レッスン2 撮影前の準備
●事前情報の入手
●ロケハン
●撮影場所を決める上での注意点
●最初から三脚を立てておこう
●花火撮影時のカメラと三脚周りの実際 撮りと観覧に集中するために
●被写体の花火についてもっと知ろう
事前情報の入手
花火写真の撮影は実はこうしたところから始まっています。事前情報とはお目当ての花火大会がいつ、どこで、どれくらいの規模で何時から何時まで開催されるかといったことから、問い合わせ先、打ち上げ場所、周辺のロケーション、一般観覧席の所在地、桟敷席など有料観覧場所の有無、その花火大会の特色や最寄りの交通機関、下車駅、臨時ダイヤ、臨時駐車場の有無、その場所、交通規制などあらゆることに及びます。さらに遠方であれば宿泊の手配なども加わります。当日なんとかまたは何としても帰りたい場合は電車なら寝台車などを含めはやくからの席の確保が必要です。また当日現地に問い合わせての実施か中止かの確認も忘れないようにしましょう。花火大会が中止になる場合は朝から相当雨が降っているか、打ち上げ時間に強風が吹いて著しく危険な場合のふたつが主です。打ち上げ時間になっての雨くらいではたいてい強行します。次に市販の地図やグーグルマップを見てだいたいの撮影ポイントをいくつか決めておくことが大切です。
花火大会の情報の入手にはいくつかの方法があります。たいていは毎年花火シーズンになる前にネット上の多くの情報誌サイトなどに日程が掲載されます。現在は花火日程だけを掲載するウェブサイトも豊富ですのでこれらを利用するのが良いでしょう。また規模の大きいまたは有名な花火大会では専用の公式ホームページも充実していますのでより詳しくリアルタイムの情報が得られるようになっています。
ロケハン
花火大会では、それが始まってしまえば混雑のために容易に撮影場所を変えることはできません。ですから良い撮影場所の確保が、良い花火写真を完成するための第一歩と言っても過言ではありませんし、むしろその日の撮影結果を左右してしまう重大要素と言えます。したがって好みの撮影場所を得るにはそれ相応の努力が要求されます。最低でも打ち上げ開始の3時間前までには撮影場所を決定し、いつでも撮りはじめられる状態になっていなければなりません。人気のある有名な花火大会によってはそれでもはるかに遅いでしょう。打ち上げ開始間際になると会場近くでは三脚を立てるどころか近づくことも難しいほどの人出になります。金銭的に余裕のある人、多忙な人は予め有料桟敷席や有料観覧指定席、納涼屋形船などを確保しておくのも一つの手ではあります。しかしたいていの有料席は特等席であることが多いのですがそれがそのまま撮影向きだという保証はできません。納涼屋形船は揺れるのですから写真を撮るには論外として、一般に良すぎる観覧場所は撮影するには近すぎることが多いのです。
「良い撮影場所」の定義はたくさんありますが、「風向きを考慮した上で、打ち上げ場所から適度な距離をとる」というのが基本となります。
花火写真に適した撮影距離は打ち上げ地点から4〜600メートルくらいです。一般にこのくらいの距離をおいたとき、花火が最も形良く見えるとされています。この距離以下ではのけぞるほどの至近距離、それ以上では迫力など無いでしょう。リミットは最大離れても1キロメートルが限度です。また1キロメートル前後またはそれ以上ある場合は、当日の大気の見通しが良いことが肝心です。つまり遥か遠くまでハッキリ、クッキリ見えるということです。さらに1キロメートル以上ともなると開花とその音が聞こえるまでの時間差が著しくなり、少々不快感のあるところです。遠花火ならいっそ中途半端な音など聞こえないほうが情緒があります。
花火撮影のベテランになるほど、打ち上げ筒から射出される時の音で花火玉の号数を聞き分け、開くタイミングや号数による上がる高さ、すなわち開花する位置を予測しています。したがってこのような遠すぎる位置からの撮影はあまり一般的でないといえるでしょう。もちろん長大な保安距離が必要な二尺以上の大玉などはこの限りではありません。
さて当日現地に到着してから最初にすることがロケハンです。つまりどこから撮るか、を決定するための作業です。ここで大切なのは打ち上げ地点がどこか、ということです。当然ながら打ち上げ地点を(実際に花火を上げる場所)中心に撮影場所を決定するわけです。大会会場のどこに花火が並べられているかは現地に行ってみなければわかりません。たいてい会場をみわたせばわかりますが、詳しくは大会本部などで聞いてみるとよいでしょう。
