花火野郎の観覧日記2023

観覧日記その3 4/8
式内菟足神社例大祭 風まつり

  
愛知県・豊川市小坂井町

    
 2011年以来12年ぶりの風まつりだ。私自身、前回の観覧がいつだったか覚えていないくらいだったが、現地でお会いした知り合いの愛好家氏が、2011年の観覧記を覚えていてくださり教えていただいた次第。そうだそうだ、あの東北震災の年、特別な観覧記を書いたのだった。
 それから祭り自体がコロナで休止の期間もあり、都合それほどの観覧の間が空いてしまった。今回は風まつりの奉納煙火行事のうち、手筒花火奉納に絞って観覧したかった。そのため今回は初めて車で出かける。過去の経験から手筒、大筒櫓の奉納を全て観覧すると、電車の場合、最寄りの小坂井駅での最終にはとても間に合わないからだ。2011の時も打ち上げ終了からただちに小坂井駅に向かってなんとか間に合っている。過去に手筒を最後まで見た時は豊川市内に宿を取り、仲間の車で送ってもらったと記憶している。
 自宅近くは雨模様。圏央道を走るあたりから上がってあとは晴天だった。静岡SAで休憩。そして最寄りの豊川ICを降りてすぐに給油。高速を走行中もたびたび車が流れるほどの強風だったが、スタンドで窓を開けるとやはり相当の風だった。
 現地に到着し、手筒観覧のための場所取りのため久しぶりの菟足神社境内に三脚を運ぶが風まつりの名に相応しいとはいえ、かつての観覧で経験したことのない強風の1日の始まりだった。そして境内を埋め尽くす桜のほとんどは葉桜となっている時期にもかかわらず寒い1日でもあった。夜には自身には真冬並みの防寒装備が必要なほど。
 この12年のうちに目立って変わったことといえば、奉納煙火で一番の名物の「建物仕掛け」の設置場所が変わっていたこと。なんでも仕掛を立てていた土地が売却されたらしい。それで本2023年度から新たな場所に移ったのだかそれは従来の位置からほど近い境内南側で手筒観覧をするときにちょうど背後にあたる場所だった。かつては境内林だったかそこを切り開いて広場を設け、仕掛けの土台を設置しそこに準備されていた。手筒観覧をして振り返ればすぐそこが建物仕掛という具合。ただし仕掛けの方向としては真横にあたり、正面は東側のかつての設置場所と参道の方を向いている。
 ちょうど昼時だったが昼の手筒奉納は何度も見ていたのに何時頃からだったか失念していた。もう終わったかと思っていたのだが午後1時をまわって一連の行事が始まったので運良く観覧できた。まだ三脚を運んだだけで本番のカメラはなかったが過去に何度も撮影済みだったのでこの日の撮影はスマートフォンで行った。
 その後は他にないのでマクドナルドでテイクアウトして昼飯、昼寝。しかし午後の昼花火が間断なく打ち上げられるので2時間ほど寝てからは車のそばから見物していた。煙菊や柳ものの煙もあっという間に流されるくらい、この日はずっと風が強かった。
 

昼の手筒奉納

昼の手筒奉納

昼の手筒奉納

昼の手筒奉納

建物花火の立ち上げ

夜の手筒奉納(ヨーカン棒)

