花火撮影、あんな失敗、こんなミス。失敗、困ったを活かすためのトラブルシューティング。
花火撮影のフェイルセーフ(安全装置)
失敗、困った編

 あ…あちゃーー……(TT)……やってしまった…。え?…どうしてこうなるの …………。
 
液晶モニタに映し出される写真を見て、誰もが一度ならず何度も経験された事でしょう。あるいは打上の真っ最中に自らの凡プレーに気が付き、頭の中が真っ白になってしまうことさえも…。どうしてもこういう点がうまくいかない。解決策はどうすべきか?という悩み。
 ええ、もちろんかくいう私、花火野郎も例外ではありません。それほど失敗、駄作の山々を累々と築き上げて今日があるのですから。
 失敗とかミス、というのはどういうことでしょうか?
 自分が(こういう風に撮るつもりだ、このように撮れている筈だと)狙った通りでない写真は全て失敗なのだといってよいでしょう。失敗は成功の母といいますが、これには失敗と思った中に思わぬ傑作があるというのと、失敗をしなければ成功するための最適な方法も分からない、という二つの意味があると思います。
 こちらでは花火撮影上でありがちな、トラブル、失敗、ミステーク、そしてこんな事がうまくいくない。困った。を例をあげて解説します。単純な操作ミスだけでなく、作品の完成度を下げる気象条件などについても注目して下さい。

失敗例、困った例 状況と原因 対策
露出オーバー

もっとも多く発生する失敗。花火が画面の同じ場所に多数重なった時に、必ず生じる。つまりスターマインでは常に起こりうるのである。ポジフィルムの場合は「飛ぶ」「スヌケる」などという。ポジを新聞紙の上において文字が素通しに読めるくらいに透明になっていれば階調など皆無。ネガでは無理矢理焼き出せばなんとか画像は出るが、カラーバランスもなにも滅茶苦茶な写真になる。レンジの狭いデジタル写真では、断崖絶壁のように階調の途中からすっぱりと真っ白に写る。
一般にオーバーになった写真はとくにポジ、デジタルでは救いようがない。スターマインなどでは、簡潔で短めの露光をする習慣が必要。基本的なF値設定では単発の玉に対してそれほどオーバーになることはあまりないが、あらゆる花火がひとつの絞り値で撮れるわけではないことを認識する。
露出オーバー2

露出オーバーにはもうひとつある。上のオーバーが花火だけが重なり合ってしまったために不可抗力的にオーバーになるのに対して、画面全体全ての事物がオーバーになってしまう、つまり絞りの開けすぎ、あるいは開けたあとの戻し忘れである。
撮影中になんらかの要因(その撮影の直前で明るい花火が来て絞り込んだ、あるいは暗めだったのでかなり開けたなど)で絞り値を変えた場合は、必ず元(ニュートラル位置)に戻したかのチェックが必要。
露出アンダー
花火自体が暗く写ってしまった場合。花火が発光体であるかぎり、あまり生じない失敗だといえる。付随する夜景などは好みの問題。また花火の発する煙がカメラと花火の間に挟まるとき、肉眼で見た以上に花火自体の光量を低下させている。いつもと同じ露出(絞りなど)では煙がNDフィルターのように作用してアンダー目に行くので、修正が必要だ。
800メートルを超える遠くから撮っている。単発の場合は花火自体が暗い発色の場合など。
ポジでは無理矢理焼き出せばなんとか画像は出るが、カラーバランスもなにも滅茶苦茶な写真になる。
デジタルではレタッチソフトによりある程度救済できるが、適正露光に比べれば無理な絵になる。それでもオーバーよりは救済できる。
極端な絞りこみや、低感度のフイルムは避ける。
遠方から望遠気味で狙っている場合は、距離が光量を落としていることを認識する(大気状態が悪ければさらに低下)。
煙が停滞していないかどうか気を配る。
カメラブレ

