花火野郎の観覧日記2022

観覧日記その4 2/11
大曲の花火 春の章 世界の花火 日本の花火
日本煙火芸術協会60周年記念事業花火

  
秋田県・大仙市

    


角館はもう新緑

好天の丸子川

はなび・アム

花火会場

撮影場所から
  
 前日の28日も遅くまで仕事、そして29日金曜の「新作コレクション」当日の現地は雨予報だった。長い道のりなのと仕事疲れもあるのでゆっくり走り、かつ行くだけの日でもいいかと車で出かける。走り始めて栃木県の那須高原SAあたりで早くも眠くて沈没。ここのところの仕事がきつくて疲労困憊だ。そして雨模様の中7時間以上もかけてなんとか宿泊地の角館に到着。昨年11月に来年度の大曲の花火の日程が広報され、久しぶりに春から秋までの開催が決定した。それですぐに宿を探したものの大曲駅周辺では確保できず、角館になった次第。角館にしてもちょうど武家屋敷街の桜の見頃である時期だから本来は空いてないが11月と早めだったため正規料金で予約できた。
 しかしここ角館は、さて飯でもと思ったが、17時にして武家屋敷エリアの直近で、宿の周りは食べ物屋だらけというに、すでに店じまいして、夕食時に営業している店がほとんど無いのだった。観光客の昼飯用途だけに営業しているのか、夜開いてる店は居酒屋のみ。たまたま17時から21時までという店があってなんとか飯にありついた。
 現地は日中の予報以上に本降りだった。それでまったくの未練もなく、29日の観覧は止めにした。本降りの中、会場に出かけ、待ち、観覧するというのは相当の苦行。好きな花火を見るにしてもそれだけはできない、というのが私のセオリー。40年以上の長い花火観覧の人生で、最初から雨という状況で雨でもいいやと観覧に出かけたことは、実は一度もない。観覧会場で準備中または観覧中に雨に見舞われるのは仕方ないし、その対策もしているが、雨降り真っ最中、という中で出かけて、雨の中で準備して、観覧して何が楽しいか。それで過去にそういうことは一度もしていないのだ。翌日の現地でがんばって雨中に観覧した愛好家氏から「もったいない」と言われたし、2日通しの観覧チケットも買ってあったのでそうも思ったが、譲れないものもあるのだ。
 翌日は昨晩の雨が信じられないような晴天。宿は武家屋敷街のすぐ近く。早朝に散策したが残念ながら角館の桜はおそらく10日以上前が満開の時期。現地もそうとう早くの開花だったらしい。すでに花びらどころか新緑の武家屋敷街だった。午前9時に開店の飲食店で朝食後大曲に向かう。宿から大曲駅までは車で30分ほど。いったん駅前駐車場に入れて久しぶりの大曲駅構内を見物。それから車は大会のパンフレット裏の地図に記載の一般向け無料駐車場に入れた。そこから会場までは徒歩20分ほど。有料席入場は16時からとなっているのでまだ時間も早く、初めて花火文化の資料館である「はなび・アム」を見学することにした。2018年の開館は知っていたけれど、大曲に最後に来たのは2016年で以来訪れる機会がなかったのだ。
 正午ごろ何か悪い予感がして早めに入場ゲートまでコマを進めることにした。車から機材を下ろし、さて何をアウターにしようか・・・。今日は晴天だけれど日陰の空気が冷たく感じられた。それで真冬仕様のダウンジャケットをチョイスするのだが、結果として正解。開催時間中どころか日差しを浴びての待ち時間も風が冷たくて厚手のダウンを早速着込んで助かった。そして夜もそこそこ冷えた。
 会場中央の1番入場口に達すると、まだ入場ゲートも設営されてなくて待機列もなかったが、なんと会場内には自由に入れるようだった。ちょうど歓談していた知り合いの愛好家に「もう入れるの?」と聞くとそのようだった。ということは! と悪い予感の原因を察知する。堤防斜面のカメラマンエリアに行けば、いつからそうだったのかすでにびっちり三脚が置かれ場所取りされていた。これじゃ正直に16時開場目当てで来たらとんでもないことだった。隙間にねじ込んだものの、そこが空いていたというだけで、考えて選んだという場所じゃ無かった。しかし残りものには福があるわけで。
 16時に入場しその先頭から場所取りする、というルールのはずが、昼過ぎにはカメラマンエリアのめぼしい場所が売り切れになっている、という掟破りの惨状にその後、スタッフによっていったん撤去するとかなんとか噂がとびかって、自ら退かした愛好家も多数いた。しかし大抵はこのような場合、撤去に割く人員などいないわけで、結局16時入場までほとんどがそのままだった。これは予め「入場時間前の場所取りは禁止、敷物などは撤去します」と告知していないからこうなったわけで。こうした警告の看板などがカメラマンエリアに無く、それでレジャーシートを剥がして捨てるくらいならともかく高価な三脚を勝手に移動したとなれば、必ず持ち主とのトラブルになるだろう。それは人と金が必要で難しいのだけれど、かつての夏や国際シンポジウムなどでそうしたように会場内はスタッフ以外、どなたも立ち入り禁止にしなければルールは守られない。堤防道路と斜面の間には夏の大会でそうだったように柵も壁もないので、堤防を自由に歩けるなら、斜面にいくらでも早い時間に場所取り可能だからだ。しかし堤防道路も通行できないとなると、「犬の散歩もできない」と苦情が来そうで難しい。
 それでも堤防道路から客席、対岸のすでに準備の整った打ち上げ場所を一望して感無量だった。久しぶりの大曲の花火会場。コロナのせいもあってこのメイン会場に立つのは2016以来6年ぶりだ。そこには長大な桟敷席は無く、整然と折り畳み椅子やテーブルが並んでいた。これは今夏も同仕様ということらしい。ここ10数年の大曲を象徴する1キロメートル以上もの巨大な仮設の桟敷席は今夏は姿を消すことになる。建設費はともかくバイブ椅子の方が自由なソーシャルディスタンスを取りやすいということがあるのだろう。
 来られなかった間に会場周辺は色々変化があった。中央入場口の近くにはちょっとした森、ほどの高い木立に囲まれた住宅があって、その近くの小径は日陰となって夏でも涼しく、かつては長い午後の待ち時間は大勢の観客とともにそこで過ごした。しかし今年、そこの木々は多く伐採されて、住宅が増築されていた。今後は近隣に出品業者のためのホテルも建設されるらしい。
  

