花火野郎の観覧日記2015
観覧日記その1 2/21
第44回 栂池高原雪の祭典
長野県・小谷村
以前からこのスキー場イベントを知ってはいたが、白馬エリアは私の住処からは距離的に遠く感じる。車で長野まで約3時間。それからさらに1時間半とか行く前から無理無理な気分になる。関越道の入り口にしている花園ICが住処から遠すぎるというのが壁であり、そこまで下道で早くも90分かかるというだけで気持ちが萎える。これが新潟や長野北部に車で出かけるのを毎度のように阻むのだ。
当然ながらマイカーが無ければさらに行く気にもなれず、そしてずっとご無沙汰だった。今期は車も冬タイヤも手に入れたし、ようやく雪のある場所の花火観覧に行ける、ということで出かけてみる。そもそもこの時期は雪予報ならそれだけで出動を見合わせるくらいだが幸いに今日だけは穏やかに晴れそうな予報。
往きは楽しいドライブだった。長野ICから白馬有料道路を抜けると大量の積雪が出迎えてくれて、車の前方には白銀にきらめく白馬連峰。海無し県埼玉は、今期は2月20日現在で雪無し圏にもなって、これほどの積雪を目の当たりにするのは初めてだから心がはしゃぐ。148号線に出ると白馬八方尾根からのスキー場銀座を北上。本当に素晴らしい天気で雪を纏ったアルプスに胸が高鳴る。
観覧場所だが、ゲレンデで撮ることも考えたが、松明滑走イベントがあるので止めた。ゲレンデ下部から見上げ、ゲレンデ上から見下ろしだと、スラロームの光跡が重なって良く見えない。それで対面の高い場所から見られればいいのだけれどなかなかそういうロケーションが見つからなかった。初めての現地でぐるぐる探すのも難しいし。それでストリートビューでロケハンして探したポイントをナビに地図入力して連れて行ってもらう。自分で考えていたルートとは逆に入る感じでナビはぴったり予定ポイントに連れて行ってくれた。途中休憩を入れて4時間ちょっとと意外に早い。走ってみないとわからないなぁ。白馬エリアに近づくに連れ、道路脇に除せられた雪が思いの外高い壁になっていたので、同じような道路脇の撮影ポイントは三脚より高い壁になってるのじゃないかしらと不安になった。
果たして予定地点の道路脇、撮影方向は雪が壁になっていた。多少の高さならスコップで突き崩してもいいんだが所により自分の背丈より高い。しかし一部低いところもあってそこからなら問題なくゲレンデが見通せた。現着は13時過ぎだが、ちょうど通りがかりに見通しがいいから、と三脚を取り出す写真愛好家が居たので、私も遅れじとさっそく道路脇に三脚を立てる。しかし以降私の直近には私の2本と、もう一人の1本とそれ以上に増える事はなかった(実際は僅か100〜200メートル程度ゲレンデ側に下ったあたりで遅く到着した知り合いの愛好家が何名か撮影していた模様)。見物人は花火の間際に車が2台くらい来た程度。スキー客が行き来に使う道らしく路線バスを含めて頻繁に車が通るけれど、そこに止まって見物するということは無かった。
正面のゲレンデを見るに、もの凄く賑わっているというほどの感じでもなかったが、それでもゲレンデ直近の駐車場は軒並み満車だったらしい。ゲレンデに直接行かなくて良かったぜー。そもそもこんな昼過ぎに来てそんな良い場所の駐車場が空いているはずもない。滑りが目的ならゲレンデには明け方着くような感じで車を走らせるのが普通だろう。かつてのスキー最盛期にはリフト待ちだけで2時間なんてこともあったがそれほどじゃなさそうだ。スキーをゆったり楽しむにはいい時代になったのかもしれない。
スキー場やアルプスの眺めが素晴らしいので、良い光線のうちにしばし写真を撮りまくる。陽も高くて春ぽい輝き。暖かかった。その後は歩いて行ける範囲で周辺をロケハン。以前ならさすがにゲレンデを目の前にすればちょっと滑ろうかという気にもなったが、ちょっとここはスキー場としても遠いからなぁ。帰りも長い道中なので動き回るのは最低限にした。
決めた場所はご覧のようなゲレンデど正面。初めての場所だからまずは正攻法で。全体を見渡せる場所ならゲレンデで探し回らなくても一番の問題である花火の出所もわかるだろう。打ち上げ場所はメインの鐘の鳴る丘ゲレンデの中段、下からのリフトの最初の降り口くらいのゲレンデ上部かと思っていた。すると探すまでもなく肉眼で向かって左端のゲレンデの一角で準備中の筒群が並んでいるのに気が付いた。「そこですか・・・」。斜面に上中下段3段にワイドに置かれていた。双眼鏡で見るに、最上段が7〜10号の大玉筒群のようだ。10号筒が8から10本。あぁ10号か、これは楽しみだなぁ。なかなかゲレンデでも10号入りのイベントは数多くない。あとの問題はこの幅広いゲレンデのどこを松明滑走のコースにするかだな。それによって花火に対してバランスの良い構図になるかどうか。あとは本番になるまでわからない。カメラを出して10号開花位置を予想した上で適正な画角を確かめておく。ロケハン時は少し位置を変えると花火群の並びが変わるし、ゲレンデに対する角度も変わるので、行ったり来たりで位置決めを思い悩んだ。
