花火野郎の観覧日記2021

観覧日記その6 12/12
令和3年 常総きぬ川花火特別版

  
茨城県・常総市


 12月12日、茨城県常総市で開催された「令和3年 常総きぬ川花火特別版」を観覧。残念ながらこの催しも「サプライズ」扱い。夕刻、打ち上げまであと少しという頃、市内の広報放送で、花火打ち上げがあることは告知されたのだが、場所については「市内某所」とアナウンスされ、それぞれのご自宅でご覧ください、いうことだった。航空関連の情報で打ち上げ場所を探し出した愛好家は遠方からも大勢やってきてたが、通常の常総きぬ川花火大会のような拍手も歓声もどよめきもないひっそりとそして凛と美しい開花だった。
 場所は見渡す限りの田園地帯。農道に陣取るが、メインの打ち上げラインまで表側700メートルあまり、裏は500メートルといったところ。もちろんもっと引いて観覧・撮影という愛好家も多数。
 煙火担当は地元の野村花火工業株式会社と株式会社山崎煙火製造所。プログラムは日本煙火芸術協会の10号対打ちを挟んでそれぞれ煙火店のワイドスターマインというもので、トータルわずか15分ほどの打ち上げ。開始と進行のアナウンスも、ワイドスターマインながらミュージックもなし。
 両煙火店による400メートル幅のワイドスターマインはもちろん見ものだ。私など野村花火の打ち上げそのものが約1年ぶりの観覧で感涙モノである。しかしながらこのイベントで白眉なのは日本煙火芸術協会の「10号対打ち」に他ならない。これがどれほど希少な打ち上げかというと、2018年にNARITA花火大会 in 印旛沼で臨時に打ち上げられて以来、私は見ていない。
 芸術協会対打ちといえば、埼玉県の秩父夜祭り花火大会での日本芸術花火プログラムにおけるそれが有名だったのが、そもそもこれは2005年に「新秩父市誕生記念 秩父夜祭花火大会」と銘打った時にこれまでの特別プログラムの代わりとして始まり、当初は煙火芸術協会同人28名による10号玉2発ずつの打ち上げ。つまり56発の珠玉の尺玉対打ちという豪華なものだった。それまで秩父夜祭では地元の大スポンサーの出資により、毎年異なった目玉の大型プログラムを展開してきただが、この芸術協会対打ちはその後長らく花火愛好家のみならず、夜祭りに訪れる多くの一般観光客の目も楽しませてきた。秩父の山間、漆黒の夜空にするすると咲く、芸術尺玉の凛とした開花は見事だったのだ。それも2017年を最後になくなってしまい、その後は、ただ多くの花火玉を打つだけのようするに屋台の「背景」を賑やかすだけの存在になり、少なくとも花火愛好家の興味は失われた。
 以来これはまったく幻のプログラムというわけだ。だからこの内容を聞いて以来楽しみにしていた。最盛期の秩父夜祭りほどの数ではないものの、久しぶりに目の当たりにする16組の芸術協会同人作の尺玉対打ちは本当に素晴らしいものだった。
 カメラは縦横という構えで2台並べていたが開始早々縦位置担当のメインカメラが沈黙し、動揺して最初の方を撮りそこなった。最初というが15分しかない打ち上げの出だしを撮れないのは無念。長年やってるから、カメラがおかしな動きをした時の症状と対処はほぼわかる。しかしこの時は直前にレリーズしてきちんと動作する確認をしていたのだ。にもかかわらず出だしから撮れないとは。症状から原因は推察できたのだが、それが起きる設定になっていない。だから動転した。そして直ちにメインカメラは捨てることにして、サブで撮影続行。結果としては700メートル余りの間合いにも関わらず対打ちのワイド感が凄くて縦24ミリのメインでは、とても左右が入りきらなかった。16ミリズーム横位置のサブの画角で正解だったのでよかったわけだ。
    


