花火野郎の観覧日記2015

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観覧日記その21　10/3
第84回　土浦全国花火競技大会
　　
茨城県・土浦市

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打ち上げ場所遠望	打ち上げ場所遠望	打ち上げ場所遠望	三脚群。	三脚群。この画面内に約50本
昇曲導付四重芯変化菊 加藤煙火株式会社（愛知）	虹色のグラデーション 株式会社齊木煙火本店（山梨）	昇り雄花四重芯変化菊 有限会社太陽堂田村煙火店（長野）	昇曲付三重芯変化菊 有限会社菅野煙火店（福島）	昇曲導付五重芯菊花の極 有限会社篠原煙火店（長野）
昇曲付五重芯銀点滅 株式会社山�負潔ﾎ製造所（茨城）	昇天銀竜 五重芯変化菊 株式会社小松煙火工業（秋田）	昇り分砲付四重芯菊先紅緑銀乱 有限会社伊那火工堀内煙火店（長野）	昇り曲導付五重芯錦冠菊先紅点滅 野村花火工業株式会社（茨城）

　　　
　前日は早めに寝て、午前4時起きして車を走らせる。現地の観覧希望場所近くには6時前に着いた。さっそく三脚を担いで畦道をひた走って候補地の農道に向かうも綺麗に場所取り済みだった。まぁそりゃそうだろうな。場所取りのために前の日に来ることはできないし、せいぜい当日に少しでも早く現地入りするくらい。路上が無理なら田圃の中も在りか、と覚悟していた。二番穂が長く伸びた田圃は木曜夜からの雨で、ところどころ広範囲に水が溜まっていた。だから長靴やら田圃に敷き詰める段ボールとかたくさん田圃対策用品を車に積んできた。しかし思いがけずありがたいことに、前日から入っていた知り合いの愛好家諸氏のご好意により、私の居場所まで確保して貰っていたらしく、希望地に私の名前の一部が書かれた短いガムテが名札のように貼ってあった。そしてその愛好家氏達から「実は」と前日からの場所取り攻防戦の経緯を詳しく聞かせてもらうことができた。今年は写真や動画の愛好家氏がよく使う桟敷裏の田圃の農道に関しては、過去に一度もないほど執拗な場所取り一掃がなされたようだった。昨年も一部の路上に施されたガムテープなどによる場所取りが撤去されたのだが、今回は範囲を拡大して「公道」であることを掲げ、警察をも交えて何度も行われたらしい。
　　　
　そもそも現在のような堤防道路に隣接した桟敷席が設けられる前は、私ども写真や動画の愛好家組はこの田圃エリアではなく、堤防道路の打ち上げ側の端に一列に並んで観覧していた。堤防の打ち上げ側の斜面とその下の河川敷の一部はまだ自由な一般席で、堤防道路と斜面は当日の正午から場所取り解禁というルール。それから一斉に場所取りしていた。だからその頃は桟敷後方の田圃で観覧、撮影する愛好家は少なかった。その後2008年を境に堤防斜面に桟敷を増床し、それと相まって道路上には目隠しのためのコンパネの壁が設けられ、三脚組は堤防道路から追われたのである。そして後方の田圃や農道が次の観覧場所になったわけだが、以降毎年のように団体桟敷が拡張されたり、農道が舗装整備されたり、なにより田圃がつぶされて新興の一戸建てやアパートが爆増し、しだいに観覧可能な場所が少なくなっていった。
　　　
　観覧場所を提供していただいた私も、自分なりに事前努力はした。当日の早出もそうだが、9月下旬、10日ほど前の休日、墓参に車を出したついでに下見していた。昨年数週間前に場所取りして当日までうまく残っていた、という事例を聞いて、まぁ、あわよくば10日ほど前に確保できるかと思ったのだ。しかし当該の農道の写真に良さそうなポイントはとっくの昔に隙間無くガムテープが貼られて名前も入っていた。場所取りしようにもその隙間すらもなく、本当に見るだけで帰ってきた次第。しかしこの時点では「場所取り禁止」の看板はひとつも無かったのだ。
