花火野郎の観覧日記2017

観覧日記21 10/7
第86回 土浦全国花火競技大会

  
茨城県・土浦市

 どうにも天気の成り行きが思わしくなかった。一時は朝から晩までずっと雨の予報も出たくらいでガックリしていた。日曜の予報が良かったので、一日順延して欲しいと多くの愛好家は願っただろう。それが前日くらいにやや好転し、午後からは曇り予報になった。それを見越したわけでもなくどんな天気だろうと決行するつもりだったのだろうと思わせたのが、予定より2時間以上も早い金曜の午前7時前の「予定通り開催」との公式からのフライング発表だった。
 AEONからみで、ツアーやテレビ中継も入っていては、少々の雨くらいで順延する訳にはいかないのだろう。出品者に最高のコンディションで、という競技花火大会の本来より、そうした事情が最優先になっている。SCなど出来る前は、晴になるまで2回、2週も順延したことさえあったのに。
 前の晩からずっと雨のまま当日になり、車で向かう往きは自宅から途中の常総市あたりまではずっと雨。土浦現地は曇り空だった。
 私は2年前、一部の愛好家10数名が徹夜で番をした、という常軌を逸した場所取り状況と、それをさせない住民との軋轢に嫌気がさして、場所取り戦線には最初から参戦せず、今回は愛好家仲間が斡旋広報に尽力した「私設カメラ席(有料)」を利用させて戴いた。これは地元農家の田圃を借り上げて私設観覧席を毎年造っているものの一部にカメラ用を追加増設した物で、昨年2016年に撮影用として初めて設けられた。
 これが出来た経緯には近年、撮影・録画組など三脚を必要とする愛好家にとってさらにその場所の確保や場所取りそのものが厳しくなったせいもある。かつて多くの愛好家が三脚を連ねていた農道の端の一部は、広範囲に三脚使用禁止、観覧禁止にされ、行き場を失いつつあった。
 お席が確保されているので、現着は午頃と遅め。天気予報でも午まで雨予報だったから、早着したところで車から出られない。既に毎年駐めている田圃脇には、多くの車が連なり、そこで観覧しようという一行が刈り入れの済んだ田圃や農道に何組も場所取り済みだった。最初は三脚だけ持ってカメラ席に向かう。
 前日からの雨も悪くなかったのは、例年観覧している田中町の水田地帯だが、この雨で近隣住民によるきつい見回りが緩んだのか、当日早朝または前日に場所取りすれば、運良く「公道だから禁止」の路肩に場所取りできたらしい。それで当日はかつて私も撮影したような位置に多くの愛好家が三脚を連ねていた。とはいえ、では、早朝何時に来れば場所が取れるのか、前日の何時までなら取れて翌日まで残っているのか?ということに確実な保証が全く無いわけで。


私設カメラ席

私設カメラ席

撮影位置からの眺め

  

  
    
