コンパクトデジタルカメラによる本格的花火撮影
電視編
2014Ver8

考察!一眼レフタイプデジタルカメラで花火を撮る3-Nikon D300 インプレッション
考察!一眼レフタイプデジタルカメラで花火を撮る2-Canon EOS Kiss デジタルX インプレッション
考察!一眼レフタイプデジタルカメラで花火を撮る-PENTAX *istD インプレッション
検証!「打ち上げ花火モード」は使えるか?
d-fantagia.gif デジタルカメラがポピュラーになり、手にする最初のマイカメラがデジタル、という方も少なくないと思います。こちらではコンパクトデジタルカメラを使って従来からのような花火撮影をする方法の講座です。
 最近は一眼レフタイプのデジタルカメラも手の届く価格帯のものもポピュラーになりました。一眼レフタイプやミラーレス一眼タイプは普通のアナログ(銀塩)一眼レフカメラと同じように操作ができますから、こうしたカメラからデジタル写真をスタートされた方はビギナークラスから読み始めてください。
 さて従来のフィルムを入れるタイプのカメラは、このページではデジタルに対して「銀塩カメラ」と分けて呼びます。
 私が通常撮っているような花火の写真は従来からある花火のスタンダードな撮影方法によるものです。
 それにはカメラの「バルブ」というシャッターモードを使用することが前提になっています。バルブというのは、シャッターボタンを押している間中は、シャッターが開きっぱなしになるという機構です。これによってワンカットに花火が開いて消えるまでの連続的な星の光跡が「光の線」になって写しこまれます。たとえばこの「日本の花火」の各ページやギャラリーを飾っているような写真はそうした方法によって撮られたものがほとんどです。
 このページでは、実売価格で数万円の一般的なコンパクトデジタルカメラを使用して、銀塩カメラによる花火撮影と同様な写真を得るにはどうするかを、主に機材と露光、パソコンでの撮影後の画像処理について説明します。機材がデジタルになるというだけで花火撮影のための様々なテクニックや知識は銀塩カメラのそれと変わらなく重要です。花火撮影全般についてはこのページを読んだ後、合わせてビギナーズクラス・初級編の説明もご覧下さい。
 現在のコンパクトデジタルカメラは、手軽に撮影できる反面融通が利かない部分もあります。とくに花火撮影では少しだけカメラの操作やセッティングに工夫が必要になってきます。またカメラにをよってはまったく花火撮影に向かない機種もあります。
(作例1上・花火ファンタジア/Nikon COOLPIX990 Mモード8秒)

コンパクトデジタルカメラを花火撮影に使うときの問題点
      
 カメラは使い手によって、ありとあらゆる写真のジャンルで活躍します。そのいずれでも最大公約数で高い性能を発揮することが求められるわけですが、民生用ととしての歴史が浅いデジタルカメラでは、用途の少ないと思われる機能を最初から搭載していない場合がある反面、動画撮影機能や、連続分割撮影など逆にデジタルならではの機能を発展させて満載しています。
 花火の撮影では銀塩のカメラであっても、メカニカルで単純な機能のカメラの方が向いていました。野外で最低1時間の間は、長時間のバルブ露光のみを延々繰り返すわけですから、カメラにはメカとしても電気、電子機器としても「タフさ」が求められるのです。最近のカメラではデジタルのみならずシャッターを開ける機構そのものが電気式ですから、バッテリーにもけっこう負担が掛かる点も注意すべきです。
 したがってデジタルカメラから見ればアナログな、メカニカルシャッター、手動フォーカス、手動絞り調整などの方が実は確実、臨機応変で信頼性も高いといえます。なかでもコンパクトデジタルカメラは従来からの花火撮影には完全には適していないということができます。
 その理由として、
 
