花火を形作る「星」の色々

hoshikanso.gif 掛け星、変色星など星に関わる名称がいくつか登場しました。花火の入れ物の中に入っている物は、もちろん星だけではありませんが、ここでは星の色々についてもう少し紹介しましょう。(写真・約2センチ径の10号玉の星)
 日本の花火には比較的、つまり外国のそれに比べれば色々な種類の星が使われています。その製造方法による種類の違いを説明しましょう。

打ち星/抜き星(うちぼし/ぬきぼし)
 一種類の火薬を筒につめて叩いて成形していく星です。椰子などの大弁物に使われます。単色の星しかできません。主に図のような円筒形ですが、型にする筒の直径を変えることで大きな星も造ることができます。椰子などでは花弁を太く大きく見せることが重要ですが、このため配合はもとより、星の直径や厚さなどが花火屋さんごとに色々工夫されているようです。
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掛け星(かけぼし)
 日本の割物花火に欠かせない丸星(まるぼし)の代表です。一般的に星といえばこの丸い掛け星のことです。掛け星はまた日本独自の製法といってよいでしょう。なかでも星の色が途中で何度も変化する(→色 参照)変色星は、複数の種類の火薬が上図のような積層になっているものです。
 中心には菜種やセラミックスの粒を使用するほか、下図のような、切り星の外側に火薬を掛けていく製法もあります。  
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切り星(きりぼし)
 一種類の火薬を練って平たく延ばし、サイコロ状に切り分けたものです。このまま牡丹などに使用するほか、掛け星の芯に使ったりします。
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重ね星(かさねぼし)
パイプ星
 紙の筒に薬剤を詰める方法です。掛け星以前の変色星はこの方法で造ったと言われます。異なる焔色剤を積み重ねて(重ね星)色を変化させるものです。現在では昼花火の煙星やパラシュートで吊る色火などに使われています。
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プレス星
 図のような型を使用して一種類の火薬をプレスして固めたものです。均一な星をいっぺんに大量に作ることが可能です。ただし色の変化などはできません。外国の星は主にこうして造られます。玩具花火の中に「蛇玉」というのがありますが、これはこうして造られたものです。
掛星(変化菊)の寸法と日乾日数の例(完成までのおよその日数)
玉の大きさ
仕上がり寸法
日乾日数
3号
10.0mm
7日
4号
12.0mm
9日
5号
14.0mm
11日
6号
15.9mm
12日
7号
16.7mm
13日
8号
18.0mm
15日
10号(尺玉)
20.2mm
17日
20号
35.0mm
20日
30号
50.0mm
30日

その他の星
 

ダリヤ星/光輝星(だりやぼし/こうきぼし)
   
配合にマグネシウムを使用し通常の星よりもずっと明るい輝きをもっています。これら光輝星は割物の芯部や親星に使われ、「輝光芯変化菊」「ダリヤ」などの玉名がつけられます。
 
kirahoshi.gif点滅星(てんめつぼし)
  
キラキラ、ピカピカと点滅する星のことです。それぞれの星がついたり消えたりを繰り返しながら飛んでいきます。この点滅の間隔や早さ、星自体の色などは業者によって違います。花火に使われるときは単に「点滅というほか」「さざ波」「スパンコール」「キラキラ」などの玉名で呼ばれます。白(銀)、紅、緑などの色が一般的です。
先割星(さきわれ・さきわりぼし)
   
菊花火の引き先、つまり消える間際にパリパリッと音をたてるもの(写真左)です。こうした玉は「冠菊先割れ(かむろぎくさきわれ)」などの玉名で呼ばれます。音を出すための星の芯部の火薬には非常に危険な爆薬が少量用いられており、これが乾いた良い音を出すもとになっています。非常に取り扱いが難しい火薬のため、現在では限られた熟練の職人の手にまかされています。ただし将来的にはより安全な火薬に置き換わるともいわれています。

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