車だとこういう場所での待ち時間は本当に楽だ。三脚の近くに車を駐めて仮眠したり、開通したルーターを使ってタブレットを見たりして時間をつぶす。ようやく現地でマップや天気が眺められる。花火の打ち上げ位置が判ったのでグーグルマップで間合いを再確認。風向き予報を調べたりする。花火筒まで約1キロメートル。
午後3時を過ぎると晴天だった空は次第に雲が厚くなってしまった。日没頃の夕景などが撮れるのを期待したのだけれどそれは叶わなかった。曇り空だからかなかなか暗くならず、カメラを三脚に乗せて準備を始めたのは18時45分くらい。気温は高めで吐息がやっと少し白く見えるほど。この程度だとカメラを長時間晒しても結露や霜の心配が少ない。
メインの鐘の鳴る丘ゲレンデの下端まで1キロメートル足らずの距離で、スキー場のさまざまなアナウンスも良く聞こえる。19時45分スタートの松明滑走をまず撮ろうとしていたのだが、予定時間に始まらなかった。この松明滑走の光跡をあとで花火とPCで合体させるために、花火の位置と高さ、松明滑走のコースなどを含めてあらかじめ画角と構図を決めてフレーミングしてある。初めての場所なので最大の10号がどこまで上がるか?などは経験値からの予測になる。
カメラは2台体制で単純に縦と横。メインの縦位置カメラは後半のパートで花火中心に撮るため柔軟に最適な構図にする。もう一台は横位置でスキー場全体と10号の開花位置を予測しての固定構図で撮り続ける。
暗くなって、ゲレンデ全体に照明を入れるのかと思ったら、鐘の鳴る丘ゲレンデの右端の一列だけだった。花火があるのでスキー営業は中断だろうけどナイターとかしないのかな?あと花火や松明滑走の時にちゃん消灯してくれるかな。点けっぱなしでイベントやる場合もあるからな・・・。
ナイター照明は事前に消されて松明滑走は15分ほど遅れてスタートした。どこを滑るか気になっていたが、驚いたことにスタート地点から真ん中と左右の3方向に分かれて、幅広いゲレンデ全体をスラロームし始めた。いいよ、いいよ、最高に絵になっているじゃん。一般募集の松明滑走参加は100人くらいかと思っていたが、先頭が下部に到達するかというのにまだ滑り始めない人もいるくらいで、なんと3方向の1つのコースだけで100人くらい居そうだった。いやいやこれはゴージャス。
松明滑走が終わると今度は雪上車とかスノーモービルの滑走があって、続いてエアリアルスキーのデモンストレーションとかやっているみたいで盛んに歓声が沸いていた。
出だしの遅れで進行が玉突きで遅れていき、花火のスタートも20時30分からずれこんだ。最初の15分はメッセージ花火的なもの。5号中心で1発だけ10号。これで画角が正しかったどうかようやくわかる。デジタルカメラの素晴らしい所はその場で写り具合が確認できるところ。銀塩の頃は、花火と松明滑走の長時間露光からゲレンデナイター照明やどんど焼きのたき火など、写し込みたい要素は、全てワンカットへのその場での光学合成のみだった。それに比べるとデジタルは楽といえる。
風向きは予報どおり、南から南南西くらいで、向かって左から右へのゆっくりした横流れ。
後半の部は最後にワイド打ちを入れ、新作玉などが披露されるらしい。しかし視界が悪い場合はそうした試験玉は(花火屋さんも判別不能だから)打たない、ということだった。だから白馬だけの稜線まですっきり見えるこの日のコンディションはありがたかった。
10号は新作なのかハーフ系を中心に変わった趣向のものが見られた。そして真打ちは見事な多重芯だろう。実はこのスキー場イベントは初めて来るので(白馬系のこのエリア自体初めての来訪)、担当煙火業者がどこなのか知らなかった。こういうのは直ぐに電トツしたりで調べ上げる愛好家も多いけれど、私はそういうのが苦手。長野県の北端だから守備範囲的に・・・煙火かなぁ、とかその程度。
最初の15分間も小スターマインと色満星と錦冠ではどこの花火業者か判別不能。緑の発色に特徴があるかな。後半になって、独特の千輪の段咲き落としの玉が登場したので長野県でこれはもう2業者に絞られる。その後の芯物でただひとつの煙火店に絞られた。南信から出張かぁ。でも同県内だし。これはしかし思わぬ収穫だ。多重芯はこの1発だけで今日の一日が報われたと思うほど。
冬場に素晴らしい玉に出会えて遠路を来た甲斐があった。最終の打ち終わりが21時18分。打ち終わったらナイター照明が全部点灯するかと思って露光しようかと待っていたがそんなこともなかった。シーズン中の土曜の晩だというのに現在じゃオールナイトはともかくナイター営業すら無いのだろうか。
現像というか、今回の仕上げのポイントは、「肉眼で見ている感じを超えない」という点に尽きる。月明かりもない晩だから花火に照らされる程度のゲレンデは意外と暗い。好みの問題であるけどゲレンデや手前の町灯りをPC処理で少し起こすことはあっても、それは肉眼で見ているくらいのリアルな感じを超えない、ということに注意している。それによって、自然と視線が花火に集中し、花火が主役の花火写真となる。他はそれを上手に引き立て、スケール感を感じさせ雰囲気を醸す程度でいいのだ、と私は考える。
INDEXホームページに戻る
日記のトップに戻る