1 バルブ露光を主体とする花火撮影で、バルブシャッター、バルブ機構そのものがついていないコンパクトデジタルカメラがほとんど。
 
2 ほとんどの普及価格の機種では露出制御はAUTO(プログラムAE)、シャッター優先、絞り優先、のいずれかあるいはこの組み合わせで、シャッター速度と絞りを個別の組み合わせで操作することが最初からできない。花火の打ち上がる前に予め露出を設定することは困難である。したがって撮影ごとにAEまかせのなりゆき露光しか出来ない。
 
3 1秒以上の長時間シャッター速度が設定できながら、リモートケーブル、ケーブルレリーズなどブレを防止するためのアクセサリーが使えず指で直押しを余儀なくされる。またリモートレリーズがあったとしても汎用の安価なレリーズがいくらでもある銀塩カメラに比べれば、高価で選択の余地がない。
 
4 撮影中でもいちいち本体の液晶画面などにアクセスしなければ各種の設定を換えられない。
 
5. 銀塩でいうところの「多重露光」はできない(一眼レフタイプは可能)。たとえば、銀塩で多重露光機能を使うと、フィルムは送られず(巻かれず)に、シャッターのチャージだけされて同じコマに何度も露光を繰り返すことができる。こうしたフィルム面上での光学的なアナログ合成ができない。一眼レフタイプのデジタルカメラでは、「カメラ内合成」機能を使って、撮影済みのファイル同士を電子的に合成することが可能です。

6. メモリへの書き込み時間が露光時間とは別に発生するため、花火に限らず連続撮影にはタイムラグ、あるいはフリーズなどの動作が起こりうる。

等があげられます(2014年5月現在)。
 まさに花火撮影にとっては、ないないづくしです。絞りとシャッター速度を個別にセットする、というこれほど簡単なことができないのですから露光の上では工夫が必要です。
コンパクトデジタルカメラでのバルブ撮影風の花火露光設定
      
 もしあなたがお使いのコンパクトデジタルカメラがバルブモード搭載機種なら、ビギナーズクラスから読んでいただいてもよいでしょう。
 花火露光の上で最もネックとなるのが、ほとんどのコンパクトデジタルカメラには、自由な長時間撮影に欠かせないバルブ機構が無いという点と、AEのプログラムを崩せないという点につきるでしょう。
 これは今後対応するカメラも増えていくと思われますが、カメラとしての使われ方(手軽なスナップ撮影用など)を考えると、今後もそれほどはバルブ機構やマニュアル露出が標準装備のモードにはならないでしょう。
 夜景モードなどにしても、それは夜景の時間帯の人物の記念撮影用であり、夜景や花火自体をかっちり撮るためではありません。そうした写真を(花火も含めて)確実に撮りたい人は、スナップカメラやデジタルカメラは本来使わないものなのです。一部のデジタルカメラには“打ち上げ花火モード”という花火撮影向けの特殊なプログラムを備えている機種もあります。このモードを使うときは三脚が必要です。
 そこでこうしたAE露光一発のデジタルカメラで擬似的にバルブ機構の代わりをさせるのが1秒以上の長時間露光(低速シャッター)です。当然ながらスローシャッター対策として三脚が必要です。
 仮にシャッター速度を4秒、あるいは8秒などと設定し、開いている時間をバルブのように使う方法です。これも機種によって最長時間がまちまちであるので万能ではありません。
 お使いのカメラが「P」や「AUTO」つまりプログラムAEモードのみ搭載の機種である場合は、残念ながら記念写真以上の花火撮影には対応できないと申し上げるほかありません。この場合は、測光した光量と測距により全て(シャッター速度、絞り値、フォーカス)がカメラまかせに決定して、撮影者はそれをどうにかできないので、本格的な花火撮影には全く使えない、ということです。 こうした機種では撮影シーンごとのプログラムAEに「打ち上げ花火モード」が搭載されていればそれを使います。
 シャッター、絞りいずれの優先AEであろうと、測光前の速度と絞り値の固定が不可能な場合が普通です。そこでセンサーの感度から、それぞれのAEについての露光設定を検証してみましょう。いずれもストロボは発光禁止にしておきます
もちろん光ったところで影響は無いといえますが、無駄な電力消費を避けるためです。何か前景(浴衣の女性とか提灯とか)を入れて目立たせたい場合は、発光もいいでしょう。
 コンパクトデジタルカメラでは一眼レフカメラの交換レンズのように絞りのステップが多いわけではなく、よくて5段階、普通は3段階程度だろうと思います。つまり開放、最小、その中間とそれくらいです。液晶に表示される中間の値が無いといっても光量の上では実際にはその中間もあると考えなければなりません。

