花火野郎の観覧日記2017
観覧日記18 8/19
第27回 赤川花火大会
山形県・鶴岡市
昨年、強風により客席に降り注いだ玉殻による事故があり、翌2017年の開催そのものの告知も遅れ気味で、実施されるか心配だった。その赤川が無事に開催されることになった。開催かどうか告知される以前、年明けから早くもホテルは満室で、なんとか実施して欲しいという花火ファンの熱い願望そのもののようだった。
その方が少し安い、ということもあって、今回初めて車で鶴岡へ向かう。電車が楽かというといったん大宮駅に出て新幹線で新潟駅、特急いなほに乗り換えて鶴岡駅、とこれまで何度も通ったが機材と宿泊の旅支度を抱えての道中はそれなりにきつい。
自宅前から出発できるとはいえ長距離運転の苦手な私。長時間の走行に備えて前日入り、つまり初日は車で走るだけの日、と設定して前泊、当日泊と豪勢な旅。前泊はかなり安く泊まれたので良かった。しかし平日で深夜帯に走るのでもないのでETC割引も無く通行料が高いことで帳消し。
午前8時に発って14時着と約6時間かかった。この中には食事と仮眠の休憩を含む。なにせ前の晩は早く寝て睡眠も足りているはずなのに、走り始めてわずか1時間で眠気がやってくる有様。那須のSAで食事がてら目がシャキ系の飲料を飲むも、それが効く前にまだ栃木県すら出ていない位置でどうしようもなく眠くなり、PAで爆睡。その後はシャッキリしてノンストップで鶴岡まで走り切る。しかし福島に入って月山道路を抜けるくらいまでの間ずっと雨だった。本当に今年は天候が悪い。庄内あさひICを過ぎたあたりから晴れ間が見え始めた。スタンドがあるうちにと市内で早々に給油してからホテルに向かう。
部屋に入れるまで時間があったので、花火会場を下見に行く。この頃、ちょうど青空が拡がり、久しぶりに焦がされるような陽射しを浴びながら堤防道路を歩いた。まだ会場設営の準備中のようで、河川敷各所にスタッフが散って作業をしていた。時刻は午後3時頃で、風は対岸からの東風。風向きも晴れていることすら予報と違っていたので明日が思いやられる。
鶴岡市は山形県内でも合併で最大面積になったとのこと。そのことで同じ市内で北部、中部、南部とずいぶん天気が違うらしい。鶴岡市、というだけでは正確に花火会場の予報を指し示してはいない。
この後翌日午後まで、我々愛好家はずいぶん天気予報に翻弄されることになった。前の晩の一番遅い予報では、午後から晴れで西風、と嬉しい展開。しかし一晩寝て起きてみると終日雨の予報に変わっていてホテルの窓の外も雨だった。
しかも花火会場現地はどの予報とも違う展開で一日が過ぎた。どの予報でも揃って順風西風だったのが、朝からずっと東風。私も予報から今年はメインで決まり、としていたのに、そのメイン会場に午前中から居たのだが午を過ぎてもずっと東風。幸いに雨予報は外れて、午後2時をまわると晴れ間が拡がり、強い陽射しも注いだ。午後1時を過ぎてさすがに裏手もありうるのかと、車で昨年の裏手の農道もロケハンしにいった。この時間帯、水田地帯の裏手は夏本来の強い陽射しが一杯で、焦がされながら観覧ポイントを見て回る。
どちらにしようかは15時くらいに決めようとメインに戻る。昨年の事故を踏まえて、大会本部には風向風速計が新設された。一定以上の強風を計測した段階で中断や中止の判断をするためらしい。何度も目を向けるその風向計はやはり東風だったが、上空で雷でも上がらないと開花域の風はわからない。そして14時に最初の定時雷が上がるので、固唾を飲んで見守ると。風向計と間逆の南西の風。
その後15時をまわる頃、地上の風向計も西成分が入り始め。夕刻にはようやく予報通りの西風に変わった。その後定時雷ごとに見守るのだが、今度は北西の早い風になって日没。16時を過ぎて車に機材を取りに行く。撮影場所はカメラ席内。本部席より下流側だ。
