花火野郎の観覧日記2015

観覧日記その17 8/16
平成27年度 大石田まつり最上川花火大会

  
山形県・大石田町


大石田駅前

誰か居ませんか

打ち上げ方向の眺め

筒場方向。良く見えません

第一ポイント。
白線の川側が観覧場所

第二ポイントから。
小さい長生橋?の大橋

灯籠をテスト流し。橋の
向こう側の欄干に一列に提灯が灯る
橋の照明はこの真ん中のみ

   

   
   
 鶴岡から大石田までは、羽越本線、奥の細道最上川ライン、奥羽本線と乗り継いで1時間半ほどだ。水田と山と青空、それしか見えないようなのどかな車窓を見ながらのんびりと移動。乗車前に鶴岡駅で昨日の特急券払い戻しをしておく。
 大石田駅着は10時30分。強烈な陽射しの中、暑いからか日曜日だからかどうか駅前には人っ子一人居ない。広い駅前が果てしなく広く感じる。まったくの初観覧なので構内の観光案内所やパンフレット類をチェックするが、花火の要約と行事の簡単な予定が入ったコピーしたようなチラシしか無かった。裏には会場の地図も載っているので必要にして充分か。他に情報もなく、案内所にも人が居なかった。売店と改札に各一名・・・。本当に祭りの日なのだろうか。
 二尺玉10連発があるという大石田まつり最上川花火大会については知っていたが、8月16日固定で、ここだけ単独で見に来るのもハードルが高い気がしていた。今年は鶴岡の翌日、新庄回りで帰り道に立ち寄る感覚で観覧できるので来られたわけだ。
 大会本部のある場所まで1キロちょっとだから歩く。打ちのめされるような陽射しだ。まずは観覧場所であろう堤防道路に上がろうとするがどこにも昇り口がない。地元の人に尋ねると堤防の際まで住宅が建ち並び、それぞれの路地や家の庭方向からいくつも階段が在るらしいのだが見あたらたない(後で堤防側から見るとこういう狭いあるいはパーソナルな登り降りの階段などはロープが張られ通行禁止になっていた)。露天商が建ち並ぶ祭りの目抜き通りに大会本部があったので色々必要なことを聞きに行く。そこにあった立派な冊子のプログラム誌をゲット。100円也。駅で手に入れた簡単なプログラムと違ってより詳しく掲載されていた。打ち上げの主体は徹底して10号単発打ち。そこに音楽付き創造花火やら大小スターマインが絡み、最終が20号10連発。10号1発でプログラムの番号ひとつになっていたりで、1時間50分の開催時間でトータル92番まで出しものがある。
 本部で聞いて堤防道路には最上川に架かる大橋の袂から入る事にした。まずは川や河川敷が見える場所に出ないと打ち上げ場所も不明だ。舗装された堤防道路は広く、道の半分が通路、半分が観覧スペースとして割り当てられていた。そこから眼下に幅広い最上川がゆったり流れ、対岸河川敷そして山並みの緑が美しく、素晴らしい景色だった。まだ午前11時くらいだからか、付近の堤防道路上はほとんど場所取りが見あたらなかった。対岸の草地にところどころ煙火店のものと見られるトラックが陽光を反射して銀色に輝く。打ち上げ場所はそこからもっと下流側のようで正面に見えるくらいまで北側に移動する。河川敷に協賛席などが並ぶ花火正面と見られる位置まで来ると、その辺りの堤防道路上はみっちりと隙間無く場所取り済みだった。まぁそうだろうな・・・。対岸の打ち上げ場所までは300メートルもないのでかなり近い。花火に向かって左手が上流側。そこから下流に向かって順に花火を設置し下流側に10号さらに右に20号という具合らしい。らしい、というのは、対岸から見ると背丈の高い草むらの中、と言う感じでほとんど筒が見えないのだ。20号と判断したのは下流側にクレーントラックがあったので20号筒の積み卸しはその辺りと考えたわけだ。もちろん対岸の堤防道路まで足を運べば、そこから筒群が見えるのだろうが遠い・・・・。
 だいたい設置場所がわかったところでそこ全体を斜め上流側から見る位置に三脚その一を仮置き。いわば正攻法のかぶりつきポイント。決めるにはもう少し他をロケハンしないと。打ち上げ場所を前にして瞬時に考えたのは「闇夜に花火だけ」というロケーション。そしてたぶん超接近戦。最上川が手前に流れているが川面に花火を映すにはちと視点が高すぎる。そして対岸は河川敷、堤防、山と灯りの入る物が何もない。人家も街路灯もない。うーむ。
 最初は気が付かなかったがそこに架かっている大橋を離れて横方向から見ると、ひと目で「長岡の長生橋に似ている」と思った。小さい長生橋みたいな特徴のある形をしていた。プログラムや祭りパンフレットの図案になっているのはこの橋だったのか。そもそも最上川花火大会はこの大橋の完成(昭和5年)を祝して、完成の翌年から始まったという経緯らしい。現在はさらに上流側に「虹の大橋」が架かり、そちらが動脈路になっているのか車の通行量がぜんぜん多いようだ。
 ということは町とこの大会の象徴のような橋か。これが前景にならないか。闇夜に花火だけは避けたいのは当然ながら、何か「場所感」が加わらないとなー。大橋の上流側をロケハンしてみる。花火群のだいたいの位置と方向は判ったので、橋の向こう側のいい感じの位置に花火が開き、川面も入るような構図が取れる場所はないかと探す。携帯端末で地図や距離を確認すると花火まで800から1000メートルくらいか。問題は10号を打ったところで、橋の上どれくらいの高さまで上がってくるか?と言う点。ここは経験則がものを言うが、なにせ初めての場所だし。と結局だいたいこんなもの、とかなり「適当に」堤防道路脇の柵のような縁石に片足を乗せるように三脚をその二を置く。付近もロケハンしたがこの時点では他に三脚は見あたらなかった。さてどちらが撮影基地になるか。
 