1.シャッター優先AEの場合

 シャッター優先AEの場合は、花火撮影時の対象方向の夜空なり、夜景なりを長時間シャッター速度AEで優先測光させると、たいがい暗いので、自動的にそのデジタルカメラの開放絞り値になります。
 一眼レフカメラの時の花火撮影の適正露光は、ISO100の時、バルブでF11前後というところでしょう。
 ISO100程度のセンサー感度を持つ一般のデジタルカメラで、8秒の露光の時の開放値が4位だった時、花火の露光としてはかなりオーバーになってしまいます。 そこで露出補正機構を使って予め倍くらいマイナスになるようにAEを崩してしまうか、NDフィルターで適正露出になるまで光量を落としてやることが必要になります。NDフィルターは眩しいときにサングラスをするようにレンズに入る光の強さを減衰させる働きをします。ただし被写体の色調に影響を与えません。濃度(減衰量=見た目のフィルターの濃さ)によって何段階か種類があります。
 たとえば開放F値、F4にマイナス2EVの露光補正で、正味はF8となります。絞り2段落ちのNDフィルター(濃度0.6=0.3を2枚重ねでも良い)で同じくF8になります。デジカメ用では市販のネジ込み式フィルターは、口径が小さすぎて種類がない場合、角形のシートフィルター(ゼラチンフィルターやフジのアセテートフィルターなど)をはさみでカットして自作するとよいだろうと思います。別売のプロテクターフィルターなどのフィルター部分を外すか重ねて装着すると簡単です。
 いずれかでコントロール仕切れない(オーバーな)ときは、両者を併用して落としてやれば良いわけです。またNDフィルターの2枚重ねも有効です。AEはどうせ最大開放値に勝手に決めるので、光量の調節はこの両者の組み合わせで各自のデジタルカメラに合わせて微調節して試すのが良いでしょう。
 補正例を挙げてみましょう。
 8秒のシャッター速度に(必ずシャッター優先AEであること)したとき、開放F値が4に測光された場合、F11相当にするには絞り2段落ちのNDフィルターとマイナス1EVの露光補正を両方使います。これでF11相当といえるでしょう。

2.絞り優先AEの場合

 絞り優先AEの場合は、4秒、あるいは8秒と10秒程度まででそのカメラの出来るだけ長い露光時間になるように絞りを選びます。この時は予め花火撮影の適正露光値になるべく近づけることが望ましいでしょう。ISO100程度のセンサー感度のデジタルカメラならF11近くになるように絞りを設定します。すると花火打ち上げ前の夜景などの測光では、暗いので、たいていそのカメラの最長露光時間にAEが設定します。カメラによりますがこれが4秒から10秒程度のシャッター速度になるとベストです。
 もしカメラ設定の絞り値のステップ数が少なく、F11より1絞り程度(8とか16とかに)ずらさないと希望のシャッター速度にならないか、F11という絞り値が最初から液晶に表示されない場合は、その前後の絞り値にしてあとは露出補正モードで微調整すれば良いでしょう。たとえばF8の次は16になってしまうときはF8に設定し、露出補正でマイナス0.5から1.5EVの範囲で補正します。
 特に広角側で最小絞り値が甘い(露光オーバーめ)場合は、シャッター優先の時と同様にNDフィルターとの併用も考えましょう。
 たいていのデジタルカメラはズームレンズを備えていますが、ズーミングにより絞り値が変化してしまう光学系を備えている場合が多いようです。つまり35ミリ換算して、38から110ズームでF2.5 〜4などとカタログやマニュアルに記載されているでしょう。この場合、フレーミングによりF値が変化するので常に画角に合わせて適正な絞りになるように気をつけなければなりません。こうした光学系では、「画角を変えたら(ズームしたら)絞りも変える」ことを忘れないようにしましょう。 
 いずれの優先AEの場合でも、花火の適正露光値は一定ではなく、花火によって変化します。デジタルカメラの場合は、臨機応変に素早く露出補正を繰り返すことが苦手なのですが、ある設定で決まり、ということではない、と書いておきましょう。このあたりはビギナーズクラス・初級編レッスン3をご覧ください。
    