　この後、おそらく9月25日までの間にかなりの数の小さな看板が田圃脇に立てられた。それには「公道のため場所取り禁止、見つけ次第撤去」とある。しかしこれが市役所か茨城県警か、住民連合かどこから発令されたものか、撤去の権限がどこにあるのか記載されていない。同時に、ではいつから場所取りできるのか？のルールも明記されていない。河川敷の一般席が前日の正午から到着順と、明確なルールがあるのに、今年唐突になされたこの禁止にはルールがないようだ。
　公式ホームぺージのニュース覧にこの「公道場所取り禁止」であることが記載されたのは、開催2日前の10月1日だった。掲載日は9月24日付けになっているが実は私は20日過ぎからは毎日公式HPを観ていたので、9月30日まで掲載が無かったのを確認している。これ以前に愛好家の一人が花火観覧の帰りに場所取り状況を私の後で見に立ち寄ったくだりを観覧記に掲載していた。その花火が26日の土曜だったが看板が立っていた。つまり市役所が業務をやっている25日には看板があったことになる。また、看板が立てられた時には既に路上にはみっちり場所取りされていた。何週間も前から場所取り行為がされているのに、開催間際の後出しで禁止をうたったわけで、混乱するばかりだ。来年もやるなら禁止するだけでなく、解禁日解禁時間、責任の所在を明らかにしたルールを設けて1ヶ月以上前に告知して戴きたいと主催者に希望したい。
　看板の出所が明記されてないものに、効力なんか無いわけだが運用は相当に実力行使された模様。前日の金曜に来ることができた愛好家氏によれば、その昼ごろから深夜に至るまで6〜7回にわたって、市の職員や近隣住民、そして警察官が繰り返し場所取りの撤去にやってきたという。警察官が自らガムテープの引き剥がしをやったというから驚きであるが、とにかく路上に場所を確保するための物（三脚とかガムテとかテントとか）を一切置かせない、とう徹底ぶりだったらしい。ガムテは禁止され、チョークでラインを引いたらしいが、それも住民が消しにきたらしい。この攻防の末、夜の間にいつ撤去されるかわからない、場所が無くなってしまう、という危機感から愛好家氏達はその場を離れる事が出来ず、とうとう夜通しで交代で寝ずの番をしたということだ。実際深夜も近隣住民が見回っているようで、離れれば撤去され別の者に取られてしまうかもしれないのだ。
　そうした長い夜が明けた頃に私は到着し、多くの愛好家氏が苦労して死守した場所を分けて貰うことになったもので、その場所は過去に一度も自力では確保できない位置だっただけに、いきさつを聞いた後ではいっそうに恐縮し感謝の気持ちだった。
　その場所はありがたく使わせて戴いたわけだが、その後もその公道上はいつになったら解禁、というルールが無いものだから私どもは「また撤去されるかも」と疑心暗鬼で確保した位置を離れることもできず、また物を置くなと言われた手前、三脚を立てるもできずにその場に座っているしかなかった。結局露天商が何台も車を入れて準備を始めればもうパトカーなど見回り程度では入ってくることができず、午前中は緊張ムードだったが、以降三脚を伸ばして花火の待機状態になった。長い攻防戦の終わりである。この道は2011年に拡幅して舗装されたのだが、今年になって公道に格上げされたのだろうか。それにしてもかつてない執拗な撤去騒ぎになったわけがわからない。昨年観覧した後に、ガムテープすら剥がして帰らない不届き者が多かったのだろうか。なにか近隣住民をよほど不快にさせることでもあったのかと訝るほど徹底して執拗な場所取り阻止の顛末だった。しかし例年三脚組が数多く集結していた団体桟敷席に続く田圃に面した道路脇100メートルほどの範囲は、当日になっても立ち入り禁止が解かれず、ついに花火が終わるまで1本の三脚も立てられることがなく、観覧さえも完全追放状態になったのは残念だった。
　一般客を田圃に入れさせてくれるうちはいいが、長い目で見ればこの田圃エリアも将来は宅地になるだろう。そうなれば視界が無くなり、この地での観覧もまた失われるに違いない。
　　