星の描線が波打っていたら、撮影側のブレである場合がほとんど。三脚の固定が悪い。巻き上げ直後にすぐレリーズした。黒紙での開閉が粗雑。露光中の乱暴な絞り操作。自分の手や肘、足がカメラや三脚に当たった。そもそも三脚を立てている場所が不安定か、人が動けば揺れる場所。風にあおられた。知らないうちにケーブルレリーズを引っ張っている。個人的な癖でカメラや三脚に触れてしまう。などがあげられる。
基本的にカメラの固定と足下の確かな場所への三脚設置。
レンズの焦点距離が望遠系である場合ほどブレの度合いが激しいので注意が必要である。
ピンボケ

無限遠から外れている場合がほとんど。一般に、花火撮影では無限遠で撮影するが、回しきったつもりでも撮影中に絞りやズームの操作をすると、ピントリングも動かしてしまいがちだ。またレンズの取り付けミスでも起きる。花火の前面に煙が浮いているときもピンぼけ状態になる。
67以上の大判カメラでは標準レンズでも35ミリカメラの望遠域に入る。被写界深度の関係で花火の手前か向こう側にピントが来ないことがある。
無限遠にしてピントリングをガムテープなどで固定するのがベター。そうでなければ撮影中絶えず、無限遠になっているか習慣としてチェックする必要がある。オートフォーカスは使用しない。AFのレンズではピントリングの動きが極めて軽く動きやすいので要注意。
はみ出し。反対側が妙に空いてしまう。

レンズの選択が適正でない。はみ出させるつもり(望遠でアップにするなど)で狙ったのでなければそれは失敗。花火はまったく真上に上がっているばかりではない、風や玉の飛び具合で左右の方向性が生じる。打上地点を画面の下ど真ん中に置けば、上がった花火も真ん中に必ず入る、というものではない。
花火玉の飛び具合、流れ具合を見て、構図を調節する。打上地点でなく、開いた玉が画面中心に入っていなければならない。
単発の玉が画面から外れる

確かにファインダーで開く場所を確認したはずなのに、どれも画面から外しまくった。
追跡方で撮るのがベストだが、固定方でも単発を捉えるのなら、一発毎に花火の飛んでいく方向をみて、カメラの向きの微調整は欠かせない。
迫力がない、ちんまりしている。
基本的にレンズの選択が適正でなく、小さく撮りすぎている。あるいは近くから広角で狙いすぎて花火が寝てしまうか、逆にこぢんまりとしてしまう。付随して加味する夜景や、観光的な特徴物、季節や花火大会を強調するための添え物(浴衣の女性や納涼提灯など)を花火に対して逆に大きく入れすぎて主客転倒している。そういうのは花火の写真ではないということをまず認知すべきだろう。 
少なくとも遠花火にならないくらいの距離から狙い、画面の天、左右からややはみ出すくらいのフレーミングをする。写そうとしている主役は花火であることを自身でよく自覚すること。
ボヤける、かすむ、にじむ

写像がぼやけるのは、花火の煙や湿気、霧等の影響。低温によるレンズの曇りやレンズの汚れが考えられる。通行人の巻き上げる土埃なども大敵である。アマチュアの場合、最後にカメラを仕舞うまでレンズ面がどうなっているか気にしない場合が多い。
大気がモヤっている時も注意。近くの街路灯などがぼやけているときは花火も影響している。
湿度を感じるとき、気温が低下しているような時、絶えずレンズ面をチェックしてそうした気象状況で曇っていないかチェック。あるいは曇り止めのコーティングをしておく。
同様に絶えずクリーニングすることを心がける。
煙が気になる

やや風下ぎみの風になっている。風が弱いか巻いている。あるいは湿度が高く、煙が拡散しにくいなどの理由で、花火の手前に煙が浮いて存在している。
露出がややオーバー気味、あるいは雷などの明るい星が煙を照らし出してしまった。
基本的に風上に陣取る。
明るい星によって照らし出され浮かび上がった煙は不可抗力であるが、逆にそれがあるから迫力を加味でき、立体感や、線だけではわかりにくい星の色を分からせる要素であると言える。
積極的に画面に取り入れるのも必要。
逆風、風下