10号

10号

スターマイン

20号彩色千輪

20号錦冠彩色小割浮模様、2発同時
  
 陽射しを避けるために木が多いどこか近くの神社や寺に行こうと思ったが、大橋の下が日陰であることに気が付き、河川敷に降りてそこに避難。河川敷や川面を渡ってくる風が心地よく結局そのまま長い午後を過ごすことになる。ときおり三脚の様子を見に行ったり、飲食物の買い出しとか。しばらくして橋を挟む第二ポイントを見に行くと三脚が三脚を呼び寄せて増殖していたのに苦笑した。真似しても知らないよ。私は初めてだからどうなっても知らないからね。つか定番ポイントなのだろうか。
 午後も半ば、さらに少し上流側の川縁にまでロケハンしにいくと知り合いの写真家が来ていたので挨拶して歓談。聞けば何度もこの大会は撮っているということで、画角など色々教えていただく。上流側から順に花火が並びやはり一番奥が二尺とのこと。二尺は二カ所に分けて筒が置かれていて8発目まで1発ずつ交互に打ち、最期の二発が二カ所同時打ちであることも教えていただいた。
 そして自分の三脚位置に戻って色々データを鑑みて再考するに、打ち上がってみないと何とも言えないが、けっこういい具合なのではないかと思った。接近した位置とどちらにするか、午後はずーっと迷って行ったり来たりしていてが、夕刻になり、意を決して第一ポイントの三脚を回収、大橋を眼前に見る第二ポイントに決定。橋までは150〜200メートルくらい。
 しかしここでも問題が。橋の下流側つまりメイン会場側の欄干に、納涼提灯が一列にかかって、それが画面を横切る前景の灯りの列になる。しかし橋そのものには長生橋のようなライトアップ設備が無い。橋の中央あたりに路上を照らす照明がひとつあるだけだ。つまり暗くなったら橋の形が見えるのかしら。また橋がシルエットになるくらい華々しく打ってくれるのだろうか。
 夕方に機材を橋の下から運んでスタンバイ。風は南東方向でほぼ順風。この風向き予報も橋の上流側を選んだ要因だ。カメラは撤収しやすいように1台だけにした。
 川面を橋の向こうから2隻のボートがやってきて、私から見て左斜め前の川面にアンカーを打って並んで停泊した。警備の船かなと気にしてなかったが、船上には段ボール箱がいくつも積まれていた。それから少し経って思い当たった。そうか「灯籠流しの船か」。プログラムを見ると花火開始の19時から、灯籠流しも同時にスタートすると記載されていた。
 これは思わぬ美味しい「写真的な」プラス要素だ。各地で灯籠流しと花火は何度か観ているけれど、うまくいけばなかなかいい感じに写るだろう。川面を入れた構図だが、川が写るには地上まで垂れる錦冠でも打たれないと難しい。灯籠が流れてくれればそこに川らしい感じが出せるかと。まだ明るい17時過ぎからおそらくテストなのか、何度かに分けて灯籠を流していた。明るい時間にはその灯りがよく見えない。また灯籠がどういう形状のものかも遠目で判らなかった。辺りが暗くなるにつれて黄色からオレンジ色の温かい光がゆっくり流れていくのがわかった。
 19時を少し過ぎて打ち上げが始まったが、ちょうど花火の背後が日没方向で20分くらいは暗くなりきらなかった。それでも振り返っても後ろの方で座って見ている客の顔もよく見えないほど辺りは暗い。最初は画角のチェックなど。10号が50ミリ弱くらいの画角で入ってきたが、まぁ適当な位置決めの割にはうまいこと橋の真ん中から上がって来たのにはびっくりだよ。おかげで橋のツンツンがシンメトリーでいい具合。スターマインは10号入りではないが、上流から見て10号より手前に設置しているらしく、5号程度の到達高度が10号以上だった。
 灯籠流しは花火とともに始まり、驚くことに打ち止めになるまでずっと絶え間なく流し続けていた。公式によると数千個ということ。流した灯籠は下流で回収されるらしい。花火の間じゅう、幾筋もの灯籠の灯火が続き、橋の向こうで重なり光の帯となる。遙か遠くでそれは一所に集まって明るい輝きを放っていた。
 ラストはいちばんの見せ場である20号10発打ち。1発目の錦冠できっちり構図を調節し、2発目から順次撮った。錦冠、芯入錦冠、芯菊、芯菊の小割浮模様、彩色千輪、二度咲千輪などのラインナップ。ラストが錦冠彩色小割浮模様の同発。20号はそれぞれの玉名も業者名も記載がないので、どこ製の二尺かは不明だが2社以上の製作社と思う。
 田舎のお盆ののんびりした花火大会。ここで暮らす多くの地元客に混じって里帰りしたようなくつろいだ気分で花火を観た。凝った作りの玉も豪華なワイドもないけれど、芯菊、千輪。錦冠なと1発ずつ丁寧に上がる10号は凛として闇に映え、風情のある開花に心が和んだ。
 観覧場所は駅まで道のりもわかりやすくて近い。それも選んだ理由。花火が予定より5分ほど早く終わったので予定の電車まで20分以上の余裕が出来た。片づけて通りに出ると駅までは1本道。ただし緩く長い上り坂。カートを引いての登りは息が上がって速度が出ない。なんとか予定通り10分あまりで21時ちょうどに駅に到着。花火のための臨時便は山形方面への1本しかなく、あとは時刻表通り。宿泊地の新庄方面は臨時も無いので花火後一番早い時刻が21時11分発の新庄行き。次は1時間以上後になる。

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