一眼レフデジカメのインプレッション2
Canon EOS Kiss デジタルX/EF-S18-55mm F3.5-5.6・USM

●撮影データ
   
   
カメラ Canon EOS Kiss デジタルX(リモートレリーズ使用)
レンズ  EF-S18-55mm F3.5-5.6・USM
ISO感度  100(自動増感設定OFF)
画質モード/サイズ L1(JPEG)=最大サイズ
ホワイトバランス 太陽光
撮影モード/シャッター設定 M-マニュアル B(Bulb )
ピント AFを外しマニュアルフォーカスにした上で、ピントは無限遠に“手動で”合わせる。
F   16(基準値=花火に合わせて可変する)
自動ノイズリダクション OFF
NDフィルター 未使用
1 コマ撮り
その他各種の設定はデフォルトのままとしている。カメラで測光しないので測光パターンなどはどれでも関係ない。
必要なメモリ容量は画面サイズや画質によって変わる。上記の設定では約250カット撮影可能である(1G CFカード)。
   
 このクラスのデジタルカメラとしては珍しくISO設定が100からとなっているので、まったく手を加えずに花火撮影に入れる。それで絞りはF11スタートとしてみたが、液晶に写る具合をみるとISO100設定であるもののもう少し感度が出ている感触だったので(測定器で実測しているわけではない、花火と写りの相関関係からの経験による実感)、さらに絞ってF16相当をニュートラルに前後調整をしている。つまり後がない絞り値設定になるので、ND2番ないしは4番で少し光量を落としてやる方が花火撮影には使いやすいかもしれない。Canon独自のピクチャースタイルは使用していない。
kissdx.jpg●問題点
  

 液晶ディスプレイは大きめで見やすい。しかし気になったのはファインダーの見えと、実際に写った画像とのズレである。花火の打ち出し地点をいくら縦位置短辺の真ん中に捉えても、画像は右に寄ってしまうし、また画面下部がチョン切れてしまうのだ。この誤差に慣れるのが大変だった。またファインダーの実像が「遠くに」小さく見えるのはこのクラスの常である。ファインダーの見えが小さすぎる故に、夜の撮影である花火はとりわけファインダーだけでは水平出しが難しい。あとでPCで大きな画像を見てみるとこんなに傾いていたのか、と驚くくらいだ。できれば水準器できっちり水平を取りたいもの。
 従来のアナログフォーカスのレンズであるならばフォーカスリングには適度の粘度があるものだが、トルクの軽いモーターで瞬時にピントを合わせるオートフォーカスではフォーカスリングは羽根の様に軽く回る。
 Kiss digital Xの純正ズームにしても、花火撮影でMFにチェンジしてみると、フォーカスリングの軽さに驚いた。軽くても無限遠になるポイントが回しきりの位置にあるなら問題ないが、少し戻したところにあるのがやりにくい。しかも無限遠∞表示がなく(まぁ必要もないだろうが)、結局無限遠にありそうなモノ(遠くの街路灯とか夜景とか)にあらかじめ手動で合わせておかなければならない。ピントの山がクリチカルで、合焦には繊細な指先の感覚が必要だ。打ち上げが始まったら花火でピントを取ればいいというのは間違いで、それは容易くないのである。しかもいったん合わせたピントもこうフォーカスリングが軽くては、いつ何かの拍子に(ズーム時など)外れるか気が気ではない。だからピントを取ったらガムテープなどで固定してしまうとよいかもしれない。しかしあまりがっつり固定すると、光軸がズレそうな気配である(だいたいレンズ自体がおもちゃのように造作が軽い)。粘度がたりないんだよなぁ。粘度、ねんど、ネンド………粘土で固定するのもいけてるかもしれない。なんちゃって。
      
作例 デジタル分はリサイズとトリミング以外は元データに一切手を加えていません。

デジタル ポジフィルム 白(銀)が白として綺麗に発色しているのは優秀
デジタル
ポジフィルム
デジタル
ポジフィルム
   
●ハンドリング

 
 動作は非常に軽快だ。連発ものを銀塩で撮るスピードでこなし、単発早打を一発ずつ次々に露光してもまったくタイムラグを感じない。少なくとも花火撮影時のハンドリングは銀塩カメラと比して遜色ないレベルといえる。バッテリーの持ちも問題なく、常に予備を用意していたが1時間程度の花火大会を休まず撮っても恐らく交換に至らないと思う。使用したのは1GBのCFカードであるがさすがにフィルム交換がない、というシームレス環境は快適である。リモートコントローラーによるレリーズはさすがに慣れないと違和感もあるし、操作ミスが生じるが反応自体は悪くない。
 花火撮影では、頻繁に絞り値を変える作業があるが、デジカメやAFの時代にレンズに絞りリングがあるような期待はできない。本体にはシャッター可変ダイヤルと、絞り可変ダイヤルが独立して付いているわけではない。マニュアルモードの時、シャッター速度はダイヤルだけで変えられるが、絞りの方は液晶ディスプレイ右上のボタンを押しながら同じダイヤルを回さなければならない。すると完全に片手でボディをホールドする格好になるため露光中などの可変は無理であるし、迅速に対応できるという感じではない。目検討では可変出来ないので、まず消灯していた液晶ディスプレイをONにしなければならないし、数値を見ながらクリクリ回すことになる。慣れないと花火撮りの暗がりではディスプレイ周りの各種ボタンの押し間違いもあるのでいちいちペンライトなどで確認したりして時間がかかる。
 これはデジタルカメラならではの便利機能だなぁと驚いたのは、バルブ露光を掛けると液晶ディスプレイの右下隅に経過時間が表示されること。恐らく時間が経過してもたいして変化のない夜景の長時間露出には便利だろうなぁ。しかし花火撮影時には100パーセント花火それ自体を観ているものなので、残念ながら液晶ディスプレイの時計表示は観ることはないだろう。スターマインなどでは肉眼で一瞬も目をそらさないでいてもレリーズのタイミングを計るのが難しいもの。よそ見をしている暇はないのである。
 また花火撮影は時間経過でレリーズを終わりにしているのではない、という概念がなかなか初心者の方には理解してもらえない。花火が中途半端に写ってしまったり、オーバーでトンでしまったりするのは決まった時間の露光を機械的に繰り返すのが原因のひとつである。しかしなかなかそこが理解されない。花火の露光は花火を観てタイミングを計ってするもので、時間を計っているのではない。その意味からも正確に何秒経過したか?というのは重要ではないのである。
 写像は、花火撮影においてはいかにもデジタルカメラらしい発色で、一部の色に於いて現実離れした(その時の星の発色と全く異なる)独特の色に置き換わってしまう。ポジフイルムさえも万能ではなく、全ての色を観たままに再現できるわけではないし、その製品ごとの発色の特徴や傾向はあるものだ。しかし特定の色だけが突出して強く色合いが変わってしまうことはない。この価格帯のデジカメではこうした癖の押さえ込みには熱心になりようもないのか、垂れ流しで癖が出ている。
 ただし花火を撮らなければまったく問題がないので、風景やポートレート、日常の記念写真を撮っている限り誰も気が付かないだろう。花火であっても、最初からデジタルのみ、銀塩を撮ったこともなく、肉眼で見た色がどうだったかを全然覚えていなければれば気が付かず綺麗な画像だと錯覚できるだろう。トータルで観れば「この価格でよくぞこれだけ」と感心するいい写りである。夜景や夜店の抽出具合、煙が流れている部分のハーフトーンなど驚くほどよく出ている。
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