野村花火工業ワイドスターマイン

野村花火工業ワイドスターマイン

野村花火工業ワイドスターマイン

昇曲付 天空のユートピア
秋田 今野義和

昇曲付 クリスタルオパール
秋田 小松忠信

昇天銀竜 万華鏡写輪丸
秋田 久米川和行

里山の忘れ柿
群馬 小幡知明

昇小花 三重芯大ダリア
東京 細谷圭二

昇曲付 虹色のグラデーション
山梨 斎木克司

猛きオリオンの涙
山梨 斎木智徳

昇朴付 四季の彩艶
新潟 本田正憲

昇朴付 松島の夜景
昇朴付 田毎の月新潟
小泉英一

昇朴付 夕映えの椰子
昇朴付 マドンナブルーの花
長野 青木昭夫

昇木葉付 マーガレットの花
長野 篠原茂男

ムービングスター
長野 田村幸夫

昇分砲付 四重芯菊先紅緑銀乱
長野 那須野 大

昇小花 八重芯ステンド牡丹
静岡 田畑朝裕

昇曲付 スノークリスタル
愛知 磯谷尚孝

昇朴付 キラキラ万華鏡
茨城 野村陽一

昇曲付 三重芯銀点滅
山崎煙火製造所

山崎煙火製造所ワイドスターマイン

山崎煙火製造所ワイドスターマイン

山崎煙火製造所ワイドスターマイン
    
対打ちの内容は、
  
昇曲付 天空のユートピア   秋田 今野義和
昇曲付 クリスタルオパール  秋田 小松忠信
昇天銀竜 万華鏡写輪丸    秋田 久米川和行
里山の忘れ柿         群馬 小幡知明
昇小花 三重芯大ダリア    東京 細谷圭二
昇曲付 虹色のグラデーション 山梨 斎木克司
猛きオリオンの涙       山梨 斎木智徳
昇朴付 四季の彩艶      新潟 本田正憲
昇朴付 松島の夜景      新潟 小泉英一
昇朴付 田毎の月       新潟 小泉英一
昇朴付 夕映えの椰子     長野 青木昭夫
昇朴付 マドンナブルーの花  長野 青木昭夫
昇木葉付 マーガレットの花  長野 篠原茂男
ムービングスター       長野 田村幸夫
昇分砲付 四重芯菊先紅緑銀乱 長野 那須野 大
昇小花 八重芯ステンド牡丹  静岡 田畑朝裕
昇曲付 スノークリスタル   愛知 磯谷尚孝
昇朴付 キラキラ万華鏡    茨城 野村陽一
 
 対打ちのあとは、山崎煙火製造所のワイドに移るわけだが、その出だしは同社の三重芯銀点滅を対打ちにしていたのが芸協の続きのようでしゃれていた。
 全ての打ち上げが終わり、漆黒の田んぼ地帯に戻る。多くの愛好家とともに静かにその場を立ち去る。熱狂や賑わいのある通常の花火大会が翌年こそ開催されるとよいのだけれど。
 帰宅して直ぐにカメラの不具合をチェックしたが、カメラ本体ではなくレンズ側に問題があるのだった。花火を撮るには普通、マニュアルフォーカスにするわけだが、レンズにあるマニュアルとオートフォーカスの切り替えスイッチが接触不良か何かで、マニュアルにスイッチが入っているのにAFの動作をしてしまうのだった。それでレリーズをすると対象が動きがあり消えてしまう花火だから、いつまでもAFの動作を繰り返し、いつまでたってもシャッターが落ちない、という不具合だったのだ。接触不良というのは普通に動作するときもダメなときも偶発するわけで、それでは使えない。今回だって直前にシャッターがちゃんと落ちるかのテストをしていたのに本番でダメになったわけで。カメラボディを変えてテストしたがやはり同じ現象が起きた。レンズに内蔵されているスイッチなので接点回復剤などを注入するわけにはいかず、これは入院案件である。
    

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