花火鑑賞のポイント

花火鑑賞の「見どころ」は?良い花火とはどんな花火?

 単発で打ち上げられる割物花火(わりものはなび)の鑑賞ポイント、つまり花火のどこを観て良し悪しを判断するか?の基準には以下の各点があるとされています。
【玉の座り】たまのすわり
 美しい花火に開くためには「玉の座り」が大切で、発射された花火玉が空に昇り詰め、ちょうど上昇力を失い、落下に移る瞬間の静止状態(座った)にあることです。この一瞬で破裂することが理想的とされます。これより早くても遅くても、玉の運動方向(上昇、または下降)に星が偏って放出され、美しい球形に開くことができません。
【割り口】わりくち
 玉が座ったところで点火し、星が一斉に飛び散る瞬間のことを割り口(わりくち)といいます。すべての星に同時に火が付いて均等に飛び散らなければなりません。
【盆】ぼん
 「盆(ぼん)」とは玉が開いたときの形で、どれだけ均整のとれた綺麗な球形に見えるかが良い花火のポイントです。またその開発直径は基本的には、玉の号数でだいたい決まっていますが、開いたときの花火の直径が大きい=盆が大きいことも良い花火の条件となります。また盆の大きさや星の飛ぶスピードなどには作家の個性が表れるところです。たとえば同じ盆の直径でも、瞬間的にすばやく開発する玉はとても男性的で豪快ですし、対照的にややゆっくりと大きく開発する玉は、女性的で優雅なおおらかさを感じます。
【肩】かた
開花した後、星が一直線にきれいに放射状に飛ぶのが良いとされ、「肩の張りがいい」といいます。
【抜け星 星が泳ぐ】ぬけぼし、ほしがおよぐ
 いくつかの星に着火せず、そこだけ黒く花弁が抜けてしまう場合があり、抜け星(ぬけぼし)と呼んで減点対象となります。また星がいびつ、あるいは表面の燃焼が均等でない等の理由で軌跡が曲がってしまったり、蛇行したりする場合も「星が泳ぐ」といって減点されます。ただし最初から星が不規則な運動をする設計の「遊泳星」の場合はこの限りではありません。
【変化】へんか
 「変化」とは玉が開いている間の各星の色や形態の変化の具合です。やはり色合いに加えて変化の足並みが揃っているほど良く、均一な星づくりがされている証です。
【消え口】きえくち
 すべての星が一斉に吹き消すように消えるものが(消え口が揃う)が良いとされます。消え口の良い花火は鮮やかな余韻を残し、また強烈な印象を心に焼き付けます。
 消え口が揃うとともに「どんな消え方をしたか?」でも印象は変わってきます。たとえば一斉に吹き消すように、ふっと消える星は、強烈な印象を残し、男性的でいさぎよさを感じさせますし、2段階くらいでピカピカッと消える場合、あるいは芯星と親星の間にわざと時間差をおいて順に消えたりする場合は、一種の「切なさ」や「はかなさ」を感じさせてくれます。こうした点も花火職人の個性による解釈の違いでさまざまな消え方が考えられるようです。
【割黒、黒玉】わりぐろ、くろだま
 割火薬に点火し、星が一斉に飛び散りますが、この時、一部またはほとんどの星に着火せず花火の形に見えないとき、割黒といいます。また内部の割火薬や星にも着火せず上昇した玉がそのまま落下した場合を黒玉といいます。いわば不発玉というわけです。いずれも危険なので大会終了後は念入りに捜索されます。

「個性を観る」ことが極み。
    
 以上これらは日本の割物花火について伝統的にいわれてきた花火の鑑賞ポイントです。古典とも基本とも蘊蓄(ウンチク)ともいえます。というのも最近では一発づつの割物より、スターマインなどのスピーディな連発物に関心が高いようです。連発物では玉数も多いので、一発ずつ前記のような鑑賞をするわけにもいきません。花火の見方にも新しい基準が必要になっているわけですね。
 スターマインなどの連発では、ただ単に端から順に燃やして飛ばしていけば良いというものではありません。星の色合い、色の組み合わせ、連発で上げる時のそれぞれの玉の種類の組み合わせ、号数による打ち上げ空間の高低差の使い分け、打ち上げのタイミングや間合い、リズム、テンポ、ストーリー性、などが観賞ポイント、判定基準になるでしょう。
 もちろんこれらはコンクールなどの審査員やマニアレベルのことかもしれません。ただ、どういう点で良し悪しを判断すればよいのか?はおわかりいただけると思います。もちろん好き勝手に評価しながら観るのも楽しい晩であるといっておきましょう。
 さらに上級レベルの鑑賞では、これらに加えて全体の形のバランス、配色、そしてなにより作家の個性を鑑ます。こうした色やバランス、星のスピード感などは一定レベル以上の作家なら、それぞれ個性があります。作風といっても良いでしょう。各自が培ってきた花火づくりの技法や哲学には違いがあって当然なのですから、出来上がった花火は同じ菊でも作者によって千差万別です。
 花火の良し悪しを見極める、としましたが、実は花火観覧の最高の楽しみの極みは、「花火に現れる花火職人それぞれの個性、独自性、芸術性」を鑑るところにあるのです。そうなると今度は良い悪いではなくて、絵画や音楽のように自分が気に入った花火、好きな作家、作風というのが決まってくると思います。たとえば玉名に同じく「八重芯変化菊・やえしんへんかぎく」と付けたとしても、各花火職人の「理想とする花火」の理念や技術の違いによって千差万別です。親星と各芯星の開発したときの大きさ、それぞれの配色、変化の組み合わせ、割と張りのバランスによる開発の具合などその「違い」こそが作風を物語ります。
 次にはひいきの作家の成長や新作も注目したくなります。こうなれば花火大会の楽しみも最高調ですね。
 個性を観る、としましたが、花火業者ごとの特長や違いを実体験するには、競技花火大会(コンクール)が一番です。興味のある方は、以下も合わせてご覧下さい。

納涼花火大会と競技(コンクール)花火大会

 最後に、「良い花火」とは何でしょう。そしてどのように作られるものでしょう。それは結局、花火職人がひとつひとつの行程を丁寧に積み重ねたものであるといえましょう。斬新な発想や新規の趣向も、手抜きのない地道な技の蓄積があってこそ初めて活かされるもののようです。
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