花火が発する煙で花火が見えなかったり、燃えかすがカメラやレンズに付着することさえある。もっとも避けたい風向きである。
風下に位置する事が問題であるし、開催中に風下になったら撮影は中断するか打ち切るしかない。
花火の形が崩れる

風の強い日に撮った場合など。肉眼では流れているように見えなくても冠など、滞空時間の長い玉を中心に、星は強風では流される。そして消え際は画面外に逃げてしまうので注意。構図のバランスも狂う。
強風の時は撮らないに限る。
花火が風で流れるとき、花火には顔の向きが生じる、花火の形が変わるほどの風力であるなら流れる方向性を考慮したフレーミングをしなければならない。
センターが抜ける

割物を単発で撮ったときのレリーズのタイミングの遅れ。開いた、と開花の瞬間を目で見てからのレリーズでは絶対的に遅い。連発でいくつかの玉にタイミングが合わないのは仕方がないが、単発(画面に1発だけ)を撮るつもりならこれは致命傷といえる。遅れるほどセンターの写っていないドーナツ状の写像となる。
ファインダー内で花火を観すぎているか、単なるタイミングの遅れなので、慣れるしかない。打ち上がってから開くまでのタイム感を各号数ごとに身につけるのが必須。慣れてくれば遅れたかどうかはレリーズしたときにわかる。
空が明るい

市街地の花火大会ではいつもと変わらない露出でもたちまち空が明るく写る。特に雲が出ている場合は、街明かりを反射してよけいに白くなるので注意。当然花火は引き立たなくなる。夜景を充分に露光するのとどちらを優先するかだが、花火が浮き立たなければ元も子もない。
花火の色彩は基本的に、漆黒の夜空あってのもの。露光を短く簡潔にして空を暗く落とす。街の中心部にレンズが向かないような撮影場所を選ぶ。
大都会では、尺玉が昇って開き、消えるまでの時間でも長すぎることがある。
水平線が傾く

花火に限らず画面が傾いていれば、カメラの水平、三脚の水平が狂っているということ。とくに水中花火など横位置の場合は要注意。
広角レンズを使用して花火に対して斜めに構えていると、実際の水平垂直がわかりにくいので注意、できれば水準器を使いたい。

撮影中に縦横を何度か切り替えるような展開の場合、とくに水平の狂いには注意する。最初の三脚の水平出しに注意する。
画面の中心で垂直が出ているかをよく見ること。
プリント時に修正することも可能。
色が綺麗に出ない

発色が悪い場合は、ネガならプリントの問題。撮影時には、露出アンダーまたはオーバー。花火との間に煙や霧が入り込んだ。降雨、湿度が高くモヤッているなどが考えられる。また露天商の発する焼き鳥などの煙。投光器のハレーションなども色に影響する。また都会に近く夜空が明るい場合も冴えた色にならない。煙が入り込んだ場合はたいていアンバー系、つまりうす茶色く色づいてしまう。デジタルの場合、使っているカメラが撮った色が正しいとは思わないこと。撮って現像ソフトで開いただけの絵がそのまま使えるデジタルカメラは皆無。
ネガならプリント時に発色について注文を出して手焼きで焼いてもらう。デジタルの場合はレタッチソフト(Photshopなど)で正しくあるいは救済がある程度可能。
昇りが生える、ザラ星チョン切れ

花火撮影ならではのタイミングの問題。単発玉の昇り曲導、スターマインのザラ星などは、露光開始すなわちレリーズのタイミングが打ち出しに遅れれば、画面の途中からバッサリ下が切れてしまう。
撮影開始が途中からになっているということで、タイミングの問題だ。スターマインの打ち出しタイミングを外さないためには、慣れも必要だが、花火のリズムを感じながら撮ること。機械的な露光時間では対応できない。
ハレーション、ゴースト