 さてどのAEモードがベストかは操作性にもよります。
 ピントを深く(被写界深度を厚く)してシャープな画像を得るには絞り込まなければなりません。その点からは、直接適正絞り値近くに設定できる絞り優先の方が向いているでしょう。シャッター優先では基準になる絞り値が開放に近くなってしまうので補正によって光量の上では適正でも、光学的に被写界深度が出ているわけではありませんから、無限遠にしてあれば花火にピントがこないことはないにしても、花火の前景などはアウトフォーカスになりやすいといえます。

3.M-マニュアル露出モード搭載機種の場合

 このモードがあれば、露出の点では比較的問題は少ないといえます。シャッターはバルブがあればそれを、なければ備わっている最長のシャッター速度に設定します。10秒くらいまでが花火では使いやすいでしょう。ケーブルレリーズやリモコンが使えない機種のバルブ撮影では「シャッターを指で押し続けなければならない」ので、一度押せば自動的に閉まる長時間シャッターの方がむしろ便利です。
 絞りはF11前後になるように、やはり露光補正機能や、NDフィルターで調節します。感度には個体差があるので液晶での写りを見て調節するとよいでしょう。当然ながら花火の種類によっても絞り値や露光量(写し込んでいる時間)はリアルタイムに可変しなければなりません。カメラの測光によっては絞り値は変化しないので、予め設定した数値が常に優先されます。

まとめ
 

ではいくつか撮影前のカメラ設定のポイントをまとめてみましょう。
・フォーカスはINF、など無限遠や遠景にマニュアル設定。オートフォーカスはOFF
・撮影モードはM-マニュアル、A-絞り優先、S-シャッター優先を使用
・シャッター速度はバルブがあればそれを、なければそのカメラの最長(10秒くらいまで)のシャッター速度に設定
・測光モード(中央重点とかマルチとか)はどれでもよい
・ホワイトバランスは太陽光
・自動増感機能はOFF、カメラの感度が複数設定可能な場合は、ISO100に設定
・カメラだけで露出コントロールせずNDフィルターを併用することで露光調節の幅が広がる
・基本的にストロボ自動発光は禁止
・記録サイズや画質モードは用途に合わせてお好みで設定(画質が良ければ書き込み時間が増える)

 デジタルでは、銀塩のカメラに比してISO100相当のセンサー感度がある(ISOで設定できる機種もある)、といっても実際はそれ以上に感度が出ていたり、時間がたって加熱で感度が落ちたりもするという個体差があります。デジタルカメラは液晶画面を備えているものが多く、撮影したそばからただちに写り具合を確認することが可能です。銀塩カメラに比べれば露出の過不足は液晶画面でだいたいわかりますからオーバーなら絞りなどで光量を減らす措置を、ただちに実行できるという点では経験による露光の調節以上に正確な露光が可能といえるでしょう。デジタルカメラの場合は、銀塩のように「現像してみるまでどう写っているかわからない」という言い訳は通用しないというわけです。
 銀塩カメラの露光値をそのままシフトして設定するだけでなく、持っているカメラの感度特性をつかむために何度かテスト撮影をして写り具合で微調整してみるのがベストです。その際も液晶で写りを見るだけでなく、パソコンに読んでディスプレイで確認するか、プリントアウトしてみるのが理想です。 
d-yaeshin.gif露光の実際
 