撮影場所を決める上での注意点
良い撮影場所であるためには以下のようなチェックが最低限必要となります。
もっとも留意しなければならない点は「風向き」です。予め予想して決めてきてもいても風向きが悪ければその場所では撮れません。風下つまり自分に向かって風が吹いてる場所を避けます。煙が来るからです。そればかりでなく膨大な量の花火の燃えカスを浴びることがあります(写真右)。
次に気をつけたいのは、なるべく通路や道路、駐車場、夜店の近くなど、大会中でも人が頻繁に行き来する場所を避けることです。落ち着かないだけでなく、露光中にレンズ前を横切られたり、三脚の足を蹴られたりと、ろくなことがありません。足場の悪いところ(三脚が不安定)なども要注意です。川の土手など斜めになっている場所で撮影するときは、特に三脚の立てかたに傾かないような注意が必要です。さらに強力な仮設照明灯や街路灯、ゴルフ練習場の夜間照明などが画面内に入らないかを「夜になった時を想定して」確認しましょう。これらは長時間露光となる花火撮影の最大の敵です。
「立入禁止区域」には文字どおり立ち入らないようにしましょう。もちろんこれらには建て前的な物も多々ありますが、本来は花火の保安距離内である「危険区域」であることが基本になっています。したがってこの領域内で万一のことがあってもそれはあなたの責任になってしまいます。
撮影場所が決まったら三脚を立てるなりレジャーシートを敷くなりして自分の場所の主張と確保に入ります。そして本番までに一度はカメラを実際セットして構図を確認しておきましょう。あとは本番を思い描いてひたすら開始を待つのみです。場所によっては携帯椅子があるとかなりラクです。
→風向きを考慮した撮影時の位置取りについて
最初から三脚を立てておこう
ここで忘れてはならないのは、写真を撮るつもりでの場所取りならレジャーシートや新聞紙を敷いておくだけでなく、必ず花火が始まるまで三脚を立てておくということです。
この場合、自分が本番で撮影する位置に三脚を立てるということが鉄則です。さらにできれば使用時の高さに足を伸ばしておきます。このときカメラは本番までセットしなくても構いません。このことはまわりの一般観覧客やほかの撮影者に対しての「ここで写真を(立ったままで)撮りますよ」という意思表示なのです。そしてできるなら自分の三脚の側に常に居ることが必要でしょう。三脚を放り出してロケハンや買い物に出かけても人目の多い花火会場で盗られることは少ないですが、位置を変えられても文句もいえないでしょう。
後から来た一般観覧客は三脚を見てその後ろに席を取るのを避けるだろうし、カメラマンも先に立っている三脚に配慮して自分の撮影位置を決めます。間違ってもレジャーシートだけで確保した場所に始まる間際にやってきて、後から高々と三脚を立ててはいけません。このことと人の画角の中に三脚ごと入り込む(後から来て、先に居た人の前に三脚を立てること)のは、最大のマナー違反でアマチュアが良くやる行為です。一般観覧客からもひんしゅくを買うだけでなく周りのカメラマンや後ろの客から必ずクレームがつくでしょう。とくに有名で大きな花火大会では限られた好ポイントにカメラマンが集中する場合があります。こうした時、非常にピリピリした雰囲気なので、遅れて到着してその中に仲間入りする時は特に注意が必要です。先着していたカメラマンから画角内に入られたことで「文句を言われるだけ」で済むことを願って止みません(殴り合いになったり、ちょっと席を外した隙に三脚を抜かれて投げ捨てられても自業自得です)。
私は各地でこの禁を侵したための悲惨なトラブルを何度も目にしてきました。この手のマナーを破るのは、旅行者である余所からの写真愛好家や、逆に地元で永年撮っているようなアマチュアに多いのもひとつの特徴と言えるでしょう。花火撮影を楽しむ者は、特に一般客に対して邪魔にならないか?の配慮が必要です。撮影場所など一般観覧席の最後部で良いのです。
また使用カメラが2台以上で2本以上の三脚を立てる場合は、なるべく専有面積がコンパクトになるように配慮したいものです。周りに誰も観客や他のカメラマンがいないような独占の場所ならともかく、たいていは混雑した中で場所を融通しあっての撮影です。一人で5本も6本も立てたり、脚をクロスさせることなく横並びに立てれば無駄に広いスペースを占有することになり、あなた一人がもっとコンパクトに構えれば他に二人や三人はそこで撮影することができるのです。図を見れば建て方置き方ひとつで撮影者を含めた占有スペースが大きく変わるのが判ると思います。上段は普通に横並びに立てた場合、下はコンパクトな立て方です。占有面積だけでなく、幅広く立てると撮影者がカメラを操作するために行ったり来たりする左右の動きが大きくなり無駄といえるでしょう。