新市庁舎開庁記念スターマイン	スターマイン・星空のワルツ 株式会社芳賀火工（宮城）	スターマイン・日本の鼓動 加藤煙火株式会社（愛知）	スターマイン・日本の鼓動 加藤煙火株式会社（愛知）	スターマイン・日本の鼓動 加藤煙火株式会社（愛知）
スターマイン・追想 株式会社マルゴー（山梨）	スターマイン・追想 株式会社マルゴー（山梨）	スターマイン・追想 株式会社マルゴー（山梨）	スターマイン・紅華〜紅の世界〜 新潟煙火工業株式会社（新潟）	スターマイン Enjoy ハーモニー with スマイル!! 有限会社糸井火工（福島）
スターマイン ノスタルジア〜あの日の森へ〜 野村花火工業株式会社（茨城）	スターマイン ノスタルジア〜あの日の森へ〜 野村花火工業株式会社（茨城）	スターマイン ノスタルジア〜あの日の森へ〜 野村花火工業株式会社（茨城）	スターマイン ノスタルジア〜あの日の森へ〜 野村花火工業株式会社（茨城）
スターマイン キラメキ☆パーティークラッカー 株式会社イケブン（静岡）	スターマイン キラメキ☆パーティークラッカー 株式会社イケブン（静岡）	スターマイン 薩摩華焔歌劇団第一幕「戀焦」 株式会社大洋花火（鹿児島）	スターマイン・平和への願い 株式会社斎木煙火本店（山梨）	スターマイン・平和への願い 株式会社斎木煙火本店（山梨）
スターマイン・平和への願い 株式会社斎木煙火本店（山梨）	スターマイン Emotions（エモーションズ） 株式会社紅屋青木煙火店（長野）	スターマイン・光の旋律 株式会社和火屋（秋田）	スターマイン・The Rose 株式会社山�負潔ﾎ製造所（茨城）	スターマイン・悠久を照らす輝 高田花火工業（福岡）
土浦花火づくし	土浦花火づくし	土浦花火づくし	土浦花火づくし	土浦花火づくし

