花火はこうして造られる

 花火大会で目にする打ち上げ花火の花火玉は、どのようにして造られているのでしょう?興味ありませんか?ここでは一般的な花火玉製作のプロセスを簡単に紹介します。もちろん全ての花火業者が同じように作業しているわけではありませんが、おおよその工程は解ると思います。
 さて花火は現在でもその製作工程の殆どが「手作業」である、といってかまわないでしょう。もちろん星造りの一部のように機械化されている部分もありますが、合理化が遅れているわけではなく、花火の組立はもちろん構成するさまざまな部品製造に至るまで手作業でしか進められない工程が大部分だからです。昔の花火職人は危険な火薬を、指先で慎重に感触を確かめながら扱ったといいます。その精神も手仕事による慎重な製作も変わり無く現在(いま)に受け継がれているといえるでしょう(写真・上張りした5号玉の乾燥工程=天日乾し)。

●花火製作の流れ
調合工程

●星づくり・割火薬づくり
●花火の組立工程
●玉貼りと乾燥(玉の日乾工程)
●花火に生きる日本の文化と現在の問題点


花火製作の流れ
   
 花火製作のおおよその流れを簡略に説明すると上の図のようになります。
 工程は、火薬の調合、構成パーツの製作、組立に大きく分かれています。
 構成パーツは、火薬を使用するものではまず星の製造があげられます。ほかに割火薬の製造もあります。ほかの玉殻(玉皮)や親導(おやみち=導火線)などのパーツについては現在は既製品が使われますが、競技などで使用する玉、または製作にこだわる花火作家はいまでも重要な構成部品を手作りします。
 また、こうした構成パーツは星にしてもただ一種類だけのものではありません。込める玉の号数(大きさ)によりまず星の大きさが違います。そして発する色やその変化、作る花火の種類によって、花火職人は多種類の星やパーツをを作り分けていきます。
 またその製作工程の各段階で天日乾燥という天候次第の重要な工程が間に入ります。

調合(配合工程)
  
 
用途によって様々な種類の火薬と炎色剤などを混合します。昔も今ももっとも慎重に注意深く作業が行われる部分です。かつては火薬の感触を確かめるためこの工程は必ず素手で行ったといいます。

星づくり・割火薬づくり
 
星」は花火を構成する部品の中で最も重要な位置を占めます。もちろん花火づくりの工程の全てが重要で、どの部分にも丁寧な仕事が要求されますが、星はまさに花火の命であるといえますし、どの花火作家ももっとも力を注ぐパーツであるといえましょう。それというのも、色合いや変色には最もその花火作家の個性や技量が表れるものだからです。さらに、日本の割物花火等では星が花弁となって夜空に開くとき、一斉に足並みが揃って変色したり、消えたりする玉が良い花火の条件とされます。そのためには一つの花火に込める星は、その全てが均質で大きさが揃っていなければなりません。
 日本の花火の星の特徴である「掛け星」については「色」の項目や用語事典で解説しています。実際に星を太らせていくには、現在では上のような「星掛け器(造粒器)」が使われています。回転するお釜に星を入れ、少しずつ火薬を加えながら太らせていきます。こうした機械を使いながらも粒の揃った球体の星に仕上げていくには職人の技量が要求されます。
 花火の中心にあって星を遠くに飛ばすための「割火薬」もまた同様に造粒器で芯になる綿の実などに火薬をまぶして作ります。
 いずれも少し火薬がまぶったら、乾燥台に拡げて天日乾燥します(写真右)。星づくりではこの工程を丹念に繰り返して少しづつ希望の大きさに揃えていきます。この時、内部の乾燥が均質にならなかったりするので、けっして一気に星を大きくすることはしません。
→「星」についてもっと知りたい

花火の組立工程
  
全ての部品が完成したらいよいよ組み立て工程です。5号の牡丹玉を例に見ていきます。
1.玉殻の半分の内側に完成した星を並べていきます。片方の中央には親導が差し込まれます。
2.中央に間断紙に包んだ割火薬を詰めます。これを1ユニットとして半分づつ計2個造ります。
3.完成した半分づつを両手に持って一つに合わせます。このような製作方式を「ぱっくり法」といいます。
4.左右を一気に一つに合わせます。

5.外にハミ出した紙をはさみでカットした後、テープなどで仮止めしておきます。
6.玉貼り。合わせた玉の外側にクラフト紙等を何重にも貼り重ねていきます。

玉貼りと乾燥(玉の日乾工程)
  
 玉貼りは組立作業の中でも重要な工程といえるでしょう(10号玉の玉貼り。写真右)。日本の花火が丸く大きく開くためには、火薬の爆発力や形態もさることながら「張り」が重要な役割を持っています。簡単に言うと、割火薬の爆発パワーに対する玉殻の強度でしょうか。玉殻が爆発力に対して適当な抑止力となることで、かえってその反発で大きく開くというわけです。この両者のバランスで、花火が開いたときの「盆(ぼん)」の大きさや星が拡がるスピードが決定しますから重要な要素といえるわけです。また同時にこの両者の加減や尺度も花火作家ごとに違っていて、生み出す花火の個性の一部であるといえます。
 この玉殻に「張り」を持たせるための工程が玉の上貼りと乾燥(写真左)なのです。組上がった花火玉の上から、何枚もの紙(現在ではクラフト紙などまたはガムテープ状の糊付き用紙)を規則正しく糊貼りしていきます。この工程もまた全て手作業になります。玉の大きさによって貼り重ねる紙の枚数が決まっていますが、業者によっても違いがあります。貼ったあと床などでコロコロころがして空気を抜く作業(ゴロがけ)の後、天日に乾かす作業を何度か繰り返し、花火玉の完成です。いや花火玉の本当に完成したときは、夜空に大きく花開いた瞬間なのかもしれませんが。

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