さてプログラムをながめながら自分なりの撮影プランを組み立ててみましょう。花火写真は花火が上がってから「今のを撮れば良かったなぁ」では遅いので、あらかじめ撮る段取りを決めておくのが鉄則です。たいていの大会では後半からラストにかけていっきに盛り上がります(いい花火が上がる)。ここで集中的に撮影できるようにフイルムの配分(撮影のペース配分)を考えておきましょう。手持ちのフイルムに限界量があるときは、最初からはりきって撮影しないように注意しましょう。花火撮影に慣れていなければ最初の30分あたりは、じっくり様子をみて高さや拡がりを体感し、構図を確認したりすることもおすすめです。
花火撮影時のカメラと三脚周りの実際 撮りと観覧に集中するために
銀塩カメラの場合、「フィルム交換」という作業が不可欠です。撮影のためにカメラに向かっても、足元にあるカメラバッグとの往復作業が欠かせません。銀塩の場合は撮影中の弾切れを防ぐ為に、常にフィルムの残りカット数をチェックして把握しておく必要があります。
私の場合、交換用具やクリーニング用品、フィルムやそのカートリッジについては三脚上部に小物入れを下げて収納し、カメラに向かったり、花火から目を離してバッグの中を探ったりという無駄な所作を減らし花火に集中できるように撮影スタイルは進化してきました。花火撮影のベテランは各自で独自のさまざまな「やりやすい撮影スタイル」「撮影方法」「道具の配置」を考えて実行していると思います。
私の撮影中のカメラ周りは写真の様になっています。時間経過は腕時計で見ます。撮影時のペンライトは首から下げています。三脚のストッパーのひとつに小物入れを下げ、エレベータ部分またはストラップにプログラム誌を洗濯バサミやクリップで止めています。ようするに花火が始まったら不意の降雨などの場合は以外は、出来るだけもう用品をカメラバッグから出し入れしないで花火に集中するということです。
プログラム誌は撮影中頻繁にチェックするもので、それを撮影中何処に置いておくか?足下に置いたり、畳んで小物入れに入れたり長いこと色々やってきました。簡単には三脚のストラップに洗濯バサミで上下止めるのが良いでしょう。風に煽られたりするので吹き飛ばされないためにも上下2点以上を止めておきます。またそれではヘロヘロなので小型の(A4〜B5サイズ)クリップボードを使用すればしっかり固定できます。ボード自体を紐などで三脚各所にくくりつけます。
レンズもズーム主体なら交換頻度も少ないですし、2台以上カメラを出せるなら画角を変えたレンズを最初から装着しておけばよいのです。
被写体の花火についてもっと知ろう
ここまでで、花火写真の撮影は、単に露出とか絞りとかカメラの操作だけではないことがお分かりと思います。ここでは詳細を省略しますが最も重要なことは花火そのものについての知識でしょう。夏だから季節ネタ、季語としてやみくもに花火を撮る、というのではいつまでも作品レベルは上がりません。
一般的に皆さんは花火についてどれだけのことを知っているでしょうか?「菊」に「牡丹」に「スターマイン」、それに日本全国何処へ行ってもかけ声は「玉屋」「鍵屋」。もしこれ以上のことをご存知でなければ、少し勉強してみることをお勧めします。現在最先端で花火撮影を楽しんでいる初高価は、揃って花火好きであり、造詣も深く観る目も確かです。良い花火写真はこうした方々のカメラの中に狙って得た形で生まれるのです。
たとえばスポーツ写真を撮るにはその競技のルールを知らなければならないでしょう。花の写真なら花の名前やその生態、鉄道写真なら車両の知識や時刻表などと、撮影対象についての様々な知識や情報を身につけることが、より優れた写真を完成させるためには不可欠といえます。したがって花火玉の種類など、花火そのものについて知ることも大切な撮影技術のひとつになります。さらには多くの花火を観て、「観る目」を養うことも重要でしょう。
その上で花火大会に出掛ければ、たとえ観覧だけだとしてもこれまで以上に花火を堪能できるでしょう。そしてあなたの写真もさらにレベルアップしていくことは間違いありません。
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