 まずフォーカスをマニュアルで無限遠(INF、山マークなど遠景)に設定します。
 リモートレリーズが使えない機種なら(それが大部分ですが)、やむなく本体のシャッターを指で直に押すしかありません。強固な三脚にしっかり固定し、慎重に押す他はないでしょう。
 露光開始はバルブ同様にスタートしますが、数秒単位のシャッター速度であるなら、シャッターは一度押して離すだけでよいわけですからむしろ楽であるかもしれません。
 バルブ露光機能の場合は、「押し続けて」いなければならないので、どうしても「押し続けたままに固定できる」機構のついたリモートレリーズが必要になります。
 露光終了はバルブ露光機能でなければ、設定シャッター速度の時間を過ぎれば終わってしまうので、もう少し短く、もう少し長く露光を続けたい、などという花火の露出に欠かせないマニュアルなコントロールは不可能になります。カメラのお決まりのシャッター速度にゆだねてしまえば、尻切れトンボの露出や、長すぎるオーバーな露出が続出することになります。
 長時間露光の最長タイムはそのデジタルカメラによってまちまちまですが、10秒以下でなるべく長いシャッター速度を選ぶ方が融通が利きます。(作例2上・10号八重芯変化菊/Nikon COOLPIX990 Mモード8秒)
 2秒や4秒の短い露光よりも、8秒からの長めの露光時間に設定し、切り上げのタイミングは遮蔽紙などでアナログにコントロールする方法(ビギナーズクラス・初級編レッスン3)が良いと思います。シャッターがクローズするのを待たずしても、頃合いを見計らって早めに遮蔽紙などでレンズを覆って、露光をやめてもよいわけです。特にCCDの場合、スターマインなどの連発物では、ポジフィルムよりさらに露光オーバーになりやすいですから、連発物はずっーと露光していないで2〜3秒のところでさっさと終わりにした方がうまくいきます。
  
 ここで重要なのは、花火が上がる前ならともかく、花火が多数炸裂している時に測光すれば、その明るさでやはりAEによって絞りがマイナス側にシフトしてしまう(絞り優先AEではシャッター速度が自動的に速くなってしまう)ことです。シャッターを押した時点で露出も始まっていますからレリーズしたあとの補正は不可能です。予め設定した花火に対する露出補正値を安定して使うためには以下のようにします。
 こうした打ち上げ中などのレリーズの時には、いったんレンズ前や測光部分を片手や遮蔽紙で遮ってからシャッターボタンを押します、キャップをしたままの測光と同じですからやはり開放絞り値や最長露光時間になります。それからすぐに覆いを外して露光を続けます。これで常に設定した補正や露光値で、花火に対する露出値が一定になるとともに、シャッターボタンを指で押した時の最初のショック=ブレが発生している瞬間=を写さないで済むことになります。フォーカスもマニュアルで無限遠に固定してありますから、手をかざすことでオートなどでフォーカスが狂うことはありません。この操作は次に記載する、デジタル特有のタイムラグの利用ともいえます。
 以上のような露光コントロールでデジタルカメラのAEモードでも花火撮影にある程度対応させることができます。
  
d-aurora.gif 多重露光が不可能なことから、初級編で解説しているような花火撮影の様々なテクニックの全てが使えるわけではありませんが、連発物(スターマイン)を狙ったり、作例2のように追い写しで割物をフレーム一杯に単独で写すことは問題なく可能です。
 銀塩でも花火撮影にはハイスピードフィルムを使わないものですが、デジタルカメラもCCDの(電気的な増幅による)増感機能は使わないに限るでしょう。これによってよけいノイズが増えるし、画質の点でもメリットはありません。暗くなると自動的に増感する機能のついたデジタルカメラもありますが、この機能は設定画面で必ずOFFにしておきます。
 デジタルカメラのズームレンズでは、広角側が40ミリ前後と比較的甘いので、28から35ミリ位を多く使う花火撮影にはワイドコンバーターは必須といえるでしょう。

