花火に生きる日本の文化と問題点
 和紙、和糊、もみがら・綿の実、炭。
 現在では、純国産の素材や道具だけを使って、料理(和食)や伝統工芸品を作れば、とても高価な製品ができてしまう時代になりました。昔はそれがあたりまえのことだったのに、いまでは輸入素材の方が遥かに安く、量も豊富です。そしてなにより手に入りやすいということがいえるでしょう。
 大衆文化、大衆の娯楽である花火の世界でもそれが当てはまります。日本の花火は火薬を除いた他の部分は、殆ど数種類の紙と糊で作られています。他には花火によっては凧糸なども使用されているでしょう。
 日本の伝統的な花火は、文明開花の頃を境に外国製の火薬類が輸入される以前、まだ様々な色彩を持たない「和火」と呼ばれていた時代から日本人の身近にある生活用品に工夫を重ねて作られてきました。和紙、和糊、もみがら・綿の実、炭などです。
 今日では火薬を除く、花火を構成する様々な部品が、他の伝統工芸や和食の文化と同様に従来と同じ品質、内容では容易に手に入らないものが多くなってきました。伝統的な日本の花火には先人の知恵と、日本の文化が生かされています。同時に失われつつある材料も在ります。
   
和紙
 
 花火を構成するのに欠かせない素材に「紙」があります。洋紙が存在しなかった時代から、日本では和紙をふんだんに使って花火を製作してきました。それは昔は他の代替えとなる紙が無かったせいもありますが、和紙の持つ丈夫でしなやかな性質が危険な火薬をしっかりと、そして優しく柔軟に包むのに最適だったからです。もちろん新紙(新しい紙)を使ったりせず、使い終えた大福帳などの古紙を利用していたと言われます。伝統的な日本の割物花火では和はの役割は大きく、昔は玉皮から上張り紙に至るまで和紙を贅沢に使っていました。
 贅沢にというのは、現在ではそれが「貴重品」と言えるくらい高価な伝統工芸品になってしまったからです。
 花火づくりにこだわる花火作家にとって良い「和紙」選びとその「確保」は一大事になっているといえるのかもしれません。それには価格の高さと量の確保、質の追求の難しさが問題となります。
 この問題が生じる原因は、まず丈夫で、厚く腰のある花火作りに向いている和紙を梳くためのための、原材料(コウゾ、ミツマタ、ガンピ)がまず質、量ともに国内では枯渇していること。次に材料を確保出来たとしても紙梳きをする腕のいい和紙職人が少ないこと。これらの条件を満たしたとしても特注仕様で得られる和紙はとても高価で、一瞬で燃やしてしまう花火に使用するには採算も道義上も釣り合いがとてもとれないことがあげられます。
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