っていた。観戦スタンドの正面反対側になるコースの南側は直ぐに中央高速道路が平行して隣接しており、おそらくコース内に花火を置くと、高速道路までの保安距離が得られないか、道路への降灰がまずいのだと思う。結局、花火はコースの東側の半円のコーナーやその内側辺りに置かれ、その反対側や観戦スタンドから眺める、とそういう設置になっているようだ。各所で配布されているプログラム誌には花火のだいたいの方向しか記載されていない。うーむ「勘」でやるしかないか。
 ロケハン中に、何人もの知り合いの愛好家氏に出会うが、私同様に初観覧の方ばかり。皆さんどこで観ようかと探しているようす。知り合いでなくても、カメラを持つ物同士はそれとなくわかるのか何度か写真愛好家に話しかけられたが、やはり初めての場所のようでお互い情報が無いのが残念だった。
 予報は南風で、はたして日中からそういう風向きだった。馬場を渡る風が心地よいのと下が芝生なのがこの日は救いだった。一息いれて芝生に座って風を浴びているとなかなか快適だった。下がアスファルトやコンクリだったら居られない。じりじり焦がされながら観覧可能エリアを歩き回って撮影ポイントを探す。スタッフの話、一部だけ見える花火筒、馬が疾走するコース自体には花火を置かないだろうという予測、などから、だいたい左はこの辺り右はこのあたり、真ん中がこの辺、とオープニングとフィナーレに予定されているワイド打ちの場合の規模の見当を付ける。
 いったんは子供向けの遊具広場の一角に仮決めした。すべり台など全ての遊具は建築シートなどでぐるぐる巻きにされ、最初から使用不可になっていた。そこからはもっとも遮るものがなく打ち上げの根本から見えそうだったからだ。地下通路を通ってコース内に渡ってしまうと、もうスタンド側に戻るのが面倒になり、こちらでいいやと横着に決めることにしたわけだが、遊具広場のあたりは花火は下から見えるが観戦スタンドなど「東京競馬場らしい」事物が見あたらない場所でもあった。開催時間を想定すると、その遊具広場の先には見通しがいいだけに何もそれらしい物が無いだけでなく灯りも無い。都心方向に向くわけだから地平の辺りは明るくシルエットになるかも、しかし基本的に「花火以外に何も写らない」場所。それなら競馬場内で撮影する必要すらないじゃないか。仮決めしたもののそこがどうにも写真家としては納得がいかなくて他の場所と行ったり来たりを繰り返して悩む。
 投票所の建物の外側にはそこを取り巻くように幅の広い屋根があり通路となっていた。雨の日にも濡れずに投票所に出入りできるわけだ。その下に照明が連なって昼間なのにそれが点っていた。その照明が花火開催時にも点きっぱなしであることをスタッフに確認した。屋根の下は地下通路への導線になっているので全部消してしまうと真っ暗になるからだと考える。
 それでこの投票所の建物と灯りのついた外屋根の並び、その隣の救護所の建物をそれらしい前景として置くことを考えた。どちらも建物としては高さがないが花火の根本は見えなくなってしまうし、花火のセンターはこの辺りとか目標物も見えにくいので難易度が高い。それでも大きさの対比物やこの競馬場らしい何かを入れたかった。打ち上げ位置と幅の規模は予測だが、手前の建物の位置と花火の出所を想定して細かく立ち位置を調節。最終的に観覧場所の最後方、後ろは直ぐ立ち入り禁止のフェンスを背負うような位置。観覧可能なエリアではコース内でいちばん花火から遠い位置。私の左側にはカメラが1台もなく、この構図で撮るのは私だけになった。ようやく位置決めしたあとは小一時間ほど涼しい投票所内の椅子でクールダウン。知り合いには何人か出会ったけれど、撮影場所の近くには知人は誰も居ないので待ち時間はことのほか長く感じた。投票所の屋上は見物席のようだがこの日は上れないように規制されていた。普段は屋上から疾走する馬を眺めることが出来るのだろう。
 観戦スタンドの方では場内は三脚禁止とも聞いていた。コース内の芝生エリアに限ってはその中で撮影している写真愛好家は全員最後方で立って三脚を構えていたが特に注意されたりはしなかった。夕方、日よけのためにテントを展開している家族連れなどに畳むようにスタッフが客の間を注意してまわっていたくらい。
 17時を過ぎると目に見えてお客が増え始め、私の前方向は広大に芝生が拡がっていたが、最終的に三脚の直前までびっしり座りこんだ客で埋まった。夕刻から場内の照明塔に灯りが入り、馬場全体を照らし出していたが、それも開始直前に落とされた。前景に使うつもりの通路の屋根にある照明はスタッフに聞いたとおり点いたままだった。
 打ち上げ直前に、これは横位置がいいかもと予感がして縦で構えていたカメラを直す。そしてカウントダウンとともにワイドで一斉に出たのだが、これがほぼ幅も高さも予想通りだったので少し感動した。若干予想より左向きというかセンター位置が少し考えていたのと違ったのでそれを微調整した。打ち始めてみると風は南南東くらいか、向かって右から左の流れ。物量によっては煙が浮き気味でしかも観戦スタンド東側を中心にかなり煙が流れ込んでいた。
 横位置は開幕だけで、3部構成の2幕目からはほぼ中央からだけの単発打ちとスターマインの繰り返しになったので中盤は縦位置狙い。幅600メートルとアナウンスしていた3幕目のグランドフィナーレ「立体花火劇場」で再び横位置に構え直し、画角も最大の24ミリとした。いちばん遠い位置に居て24ミリだからなかなかワイドなのだと思う。この立体花火は、こちらからは根本が完全には見えないが、どうやらサークル(円形)で星打ちしている感じで、打ち上げ玉よりもっと手前に置いているのだと思った。残念ながら星打ちの物量がひとところで多いのと、風向きの関係で綺麗に見えたのは最初のうちだけだった。メインの観戦スタンドにかなり煙が流れていた。
 夕刻に目の前を埋め尽くす客を見て「これが一斉に帰るのか」と震撼とした。戻りは地下通路しかないから殺到するだろう。観戦スタンドの客もいるわけだから駅方面はどれほどの混雑になるのか、と帰りが不安だった。しかし終わった直後は場内照明が直ぐには点かなかったこともあって、真っ暗な中で客の動きが鈍かったのか、片づけて地下通路に向かうと中はさすがに混み合っていたが意外とすんなり入れ、人の流れもスムースだった。しかし駅構内に連絡する長い通路が窓も閉め切っての押し合いへし合いのサウナ状態なのに参った。どこかの花火大会で駅構内でこうなることはあってもこんなに長い距離続くことはない。いやーこれはこの夏どの大会に行ってもこれほどのサウナ状態行軍はないだろうから、もう耐性がついた気分。
 三駅利用できるから分散しているのか、徒歩圏の近隣住民が多いのか。震撼したほどは混雑に巻き込まれず、20時をすこし過ぎて打ち終わり、府中本町駅ホームに降りたのが20時20分だったから結構速かった。府中本町で乗った客のほとんどが2つ目の西国分寺駅で降りてあとはすかすかになった。
 猛暑の観覧を乗り切ったけれど、まだスイッチが入りきった感じがしない。やれそうかな、と手応えはあったけれど、夏のシーズンが今年も始まってしまったかと、と楽しみでもあり、暑さの中で続くのだろうかと体力や気力の不安感もある。

INDEXホームページに戻る
日記のトップに戻る