花火野郎のスペシャルリポート

第8回国際花火シンポジウム/トレードショー

 国際花火シンポジウムは、カナダに本部のある国際花火シンポジウム協会(ISFS)が主催するもので、1992年カナダのモントリオールで第1回目が開催されて以来、バンクーバー(カナダ)1994、ウォルトディズニーワールド(オーランド)1996、ハリファクス(カナダ)1998、ナポリ(イタリア)2000、ウォルトディズニーワールド(オーランド)2001、バレンシア(スペイン)2003。とこれまで欧米で2年に一度開かれてきたが、1998年から日本煙火協会の国友繁明理事が先頭に立ち、滋賀県が後押しする形で誘致を進めてきた。2003年に滋賀県開催が正式決定。今回の滋賀大会で第8回目を迎えるはこびとなった。同県は開催を2004年4月15日にマスコミに発表している。
 このシンポジウムは現在、世界の煙火業界で最大の国際会議に成長し、各職種の煙火関係者、煙火サプライ関係者が集い、最新の技術、製造技術の発表、業界発展のための情報交換、学術的情報の提供などを目的として開催されている。今日の花火、煙火業界における、安全性、科学面、芸術性、法令関係などについて、世界レベルでさまざまな議論が交わされるのである。今回は世界約30カ国から約350人の花火師、花火業者が参加して行われた。
 私も海外の花火関連ニュースペーパーなどでシンポジウムの存在を知っていたが、たとえプレゼンテーションの花火打ち上げの観覧だけ、としてもいずれ遠い海外での開催ではどうしようもなく、今回アジア圏で初めてしかも日本でこれが開催されるのはなんとも喜ばしかった。
 シンポジウム会場は、見るからに高級そうな琵琶湖ホテル(右)の3階フロアであった。
 早朝からシンポジウム会場へ出かけようと思ったが、まさか午前8時半から稼働中(スケジュール参照)とは知らず、それまで湖岸でロケハンをして時間を潰していた。それで朝いちのセッション15が終了しての休憩時間あたる午前10時頃に会場入りしたのだった。
 会場の受付脇のボードに張り出された国際花火シンポジウムの開催スケジュールを見ると、まぁなんとも外人さん達はタフなのであるかと驚く。たとえば、初日と最終日(午まで)の講演スケジュールは以下のようなもので全5日間の日程中では約50程のテーマで講演、協議が行われた(一部日本人講演者の発表を除いて実際は表題も交わされる内容も多分英語です)。ほぼ30分刻みで5日間のうち2日は朝8時30分から終了は夕方5時と、午前と午後でそれぞれ30分ほどの短い休憩と昼食(12:30〜13:30)以外はすべてシンポジウムの時間にあてられており、もちろんフルタイムで全セッションに出席する参加者ばかりではないにせよ、タイトな(しかし内容的には実に有意義な)スケジュールであることには違いない。
 しかも日中のこれら講演の予定を終えた後にオプショナルツアー(別料金、弁当付き)としての各地での花火打ち上げ観覧が組まれているのである。一日の大半を会議で過ごし、さらに花火見物を終えてホテルに戻るのは21時〜22時30分くらいであり、その合間には参加者によっては商談なども挟まる(もちろん琵琶湖周辺や京都への観光旅行も)のであるからハード&タフである。
      
4月17日
   受付と歓迎レセプション
4月18日
4/18  08:30 開会の所見  あいさつの言葉  
   日本の花火の歴史
セッション1  
    09:30 花火の物理学 蜂物のブンブン、ヒューヒューという唸り音について 
    10:00 マグネシウム、マグナリウム、アルミニウム粉の再活性化
セッション2 
    11:00 カナダにおける花火の許認可とクラス分けについて
    11:30 アメリカにおける煙火の安全な爆発反応と効果
    12:00 日本煙火協会と玩具花火の検査
セッション3 
    13:30 様々な未精製煙火用調合薬の評価試験結果
    14:00 マグナリウムを含む金属酸化物の音を発する反応について学ぶ
    14:30 不安定な状態にあるカリウム、金属粉または有機化合物の鋭敏度
    15:30 不確実な摩擦敏感度の試験の影響をパラメーター分析
    16:00 花火とファイヤークラッカー(爆竹)における機械的な鋭敏度の影響分析
    16:30 花火の非分類化の試み
    17:00 散会
   
4月22日
セッション15 
    08:30 カナダにおける仕掛け花火の許認可と分類
    09:00 アメリカにおける花火の廃棄処理へのとりくみ
    09:30 NFPA Fireworksの規約の標準的な最新情報と変更点
セッション16
    10:30 笛物(発音)技術における最新の実験    
    11:00 フレイム花火の放射度スペクトラム測定
    11:30 ヨーロッパの調査プロジェクトによる
拡張された器具類を伴う花火の分類化テスト結果報告
    12:00 散会
    18:00 スペシャルディナー
(訳は適当です)
    