メモリーについて-どれくらいの量を用意すれば「安心」か
  
 ひとつの花火大会でフルに撮ったとき、どれくらいのメモリ量が必要かは、その花火大会の規模や撮影者の撮り方の個人差により、一概には特定できません。また、画質モードや画像サイズの設定によっても大きく変わります。ひとつの目安としては5000発程度の大きな大会で、相当多く撮っても200カットくらいです。JPGデータにしかならないコンパクトデジならば16GBあれば充分すぎるくらいでしょう。もちろん撮り方の個人差もあるので多めの容量があれば安心です。
 実際の撮影時は、余裕があれば打ち上げプログラムの合間等に、液晶モニターで撮影済みのカットをチェックしてみましょう。もちろんサムネール表示ではなく、拡大してみます。そして露出オーバーなど、液晶画面で見てすらあきらかな失敗カットなどは、その場で即座に消去して(メモリーをクリアー)残りの撮影可能カット数を確保しておくことも大切です。  
d-starmine.gifデジタルカメラならではのタイムラグに注意
  

 普及価格のコンパクトデジタルカメラには、若干のタイムラグがあります。一つはシャッターを押してから実際に撮影されるまでのタイムラグ。次が1コマ目を撮り終わった後、画像データを内蔵のフラッシュメモリに書き込むため、次のカットが撮影可能になるまでのタイムラグです。最新の機種ではこの両者とも体感では0に近いほどになっていますが、銀塩カメラのレリーズ時のタイムラグが無いに等しいほどであるのにくらべると、コンパクトデジタルでは良い方の機種でもシャッター半押しの測光状態からでも0.5秒程度かかります。0.5秒といえば瞬時であるようですが、シャッター速度でいえば1/2秒とかなり低速の部類に入るほど写真の世界では長い時間といえます。
 これがどれほど遅いか、5コマ/秒のモータドライブ付きの銀塩の35ミリ一眼レフカメラと比較してみましょう。
 一眼レフカメラは1/125秒程度の普通のシャッター速度を設定します。ヨーイドン!でデジタルカメラと同時にシャッターを押したとすると、デジタルカメラが最初の1コマ目を写し始めるまでに、35ミリ一眼レフは最低でも2コマを“写し終えて”いるのです。3コマ目にかかるかどうかというところで、デジタルカメラがようやく目を覚ますというわけです。
 コンマ5秒の差でシャッターチャンスを逃すような被写体はいくらでもあります。「今だ!」と感じる瞬間が決定的瞬間なのですから、ややたってシャッターが落ちるのでははなはだ遅いといえるでしょう。花火の世界でも火薬の爆発や瞬時の燃焼という非常に短時間に物事が変化する被写体でありますから、このタイムラグは影響をまぬがれないものとして認識しておく必要があるでしょう。結果として、「打ち終わってしまう」「開花に間に合わない」「消えた後に露光開始」などの失敗はかなりの確率でつきものだといえるでしょう。解決策としては銀塩で撮るとき以上の「先読み」のカンが大切ということでしょうか。作例2のように単発の割物を撮る場合は余裕がありますが、スターマインのような連続物では早め早めにレリーズしていくことを心がけるとよいでしょう。
 データ書き込みの時間も、現在では書き込みながら撮影できる機種もあり、その所要時間が短くなっていますが、スターマインなどの連発もので、連続的にどんどん撮影したい時は、相当にストレスを感じると思います。特に高画質モードで撮っている場合はデータ量も大きく、画質と撮影サイズに比例して書き込み時間も長くなるといってよいでしょう。ですから用途にあわせた画質モードで撮ることも大切です。ホームページをはじめとしてディスプレイで見るだけなら、最初からそれに見合ったモードで撮れば良いでしょう。
 花火の撮影とは、ポートレートでも風景でもそうですが、被写体がもっとも美しく輝いている瞬間をとらえるものといえます。ですからこの2つのタイムラグは山場(一番いい瞬間)を外しやすい要素として念頭に置いておいた方がよいでしょう。
(作例4上・夜店とスターマイン/Nikon COOLPIX990 Mモード8秒)