カメラは2台体勢。メインは16-35mmズーム。赤川メイン側からだとこれ1本で全ての出し物が撮れる事が判っている。サブは押さえで14mmワイド。20号が無くなった今年はこれほどワイドでなくても収まりそうだが実は10号対策。打ち上げ場の前後位置で多少違うが、10号が入ると奥にある20号より迫り来るのだ。今回も設置場所が近めのマルゴーの一連のワイドでは14mmでも10号の頭が少し切れて写っている。
いきなりマルゴーのワイドで始まる。最初から気が抜けない。いやそんな私事よりも、事故を経て、さまざまな対応策を施し、紆余曲折の果てに昨年度と同様に開催にこぎ着け、再びカウントダウンを迎えた新旧スタッフはさぞかし感無量だったのではないだろうか。開会の挨拶にも例年以上の力がこもっていたように聞き取れた。
時差式明滅星の嵐、乱舞のマルゴーは昨年にもまして勢いが良かった。明滅のパターンも星の並べ方も、回転するわランダムに行くわ波打つわとそれが幾通りもあり、さらに下からの星打ちはひときわ明るく煌びやかで、すっ飛ぶなーと思いながらも圧倒的な光量の洪水に目を奪われた。普通の割物が開いて変色して消えて、という従来の比べると昨今の打ち上げ空域はなんと、視覚的に賑やかで驚きに満ちているのだろう。しかも凝った多重芯や複雑な星打ちの仕掛けを施さずも、星そのものの変化とその配置が目を離せないような見事な芸をしてくれるのだから、これは新しい見せ方なのだと感じる。
磯谷のおばけのマシューは、常に頭が上向きになっていたことに感心した。
割物では終盤、煙か低い雲か多少霞んでしまったのが残念だったが、それまでほぼクリアに見ることができた。割物、デザイン花火を通して1つの流れとしては、もう手間の掛かる時差変色を取り入れるのが避けられず、各社各様のパターンのそれを仕込んできていること。
市民花火は終盤で、まさかの雨になる。密度の高い打ち上げが続いている真っ最中。撮影をを中断してただちに傘を出すか、レンズが心配だが途切れなく撮り続けるか、厳しい選択。雨は結局市民花火が終わるタイミングでほぼ止んだ。途中で傘をさしたが、市民花火が打ち終わってから点検するとレンズが突出してる14ミリの方は防ぎ切れず水滴が相当付いていた。そして降り始めからのカットには全て雨粒が写っていた。幸いにレンズが平らな16ミリズームの方は1滴も雨が乗っていなくてセーフ。
エンディングは、従来の二尺が無くなった代わりに、10号にして80発以上という猛爆を見せた。出だしから1/3は和火系の朧系の星ばかりを使った渋く大人しい入り。得意の段咲き滝落としまで和火系と徹底していた。中盤は華やかに、ラストは錦冠系と多彩で膨大な星打ち、トラ打ちウエーブの繰り返し。メインではトラウェーブの物量に弱い風で煙の捌けが追いつかず、分厚い煙の塊の中でさらにさらに星打ちが繰り返されているのだった。多重芯ものなどは投入されないものの、上空の錦冠は次々に大量に放たれるもクリアに見えていて良かった。それよりも爆裂の物量から繰り返し押し寄せる爆圧に身体ごと何度も押される感じだった。最後に緑と紅の2種類の引き先になる錦の段咲き千輪による滝落としが打ち上げエリア全体に落ちていった。
風向きは打ち上げ時間帯は下は南南西、上空は南西くらいという結果。向かって右から左奥、と夕刻とまた正反対だがかろうじての順風。エンディング時点で言うと、メイン側は下方のトラや星打ちで溜まる煙でそれが見にくいが上空の開発はほぼクリア。裏手では逆に下はクリアで上が煙、とそういう状況であった模様。全ての予報サイトで全て西の風向き予報が外れ。とにかく風に右往左往した一日。