 開催のメインはシンポジウムでありそこでのディスカッションや、事例研究、研究発表、問題定義などといったものが目的であるから、それが一日のほとんどの予定を占めている。
 項目からおわかりのように、シンポジウム本体に参加する者のほとんどは花火、煙火、火薬類、危険物(煙火製造、火薬類、それらの部品、製造機器、打上機器、打上用品、サプライ用品、企画・演出用品)に関しての専門家、専門業者であり、交わされる話題、事例はもちろん今日的なこれらの業界内外の専門的な内容である。つまり私のような打上花火を観て楽しむ、というレベルのウォッチャーにとってはメインディッシュであるシンポジウムそのものについては「お呼びではない」部分の方がはるかに多いだろう。
 もっとも同時通訳付きの国際花火シンポジウムそのものは一般向けではなく誰でもフリーで入場できるわけではない。参加、傍聴するにはあらかじめ主催事務局への参加登録が必要で、入場券のようなパスが発給されそれで会場に出入りできる。このパスは全日程通しであり登録フィーは一人あたり75,000円(750USドル、2005年2月15日以前は650USドル)と高価であるため、煙火、火薬類関係者でもないのにたんなる物見遊山で傍聴する者は覚悟が必要であろう。
 私も日程的に(全て平日という)行けるのは2日間ほどしかなかったので、もちろんこの登録パスは買っていない。取材目的での入場であるが、結局国際花火シンポジウムとその付随する催しの取材は最終日の午前中しかできなかった。
48inch.jpg 受付ではオリジナルグッズが意外と少なかったのであるが(売り切れてなくなったのかもしれない)、協賛の意味でピンバッジとロゴ入りのポロシャツを記念に購入。
 それと最終日日本の打ち上げの日だけ特別に存在するという打上プログラムもここでゲットしたのである(参加登録者以外はプレス登録しないと持ち帰り不可)。このプログラムは一枚物であるがやたらと厚手の用紙である。打ち上げ進行と内容が書かれている他、日本煙火協会加盟煙火店からの協賛玉(供出?玉)の玉名や協賛煙火店名が全て記載されていた。玉名を読むによくぞこれほどの玉を寄せられたものと感銘した。
 さて会場に一歩足を踏み入れると、各会場前のロビーであるが、まずはなんと「世界一超四尺玉」の模型(もちろん片貝町からの出張公演)がドゴーン!と鎮座し来場者を出迎える。おそらくは海外からの花火関係者は度肝を抜かれるとともに抱きつきたくなるほどにいとおしい大玉に違いない。たぶん開催初日は入れ替わり立ち替わりこれと並んで記念写真を撮ったことであろう。最終日となってもまずこの大玉を真っ先にカメラに収める来場者が後を絶たない。
 国際シンポジウムの 公式HP の四尺玉についての記載 を見るとわかるように昨秋からすでに私の四尺玉の写真が掲載されており、運営事務局長のFred Wade氏の意向通り念願の四尺玉の模型がやってきたのである。多くの参加者がご対面を心待ちにしていたかもしれない。展示だけでなく、四尺玉製造、打ち上げで知られる現日本煙火協会会長でもある片貝煙火工業の本田正憲氏は、4/20のセッション10で「世界一の大玉“四尺玉”の創造」と題しての講演も行った。これほどの大玉をいかにして造るのか?海外からの参加者の関心はいかばかりだったろう。
 その奥の部屋がトレードショー会場、隣はランチ会場、さらに隣がメインのシンポジウム会場というレイアウトであった。
 与えられたプレスパスではシンポジウムは傍聴できず、同時開催しているトレードショー(ブースを出しての展示商談会)やロビーでの歓談の様子などの取材のみである。主催者側が用意したブースは26ブースであったが、すでに最終日とあって帰路についた展示業者もありブースのいくつかは空き家になっていた。ちなみにブース出店業者は前記した登録料は45,000円(450USドル)でいいのだが別途ショバ代がそれなりである。
    