オーブニング花火

オーブニング花火

オーブニング花火

日本煙火芸術協会
60周年記念事業花火
第1章 伝統〜LEGACY〜
パート1 「古」

日本煙火芸術協会
60周年記念事業花火
第1章 伝統〜LEGACY〜
パート2 「彩」

日本煙火芸術協会
60周年記念事業花火
第1章 伝統〜LEGACY〜
パート4 「極」
10号玉芸術花火10選より

日本煙火芸術協会
60周年記念事業花火
第2章 創造〜CREATE〜
パート1 花〜Blossom〜より

日本煙火芸術協会
60周年記念事業花火
第2章 創造〜CREATE〜
パート3 物語〜Story〜より

日本煙火芸術協会
60周年記念事業花火
第2章 創造〜CREATE〜
パート3 物語〜Story〜より

日本煙火芸術協会
60周年記念事業花火
第2章 創造〜CREATE〜
パート3 物語〜Story〜より

日本煙火芸術協会
60周年記念事業花火
第2章 創造〜CREATE〜
パート3 物語〜Story〜より

日本煙火芸術協会
60周年記念事業花火
第2章 創造〜CREATE〜
パート3 物語〜Story〜より

日本煙火芸術協会
60周年記念事業花火
第2章 創造〜CREATE〜
パート3 物語〜Story〜より

日本煙火芸術協会
60周年記念事業花火
第3章 飛翔〜FUTURE〜より

日本煙火芸術協会
60周年記念事業花火
第3章 飛翔〜FUTURE〜より

日本煙火芸術協会
60周年記念事業花火
第3章 飛翔〜FUTURE〜より

日本煙火芸術協会
60周年記念事業花火
第3章 飛翔〜FUTURE〜より

フィナーレ花火

フィナーレ花火

フィナーレ花火

フィナーレ花火

フィナーレ花火

フィナーレ花火

 今日は大曲の花火「春の章」に加えて「日本煙火芸術協会60周年記念事業花火」なのだがこれも立案以来なんと3年越しに実現する。協会設立60周年のその2020年、2月に発表された60周年記念花火はその2ヶ月後、あのコロナの騒ぎになり、たちまち中止になった。そして翌年もまた中止。
 会場では久しぶりに多くの、本当に多くの懐かしい花火愛好家氏に再会し、歓談や情報交換ができて嬉しかった。こうした待ち時間も花火観覧の楽しみのひとつなのに、ずいぶん永いことコロナ前のようなその時間を享受できていなかったのだから。
 この日の入場待ちの時間にTBSテレビの朝のニュース番組「THE TIME」の取材が来て、それは他の客に振ったのだけれど、月曜日に放映を見てみると自分の後ろ姿が映っていておかしかった。放送では、つまり行列の先頭集団はカメラマニアで、その熾烈な場所取り争奪戦の具合を報道したかったようだ。だからゲートオープンとともに会場になだれ込むcameraマニアの姿を放映していた(まぁ、実際は場所取りそのものはとっくに終了していたわけなのだが)。それはともかく、集まったカメラは360台だそうで(数えたんか!!!)そのとおりだとすると三脚も同数に近くあったわけでびっくり。現地でもすごい数だなぁと思っていたが、過去の夏の大曲のように写真愛好家が広い会場に散っているのと違って、カメラマンエリアという限定領域に集中しているわけだから、それは多く見えるわけで。
 昨晩から、大曲だから、風向きばかり気にしていた。前日は大雨でも順風だったらしいが、晴れていればそんな奇跡の風は吹かないのが大曲。裏観覧も考えていたが、風向き的にはベリーベストにならないのはどちらもイーブンと考えてメインに決めた。久しぶりの大曲、やはり正面から観たかった。
 撮りには一応三脚は2本カメラも2台。対岸の花火設置幅を見るに、20ミリ前後の横位置とみてそれがメイン。縦24ミリを抑えとして同時撃ち。
