花火野郎の観覧日記2021
観覧日記その4 10/9
三陸花火競技大会
岩手県・陸前高田市
緊急事態宣言は解除になったものの、それを待たずして残念ながら多くの有名な花火大会はことごとく中止の決定がされた。どこの主催者も自分のところが最初の花火大会クラスターの震源地にはなりたくないのだ。
この大会も一度はコロナのため延期になってこの日の開催。仕切り直しで潤沢な資金が集まったようだ。私は当初から遅れて7月頃に普通にチケットを買うつもりがカメラマン席はいつまでも一般販売にならなくてクラウドファンディングに出資した。
コロナ禍にあって昨年の富士山の麓のクラウドファンディング花火大会以来1年ぶりの高速道路走行は、花火開場現地まで往復で900キロを超えるロングドライブになった。午前6時前に出発し、往きは自宅から約5時間。そのうち仙台から陸前高田までが自動車専用道路で対面通行区間は点在するものの高速道と同様に走れるのに2時間とけっこうかかった。それにしても9月30日で緊急事態解除されたのに高速道通行料は、これまでどおり人流抑制のためかETCの休日割引なしで、片道9,000円近くとド高い金額だった(帰路の深夜割引は有り)。最近はガソリンも高いので参る。
自宅を過ぎて栃木県内から仙台南道路の松島とかそのあたりまでずっと雨の中の走行。降りは強くないがワイパー全開。現地の天候が思いやられたが着いてみれば日中は晴れて歩き回れば汗ばむほどの陽気。それでも海が近い会場か東北という場所か、吹く風を浴びていれば肌寒い。
11時前に出資者指定駐車場に到着し、入庫待ちしてから駐車。駐車場は観覧エリアの隣の区画で近くてありがたい。観覧会場の入場は私の場合12時からなので、まずは三脚1本だけ持ってゲート前で待機。そして出資したカメラマン席に陣取った。カメラマン席は観覧場所全体の最後方で、他の観客の邪魔になるということを気にせず撮れるし、打ち上げ空間に向かってはほぼ正面向きの配置でなかなか良かった。左右に長いので位置どりによって多少絵柄は変わるだろう。
場所取りも終わったので近くの飲食店で昼食。会場には三陸グルメブース「さんりくフードビレッジ」が立ち並んでいて期待したが、見回ったWESTサイドではほとんどが唐揚げとか焼きそばとか、おかずのみ、ツマミのみ、露天商の扱い品のそれであり、地場の珍しい食べ物は焼きホヤくらいか。開店準備中のカレーライス以外はご飯付きの弁当の類が見当たらず食事として買うものがなくて場外の飯屋にしたわけ。
ほぼ雨中の5時間の運転に疲れて車で昼寝。16時過ぎに撮影機材を運ぶ。日中は焦がされたがさすがに東北、夜は少し早い冬の観覧の出で立ち。準備が済んだあと客に満たされた観覧席を見回して胸が熱くなる。ここ2シーズン、コロナによってそれまで当たり前だった花火大会が失われ、こんな状況で花火開始を待つのはなんと久しぶりだったことか。
17時30分でもう十分に夜空の舞台は整う。コロナ前のように静かに心は熱く開始に備える。固唾を飲んで久しぶりの打ち上げを待ったが、スタートからしてもたついた。19時になって始まらない。そこそこ経ってからようやくのアナウンスが、「花火の準備が整うまでお待ちください」。おいおい日中なんの準備をしていたのさ。定刻にスタートさせるための準備でしょうが。こうした意味不明の説明なしの「待たせ時間」が随所にあって残念。それは緊張感や集中力を削ぐのだ。そして途中でこのままのペースで進めば絶対に予定時間に終わるわけないと思ったら案の定。20時30分終了の予定が21時10分頃と40分近くもオーバーした。2時間を超えて退屈しない花子大会はよほどの有名な大会。まだ2回目ということでこなれていないのは理解できるが遅れすぎ。間が空いたら与太話でも音楽でも隙間を埋めるべし。花火もない、説明もない、何もない時間を作ってはいけない。マイカー組はともかく地元だけでなく遠方からも公共交通機関の客を呼んで会場近くに泊まれるならともかく、気仙沼とかに送迎するのにこれでいいのかと。今後も開催を続けるにしても、遠方からの観客を呼ぶには、時間通りのスムースな進行と交通網や宿泊施設などインフラがネックになるだろう。