 とうに収穫を終えた水田はさすがに長時間の雨によってそこら中にかなり水が溜まっている状況で、立っても足が沈み、シートを敷いても下が水浸しで座って長時間観覧できる状態ではなかった。多くの観客が折り畳み椅子を使用して田圃内に座っていたが、そのうち沈み込んでしまうだろう。
 私設カメラ席は刈り入れの終わった水田に3列に木製のパレット(フォークリフトに使うヤツ?)を長く並べて敷いた構造で、三脚の脚を載せるために壁などに使うコンクリートブロックがひと区画あたり3個ずつ置かれていた。13時から受け付けとなっていたが、もう多くの三脚が立てられていた。良い位置は支払い順に早い者勝ちで決まっていたらしく、それでも3列ある撮影席の最前列端に確保できた。3列目は団体客が入るらしく、それは17時30分過ぎまで空いたままだった。どこぞの撮影ツアー一行が講師と共にやってきたのはもう暗くなって打ち上げまで30分を切っていた頃。
 カメラ席は田圃の中に浮島のように設けられているため、当然カートなど使えるはずもなく、のちに近くの舗装された農道から水田の中に踏み行って機材を運ばなければならなかった。敷かれたパレットの下は、雨によって完全に水が張られた水田状態。再び田植えが出来るのかと思うくらいだった。
 とりあえず三脚を置いて居場所を確保した後、車に機材を取りに戻る。本番に備えて足回りも長靴に履き替え田植え仕様。途中の学園大橋の上からは一部、打ち上げ場所が眺められる切れ目があったのだが、今回はそこさえもブルーシートで目隠しされ、橋を渡っている間、一切打ち上げ場所が見えないように目隠しされていた。
 雨から曇りだった予報も、午を過ぎると一時は晴れ間も大きく拡がりしばらくは陽射しに焦がされての待ち時間だった。雨予報に比べれば天国のようなもの。それでようやくヤル気が湧いた。このような予報だと、2012、2013年の悪夢をどうしても思い出してゲンナリしていたのだ。2012は夕方になって雨があがったものの、湿度が落ちず全てが霞んでいた。2013年は私が過去に観た24年間の土浦で間違いなく最低最悪のコンディション。一日中雨にたたられたその晩は曲導も星も低い雨雲に沈み、全く見えない中で競技の審査を無理矢理やったことが批判された年だ。AEONのからみで前日に無理に決行を決めたもののそんな最低の競技コンディションになるとは思わなかったのだろう。
 夕刻はまた雲が拡がったが、開催中は背後に昇る月が綺麗に見えるほど晴れた夜空になった。カメラは1台きり。三脚も高さのある物を用意したが1本のみ。予報が悪かったのと、カメラ席の一人分の面積がそう広くないと思ったからだ。土浦はワンズームで全て撮れるのでそれでよしとした。かつては、割物用、型物用、スターマイン用と3台、三脚3本も使っていたが、現在の土浦でそんな贅沢に場所を取った撮影体勢は難しい。
 二番穂出ているような水田は、大きなブロックを置いても、その上に乗るとぐらぐらして安定しない風で、これで三脚がブレないのか?と不安だったが、周りを誰かが歩くでもなく、個々のブロックの重さで意外と安定していたようだ。脚を直接水田に刺すのも考えたが、隣でやっている人を見るとけっこう体重をかけて深々と入れないとダメそうだった。
 開始当初は10号域で少し、湿度のせいか荒むというか霞んで見えたが最初のうちだけだった。風は終始東の押しの風と、素晴らしいコンディションだった。正面10号割物の残煙がほぼ真後ろに流れて行く。
 辺りもカメラの真下もたっぷりの水気を吹くんだ水田なので、壮大な結露が心配されて対策を取った愛好家も周りに多く見られた。しかし開催中普通にレンズの汚れをクリーニングしたくらいで、結露が起きなかったのは良かった。
 スターマイン競技ではいちばん審査員側の最前列に設置する業者と最後列とでは100メートル以上の差がある。つまり見かけ上、最前列の玉の方が大きく、幅があり、高く見える。当然ながら、見栄えがまったく違ってくる。出る位置はほぼ同じだが、手前と奥とではレンズの画角も若干変わって来るというわけだ。
 途中スターマイン競技で何度か進行が中断したが、楽曲が始まっているのに花火が出ない、途中で花火が出なくなる、など、電気関係のトラブルだろうか。しかし星が落ちたりの大きな事故も無かったようで無事に消費終了したのは幸いだった。
 スターマインで印象が強かったのは、愛知の加藤煙火、宮城の芳賀火工、それに斎木煙火はこれまでの虹色系から満月カラーとブルーに色を絞った打ち上げでなかなか良かった。ここでは県外勢が総理杯を取ることはかなり難しいが、それでも一度でもそれを取った煙火店、または常勝の煙火店がモチベーションを保って良い新しい花火を見せ続けることは相当困難かと思う。今年の全体の印象としては、未だ挑戦者の煙火店は意欲的と思うのだが常連あるいは既に受賞した組は少し普通かな。
 相変わらず目映く明るい系の星が多用されていた。対策はしていても打ち始めからいきなり輝度MAXで来られると、「いきなりかよ」と露出オーバーに対応できなかったりした。あとは小割りでポカの柳類よりもう少し広範に散らす系の玉が多かったように思う。それがより華々しく意外性に富んでいた。昨年より競技の設置場所がそれまでの倍の幅に変更されたので、星打ち、トラ打ちは以前より幅広く打てる様になったので、各社の工夫が面白く、星打ちも表情のひとつと楽しめた。競技では斜め打ちや曲打ちが出来ないルールらしく、それらは使われていなかった。
 花火づくしは、設置のせいか何か幅が狭くなった?ような気がした。堤防道路を追われてからは、過去最高に前に出て、花火に近づいて撮っているのに幅がコンパクトに感じられた。
 終了後はまた泥に足を取られるのに注意しながら舗装道路まで順次機材を運び、愛好家達に挨拶をして帰途に着く。車に戻ると、例年は私の車だけが取り残されている状況なのだが、今年は見物してそのままの車がけっこう残っていた。
 21時20分に車を出して、約2時間で帰宅。出して直ぐは、こんなに順調に走れるなんて、と快適だったが、つくば市内でナビに従ったらめちゃめちゃ渋滞しているルートに入り30分ほどロス。「こっちヤバいんじゃないの?」という人の勘の方が正しかった。途中でUターンして別ルートを取って正解。わずか1キロメートル足らずの渋滞区間に1時間ロスするところだった。
    
    

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