　車を離れた場所に駐めに行って、昼過ぎに機材を運んだあとは、日陰に避難したりしながら多くの愛好家氏と歓談して長い午後を過ごした。それにしても焼け焦げる陽射しで午後は暑くて参った。夕刻まで風は珍しい西風で、定時雷の煙が向かってくるようなオヤオヤな風向き。AEON側の裏観覧場所を偵察に行った愛好家も居たくらいだ。その後夕刻に不意に例年並みの南方向に向きが変わり、後はスターマイン方向でやや滞留気味な向きだったが終始良好なコンディションに恵まれた。
　車なのでカメラは2台三脚2本。カメラは割物、花火づくし担当とスターマイン担当と振り分ける。結果としてスターマイン担当分で割物の押さえとワイドの縦撮りも混ぜたせいで、メモリカードが尽きるまで撮ってしまうことになった。航空写真だと連写するからメモリ残量が無くなったりバッファが埋まった経験はあるけど花火では初めてだなぁ。最終のスターマイン3連発のあたりで残りカットが10カットになり、そこでまだメモリに余裕がある割物用カメラにバトンタッチして残りと最期の7号84連発の部分を撮る。予備のメモリカード差し替えよりその方が手間がない。
　開幕ではレクチャー花火のあと、土浦新市庁舎開庁記念で幅の狭いワイドスターマインが披露された。打ち上げ現場を見てきた愛好家氏によると、開幕ワイドの右端が、土浦花火づくしの右端と同等ということで、画角の目安になるということ。かつての市庁舎は中心部から離れた高台にあったが、新庁舎は駅前の便利な場所に移り、9月24日から業務を開始している。
　プログラム中盤の土浦花火づくしは、例年中央部で8号が最大だが、今回は10号18発が増量。またワイド幅も拡がって700メートルほどに拡張されているということだ。私もこれまでより100メートルほど前に出て撮っているわけで、全体幅が入るかな？と心配だったが、16ミリからの広角を用意してきたので大丈夫。かつて同じ場所を都合していただいたことがあったが、同じレンズの手持ちが無くてやむなく辞退申し上げたことがある。
　もはや土浦は観覧場所を確保するのが最大の労苦になってしまったが、それさえクリアすれば花火観覧は実に楽しみなひとときだ。例によって本番は実況放送を聴きながらの観覧。田圃一枚前に出ているせいか、河川敷のスピーカーからの直接音もタイムラグはあるもののいつもより良く聞こえた。夜の冷え込みに備えた防寒装備も持ってきたが、上着を着るくらいで済んだ。
　割物では山崎煙火製造所と小松煙火工業が極めて出来が良かった2強。山崎煙火は芯の分離が良くなによりまん丸の盆が見事。今回はほとんど創造花火を撮っていないのだが、訳のわからない型物より普通に割物の新作やアレンジの方が見応えがあるなぁ、と眺めていた。
　スターマインのマイベストは、株式会社マルゴーの「追想」で、どこがと言われると複雑な変色の星もさることながら、目の前の現象とクラシカルな楽曲がシンクロという意味だけでなく、素晴らしくマッチングしていたことに感動した。とくに煌びやかな変色星が滝のように続けざまに落ちる時はまさにこの現象のための曲、と言う感じで引き込まれた。もう他の出品作とは別世界の物に見えてこれだけで満足だった。今や選曲にはどの花火屋さんも苦労されていると思うが、本当にその花火と楽曲が一体となった時は凄い作品になるのだと感じた。まるで逆に楽曲に合わせて花火を仕立てたかのような、そんな一体感だった。同タイトルは大曲でも出品したらしいが、私は行けなかったので見られて良かった。スターマイン優勝の野村花火工業の「ノスタルジア〜あの日の森へ〜」も、得意の青や水色、緑の変色星が、青空の下、新緑を抜ける風と木漏れ日の光のさざめきのようで秀逸。爽やかで清々しい一品だった。スターマインは総じて超明るい星が多かった。撮影者泣かせである。
　株式会社イケブンは何でも40年ぶりのスターマイン部門出品ということだが、割物は毎年出ているのでそれには気が付かなかった。しかし残念なことに終盤の幕切れで大量の銀蜂の星を地上にまき散らしたのは失点。そのあまりの豪快さに観客受けは良かったが、地上で広範囲に星が転がったり跳ねたりしたので打ち上げ現場は大騒ぎだったと推察される。それで安全確認のためしばらく進行が中断された。

　車で来たときはずっと10年以上も同じ場所に駐車し帰る道のりも高速使用と同じだった。下見に来たときにナビに任せるとつくば市経由の下道ルートを案内されたので、初めて花火後は同じルートで帰ってみる（往きはその方が速く着くので高速経由）。土浦からはつくば市、常総市を経て西から東に最短で帰るルートだ。さすがに花火後はつくば駅通過くらいまでノロノロしたがあとは快速に帰宅できた。例年1.5キロほど離れた車まで戻る頃には他の車は居なくなっているし、付近の道路も渋滞など無いのだが、今年はなんとなく車が多い。そういえば、早朝に主催者指定駐車場に入れようとした愛好家氏が揃ってどこも入庫待ちの長い渋滞だったと言っていた。
　21時30分前に出発し帰宅は23時。4時起きの早朝から永い永い一日だった。翌2016年は上流側に桟敷を拡張増設するという計画もあるようだ。それによって無料の観覧場所のいくつかは制限を受けるかもしれない。

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