画面内に光量のある照明器具が入り込んだ場合。ハレーションとなるのはレンズの端に入った場合がもっとも強烈。ファインダーで見えない範囲でレンズの端にこうした仮設照明などが入ると画面全体をおおうような凄いハレーションになることがある。光量のある花火、または閃光的な花火、たとえば雷、フラッシュと呼ばれる花火では、レンズ内の多層膜コーティングに鏡筒内反射してゴーストとなって写る事がある。しかしこれは希な例。
場所的に照明器具を避けられないときは、むしろバッチリと構図内に写し込んで露光量を短めにした方が被害が少ない。
撮影場所を決めるときに昼間のうちから仮設照明や街路灯、夜店の裸電球などが画面内に来ない場所を選ぶ。
夜間営業するゴルフ練習場などにも注意。
バルブ露光中を忘れてカメラを動かした。

バルブ撮影に慣れていないか、焦ったために何度かやる失敗。シャッターを閉じたつもりでアングルを変えてしまう(縦のものを横にする、向きを変える、ズームで画角を変える)など。
キャップをしたまま撮影しないのと同様に初歩的な失敗だが、慣れていても焦っているとおかしやすい。
   スターマインなどの連続的な打上で、どこで露光を始め、終わりにしたらいいかタイミングが掴めない。

とくにコンピュータ制御のワイドものなど、他種類の花火を上から下から連続的に打ち上げたりする連発もので、何処で切ったらいいか、何処まで露光したらいいかの判断がわからない。
写真を撮ること、カメラを操作することだけに気持ちがいきすぎている。写真を撮る前に花火そのものをよく観る、鑑賞することが大切。露光開始、露光終了、次のカットへ、というタイミングは花火の打上リズムに合わせる。
    
花火野郎の花火撮影時のチェックポイント

 撮影時の操作ミスは以上の例だけではありません。写りに関係ない、あるいは写すに至らないトラブルやミス、勘違いもたくさんあります。
 ミスを減らすには絶えずチェックすることが大切です。いざ花火撮影、と本番に入るまでの直前のチェック事項というのは結構多くあります。
「…………しているはず」と、慣れによる油断がちょっとしたミスを引き起こします。
 現像してからの失敗ならともかく、それ自体はたいしたミスでなくても、花火打ち上げの最中だったりすると、意外にうろたえ、とっさにどうしていいか判らなくなったり、経験が浅いとその失敗が心を占領してしまい、なかなか気持ちの上で切換や、立ち直りができないものです。
以下のセルフチェックは、撮影中絶えず必要だと考えて実行するとよいでしょう。そして撮影中に「やっちゃった!」とわかっても気持ちを切換え、その後の撮影でリカバリーできるようにしましょう。

・バッテリーは充分か、予備はあるか
・レンズのピントは無限遠に入っているか
・シャッターダイヤルあるいは撮影モード切替が「BULB」になっているか
・シャッターのロックは外したか
・撮り始めの絞り値は正しくセットされているか
・ニューフィルムならちゃんと一枚目がスタートしているか
・巻き上げているか
・マニュアル露光、マニュアルフォーカスになっているか
・三脚の各部はちゃんと締まっているか
・レンズ面の汚れ具合はどうか。曇っていないか
・フイルム/メディアの残り枚数、残り本数はどうか
・撮影中絞りを動かした場合は基本値に戻したか
・カメラの水平垂直の確認
・ホワイトバランスの確認(デジタルカメラ)

レンジファインダーカメラの場合
・レンズのキャップはとれているか
・レンズ交換の際のシャッター幕が戻っているか


ビュータイプやブローニーでは
・引き蓋が抜かれているか、あるいは引き蓋を戻したか
・シャッターのチャージは済んだか

撮影可能、とセッティングが済んだ時点で、ワンカット無駄にするつもりで空シャッターを切って、フイルムを送り直しておくのが良い方法です。バッテリーが死んでいるときはこの時点で判るし、何らかの操作ミスによってカメラの安全機構が働いて、シャッターが落ちないときもこれで判ります。

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