tutu.gif jinhau.gif
ロビーの様子。休憩時間で人が多い。
右端の人は四尺玉を撮影中?
株式会社フーゲツ。筒とか、蓋とか、防火シートとか打上関連消耗用品。 中国のJianhu Fireworks。 トータル点火システムをアピールPYRO DIGITのブース。
pyrotechnica.gif  パイロスミス robby_oku.gif
Pyrotechnica のブース。 Pyro digital のブース。大型ディスプレイでは打上プログラムをシミュレーションするデモ 日本の煙火業者多数が採り入れているコンピュータ点火機ではおなじみのPyro digital フェーズIIIシステム ロビーの奥から入口方向
inside_left.jpg inside_right.jpg
kunitomo.gif fireone.gif speciality.gif
地元京都の國友銃砲火薬店はドイツWANOの黒色火薬代理店。 同じく國友銃砲火薬店。独自のコンピュータ点火システムP.E.I.C.Sを初公開。 Pyrotechnic Management社のコンピュータ点火システム“FireOne”のブース。日本側代理店は(有)ハナビヨコハマ。 RES Speciality Pyrotechnics社。
pyropak.gif parente.gif pirico.gif
LUNA TEC社の製品PYRO PAKのブース。昨今の電気点火には欠かせない点火玉や薬品類を取り扱い。 イタリアのParente Fireworks社のコンピュータ点火機、FIRE MASTER III PLUS。4/19のイタリアの打上ではこの点火システムが使用されていた。 イタリアのPirico d'arte イタリアの花火玉のカットモデル(Pirico d'arte)。丸い花火は日本の千輪物のよう。後ろはお馴染みの長玉=Cylindrical Shell
gotokogyo.gif pyromark.gif エコ花火
後藤こう(金偏に交)業株式会社。ステンレス打上筒各種、親導補強加工機など PYRO MARK社、こらも点火システム PYRO MATE社の点火システム“NIGHT HAWK” エコ花火の秋田県工業技術センターと株式会社セーコンのブース。
エコ花火 goldenbear.gif
各号数のエコ花火の玉殻が並ぶ。
    
玩具系の中国の業者かな
    
   
 既知の日本の出展業者さんも数多く、歓談したり展示内容を伺ったりしながらの取材である。
 会場内には打ち上げ筒関連、点火消耗品、リモコン(無線)による点火システム、中国系の玩具、などが並んでいた。
 ブースのスナップ写真を見るとわかると思うが、ノートパソコンを拡げている業者が多い。つまり展示品でもっとも種類が多いのは、コンピュータ管理された点火器であり、それだけで内外5社くらいが売り込みに余念がない様子(どのメーカーの点火器もとってもカラフルな筐体)。競合する会社同士が向かい合わせ、というブース配置もあり関係者のカロリーも高そうだ。
 それぞれに話を聞くと、それぞれの機器に特徴や得手があり、マシンとしての性能についてどこが秀でているか?ということより、出来ること出来ないことを見極めて、ハンドリングのしやすさ、それぞれの業務形態や打上のやり方に見合ったマシンを選ぶという適用方法になるのだろう。業者の好みや打上形態に合わせて機器の選択肢が様々に考えられると思った。
 中には既に打ち込んだ打ち上げプログラムどおりに映像でシミュレーションすることが可能な段階まで達している機器もあり今後の発展向上も楽しみである。すでにフランスの花火演出集団グループFなどではこうした打ち上げシミュレーションをしながら演出を考えているようであり、実際に花火玉を消費することなく、客席からどう見えるか?付近の障害物に盆や降灰がひっかからないか?どれくらいの高さでどれくらいの範囲に拡がって見えるかなど、花火会場で打ち上げた場合のあらゆる状況と視覚効果を事前に検討する事ができるのは素晴らしい。
 冬の大曲新作コレクションなどでも目にする機会の多かった、環境に優しい「エコ花火」の展示(秋田県工業技術センターと株式会社セーコンの共同開発による)も興味深かった。なによりもこのトレードショーの展示ではやはり電気点火、コンピュータコントロールによる点火機器、それらに付随する部品、分配機などが大勢を占め、他には打ち上げ筒周辺など殆どが打ち上げと演出に関わる品々である。その中で花火において環境に関わるパーツを提案しているわけで、世界に向けても意義のある出店といえるだろう。もちろんメインのシンポジウムでは環境や廃棄処理などについての講演が無いわけではないし、どこの国の煙火業者にとっても地球的規模で環境がらみの問題は今後考慮しながら製造・消費をしていかなければならないだろう。しかしながら実物の環境関連用品というと他には目に付く展示がないのだ。
 さてエコ花火の本体である加水分解するという樹脂の玉殻の実物を初めて目にしたわけだが、ボール紙や新聞紙の玉殻に比べて薄く軽いものであった。これが破弾、飛散後に雨水などによって約一日で土に還るというのだから不思議なものだった。煙火店にとって気になるランニングコストについても今後は低下の傾向であるという。
 最終日はシンポジウムのスケジュールは午12時までとなっており、午後に会場を再訪したがすでに受付も片づけられており、午後3時まで開催のトレードショーもすでに撤収準備に入っていた。
 この後半日ほど休憩状態となって18時からにはまぁ、お疲れ会の意味もあるのだろうが、舞妓さんもやって来るというスペシャルディナータイム(別料金)が予定されていた。
 もちろん我々愛好家はそんな時刻には既に観覧場所を決定してしてスタンばっていたところであった(観覧記参照)。
この項おわり

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