打ち上げ場所は見ていないが、愛好家情報によれば、最奥の10号までカメラマン席からは700メートルほどあるという。打ち上げの中心となるのは、震災後に造られたであろう相当高さのある波除堤防でその上と前後に設置してあるようだ。
まともな花火大会とその撮影は2年ぶり。まぁ撮り始めればカンも狂う。初めての場所でその間合い。経験則があるとはいえ、小玉から10号までこの会場でひととおり打たれてみないと打ち上げ空間のボリューム、高さとか幅とかが掴めない。それによって縦位置とか横位置とか最適画角とか構図が決まるのだから。それと大玉は高い波除堤防の向こう側だから、当然ながら筒口は見えない。距離もあってミュージックスターマインなどでは大玉の発射音も聞こえない。それでいて曲導無しの大玉を混ぜてくるからきっちり捉えるタイミングが難しい。「打ったな」とわからないと、突然上空で大玉が開く感じで必ず撮り逃す。こうしたミスは1、2度あったけれど中盤からはなんとか取り戻して音楽に合わせてノリ良く撮れた。三脚は2本運んだが、カメラは1台のみで撮りきった。
競技花火ということだが、個人戦は競技の骨子というか、各煙火店にどういう花火と内容で競わせるかの主催側のコンセプトがいまいちわからなかった。有名煙火店を集めましたがミュージックスターマインだけじゃなんだから競技プログラムも足してみました、そういう感じか。プログラム冊子にも、公式HPにも開場アナウンスでも、そのルールというか競技内容があきらかになっていない。何号で何発打つのか、テーマとか、連発なのか、玉数とか、競技の基準「こういう内容で競ってもらいます」という主旨もルールもまったくわからない。とにかく花火を上げて、どれが良かったと思うやつに点数をという一般にわかりやすい仕様ということなのだろう。競技内容に新時代の特色が希薄のように感じられた。個人戦は時差点滅、八方咲系が多く、時流を反映していた。まずはどの煙火店の若手もこれをモノにしてさて次は、という今後が楽しみだ。
煙火店に依頼された競技花火内容は10号と5号らしい。見たところ全て音楽付きで玉を音楽に合わせて連続で打つのか一斉に出すかは業者次第らしい。しかし10号が奥にあるため見かけ上5号と10号の盆の位置がほぼ同じで、双方の大きさや高さの違いが感じられない配置なのが残念。
唯一面白い趣向と思ったのは、団体戦で抽選で選ばれた12社がチーム「花」組、チーム「火」組に6社ずつ分かれて打ち合い、どっちのチームが良かったか?を競う「チーム対抗戦」。全部が同じ号数の玉で競うかと思いきや、3号から、4、5、7、10号割物、10号多重芯と担当が違う。3号は10発。10号は2発。と号数によって玉数が違うから、3号10発をゆっくり上げる。こういうのが時間押しの原因だ。
競技の合間を占めるのは、全て株式会社マルゴーのミュージックワイドスターマイン。回数も楽曲の数も多く、愛好家にとってはまさに持ち玉ほぼ全部出しでとっぷり「マルゴー漬けマルゴーづくし」というマルゴーワールドの至福。それにしても持ち玉のバラエティとクオリティには驚嘆する。
花火終了後、撤収して駐車場に戻り積み込みを終えて車を出したのは21時30分くらい。それから駐車場外の渋滞や交通規制迂回路の影響で陸前高田本庄ICから三陸道に入ったのは22時20分。混んでいなければ10分くらいの距離だがほぼ1時間で三陸道インだから早い方か。この三陸道に入ってしばらくして雨模様。現地で降られなくて幸いだった。あとは東北自動車道のSAで2度仮眠を繰り返し、明け方7時近くに自宅にたどり着いた。
長らく花火観覧してきたのに、ぱったりとコロナで絶たれてしまった。多くの観客とその歓声や拍手、進行のアナウンスや楽曲のあるコロナ以前に最も近い花火大会。このような大会は本当に本当に久しぶりだ。それをほぼほぼ良い条件で見られて満足だった。開催実現に感謝したい。
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