夜の手筒奉納

夜の手筒奉納

夜の手筒奉納

夜の手筒奉納

夜の手筒奉納

夜の手筒奉納

夜の手筒奉納

夜の手筒奉納

夜の手筒奉納

乱玉の櫓

乱玉の櫓
    
 17時を過ぎてから境内に撮影機材を運ぶ。この日は移動しやすいようにカメラザック。その後背後の広場で建物仕掛けの立ち上げが行われた。それまで土台に根本を仮固定して寝かされた状態だったのを、クレーン車を使って引き起こす作業だ。しかしこの場所でのその工程は全てのスタッフにとって初めてで、しかも大型の枠仕掛けを強風の中で立てるのだから、それは難航した。
 9割ほど引き起こしたところで裏からの風に煽られて3方向から支えるワイヤーを引くのも間に合わずクレーンのアームに仕掛け本体が衝突した。受風面積の大きい枠仕掛けだけに初めての場所での強風の中の作業は困難だ。再び寝かせて点検後、少し風の止むのを待ってのちに再開された。
 2度めはうまくいき、仕掛けは無事に立ち上がり根元を固定。3方向からのワイヤーもきっちり張り上げて本番を待つばかりとなった。その後高所作業車で玉掛けをはずしたり、各部の点検をしていたようだ。
 夜の裏打ちゴールデンシリーズは、境内の手筒の撮影場所から境内林越しに観覧した。尺玉系はいずれも素晴らしい出来で、あたりからも歓声が上っていた。ワイド打ちも遠く離れた境内から見ても相当に幅広く、素晴らしい光景だった。今後できないと言われているので見ておけばとも思ったがまったく見えない訳ではなく良かった。今後神社東側を通る国道1号と交差する国道151号と247号を混雑緩和などのため立体交差化するらしく、流入路などの拡幅工事のために裏打ちができなくなるということらしい。
 手筒の前に背後でいよいよ建物仕掛けにバチバチと火が入り、真横だけど見物できた。建物は無事に着火展開したがこの日の風向きは仕掛けの真裏からの強風。観客側に猛烈に火の粉と煙が襲っていた。
 手筒奉納は19時45分頃から。久しぶりに間近に見る手筒はいずれも実に良くて堪能できた。それにしても撮影がなんと楽チンなことか。かつてこの風まつりだけでなく、愛知県内のそれが有名な場所では何度となく手筒花火撮影をしてきたけれど、ずっとMFでそして銀塩だった。私はデジタルカメラを手にしてから手筒を撮ったことがなかったのだ。2011年には境内の手筒ではなく裏打ちの打ち上げ花火だけを神社の外で撮っていた。私は銀塩の時代には花火撮影のメインは645のカメラで、もちろん花火以外でも35ミリ一眼は長らく使ってきたが、それはずっとMF(マニュアルフォーカス)だった。645もMFでつまり私はデジタル一眼を2008年以降に手にするまでAFのカメラを使ったことがなかった。銀塩の35ミリや645の一眼で撮っていた頃に比べれば、AFのありがたさ、ISO感度の自由さ、寄せた時の手ぶれ補正やらなにやらデジタルカメラは至れり尽くせりである。三脚は持ち込んだが場所取りのためで撮影にはほとんど使っていない。手筒の火の粉が落ちる具合を長い描線にするにはスローシャッターかバルブ撮影が必要なので少しは三脚を使ったが、ほとんどは手持ちで撮った。過去の記憶でマニュアルで大体のSSと絞りを設定し、撮る。その場で結果が見られるデジタルカメラならではで、そのワンカットから、より良いSSと絞りとISO感度を割り出して修正。そうしたことがその場でただちできるデジタルカメラは実に快感。
 スローシャッターかバルブで火の粉が雨のように線になって写るのは好きな描写なのだが、一見演者がじっと動かずに出しているように見えてもけっこう動くので人物がブレてしまいがち。中には火の粉を派手にするためか揺すりをかける場合もあるのでいっそうにブレてしまう。
 私はこと祭り物に関してはストロボなどは使わない。手筒もそうだ。境内にはいくらか人工光があるけれど、基本、人物は手筒から噴き出す火柱と落ちる火の粉で照らし出される。そこがいいのだ。そこに火の粉とは色合いの合わないストロボ光を当てると演者の描写は良くなるが艶消しというか、白けるというか、熱気が冷めた絵になってしまうのだ。今回も撮影者が多いから私が撮ったタイミングにちょうど別の撮影者のストロボが合致したカットがあったが残念な絵になっていた。
 日中に多くの知り合いの花火愛好家氏と出会ったが、ほとんどは裏打ちの観覧と撮影のため国道1号沿いあたりに集結しているのだろう。手筒の頃には境内では見かけなかった。それでも手筒を見物するためか一般の観客と撮影者で夕刻から奉納場所の周辺は黒山の人だかり。始まったら手持ちを生かしてあちこちから撮ろうと思ったが身動きできなかった。過去の撮影から手筒の出し場所というか奉納者の立ち位置はわかっているので良さげな位置に場所取りしてあったのでまぁ良いか。
 予定された手筒奉納がひととおり終わると21時過ぎから乱玉、大筒などの櫓の奉納に入る。私は最初の乱玉の櫓の奉納まで見て帰ることにした。その時間で既に21時30分くらいで、4時間ほどの帰宅時間を考えると潮時だった。残り大筒2基を終えるとおそらく22時過ぎだろうか。それに銀塩時代であるが、大筒に関してはこの晩よりももっと良いアングルで良い写真を撮影済みなのでまぁいいかな、と。帰宅は午前2時頃。まず長い1日だった。

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