 もう4月下旬。打ち上げ開始は19時だが、曇天のせいでまだ若干空が明るかった。大曲の業者一同によるオープニング花火。この会場での観客を入れての花火、ずいぶん永い時間待たされた。
 続くは日本芸術協会の打ち上げ。その内容は「伝統」「創造」「飛翔」の3章に分かれ、それぞれの章の中でさらにいくつかのパートに分かれているという凝った内容。日本の花火の今日までを振り返り、最新の花火に至る道のりを表現。日本の花火の全てが凝縮され、現時点での集大成とも呼べる素晴らしいものだった。芸術協会同人の作品で複雑に織りなされる展開には眼も心も奪われた。花火は進化し、打ち上げ技術は高まり、その結実がこの晩だった。芸術協会同人の花火師、煙火業者が垣根を越え、その持ち味の総力を結集した打ち上げは実に感銘した。
 そして再度大曲の業者によるフィナーレ花火。400メートル超のフルワイドの設置で、大会提供を彷彿させる内容だった。
 今回はかつて見たことがないが、雄物川のこちら側つまり観客側の川べりにも星打ちの設置がされていたのだった。だから彼方の川向こうと合わせて立体的な曲打ち配置となっていた。私が会場に達した時にはすでにカメラマン席の大半が場所取り済みでセンター周辺が空いてなかったことと、私の好みでド・センターを外してやや斜め位置から撮ることを選んだせいで、観客席側と対岸の設置の構成に気がついたわけだ。それと前日の雨の新作コレクションの写真が早々にSNSにアップされたおかげで、行かなかった会場の様子が前日に把握できたことが良かった。それは主に仮設照明の設置位置などで、それを避ける撮影場所がたまたま残っていたことも幸いした。
 肝心のコンディションは風向き的に大曲らしく、風力ともにベリーベストではなかったが、花火内容は十分満足できた。
 打ち止めの後は「満点の星」の楽曲とともに、あの、エール交換が戻ってきた。対岸の花火師たちによるトーチの数が驚くほど多かった。こなたで振られるスマホやLEDコンサートライトや懐中電灯もカラフルですごい数だった。皆がこのフィナーレを永いこと待っていた。なんといっても花火とともに大勢の観客が居てその歓声、拍手、熱気がそこに存在する花火大会のなんと感動することか。
 「大曲の花火、再始動」をうたった2022年の一連の大会だけれど、自分の中にも大曲が戻ってきた、また大曲に戻ってきた。と感じられる晩だった。もちろんコロナが消滅や収束を迎えたわけではないから、今後しばらく従来の形そのままの再開にはならないだろう。しかしそこに新たな形があるはずで、それを今後期待したいと思う。
 会場の混み具合は流石に夏ほどではないが、夏もこの程度なら快適だ。8月の大曲は花火競技大会として素晴らしいが、近年は観覧するとなれば長時間の相当の覚悟と忍耐が必要。加えて事前準備や困難な宿泊、交通手段の手配など体力気力財力、情報収集能力が極限まで試される。たとえツアーに乗ってきても、夏の野外で長時間過ごし、花火観覧終了まで持ち堪えるのはのは本人の体力次第。気温や夏の日差しを抜きにしてもそれは凄まじい混雑度にもよるから、今後全席有料指定にして人数を絞ってしまうのも混雑緩和にはいいかもしれない。
 会場の熱がしだいに落ち着く中で手早く撤収して車に戻ると駐車場からの脱出も早かった。1時間もしないうちにホテルに帰り着いた。翌日は予報通り目が覚めたらすでに本降りの雨。宿を早めの5時半に引き払って帰宅。秋田道から東北道に入るまではずっと本降りの雨だった。
 

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