動画を楽しむ方は音源があるから絶対にメイン会場、ということになるが、風向きを第一に、写真的にははやメインでなくても、と言う感じだ。というのも一番視点が高い、特等席のカメラ席からでも、有料席背後にある目隠しようの壁の見切りが高すぎて、有料席に座っている客がほとんど見えない。カメラ席の場所によってはこの「壁」しか見えない場所もある。露光をかければ写るとすそういうことじゃなく、会場の一番高い位置で見ても壁の向こうで見えない。加えて、よく裏から見ると、手前の堤防の高さで星打ち等、花火の根本が隠されて見えない、と言われる。しかしメイン側も、川の両サイドで河川敷の灌木が伸び放題でやはり打ち上げの根本、打ち上げ場所に並んでいる筒なんか見えないのだ。裏ならどこでも露光をかければ、たわわに実った稲田を写すこともできるが、メイン側で観客とか夜店とか、赤川らしい事物が一緒に写るか?というとそういう場所は限られる。
8月に入ってからの各地での不順で不安定な天候からすれば、上出来でかつ恵まれたコンディションの晩だったと思う。ほぼ全ての打ち上げが視界の中で全貌が見えたのだから、願ったり叶ったり。なにより無事故で消費し終えたことがなにより快哉であり、スタッフ一同胸をなで下ろしたことと思う。
事故からの再開に向けては主催者様には多大なご苦労があったことと推察致します。主催スタッフ一同様、担当煙火店様、例年に変わりのない素晴らしい大会開催を感謝致します。
目抜き道路が交通規制解除されてから新庄に向かうも、道中は思っていた以上のどうしようもない大渋滞だった。このまま新庄や山形まで繋がっているのかと思ったくらいだ。新庄に向かうことになったのは、好き好んでじゃなく、鶴岡市内に花火当日の宿がどうしても取れなかったからだ。ナビを頼りに迂回路や回避道路など夜は怖いような狭くて荒れて真っ暗な道を辿ってみるもたいして距離を稼げず、元の道に合流するとやはり渋滞の中。新庄までは途中からは最上川沿いの一本道だからどうしようもない。泊まるホテルに何度か電話して遅れる旨を告げるがキャンセルにしようかと考えたくらい進まない。夜通し走るのかと考えた。駐車場を出てから新庄のホテルにたどり着くまで営業中のGSを見かけなかったから、前日の到着時点でさっさと給油しておいて良かった。
ナビで確認すると0時近くでまだ1/3も走れていないことに唖然とした。表示の到着予定時刻はどんどん後になる。これが赤川花火後のこの国道の定番渋滞なのか。そしてはっきり思った。花火後、車で新庄に向かうのは二度としません、と。これなら花火会場近くの駐車場で車中泊した方がマシだった。一日野外で過ごし花火観覧撮影後の渋滞走行3時間はきつい。そう21時30分に車を出して、ホテル着は午前1時過ぎ。通常1時間くらいの道のりに、3時間半もかかったのだ。往路の6時間の方が楽だった。新庄まで続いているかと思った渋滞は直前の分岐で、尾花沢や、寒河江方面にさらに続いている事が判明。新庄方向は、先行車が一台もいないほどだった。
帰宅日は順調な走行。午前7時半に新庄を発つと直ぐに将来は高速道の東北中央道になるであろう未完成の自動車専用道路を(現在は無料)完成している最北部の東根IC近くまで高速道路スピードで快適に走り、そこから高速道入り。発ってからしばらく晴れていたが高速で山形市内から栃木県に入るまで帰りもずっと雨だった。また食事休憩と仮眠込みで自宅には13時過ぎに到着。往復走行距離計900キロメートル。私にはとっての車で行く最長不倒距離達成。意外と走れるものだと驚いた。
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