ノイズの発生
  

 銀塩カメラに無く、デジタル特有の問題です。とくに受光素子にCCDを使っているほとんどのデジタルカメラは基本的に長時間露光に弱くなっています。
 ここでは「どうなるか?」の結果のみですが、露光時間がのびるにつれ画面には小さく白い粒上のノイズが増えていきます。これを「星が降る」などと言いますが、事実、漆黒の闇夜が満天の星空になってしまうことも(?)あります。
 CCDの特性にもよりますが4〜5秒の露光時間ですでに発生します。ですから時間無制限のバルブ機能があったとしても、ノイズが皆無のCCDでない限り、写真的には意味のないことであるともいえます。
 最近はノイズを軽減させる「ノイズ除去機能」を搭載している機種もみられます。これは両刃の剣でしてCCDそのものからノイズ発生をなくすものではありません。メモリーに書き込む際にノイズキャンセル処理を行うので、前項にあったタイムラグがさらに著しくなる恐れがあります。
デジタルカメラの発色考
   

 ご存じのようにデジタルカメラでは、銀塩のようにフイルムを持たないことが最大の特徴であり、ランニングコストなどを考えた場合の利点であります。
 何かを写した場合、デジタルカメラごとの発色のクセや特長がある場合、それはそのカメラの特性として固定します。もちろんデータをパソコンなどに読み込んだ場合は、自在に色調の調整が可能ですが、カメラ自体がアウトプットするデータとしてはそのメーカーの、また機種ごとの発色のクセを伴っているといえるでしょう。
 花火を適正な露光で撮影したとき、画像処理をしないままでも花火や夜景が見たままの色調に近い場合は、そのデジタルカメラが花火撮影に向いているか相性がいい機種なのだということができるでしょう。
 逆に手を尽くしても特定の色系が綺麗に写らない、というような場合は、それがその機種の花火を撮ったときの特長なのだと考えられます。
撮影画像の補正
  

 撮りっぱなしで充分クセが無く、綺麗な映像が得られるデジタルカメラなら特に修正は必要ないと思います。カメラによってはどうしても特定の色に傾きやすかったり、シャープネスが不足したりしがちです。こうした点は、より良い結果を望むなら、パソコンの画像レタッチソフトなどで、ある程度カラーバランス調整や、レベル補正、シャープネス強調をする必要がありそうです。
 銀塩カメラから移行すると、デジタルの写真は「これで色が正しく出ているのか?」と信用できない感があります。これもやはり銀塩でそうであるように、いかに肉眼で観たときの印象を記憶しているかということになるでしょう。デジタルカメラの液晶画面は目安にしかならないにしても、撮ったその場で写りを確認することができるのですから、銀塩よりはるかに露出の過不足や色の出具合がただちにわかりやすいと思います。
 むしろ現在のデジタルカメラの発色は、自然で遜色のないレベルだといえます。もし、パソコンでアルバムやポストカードを作ったり、ホームページに掲載したりするために、デジタルデータの写真が必要なら、銀塩のネガカラーのプリント写真やポジフィルム(スライドフィルム)で撮影された花火写真を安価なスキャナ(透過ユニット付きのフラットベッドスキャナやフィルムスキャナなど)で取り込むより、遙かにバランス(発色や階調など)の優れた写真が簡単に得られると思います。
 理想をいえば、カメラ本体の液晶画面ではサイズが小さく、また発色や階調もたよりにならないので、倍くらいのサイズの液晶モニタ(願わくばブラウン管のモニタ)を外付けして見ながら撮りたいところです。
 まずは日頃撮影している花火以外の写真によって、自分の持つカメラが被写体に比べて特定の色味に偏りやすいかどうか、など発色のクセを認識しておく必要があるでしょう。
注 作例はNikon COOLPIX990使用 記録サイズはFINEモード2048×1536のフルサイズ。それをフォトショップの画像解像度で縮小、部分トリミングしています。なお色調はほぼ撮影通り。
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