打ち上げ作業現場と花火プログラム

閉会式会場裏A-1ポイントの打ち上げ現場、担当は信州煙火工業株式会社。遠くに仮設スタンドと聖火が見える。まず筒を設置し、継いで花火玉を装填する。最後に点火コードをつないでゆく。
A1ポイント。
装填前の7号玉、「錦冠菊」と導火線。エンディングのパートで最後に打ち上げられるものだ。玉の外側に昇り竜が付加されている。
   
 篠ノ井駅に一番近いのは信州煙火工業のA1地点で、ここから順に各作業場を訪問した。しかしここでも花火内容に関する業者の口は今一つ重い。それでも本番の日を迎えてようやく全体像が見えるだけの情報を得た。
 花火打ち上げ総数は尺玉36発を含む4969発(打ち止め分含む)、テーマは「春夏秋冬」で長野のそして日本の四季を表現するというものだ。全体を春夏秋冬の四季とエンディングの5パートに分け、5箇所の打ち上げ場所から一斉に8分間にわたって打ち上げが続くのである。点火開始予定時間は19時20分で、式進行に合わせて前後に若干の余裕をみている。
 締めくくりに打ち止めとして10号4玉をはじめとする万雷など計60発が一斉に打たれる。一カ所1000発、計5000発近くとなれば、ふつうの夏場の花火大会ならゆうに一回分の分量である。しかも納涼花火大会なら1時間は持たせるであろう玉数を、休み無く10分足らずで消費するのだから贅沢この上なく、凄い密度といえる。
 今回は全て純国産しかも100%長野県産の花火玉を使用していることも特筆すべきであろう。あえて純国産としたのは、現在、各地の花火大会では、小さい号数の玉では中国産などの輸入物が多数使用されている場合が多いからである。その意味で今回は、長野県という非常に高品質な花火玉を生み出す産地の威信を懸けて地元製としたわけで、打ち上げる玉の質においても類を見ない珠玉の5000発といえるだろう。

使用花火玉の詳細表を見る
  
map.gif
   
 ここで各打ち上げ現場の全体配置図を見てみよう。南長野運動公園をとりまくように配置された打ち上げ場所は、大きくわけてA、B、Cの3ヶ所になる。A地点はちょうど聖火台の裏に当たる最も中心となる打ち上げ場所で、このなかでさらにA、A1、A2と分けられ、全部で5箇所からの打ち上げとなるのである。
 この配置を見ると、これが当日の風向きが北、または北西の季節の風向きとなると理想的なことがわかる。この風向きの時、いずれの打ち上げ場所からの煙もスタジアム方向には流れず、式典に影響しないであろう。
(ところが本番時間帯の風向きは東寄りとなったのだからわからない。結局B、C地点の煙がだいぶ式典会場上空に流れることとなった。)
 A、B、C各5地点には長野の全煙火業者が分担して設営、打ち上げにあたった。簡単に当日の各持ち場の設置・打ち上げ担当業者(製作担当ではない)を記しておこう。
  
A  株式会社紅屋青木煙火店、株式会社小口煙火
A1 信州煙火工業株式会社
A2 有限会社太陽堂田村煙火店、有限会社伊那火工堀内煙火店
B  アルプス煙火工業株式会社、武舎煙火工業株式会社
C  有限会社篠原煙火店、有限会社関島煙火製造所
   
 これはあくまで筆頭の担当責任業者ということである。実際の設営作業には県内の他の業者、県外の協力業者も含めてかなりの作業人数にのぼった。
 また見学を含めればさらに多数の県外業者も訪れていたことだろう。
      
スタジアム北東側のCポイントの設置、装填作業。リンゴ畑の中の細い農道に筒を並べている。(JPEG画像あり)
 
 プログラム「春夏秋冬」に伴うスターマインや単発玉の一連のセットは2.5号から5号玉までで、県内業者分担による合作になる。このため各持ち場では、自分の工場で造った花火ばかりではないわけで、装填当日は多少混乱があったもようである。業者によっては自社工場内で装填済みの筒を並べるだけとしていたので、作業進行には前後があったものの午(ひる)前後にはどの現場も概ね装填および結線を終えたようである。
 各地点の打ち上げ内容(花火玉の種類と構成)は全く同一であるが、A地点を除く他全ては、割物の最大が7号。A地点だけが10号玉を使用する点のみ違っている。10号玉も県内の業者の玉が割り当てで公平に使用されている。
 
Aポイント。
装填済みの春夏秋冬とエンディングのための5列のセット。点火コードをつないで、あとは本番を待つばかり。田圃の上なので打ち上げ時の衝撃による筒の沈み込みや傾きを防止するため、筒の下には古畳を敷いてある。(JPEG画像あり)
Aポイント。10号の筒の設営と固定が終わったところ。玉はまだ未装填。筒は全てステンレス製で鉄パイプにベルトで固定されている。筒の下にはクッションのためのムシロを敷いてある。(JPEG画像あり) a1befour.gif
聖火台を望むAポイントの10号の筒。装填配線などが終わった状態。筒の向こう側が春夏秋冬とエンディングのための5列のスターマインのセット。(JPEG画像あり) backflame.gif
装填を終えたAポイントの10号の筒36本が並ぶ。閉会式を迎えた長野の空は快晴。済みきった大気に雪を抱いた遥か北アルプスの山並みもくっきりと浮かぶ。
(JPEG画像あり)

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