納涼花火大会と花火競技大会(コンクール)

 花火打上が伴うイベントには様々な形態がありますが、通常は(納涼)花火大会と呼んでいるランダムな花火を次々に見せるものが一般的です。これと対局な位置関係にあるのが花火競技大会でしょう。こちらではその花火競技大会について解説します。
多くの個性に出会う「花火競技大会」
   
 花火の鑑賞の仕方のページで、花火は作り手の個性を観る、としましたが、花火業者ごとの特長や違いを実体験するには、花火競技大会(花火コンクール)が一番です。
 夏に全国各地で行われるいわゆる納涼花火大会では、たいていはその地域の地元の花火業者さんが担当します。普通はひとつの花火大会を受け持つのは多くても4〜5社。1社だけで打ち上げる花火大会の方が多いでしょう。違う煙火業者の花火を見たければ、別の地域や他府県に出かけなければなりません。
 これに対し、競技大会では、全国から多数の煙火業者が参加し、同じルールで、同じ玉の種類で腕を競います。ですから各花火屋さんごとの特長や違いがよりわかりやすいわけです。
 花火競技大会の目的はようするに「どこの(誰の)花火が一番(優れている)か?」ということですから実に明快です。そのため、どの業者も出品する花火の内容は最高級。「よい花火ってどんなの?」と思ったら、とりあえず花火競技大会を観ておいて間違いないでしょう。
 花火競技大会のもうひとつの楽しみ方は「自分なりに採点しながら観る」ということ。実際の審査は審査員が100点満点制などで点数をつけておこないます。これにならってプログラムに点数やコメントをメモしながら観ると、いっそう印象に残るに違いないと思います。きっと自分のお気に入りの玉や、煙火業者が見つかるに違いありません。

全国主要競技花火大会・コンテストの日程
競技と営業の違い

 花火競技大会と通常の営業で行われる花火大会(夏の普通の納涼花火大会など)とでは、同じ花火が観られるのでしょうか?
 答えは、残念ながら全てが同じではない、ということになります。
 初夏の頃に大量に出てくる、情報誌の花火特集では秋から冬場の競技花火大会を取材して、勝手に「今年はこれが流行る」「今年の新作花火はコレだ」などという記事を設けますが、出品している煙火業者の地元の花火大会でさえそうした競技出品作の全てにはお目にかかれないと思いますし、業者にしても「競技と営業は違う」とはっきり認識しているところが多いでしょう。
 こう考えてみましょう。皆さんが、たとえば学生、または社会人の立場でなんらかのコンクールや展覧会に何か作品や日頃の練習の成果を発表、出展するとしたら、どうでしょう?
 そんなとき、そこら辺にある過去の作品を絵画展に出したり、練習もなしに合唱コンクールに出場したりしないでしょう?学校内での展覧会、市や県の展覧会、はたまた全国規模のコンクール、となれば絵画にしろ作文や、弁論あらゆる分野でとっておきのパフォーマンスを見せたいと思うに違いありません。ましてや名誉賞や賞金が授与されるとなればなおさらではありませんか?晴れ舞台のために、特別な作品を作り、練りに練った文章を書き、納得行くまで練習すると思います。
 花火競技大会に出てくる花火もいわば「スペシャルバージョン」なのだと考えるとよいでしょう。もちろん出品時の実際の開き具合や観覧客の反応を見た上で、さらに改良したりして、やがては夏の納涼花火大会にも還元されていきます。
 ですから競技会で観た全てのものが、その煙火業者の営業範囲の花火大会で、翌年にでも即座に同じように観られるというものではない場合が普通です。
 良心的な業者はどんどん実際の営業打上でも使って行きますが、たいていは競技会スペシャルというような花火玉やスターマインは採算より競技結果に重点を置いています。ですから請け負う時の総予算などで、普通の納涼花火大会では金銭的に完全には反映しづらいということが多いようです。
競技と審査

 最近は、「大会の目玉プログラム」として安易にコンクールを新規に設ける大会も増えています。しかし主催者だからといっていかほどの見識と権限で出品作の優劣をつけようというのでしょうか。
 花火に限らず競技会やコンクールにとってもっとも大切なのは、参加者、出品者への主催者側の「礼」の心を形にすることです。それは、正規の花火代金に順当するまっとうな参加料。厳正なルールとその遵守の徹底。妥当な賞金、あるいは栄誉賞(総理大臣賞とか通産大臣賞などの)。加えて参加者、出品者のだれもが納得する公正な審査です。
 このいずれも、あるいは3つ以上がなければ、すくなくとも参加者にとっては、「出品するに値するコンクール」だとは思えないのではないでしょうか。同時にコンクールとうたう資格も
ないと思います。出しても仕方ない、どうせまともな審査員によるまともな審査じゃない、となれば実力のある煙火店ほど真剣に出品する業者は少なくなるでしょう。
 なぜなら、正規の花火代金を参加料として支払う競技会は少なく、花火や交通費など諸経費は業者の持ち出し(自腹)の部分が多くなります。それでも自腹をきっても参加したいと思うのは、しかるべく栄誉賞がかかるか、一攫千金の莫大な賞金が出るか、自分の自信作が晴れて一番良い出来であると、まっとうな審査員により評価されるかのいずれかであるからです。
 観る側には、詳細なルールや金銭的なことは伝えられていません。しかし何処が受賞したかは、わかります。その際も疑問に思わないだけの順当な審査結果でなくてはなりませんし、審査経緯の説明(得点の公表や受賞理由-何が評価されたのか)を主催者は明示する義務が今後は生じるでしょう。
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